ちょっと量多かったけど次回本章エピローグにするために合体させたので、まーた長めです・・・
ST115.Memento Mori:Like The SunRises And SunSets.
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「うーん、首、首だけはせめて…………、あれ? 私、どうしてたッスか……?」
「ほえ……? お姉様……?」
「二人ともッ!」
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「ミヒール様、見てください、夜明けです! これこそ人類の夜明けです!」
「お前は一体何を言っているのだアドリフ……?」
「な、なんか、視界が開けたぞ!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――――」
「あれ? パーカーの兄ちゃんは?」
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「なぁシンちゃん……」
「…………いなくなっちまったな、あのパーカー野郎」
「俺、なんっていうか、さ、ほら。さっき視た中に、俺達、追いかけまわしたホームレスのオッサン――――」
「……止めろ、今更変わらねぇだろって。……あの後どうなったかとか、俺達は知らないけど、でも、まあ、ウン…………」
「お、俺達、悪くねぇよな?」
「そんなの、わからねえって。だって、判断してるのって『向こう』なんだから」
「……………… 一つ言えるのはさ。一日全部クズって訳じゃなくても、クズやったことはクズなりに返ってくるってことなんだろうなぁ……」
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「――――状況整理、状況整理。AI葉加瀬経由の監視網からみても、おおよそ9割方の生徒や学園関係者が復帰いたしました。『元学園長』」
「フォッフォ、じゃあ儂らもそろそろ後片付けといこうかの。エヴァンジェリン。龍宮クンも、状況だけは確認しておきなさい。その方が後々、書類仕事も面倒はないじゃろう」
『わかりました』
『オイ、ジジイ。だから私は無関係だろってそーゆーのは……』
「そう細かい事言うもんでもないじゃろ。母校じゃし、『子供』がちゃんと仕事を終えた後なんじゃから、精々後で労ってやるくらいには顛末を見届けてやりなさい」
『こういう時ばかり年長者のように振舞うなお前……、私の方がはるかに年上だろうが』
「人生経験という意味では儂の方が上じゃしー? まぁもっとも今の身なりは『コレ』じゃがな」
そう言いながら、
しかし…………、一部生徒(私たちのクラスですと主に鳴滝姉妹)からぬらりひょん、妖怪などと名指しで綽名を付けられ苦笑いしていた旧学園長ですが、現在の容姿はそこから一周回って少年のようです。どちらかといえば木乃香さんを悪戯っぽく、もっと幼くした風貌の白髪に適当なチョンマゲを結っている少年という見た目ですが、声や振る舞いは何ひとつ変わらず。多少響き方は違いますが、声帯の形がそう大きくは変化していない証拠でしょう。
私たちは世界樹の真上にて、そこで荒れ狂う「どす黒い」魔力、妖力の塊を見ていました。直径三メートルほどの大きな球体。渦巻くそれは、一つのブラックホールのようでもあり、しかし私には観測できませんが、旧学園長いわく「人間の顔が大量に」蠢いているそうです。
私自身がロボットだから、魂の有無の問題で見えない――――わけではないのはかつてネギ先生がご証明くださいましたので、おそらくはもっと光学的な理由か、相手側が私を「人間」だと捉えていないことが原因だと推察します。
『そこはちょっと一考の余地がありそうな議題だけど、そうやって強引に納得するようになったのは、AIの進化と見るべきか劣化と見るべきか……。超さん的には成長というところですかね?』
AI葉加瀬の言葉にどう答えようかと考えていると、旧学園長が腕を組んで首を傾げました。
「見事に吹き溜まっておるのぉ。茶々丸、AI葉加瀬クンの試算はどうなっとる?」
「…………『計測したくないです~』とだけ」
「そりゃ大事じゃな。ヤレヤレ、
「――――で、お祖父ちゃん何やっとるん? そんな若作りして」
はっとして、私は背後を振り返ります。この私の
そこに居たのは、相変わらず綺麗な白い翼に「白髪に赤い目」な宇宙レーサー服の近衛刹那。そんな刹那さんとペアルックな近衛木乃香「学園長」。刹那さんが木乃香さんをお姫様抱っこしています。
刹那さんは旧学園長に「ご無沙汰です」と頭を下げ、木乃香さんの方は、私やホログラフィック越しのマスター、龍宮さんに「あ、久しぶりやん!」と感激した様子です。…………こう、私のように年々アップデートしている訳でも、龍宮さんのように長寿な訳でも、マスターのように不老不死と言う訳でもないでしょうに、お二人とも見た目だけは随分お若い……。
「おぉ、木乃香! ……いや、儂だって割とお前ほどじゃないが基礎魔力値高かったから、若い期間だって結構長かったんじゃぞ? 学園結界に結構魔力供給しとったから、晩年あんまり影響せんかったが、こっちが割と『本来の姿』じゃて」
「えぇ~、嘘やん! 絶対うっそやんッ!? お爺ちゃんじゃないお祖父ちゃんとかもはや原形ないえ! アンタ誰やッ!」
「だ、だけどこのちゃん、顔立ちは『
「孫が……、孫と孫の嫁が虐める……、こんな幼気なジジィ相手に何じゃと思っとるのかのぉ」
「幼気に老人とつけると言葉の遣い方が著しく矛盾するかと、旧学園長」
『ハハ、状況的には合っているがな。それはそれとして、クソジジィくらいに思われてるんじゃないか? お前。聞いたぞ~? そりゃ大小あるかもしれんが嫌がられるだろ「あんな条件」を出したら』
「……マスター、その話は知らないのですが」
『私も聞きたいな、エヴァンジェリン』
『ん? あー、大体アレだ、ぼーやの「赤ちゃん騒動」の時のほぼほぼ原因だ。
なにせそこの二人の結婚のときにもめにもめた結果出した条件が――――』
「や、止めぃエヴァンジェリンッ! 今は仕事の方が先じゃろッ!
えーっと、ムラクモ・ルラクモ・ヤクモタツ――――」
「逃げたわー」「逃げましたね」『逃げたな』『そんなに都合が悪いのか?』「赤ちゃん騒動……」
木乃香さんと刹那さんが、しらーっとした目で旧学園長を見ていますが、咳払いをして旧学園長は「魔法陣の起動」に入りました。「学園内の六ケ所」に設置された「本魔法起動専用の」端末によって制御されていますので、多くの詠唱は必要ありません。
「ふぅん、何やこの感じ、ちょっと懐かしい?」
「ですね。…………いえ、懐かしいと思っていると色々問題がありそうな気もしますが」
「――――っ」
何やら感想を言い合っているお二人と学園長の間に立ち(飛行していますが)、私は両腕の装備を展開して構えます。そんなこちらの動きを見て、慌てたのは木乃香さんでした。
「あ、待って待って、大丈夫やって~。見学っていうか、最後まで見てスッキリ帰りたいだけやもん。ウチら今日、もうお仕事あらへんし。
デュナミスはんは『トイレの小夜子ちゃん』に『召還』されてあっち帰ったし、追加のお仕事も『ネギ君』っていうか『ヨルダ』はんから来てへんし。なー?」
「う、うん、そうなんだけど……、そういうことあんまり言っちゃってええんかな、このちゃん……」
「これくらいはネギ君なら大目に見てくれると思うんやけど――――」
『――――ということは、お前たちも「あの後」、そういうことになったということか。行方不明で処理されてはいるが、まだ……』
マスターの声に、二人は悲しそうな表情になりました。
「……ゴメンなー。結局、ネギ君助けることも全然できへんかった」
「済みません。あれだけ大口を叩いておきながら……」
『いや、良い悪いの判断は一旦置いておこう。ある意味そのお陰で、アイツの猶予が延びている可能性もあるからな。
……お前らが妙に「使徒」のくせに自由度が高いことにも色々言いたいが、木乃香とまとめて取り込まれたと考えると、納得はできるしな。大方、お前の魔力量が多すぎて強く「
「おぉー、流石エヴァちゃんやん!」
「……皆さん、アレは?」
言われて、私たち全員は刹那さんの指さす方向を見ました。
――――世界樹が、光り輝いています。
そして、うずまく魔力は「黒」から「白」へ――――。
「…………もともと、あの娘を『ここ』に導いたのは儂じゃ。娘が既に祟神の類へと『神変』しようとしとるのは察しがついたからの。せめてその影響力を世界樹と統合し、マイナスの気を学園全体に散らして『良くないもの』を少しでも除いてやろうとしていたのじゃが、その流れで随分前から目を付けられておったようじゃの。
じゃから、ある意味あの娘から抜け出した『良くないもの』は、世界樹を起点に麻帆良を覆いつくしとる」
「大戦犯やん、お祖父ちゃん。龍宮はん、代理とはいえ苦労かけるわー」
『いや、あまり気付いていなかったから苦労していなかったことになってしまうんだがな。そういう意味では、ザジと刀太君たちに迷惑をかけたってことになるな今回』
『…………』
旧学園長への当たりがやや強めですが、彼は「フォフォフォ」と軽く笑って流しました。
「じゃからこそ、以前『超クン』が使用した強制認識魔法の陣が有効となるんじゃの。属性が陰の気であれ陽の気であれ、術師が使ってしまえば問題は無い訳じゃ。『神』という形で形成されとったから手出しはできんかったが、世界樹に滞留する無数の魔力という形になってしまえば、後はこっちのもんじゃ」
「ですが、それだけだと私たちの下準備だけでも、根本的解決にならないのでは? 既に神としての水無瀬小夜子のベースが出来上がってしまっている以上、消費したものはいずれ『補填』されるかと―――」
「――――じゃから、まあ気休めではないが。陰の気の者たちにも、少しは納得してもらう形で使うんじゃよ。そうすることで、そのカミを、奉り、鎮めることに繋がる」
集まった魔力は、やがて光を放ち、分散――――。麻帆良中に散っていくようなそれは、麻帆良だけではなく「全世界」にも同様に散っていることでしょう。そう計算してAI葉加瀬が術陣を用意したそうなので、そこは信じます。
『短時間の突貫だったから、結構無駄多いんだけどもね~。超さんの手直しありきな所、大きいよ?』
分散した魔力は、私たち皆に降り注ぎ――――そして、私の「心」でも、それは感じ取れました。まるでそれは、桜の花びらのように――――。
「……この日常は多くの屍の上にある。いつ何かの拍子に壊れても不思議はない。だから、想い続けろ、ですか」
「それで死者が報われるという訳でもないじゃろうが、少なくとも『繰り返し』は少しくらい減っていくじゃろう。潜在意識に刷り込んだ上に、特に生徒たちは『忘れようがない』思い出じゃろうからな。
――――死を想い、死を悼み、死を忘れず、死を祓う。これぞ、麻帆良式追悼の儀といったところじゃの」
フォフォフォフォ、と笑う旧学園長に、しかしこの場は、誰も反論しませんでした。
世界樹の下で――――彼らの戦いも、そろそろ終幕のはずでしょうから。
※ ※ ※
最初にキスありき。キスはラブと共にあり、ラブはコメディであった(ラブコメガバガバ旧約性書より(適当))。
いよいよもって腹を括った三太が水無瀬小夜子に口づけをし、魔法陣が正しく起動すると。おおよそこちらの推測通りというべきか、彼女の死に体な全身が光り輝き、魔力の奔流が巻き起こった。それにより周囲の靄の「一部が」彼女の内側に引き込まれ、それ以外は霧散していくような形で、青空が時折垣間見える。それにともない、最低限のヒビだけは目に見えない形になり、まるで「只の死体」のような状態まで落ち着いた。
声は、聞こえない。私には聞こえないのだが、それでも九郎丸たちはどこか感じ入るようにその散っていく軌跡を目で追っている。
『――――凄いですね、これは。…………捨て台詞だけ吐き捨てて去っていく人もいますけど、忘れないでって言って、去っていってます』
「はぁ…………」
――――――――――――。
ちくわ大明神――――。
「いやだから誰だよッ」
声だけだと「若い頃の」春日美空のような女性っぽいものに聞こえるが、まぁ一瞬しか過ぎ去らないし正体は不明である。不明なものは不明でいいだろう、流石にこのギャグ枠なのか何なのかが後々関わってくることはあるまい。というか関わってくるべきではない(威圧)。
視界が晴れていくにしたがって、水無瀬小夜子の周囲に三枚のカードのイメージが投影される。
十二単衣に鏡一つのアーマーカード、某妖怪ポストな大先輩(婉曲表現)のおネコな娘さんっぽい恰好で媚びてる? ような可愛らしいコスプレカード、うっすらオオカミっぽいいじわる顔なスカカード。……いやコスプレとスカで属性食い違いすぎでは? 一体誰の趣味だ……。
「こ、これ、どーしたら良いんだ?」
三つのそれらが一つに束ねられ、背中に黒い六枚羽を生やした水晶に手を翳す、ニヒルな感じのネオパクティオーカード(背面がブルーな仮契約カード)になるが、そういえば「本来は」主側から使うのが正しいのだったか、通常の仮契約カード含めて。
まぁ細かい呪文はわからないが、おおよそのニュアンスが一致していれば召喚はできるだろう。とりあえず関連しそうな呪文を教え、何をするべきかも耳打ち。
「ホントにそーゆーのでいいのか? えっと、じゃあ……。
パートナー・水無瀬小夜子……。我に示せ! 秘められし力を――――」
言いながら仮契約カードを構えると、カードそのものが水無瀬小夜子の胸元の手前へ吸い込まれ、青系に光る球となる。それに伴い、三太と彼女の周囲には三つの光が現れ、ぐるぐるとまるでルーレットがごとく回転する。
マジでか、みたいな微妙に驚いた顔をしながら、三太はその青い光の中に手を伸ばし――――。死体のような水無瀬小夜子が、わずかに身じろぎ。気のせいでなければ頬が赤く、少し「ヘン」な風に魘されているように見えた。
何だろう、「体内の気」に直接接触でもされているせいか、リアクションがこう、ちゃんと「ネギま!?」での描写に寄っているように見えるような、そうでもないような…………。
「これは…………、相当えっちなのでは?」
「あ、わわわわわ……」
「外からやられるとこーなんのね、コレ……、えっ? 尊厳っていうか、人権侵害じゃない? 嘘でしょ? 衆目監視でやったら完全にアレじゃないのっ」
『…………』
あと後ろの声も声で果たして一体どう答えるべきなのか。キリヱはキリヱで真面目にツッコミを入れてるし、九郎丸は九郎丸で水無瀬小夜子の微妙な乱れっぷりに動揺。ディーヴァはひたすら無言で観察しており、夏凜はアンタがそれを言っちゃおしまいだろ(残当)。
「――――
・SAYOKO MINASE
・DIRECTION: West
・GUARDIAN: Othala
・ASTRAL: Gemini
・SYMPARATE: LXXXIX
・EQUIP: "MIRROR" Second of Trinity
・RANK: Priestess of HIRUKO
・P-No: 72
・CODE: 1 9 8 8 1 9 9 1 0 5 2 9
引き抜いたカードは、流石に空気を読んだか十二単衣の水無瀬小夜子のもの。そして発動と同時に彼女の身体が浮かび上がり、一瞬で光り輝いて変化する。そしてその頭上には、古い古い金属の鏡。光こそ反射するが実像までは映さないそれ。
着地した彼女は、うっすらと、目を開ける。
「――――――――本当に、なんとかしちゃった」
「小夜子……」
「なんとか、なっちゃったんだー、……ッ」
驚きながら、目をも開きながら、そして彼女は三太に抱き着く。三太も水無瀬小夜子も、延々とその場で泣き続けた。
それに何も言わず、私は数歩後ろに――――と、夏凜が両肩を掴んで少しだけ抱き留めるようにした。
「…………まあ、何にせよといったところでしょうか」
「そうだと良いんスけどね」
「あれ、なんで――――?」
九郎丸の声に、この場の全員が世界樹を見ると。世界樹はまるでいつかのように発光し、その上から花火のように、光が、「闇を交えた」光が散り、拡散する。
「………………後始末とは、こういうことですか。雪姫様」
「……まあ、もともとそういうのがスタートなんだから、そういう話よね」
「…………」
ん? と思わず頭を傾げてしまいたい。あの光に一体何の意味が? とちょっと聞きたいのだが、どうやら例によってというべきか、その光を見た人々の心の中には、何かしらメッセージじみたものが残されたらしい。ひょっとして「ネギま!」において超が行おうとしていた「強制認識魔法」関係の巨大な仕込みか何かか? おそらくはアマノミハシラ……というより、麻帆良全域限定なのだろうが。
『この痛みを想い、忘れないでくれ、ですか。…………これも、愛?』
「愛っつーよりは人類愛なのかね」
「やっぱり、まだまだ私には難しいようですね。……おや? ん、そうですか。それではまた、刀太くん」
ディーヴァのささやきに適当に答えると、ふと彼女の姿が見えなくなる。ラスボスあたりに回収でもされたか? と思ったが、そもそも彼女の肉体は死んでいる訳で、死霊が大量にあふれていたこの場でもない限りは、ずっとそのままで居ることは出来ないとか、そんな理由だろうという「感覚があった」。なまじ3ーAの「さよちゃん」のような例が特殊なのであって、普通は怨霊やら悪霊やら強力な思念と力がなければ、単なる未練だけではそう上手くはいかないということか。……いや、また、と言った以上はおそらく復活の確信は持っているのだろうが。
そしてそれは、ほぼ抜け殻となった怨霊「だった」水無瀬小夜子にも言えることで――――。
三太と抱き合う水無瀬小夜子の身体は、段々と光り輝き、透けていっていた。三太を押し返して、寂しそうに微笑む彼女。三太は、涙が止まらない。嬉しさのそれが、困惑と、わずかに察する悲しみのそれになっている。
「小夜子? お前、何で――――」
「あー、大丈夫、だいじょうぶ。消滅とかじゃないから。何て言ったらいいかな? こう、『霊的に』ちょっと上がっちゃったから、このまま『此処にいられなくなっちゃった』っていうのが、正解なのかもね。……恐怖という形でも人の心に爪痕が残っちゃったから、結果的にそれが『神サマ』に祀り上げられるきっかけになっちゃったのかな?」
「意味わかんねーって。せっかく、お前に巣くってた連中、全部いなくなったんだろ? なんで、お前、また居なくなりそうな感じなんだよ――――」
「…………その、何っていうかなー ……、ご迷惑おかけしました。他にもいるかなって思いますけど、時間ないんで、これでご勘弁くださいっ」
いつの間にか「三太の腕の中から」移動し、彼女は三太の横で、私たちに頭を下げていた。
各々、それぞれに困惑こそあるが、…………キリヱはそれを見て苦笑い。「まぁ、あんまり言いはしないわよっ」と諦めも入り混じったような、だがそれでいて眩しいものを見るような目だった。今回のことで間違いなく、一番心をすり減らしたのは彼女なのだ。何か文句を言っても罰は当たるまい。だが、それでもキリヱは見送るだけを選んだのだ。ならば私からどうこう言う話でもないだろう。
……それはそうと、
「(………………弾かれるの。たぶん、彼女の魂のキャパシティが、今のセーブデータの量とかに耐えられないレベルなんじゃないかしら)」
なるほど、つまり「現在の彼女」のデータ量自体が、レベル2の一度に使用可能なデータ枠を超過しているということか。夏凜のように「外付け」と言う訳ではなく、本人「そのもの」が確かにゲームならデータ量の多そうなものではあるし、仕方無いと言えば仕方ないのだろう。
振り返って彼女の両肩を掴んで「まだ何か方法あるかもしれねーじゃねーか!」と泣く彼に、彼女はその両頬に手をそっと添えて。
「ワガガマ言っちゃ駄目よー? 三太君。本当だったら『私』が耐えきれずに消えちゃうところを、『偶然』こうなって『消えない』ことだけは出来たんだから。『少し』の『長い』お別れくらい、我慢しないと」
「だけど、お前、ようやく気兼ねなく、一緒に居られるって思ったのに――――」
「…………うん、だから、大丈夫。だって私が居なくたって、近衛刀太たちみたいに、信用できそうな人たちだっているんだよ? 今の三太君なら。
その上で、おまけに私だってついてるんだから。――――そういう泣き虫で、ギリギリまで優柔不断で、でも結局頑張っちゃう人の良い所、大好きっ」
「……俺も、お前のそういうズケズケ容赦のねーところ、意外と、嫌いじゃねーぜ?」
「そこはストレートに好きと返すべきでしょう佐々木さ――――」
「いやそこはそっとしといてやれって、夏凜ちゃんさ――――はいぃッ!?」
「――――んんっ?」
思わず彼女の口元を片手で押さえようと手を振りかざすと、それをしれっと避けて「立てていた人差し指」を軽く咥えて舐めて来る夏凜は一体何を目指しているのだろうか。アレか? ディーヴァ相手に色々と対応が甘かった(?)のを「矯正」でもしようとしていらっしゃるんですかね……?(震え声) 幸か不幸かキリヱと九郎丸は水無瀬小夜子の方ばかり見ているし、彼女の頭上の鏡は光を…………、光?
夏凜から指を引き抜きつつ、観察する。水無瀬小夜子の頭上にあった
「来てくれて、本当、ありがとうね? 三太君が来なかったら、たぶん、ずっと眠ったまま私、消えちゃってた――――」
動揺する三太の唇を、目を開けたまま奪った水無瀬小夜子。
途端、三太の周囲に現れる三枚のカード。それらはやはり先ほどと同様のイメージで一つにまとまり、三太の手元へ。いや、何というか今回に関してはパクティオー関係のガバは放棄だ放棄(諦観)。
「お前、コレって……」
「へへーっ、これで『絶対逃がさない』からね?」
すぅっと、そして水無瀬小夜子の足が地面から離れる。それと同時に、全身の透け方がさらに激しくなり、やがて空気のように消えていき――――。
「………、小夜子! ――――」
「バイバイ、三太君―――――またね‼」
「――――っ、お、おう! また、いつか!」
そう言って、姿を消した彼女は。――――街に、風が吹き、光の欠片の桜吹雪が舞う。
それを見送った三太はその場で、泣き笑いのまま拳を強く握り。
――ちくわ大明神――――。
「(いやお前は成仏するか自重しとけッ)」
思わず小声で、どこかから聞こえる空気を読まない怨霊(霊魂?)の一言を牽制した。お前、そういう所やぞ少しは真面目に亡霊やっとけッ!
ネコ目をして「いやー私こーゆー空気超苦手だわー」とでも言わんばかりの霊魂「ちくわ大明神っ」
※すみません、感想祝1000件超のアンケは明日に回します汗(キリが良いので)