光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ
遂にあ奴、正式登場? そして新たなるチャート崩壊の音・・・


ST125.風穴から天鎖す

ST125.the World is Wonderful Woe Wide

 

 

 

 

 

「一応整理っていうか確認したいんだけど、アンタのお爺様ってネギ・スプリングフィールドよね? 『偉大なる魔法使い(マギステルマギ)』、『現代最後の指導者(ラストテイル・マギステル)』の人…………、って何やってんのヨ、夏凜ちゃんッ!」

「肩枕ですが」

「そ、そうですよズルいです!」

「み、皆大人です……」

「く、くゥ……、せめて今日、次は私もッスよ! 夏凜さんっ」

 

 キリヱの確認に適当に応じながら、端的に言って私はメンタルが死んでいた。

 先ほどの龍宮隊長からの依頼、その詳細説明を受けてグロッキーである。当然のようにそんな私の内心を見逃す夏凜ではなく(だから何故判る)、会議後に表に出て駅前の喫茶店、座席でフラフラとしていた私の頭を自分の左肩に乗せて、時々はちみつメープルカフェラテに追加でガムシロップ投入という激甘カフェラテのストローをあーんするように持ってきていた。特に応対できるテンションではなかったためされるがままになっているが、周囲のこの謎のテンションは一体何だというのか。三太と一空はしれっと席を変えてるし、九郎丸はわざわざ近くに来るために立ったままホットドッグ食べてるし、キリヱはテーブルに乗り出してるし、マコトに至ってはちょっとだけ私の反対側の袖の裾をつまんで引っ張ってるし。可愛いじゃねぇか(白目)。

 

 なお忍除く犬上一族は「少しやることがあるから帰るよ」と、特に釘宮は胃の辺りを押さえて退去していった。妥当な判断である。どう考えても厄介ごとの気配だ。

 とりあえず収拾がつかないので体を起こしてカフェラテを飲み干し、マコトをかやの外にしない程度に情報の整理をしていく。ネギ・スプリングフィールド。現代の偉人、宇宙開発からNGO参加、禁止されている特殊兵器が使用される戦争における該当兵器の無力化、魔法論文などなどその実績は多岐にわたるが、表向きになっていないものが渦の七人(ボルテックスセブン)ないし七人の侍(サムライセブン)、後のUQホルダーの前身組織を作ったことである。このあたりは雪姫から直接明言されたことはないが、状況証拠やら敵の証言やらが色々揃ってきたことによって結果的に断定できる状態だった。

 なお、それを聞いて目を輝かせる忍とマコトである。

 

「――――――――」

「いや、えっ、でもマジッスか…………、某ジャーナリストの朝倉さんが書いた『偽典・英雄一代』『英雄一代道半ば』とか読んだことあるし、私の学校とかでも名前出て来るし、っていうか魔法アプリの詠唱省略とかの基礎論文書いてたのもネギさんだし、うぇーッ!」

「その話し方は色々と女の子としてどうかと思うわよ、マコト。

 しかし忍、大丈夫かしら。ちょっと情報の多さがキャパオーバーして軽く自失してるわね…………」

「で、そのお祖父様も今回のトーナメントにエントリーしてるのよね。表向きっていうか、法的には死亡扱いになってるんだけど、一応は生死不明の延長でそうなったやつだから」

「そーゆーことッスね。で、えーっと何? 今回の薬物のやつ。『幻灯のサーカス』だったっけ……、使うと使用者を最も幸福な記憶に閉じ込める魔法薬物で、通常は小型の使い切り巻物(スクロール)形式で取引されてるってやつ」

 

 幻灯のサーカスは、原作で言うなら既に登場している「ザジ・レイニーデイ」がおそらく二人とも(ヽヽヽヽ)使用する魔法具(アーティファクト)である。実体がないタイプの魔法具で、発動と同時に光が周囲を包み、対象となった人間を深い眠りの世界へいざなう。そしてその当人を魔法的に計算されつくした幻想空間(ファンタズマゴリア)へと誘導し、そこで幸福な時間を体感させる。当人にとって逃れ難い幸福、理想の世界――――夢がベースである以上、それはほぼ何であれ叶ってしまうのだ。

 魔法構成自体の方向性が本作ラスボスのやろうとしていることと合致しているため、その疑似的な体験という説明でも用いられることがあるが。この魔法は本来、脱出方法が設定されている。使用者によってまちまちだが、かつてのザジは「とある言葉(フレーズ)」に。もっとも自力でそこに至ることが出来るかは当人たち次第であり、発動者の意志ひとつが匙加減というところも大きいだろう。

 

 そして情報をもらった「幻灯のサーカス」についてだが……、はっきり言って劣化品である。

 ただ劣化品だからこそ性質が悪く、魔法アプリ感覚で取引されている実情がある。

 

「時間制限付き、使用すると幸福な世界にとらわれるけど……、依存性が高すぎてオーバードーズして目覚めない人間も多い」

「ウチのところはお嬢様学校だったから? そーゆーのはほとんどなかったけど、噂ではちらほらと。帆乃香ちゃん詳しいッスよ、そーゆーのは」

「謎の事情通っぷりッスねアイツはまーた……」

「いや、というか学園都市でチラホラ出てきてるって拙いよな? っていうか俺とか、使われたらヤベェ気がする……」

「大体今の時代はそうでしょう、佐々木三太。私たちとて否定は難しい」

「アハ? 確かにねー。僕だって内に抱えてる悲しいこととかも色々あるしね」

 

 一空自身は経済的に恵まれた家庭環境だろうが、おそらく現在の本来の肉体は動かすことすら出来ない不遇を負っているだろう。ならば彼も、本来ならそのまま大人になれた過去が幸福なビジョンとして魅せられるかもしれない。

 それこそスラムのルキだったり……は大丈夫かもしれないが、こういうのは誰がどういう地雷を抱えているかわかったものではない。怒りの感情も悲しみの感情も誰しも強く振り回されているのであって、そこを想像しないで色々と言うと別種の問題が起こることも多い。さほど仲良くなく信頼関係ない相手から注意された会社の部下が、言う通りにはするがその先輩や周囲への信頼感、安心感が無くなってしまうようなことになっても、本人に自覚なく陰口を叩き続けるような場合もあるのだ。ある程度の適性とかはあるだろうけど、そういうのは角が立たない程度に気遣い、自分が相手を気にかけてると信頼関係が形成された時にしか有効じゃなかったりと言うのがままある。一概にズケズケと心に侵略するのは良くないが、だからといって相手のことなんて本当にわかるかどうかは、物事の感じ方含めて全然違うのだ。違うからこそ角が立たないようにするなど手段は存在すると思うのだが……。

 

 つまり何が言いたいかと言えば、そういった個人個人が抱えているものが極まった今の時代においては文字通り劇物的なシロモノである。

 

 時間制限付き、というのはおそらく医療用を前提として設計されたからだろう。だからこそ、麻酔として意識を失う以外の用途で使えばそれからは逃げ出せない。その幸福な世界は、たやすく人の心の壁を溶かして、底に引き摺り込み…………、そう言った状況になるまで元々追い詰められていた魂をこそ、荒御魂に近づいた彼女、水無瀬小夜子の内に取り込ませていたのだろう。……なんとなくテ○ガ(光であり人である)テレビ版の終盤に出てきたアレを思い出すがさておき。

 

 そう、これは前回案件の引き続きなのだ。ゾンビウィルステロ改めダイダラボッチ事件。まだ終わってなかったと言う事実から軽く目を逸らしたいものの、当事者たる小夜子本人がいないのでどうしようもない。そうなると私としても取れる選択肢は多くなく、単なる延撚として、再発火する前に処理したいのが現状である。

 

「で、まー行方不明の祖父さん……、聞く限りなんかヤバそーなことになってるっぽい祖父さんが関わってるとなると、例のなんか悪の魔法使いの組織っぽいアレとなんかあーしてこうしてしてそうなのの捜索も、コレ対処しながらなら出来るってことだろ?

 まぁオーダー二つだけど、どう考えても麻薬対応の方が優先度高いんだよなぁ……、ままならぬ」

 

 

 

「――――まぁ、そう気負わずとも良いぞ。

 せっかく大会に出るんだ、楽しんできたら良いじゃないか」

 

 

 

 !?

 

 全員、私の背後からかけられた声に驚く。いきなり現れたと言うより、小さくてそのシルエットを識別できていなかったと言うべきか。マコトあたりが「また分身ッスか? また分身ッスか!?」とか言っていたが、それはともかく。雪姫……ではなく完全にエヴァちゃんである。細かいディティールは若干異なるが、旧麻帆良学園本校の見覚えしかないブレザー制服を纏ったエヴァちゃんが、ちんまりと腰に腕をやって威張るように薄い胸を突き出して笑っていた(命知らず)。

 

「っていや何しに来てるんだよカアちゃん……」

「ほ? ほほ、本物ッスか! え、だって昔作ったって姿と同じ……? 刀太君のお義母さんって、あの超絶美人さんッスよね?」

「ま、ざっとコレでも七百歳くらいだからな、それくらい融通は利く。

 ちなみに本校通いだったから、一部の連中からすれば先輩になる。

 確か、OGってやつだな、うん、つまり丁度こんな感じだった訳だ」

「そんな理由で子供版なの雪姫アンタ……(やっぱり可愛いじゃないッ)」

「雪姫様、何用で!?」

「仕事、だよ。

 まぁお遊び企画の前にお前らを労いはしたが、後を引いているモノがあると言われてはな。

 薬物のベースになった『魔界の魔法』自体は知り合い経由で調査中だが、もう一つな」

 

 もう一つ? と聞き返す九郎丸に「嗚呼……」と遠い目をする。口は笑っているが、その視線はどこか遠くを見ている様で……………。

 

 

 

「……君が持っていると龍宮真名に聞いて来てみれば、一体どう言う状況だこれは」

 

 

 

 そして実に本日二回目な表情筋の活動停止である。

 夕暮れ時にスーツ姿のフェイトはまだいい、原作イベントの流れがあるからまだ理解できる。問題なのは…………、その彼の腕を組む女性にある。

 

「――――お? あ、マジで刀太や! うん、この間は一瞬やったし、ちゃんと見るんはホンマ久々やなぁ」

 

 艶やかな黒髪、ロングヘアに少し疲れた様な目元はしかし娘よりは理性的というか知的な印象をこちらにもたらしてくる。服装は木乃香譲りなのか中々ファッショナブルの秋コーデというべきか。見た目だけで言えば十分二十代で通じそうで、もっというとおまけに見覚えがあった。見覚えしかなかった。

 

「お、母さん……? ままならぬ」

「あ、やっぱ『昔みたいに』そう呼んでくれるんやね……って、何やそのヘンな表情」

 

 目の前の彼女、近衛野乃香は私の顔を見て少し困惑していた。

 

 なんか余計なのいるぅううううううううううううううううう――――!?(失礼)

 

 おそらくは何かしらのフラグとフラグが折れたり立て直したりした結果のチャート崩壊な一種なのだろうがいやちょっと待て! 余波が……、余波がデカすぎませんかね前回の事件のさァ! そりゃ五万回以上巻き戻したら色々おかしなことになるだろうけどさぁ、もうちょっと手加減してくださいよ無敵の時間ジャンプでキリヱ大明神様ァ! 原作だと多分遭遇すらする暇なく時系列ジャンプしてたろコレどーなってんだよホントもーさぁ!(大号泣)

 

 誰か助けて……、タスケテ……。

 

「ぬ? 本当にどうしたお前、刀太。

 というより何でお前までついてきたバカ娘、話がややこしくなるだろうが」

「えー、もうそんな邪険にせんといてよ、友達やんか雪姫はーん。って、ちびっ子姿はめっちゃ久々やん! あーもー可愛いわ、ええ匂いっ」

「やめろ、ええぃ引っ付くな!」

「あーアカン、こう可愛いの見とるとウチもアレな意味で二刀流に目覚めてまいそうやな……、って、流石にアカンわな。刹那お婆様の二の舞どころの騒ぎやないか。でもまぁ可愛いことはジャスティン!」

「普通に意味がわからんぞ相変わらずだなお前……、というかフェイト、お前止めろいい加減!

 コイツの管理はお前だろ一応! 

 何を視線逸らして素知らぬ顔で自分はさも無関係だと気取っているのだ貴様ァ!」

「…………」

 

 冷や汗でもかいていそうなフェイトから離れて「大丈夫え?」とこちらを気にしてくるお母さんだったが、その登場に思考停止していた周囲が我を取り戻して目を見開く。なお雪姫は腰に抱いてわっしょいわっしょいしたままなので(意味不明)、当の本人は不機嫌そうだった。

 

「「「「お母様!?」」」」

「あれ? 三太君どうしたんだい、目を逸らして」

「い、いや、普通に美人すぎて見てたらなんか小夜子に怒られそうな気がして……」

「お母様ですか、しかし雪姫様へその気安さは少々いただけません」

 

 ストップ、と言いながらエヴァちゃんからお母さんを引き剥がして(首根っこ掴まれたウサギみたいにブルブル震えてる)、ついでとばかりに私の頬にノーモーションでキスしてから(!?)野乃香をフェイトの方に押し返した。ぽす、と一応は受け止めるフェイトに、お母さんはこう、なんとも言えない感じで嬉しそうな表情だった。

 

 そして九郎丸、この中で三太に続いて彼女の顔を写真で見ているからこそ、彼女はお母さん相手でも納得した表情であった。

 

「お母さん……、センパイのお母さん……!」

「そ、その、初めまして! 時坂九郎丸です、刀太君とは熊本からの付き合いで――――」

「って何どさくさに紛れてアピールしようとしてるのよ九郎丸! アンタそんなアグレッシブだった!?」

「あ、あばば、帆乃香ちゃん大きくなったらこんな美人なるッスか…………、ヤベェッス」

「いやあの、何でキスしたんスか? バレない程度に一瞬で交わした感じッスけど(震え声)」

「必要かと思いましたので」

 

 何故か上手い事バレてない夏凜に動揺する私だったが、それはそうとして我先にと女の子たちに群がられてる「お母さん」は愉し気に笑っていた。

 

「あらー、なんやえらい愉快なことなっとるなぁ」

「お前のせいだろうが元凶。

 お前のせいだろうがこのバカ娘」

「小さい頃から君は空気を破壊することにかけては天才的だったかな…………」

「まぁでも今日の主役はウチやあらへんし、今日はフェイト君の付き添いえ? ほな、雪姫はんに言わんと言わんとっ」

 

 どこか楽しそうにフェイトの背中を押す彼女。酷い頭痛に襲われたかのように頭を抱えたフェイトは、しかし頭を左右に振って「まあ本題はそこじゃないからね」と気を取り直した。

 …………ちょっとだけその疲れた顔に親近感が浮かんだのは内緒である。

 

「雪姫、いやエヴァンジェリン。ネギ君の『まほら武道会』エントリー申請の封書、君が持っているのだろう。僕にも見せてくれないだろうか」

「ふん」

「い、今更だけどフェイト・アーウェルンクス……ッ!」

「落ち着きなさい九郎丸、あとキリヱもカードを出さない。貴女それ戦闘用ではないでしょう――――」

「だから逃げる準備よッ!」

「おっと、僕も面識はないんだよねぇ彼」

 

 野乃香から意識が移りやや慌ただしくなってはきたが、それはそれとして私は私で疲れた様子ながらもどこか楽しそうに微笑む彼にどうリアクションしたものかというところである。

 

「近衛刀太君、久しぶりになるかな。もっとも僕の方は帆乃香たちと話した時に聞いたから、あまり久々と言う気はしないけれどね」

「まぁスラムから考えたら二月? 経ったか経ってねーかくらいッスからね」

「存外落ち着いているな、お前……」

「いや、流石にカアちゃんとかお母さんとか『両方いるのに』襲い掛かってはこねーだろう的なイメージが勝手にある」

 

「おぉネギ君みたいなこと言うなぁ、ウチの刀太」「ふ、ふん――――」

 

「否定はしないけれどね。しかし…………、結果として『アレ』は君の判断が正しかったと思う。そこは礼を言っておこう」

 

 軽く頭を下げるフェイトにそんなの要らねーからと返しておいた。実際問題、フェイトもこの場で抗戦するつもりはないらしく、前に七人の侍(サムライ・セブン)同窓会的なのを企画したところから状況はあまり変わっていないのだろうと推測できる。

 なおエヴァちゃんに関しては戦闘的な意味合いでだが、野乃香に関してはまた別な理由からだというのが、何故か私には判った。このあたり、前回の事件で統合された「滅んだ世界の私」の経験が若干フィードバックでもしているのだろうか。

 

 ともあれ原作通り? にエヴァちゃんが取り出した封筒、その口を開けて中を見ると、案外達筆とも言えないイタリックな英字が署名欄に踊っていた。

 それを後ろから覗き見るフェイトと、空気を読まず横からひょっこり顔を出して覗き込むオシャレさんな「お母さん」。

 

「指紋、DNA、残留魔力から『ぼーや』に違いはないとは思っていたが……」

「間違いないね。二千年代初頭、よく彼とは色々なサインに署名をしていたことがあるけど、その字体とも違わない」

「はえぇぇ……、でもサインだけやと、エントリーはできへんやない?」

「いや、そういう意図じゃねーだろたぶん、こーゆーのはさ、お母さん…………」

 

「……って、と、刀太君までどうしてそう仲良く一緒に見てるの!?」

「そうよ! ちゅーにのお母様とかで色々誤魔化されてたけど、そいつ前に刀太とかを回収とか言って殺そうとしてたんじゃないわけ!? 報告書とかでしか知らないけど!

 状況はよくわかんないけど、説明して欲しいわ!」

 

 絶叫するキリヱたち。なお夏凜は私の様子を見て何度か謎の首肯を見せているが、いやだからアンタ一体全体何にどう納得してどういう立場での振る舞いなんだそれは……。そんな状況にわずかに気づくのが遅れるエヴァちゃん。ネギぼーずの筆跡をゆっくりと、愛おし気に撫でる姿は原作からそう変わりない仕草に見える。

 ということは、ここにはきっとガバはないはず。ヨシ!(???「随分役に立たない現〇猫が居たものだ」)

 

 なお後方で情報量の多さにパンクしたらしい忍に「あー、大丈夫、大丈夫ッスよー」と介抱しているマコトの両名の姿がなんとなく癒しだった(現実逃避)。

 そして、流石に何も説明しない訳にもいかなくなったエヴァが口を開こうとしたとき――――――――原作の歯車が回り始める音を聞いた。(???「きっと錯覚だよ」)

 

 

 

「――――師匠(マスター)

「お前らにも少なからず……、何?」

 

 

 

 次の瞬間、この場の全員がまるで荒野の果て、夜の荒れ果てた大地に投げ出されたような、そんな錯覚をする場所へ――――頭上に青く巨大なナニカがあるが、ここまでは原作通り。現在ネギぼーずが苦しんでいるだろう「月」か「小惑星」の表面、赤い大地そのイメージ映像である。

 

「フェイトも、久しぶり」

「ネギ、君……?」

 

 振り返った先、そこには特になんら問題なくネギぼーずとナギ・スプリングフィールド、私からすれば曽祖父にあたる彼の姿もそこにあった。恰好もこう特に原作と変化している部分もなく、嬉しい限りである。本当に(血涙)。(???「ガバがないだけで情緒ぶっ壊れているところ悪いんだけどねぇ…………、ハァ」)

 

「ぼーや、ナギも……」

「フフ……、お元気そうで何よりです、師匠(マスター)

 

 一体何の目的でこんなものをと慌てて駆け寄ろうとするエヴァちゃんの姿、助けを求めているのかと焦って問い正すフェイト、それに否定をするネギぼーず。こう、その…………、うん…………、感無量なのだ。何もしなくてもこう安心して見られる。ちょっと泣きそうでもあるが、そんな私の頭を撫でる相手が一人。夏凜のよりも少々力強く強引さを感じるそれに上を見ると、野乃香が「なんや、寂しいんか?」と優し気に微笑んでくれていた。

 ちょっと一瞬、大河内アキラの「おはよう、ネギ君」って言う感じの笑みが脳裏を過ったが、何だろうこの妙な感覚は。

 

 ――――そして、現れる。ネギぼーずとナギの足元、両者の「繋がった影」より現れ出るそれは…………。

 

「はい?」

 

 それは、おそらくヨルダ=バオト、つまりは本作におけるラスボスであるはずなのだが、私にはそう見えなかった。

 

 只ひたすらに、ヒトガタに結集しただけの真っ暗な何か、そこに浮かぶ両目が、私を射抜き――――。

 

 

 


 

「嗚呼、もはやこれしかないのだろう。すべては私の、私一人だけの罪」

 

「だからこそ、今こそ超えよう。いくつもの星が流れ、いくつもの月が巡りし果ての先――――」

 

 

 

「――――そう、『光る風を超えて』」

 

 


 

 

 

『――――ダメ、ダメだよ相棒! ダメだよ刀太君っ! 今、彼女に向かったら――――』

「……はい?」

 

 星月の声に気が付けば、ごく自然な動きで。私は黒棒を構え、その黒い何かへと振りかぶり、振り下ろし。

 しかし、その前にネギぼーずが立ちはだかり、黒棒を当たり前のように右手の指先で受け止めていた。

 

「そうか、貴様が近衛刀太か。…………フフ」

「…………大きくなったね、刀太君」

 

「はい?」

 

 そしてヨルダの一言よりも、ネギぼーずのその発言の方に頭が真っ白になり――――。

 

 

 

 彼が掌を少し回す、その1モーションだけで。私の全身は引きちぎられ、黒棒はそこを起点に真っ二つに「折られた」。

 

 

 

 

 




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