光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ!
 
ガ バ か ら は 逃 げ ら れ な い!(絶望)


ST126.興味なし

ST126.It’s not my problem

 

 

 

 

 

 てっきりイメージ映像のようなものだけだと思っていたのだが、幻想空間(ファンタズマゴリア)の類でもあったのだろうか。否、それだけではない。実際パーカー姿だった私の全身からは血が噴き出し、そして我が手の黒棒は――――。

 気が付けば喫茶店のオープンテラスで転がっていた私と、数歩引いている周囲。眼前には軽くへし折られた黒棒の刀身……、おや? 確かこの黒棒は血風を纏わせ撃ち出しても破損しないくらいには高密度の質量を持っている物体だったはずだが、破損したからといっても地面が陥没している訳でもない。思わずその先端を持ち上げてみるが重量は変わらず……、そして念のためダイヤルを少し操作してみたが、重量は一切変わる気配がなかった。見た目通りのサイズの鉄剣、おおよそ予想される程度の重量なので、色々黒棒本体についても何か知らない情報があると見るべきだろうか…………。

 

「刀太君っ!」

「ちょ、アンタ大丈夫なのちゅーに!?」

 

 九郎丸たちが慌てて駆け寄ってくるのに身を任せつつ、とりあえず私は先ほど視えた光景と現状とに頭がどうにかなりそうだった。

 

 さっきのあのイメージ……、宇宙空間を背景に、どこか涙声の誰かが何かを言っていたそのイメージ。特に心当たりがあるわけでもなく、さりとてその情景の正体もいまいち判然としない。少なくとも原作ではなかった描写に違いはないのだから、それは当たり前といえば当たり前だ。

 ただ続けて来た一連のモーションは、完全にネギぼーずが〇染(オサレ全盛期ヨン)様のそれでしかなかったので、やられはしたが多少なりとも精神的にはプラスであった(狂人の自己肯定)。我ながらだいぶ末期症状である。もっとも代償はあまりに大きかったので、結果的には完全にマイナスなのだが。

 

「黒棒? なぁ黒棒、おい…………。嘘、だろ?」

 

 もともとあの時、本人いわく「表に出て来た」とき以降、一切こちらの声にこたえることのなかった黒棒。もっとも重量変換機能自体は生きていたことなどから、何かしら製作者側が何か条件を仕込んだのだろうと思っていたのだが。刀身の破損に伴い、黒棒は本当にその質量変換の能力すら失ってしまった。

 見た目で言うと、つまり刀身が中程で折れた、切れない模造刀のような状態である。

 

 黒棒の本体があの精霊である以上、質量が超重量になっていないとなるとおそらく「死んではいない」のだろうが、壊れてしまった事実に変わりはない。相手の心配をするほどでは無いにしろ、率直に言うと大ピンチだ。

 

 現状、ただの血風はともかく、直接的な斬り合いをはじめ血風創天やらなにやら、攻撃手段はほぼほぼ黒棒を起点にしているのだ。死天化壮状態での高速戦闘など、黒棒がないとそもそも話にならない。斬撃として血風を使用する場合、やはり黒棒に対して血装術を使ってどうこうしないと、そもそも身体的な動きの速さで手元に凝縮した血など簡単に散ってしまい、威力も安定しないのだ。

 なんなら妹チャンことカトラスから血装術を使うなと言われた時並にピンチである。……回避専門と考えれば一見問題がなさそうにも見えるが、逃げてばかりとなるといずれ対策をとられてしまう。こういうのは適度に慣れない内に相手の想定外の一撃を、それなりの練度で続けて弱らせ続けることで初めて成立するのだ。

 

 ましてや現状、ディーヴァのようなこちらの動きにメタを張ってくる相手すら出てきている。直接攻撃手段の減少は、そのまま私の生存確率の低下につながり、つまり「痛い」話な訳である。

 

「ままならぬ…………、あっキリヱ。『戻さなくて』良いぞ。こんな所でまた負担増やす話でもねーだろ」

「ねーだろ、じゃないわよ! さっきから何自己完結してんのよ、このちゅーにがッ!」

「落ち着きなさい、キリヱ。こういう場合は……」

「あ、あの、二人とも、刀太君ちょっと落ち込んでそうだしホラ」

「――――はッ!? い、今のはっ」

「忍ちゃん我を取り戻したッスか……」

「…………って、トータ、大丈夫なのか!? その刀、めっちゃ大事にしてたじゃねェか!」

「おぉう、これはこれは……」

 

「あは~、人望というより、モテモテやな~。ネギ君もウチとか小さい頃、よー可愛がってもろたわ。なんとなくそんな感じやね」

 

 色々と考えることのある私とそれに応じてがやがやする周囲に、野乃香「お母さん」はたいそう楽しそうに笑っていた。ふと顔を上げると、視線が合う。にっこり微笑んでくる様は一見おしとやかで2080年代現在は崩壊した概念となっている大和撫子そのものであるが、だがそこにほんのり帆乃香と同種のそれを察知する私だ。こう、何か隙を伺って悪戯でもしようとしているような、そんな余裕のある微笑みである。

 一方、雪姫ことエヴァちゃんとフェイトは事情が異なった。しばらく無言になり、そしてこちらを真面目な顔で振り向く。フェイトはフェイトで私に近寄ろうとしていたお母さんの腕を引き、肩を抱きしめるように抑えた。なお借りて来た猫のような微妙なポーズとなるお母さんである。

 

「…………悪いが刀太、お前は大会を辞退しろ」

「はい? えっ、あー、ハイ」

 

 

 

「「………………」」

 

 

 

「えっいや……。

 それだけか、お前?」

 

 顔を合わせて、適当にエヴァちゃんの言葉に応じる私に、むしろエヴァちゃんの方が困惑必至であった。

 

「それだけかって言われても…………、もともと龍宮隊長からの斡旋って認識だけど、これは合ってるよな? カアちゃん」

「お前もアイツのことを隊長と呼ぶのか……、あー、まあ良い。認識上は問題ない」

「その状態で依頼を受けたけど、黒棒が『こう』なっちまったら、正直あんま戦力としてアテにはできねーだろ。それくらい自分の能力の見積もりは出来てる」

「そういえばお前、そういう所はドライというかシビアだったな熊本の頃から…………。だから辞退する、というより今のままだと仕事を受けられないということか」

「うん(素直)」

 

「「………………」」

 

「――――――――あはははははははッ! あー、なんや滅茶苦茶良い(えぇ)子やんッ! 雪姫はんの育て方の賜物?」

 

 と、私たちのやりとりを見てお母さんはお腹を抱えて大笑いしていた。フェイトもフェイトで私の素直すぎる反応には唖然としており、彼女を制止する余裕もないらしい。一方エヴァちゃんはといえば少し顔を赤くしながら「黙ってろこのノータリンがッ!」とウガーッ! とちびっ子めいた振る舞いで威嚇をしており中々可愛い。出来た子供の前では中々見せてくれない親の子供っぽさ全開ムーブであった。

 

 なお周囲も、私があんまりにもフツーに応対するものだから困惑が抜けていないが、さてそれはどういう理由からか。とりあえず近くに居た九郎丸に聞いてみると。

 

「えっと、刀太君その、結構ノリノリで大会に参加するって言ってたように見えたから……」

 

 なるほど、勘違いの源はそこか。

 どちらかといえば水無瀬小夜子のあの案件の延長上――――もっと言うとキリヱ大明神関係の延長上のつもりだったので、これに関してもチャート崩壊どうこうというのを投げ捨てて対応するつもりだったのだ。だがそうと判ってしまえば彼女もまた微妙な顔になるだろうし、そもそもそれをあまり悟らせるべきではないと私の中の何か「私ではない」経験値が言っている。既にキリヱいわくセーブポイントは5つまで減らしたらしいが、だからといってまた何度もやり直させる話ではないだろう。特にここ数週間はセーブポイントの準備もしていなかったらしいし、今更やり直して黒棒を無傷のままにさせるのも、負担だ。負担になる「確信がある」。

 だがこう、黒棒だがコレ本当どうしたものか。原作でも一度だって破損したことのない黒棒なのだ、果たして修理と言う観点で言うと……、一瞬「ちゃおちゃお~☆」とダブルピースして舌を出しながらウィンクしてくる天才発明家の映像が脳裏を過ったが、流石にそう上手くはいかないだろう。というか向こうからこの時間軸に干渉するのもそれはそれでガバのはずだし、やはりこう、ままならぬ。

 

「まー、借金あるから賞金はともかく、別に他はそう興味がある訳でもねーしなぁ。観戦レベルで済むかな? こう、五輪的な意味合いだと」

 

「――――――――ッ!」(※笑いすぎて声が枯れて来たお母さん)

「どうどう、君も少し落ち着くがいい。というより仮にも『息子』相手に笑いすぎだ。ちょっと可哀想だろう」

「――――ハッ! はーっ、はーっ、ひっひっふー、……、あー凄い面白かったわ。何ていうか、こう、思ってた以上にこう……。帆乃香たちが懐くのもなんとなくわかるわ。

 って、雪姫はん、なんでそない顔真っ赤なん? お熱でも出た?」

「煩い! だから黙っていろこのノータリンがッ!

 …………、いや、まあ流石にここまで素直に引き下がられるというのは想像だにしていなかったが……(それこそぼーやなら何かしら理由をつけて無理に参戦を願って来ていただろうしな)」

 

「あー、それはそうとして九郎丸たちはそのまま? なんスかね。一応エントリーしたのって、俺、九郎丸、夏凜ちゃんさんと三太のチーム、釘宮、成瀬川とあともう一人? いるんだっけ。よくわからねーッスけど。チーム最大人数的には問題ないって話だったっけ。俺抜けても」

「えっ? あー、そのはずヨ。私、全然出るつもりはなかったから、ちょっと記憶はテキトーだけど……」

 

 

 

「――――いや、本気でそのまま話を進めるつもりかな? 君は。……そこまで行くと逆に図太いとも言えるかもしれない」

 

 

 

 と、ここで完全に予想外の声を聞いて思わず後ろを振り返る。そこにいたのは黒いスーツに身を包み極彩色な(雑に言うとゲーミングカラー(無駄な蛍光七色))のネクタイを締めた源五郎パイセンの姿である。眼鏡をクイッと上げて、私相手に苦笑いを浮かべていた。

 いやだから、お母さんもそうだがアンタもアンタで原作を考えればこんな場所には出てきていないだろうにお前さん……。今度は何のガバを引いたのだろうか、流石に私ばかりのせいではないと思いたいのだが(震え声)。

 

 手を叩く源五郎。と、マコトと忍が「ここからは関係者だけでねー」と黒服サングラスの男衆たち(雑表現)に連れていかれる。「私関係者ですよ!?」と悲鳴をあげる忍はともかく「ま、まだデート終わってないッスからねー! 後で連絡ヨロシクッスよー!」と叫ぶマコトのそのバイタリティは一体何なのか……。お母さんも「元気やなー、あの()」と少し引いた表情である。

 それはともかく。

 

「何でここに? 源五郎パイセン」

「だから君、その呼び方は……。まあ良い。一応、呼ばれたから来たんだよ。

 女主人(ミストレス)、どういった状況で?」

「あ、あぁ、源五郎か。そうだな。こう――――」

 

 エヴァちゃんが軽く事情説明をしているが、そもそも何故彼がこの場に来ているのかということすら定かではないのだが。

 フェイトはフェイトで自分の頬を引っ張ってきたりする謎挙動の野乃香相手に嫌そうな顔でその手を捕まえようとしている。お母さんはお母さんでそれがどこか楽しそうで、お前ら一体何なんだそのイチャつきっぷりは。カップルか何かか? 見た目の上で言うと帆乃香を相手にしている私のような微妙な共感が出来てしまう訳だが。なお一部の女性陣は「おぉ!」とか何かこう楽しそうだったり羨ましそうだったりとヘンな反応である。

 

「――――なるほど。つまり現状、近衛刀太はその仕事を受ける能力が足りず、また戦闘能力も低下しており一人でこの学園に置いておくのも少々危ない、ということですか」

「あ、ああ。

 敵はいずれ刀太を……、もっと言えば刀太の内にあるものを必要とするから襲われる可能性が高いものの、本人の能力が伴っていない以上はこちらも適当に扱う訳にいかない。

 そのうち九郎丸たちも大会に併せて調査を始めることになるだろうし、そうなるとコイツ一人置いておくのもなぁ。

 報告書を見ると、刀太としても苦手な敵が存在するようだし、それを使ってこないとも限らない」 

「で、ですが雪姫さんッ! 僕たち全員一緒に動けば――――」

「いえ、九郎丸。そういう訳にもいかないわ。わざわざ全員一塊になっていては、調査に支障を来たします。……いざとなればキリヱの予知……、ええ、まあ予知があれば何とかなるでしょうが、そう必ずしも都合よく予知を出来る訳でもない、でしょう? キリヱ」

 

 夏凜はあの後、キリヱ本人から例の「部屋」まで招待された上で、その真の能力を教わっている。もっとも能力の規模が果てしなすぎて雪姫へと報告するまで整理できていないという事情から、詳細は先送りになっているが、言葉の濁し方はそういう意味合いを込めてのものだろう。実際、それを受けたキリヱは微妙に苦々しい顔で頷いていた。

 

「必ずしもそう都合が良い結果ばかりが、視えるわけでもないのよね……」

「ふぅん? 微妙に不便だな。

 ……いや、お前のその能力で実際何度も助けられてきている訳だから、むしろそれでも感謝するべきなんだろうが」

「わ、私の事はどうだっていいのよ別に。褒めたって何も出せないしッ。

 そ、それより雪姫、結局このちゅーにのことどーすんのヨ? 危ないんでしょ?」

 

 その一言に、エヴァちゃんは「あー……」と鈍い声を出しながら源五郎の方を見た。彼も彼で眼鏡を押さえて位置を直すと、流石にもある程度手足が再生した私に手を差し伸べる。

 

「…………だったら、しばらくはこちらで受け持ちましょう。女主人(ミストレス)。少なくとも武装の問題や戦闘力について、何かしら代替え案があれば問題ないと判断しました」

「受け持つ?

 ……嗚呼そういえばそうか、しばらくお前こっちに居るんだったな」

「はい?」

 

 とりあえずその手をとり立ち上がると、彼は私やら九郎丸やらといった「あちら側」以外の面々に視線を向けて。

 

「一応、僕がかつて立て直した所属組織、というより()だね。『潟山(かたやま)組』というのだけど。

 今は仙境富士組(UQホルダー)が中心となった伏見(ふしみ)連合に組み込まれてるけど、そちらの方で件の薬物関係の取引摘発を行っていてね。どうにも動きが鈍いようだから、久々にシメようかと思っていたんだ。

 僕がつくなら今の所、君たちを含めて考えると一番安全牌だろうからね。仕事、という意味でもそれなりに色々な経験を積めると思うから、もしよければ、その大会に出る出ないはともかく、しばらくこちらで一緒に仕事をしてみないかい?」

「……………………」

 

 あっ(察し)、つまりはこれも「幻灯のサーカス」関係、水無瀬小夜子関係というか前回の続きのガバの一種ですね判ります解りたくない(自己矛盾)。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「アレで良かったん? 雪姫はん」

「…………良くはないが、下手に家出でもされて行方知れずになるよりは安全だろうからな」

 

 頭が痛いことだが、とりあえず私は源五郎のサポートを刀太に命じた。

 刀太本人は色々と混乱していたようだが、今の所は文句ひとつ言わずに素直に従っている。

 

 もっとも、夏凜が「そんな柄の悪い所に連れて行くべきではありません、真壁源五郎ッ!」と食って掛かって少し一悶着はあったが、最終的に刀太本人の意思を聞いて、あっちもあっちで折れた。

 一安心は出来ないが、とりあえずはトラブルにはならんだろう。

 

 なお、フェイトはフェイトで肩をすくめている。

 それに引っ付くこのノータリンな野乃香を見て、私も肩をすくめたくなった。

 ……しかしこうして見るとフェイトも、背丈は十分大人のそれだが、本体が相変わらず子供なだけあって本質的なところは何も変わっていないのだろう。

 

「行方知れずになると困ると言いながら、こっそり去り際の彼に『アレ』を仕込む君も君だと思うがね。信用がないじゃないか、母親のくせに」

「ハッ! これだから人の親としても中途半端なんだよ貴様は」

「何だと?」

「こういうのはな、子供が自分で頑張って両足で立ち上がろうとしている時に、手を差し伸べないまでも背中に構えて倒れないようにするくらいは、してやるものだ――――健全な親子関係と言う意味ではな。

 致命的なミスさえしなければ人生何度でもやり直せるが、それをするだけのバイタリティやらその他色々な要因要素は必ず必要になってくる。

 アイツはどうもそういう部分が薄いというか、自覚が薄い所があるからな。周囲で気付いているなら気を付けてやるのが人情だろう。

 だから出来た親としては、最低限自分がどう戦って負けても、取り返しがつかなくなる前に引き上げてやるくらいはしてやるのさ」

 

 まぁ女関係は知らんがと、内心で勝手に愚痴っておく。

 そんなもの、それこそ数百年前から私自身タッチする気すら起きんわ。

 

 これもぼーやとかの血筋なのだろうとはいえ、いくらなんでも少しは自重しろと言いたい。 

 熊本に居た頃も、自分を半分悪意でいじめていたようなクラスメイトの朝倉相手に、アイツが暴走族に乱暴されそうになった時に横のつながり五人全員で特攻をかけて普通にふんじばって捕まえて惚れられてたくせに、当の本人はいじめられていた自覚もなくそういう感情を抱かれてないだろうと考えて完全にスルーして普通のクラスメイト程度の応対をしていたりといったこともあったし。

 ぼーやもぼーやで、同年代とかクラスメイト以外の連中相手に英国紳士ぶりを発揮して普通に堕としていたところもあったから、もうどうこう言う気すら起きんわ。

 

 …………………………私の、制服スカートの裾とか、隙間の生脚とかをガン見のくせに。

 

「どうしたん? なんか、凄い不機嫌そうやけど」

「なんでもないっ。

 というか私のことはどうでも良いんだよ、むしろ気になるのはお前の方だな。

 実際どうだ? 『あの身体になってから』の刀太と顔をまともに合わせるのは初めてなんだろう」

「あー ……、せやなー。うん、フェイト君の言っとった通り『魂』は問題あらへんのやろうけど、やっぱ複雑なところあるわー。7番『だったころ』は正真正銘、ウチがお腹痛めて産んだ子だった訳やし」

「………………言っておくが、こればかりは謝るつもりもないよ。結果的に今の彼は生きているし、それが『アレ』を討ち滅ぼすのに必要な一手へと繋がる。つまりはネギ君を救うために――――」

「――――いや、そういう使わせ方はさせん。

 アレはそこの野乃香や私の息子だ」

「甘くなったものだね、エヴァンジェリン。かつての君なら、躊躇なく彼を『兵器』として運用していただろうに」

 

 いつの話をしているのだと思わず笑ってしまう。

 時と場合にもよるが、流石に悪の中ボスを気取っていた私ですら良心くらいは痛めるぞ、そんなことをすれば。

 

 そのあたり、やはり生物としての傲慢さというか…………、事実上コイツとノータリンに育てられてる「69番」と「70番」の姉妹が、聞く限りアレなことになってるのも仕方はないか。

 いや、そもそもあの二人は「本当なら」「まだ6歳」くらいだったか。

 アレというよりは、まだ無邪気なのだと多少はフォローしてやろう、親としての出来たセンパイとしては。 

 

 と、フェイトが唐突にソワソワし始めているのだが、どうしたお前。

 ぼーやの話とかをしていたから紅茶中毒でも発症したかお前?

 

「…………考えてみれば、宍戸甚兵衛を呼び寄せれば、例の『管理人』を除いた『7人の侍(サムライ・セブン)』揃い踏みだったと思ってね。諸々あって話し合い自体は延期となっていたが、早いうちに何か対応してあげるべきだろうかと――――」

「あー、別に急がなくても良いぞ?

 アイツもそこまでして、自分の因縁をすぐ知りたいわけではないだろうし」

「? そういう訳にもいかないだろう。ああまでしてネギ君……、否、『彼女』が動き始めた以上は――――」

 

「あー、そういうことやないと思うえ? フェイト君。雪姫はんも、アレやろ? どっちかって言うと刀太んことよな?」

 

 ニコニコしながらフェイトを遮りつつ、しっかりこちらの内心がどうかというのを考えている。

 なんというか、かつてはともかく今現在はコイツのお陰でフェイトが安定しているのもあるかもしれんな……。

 

 とりあえずため息をついて、私は一応答えてやった。

 

「…………まぁそうだな。

 この二年間はずっと付きっ切りで『カアちゃん』をしていたから思うが、アイツは結構危ない――――普段はそうでもないくせに、それが必要だと判断したらすぐ自分の身を投げ出す節があるからな。

 本当なら『こっち』の拠点で軟禁でもしてしまいたいくらいなんだが、それはそれでフラッと気が付いたら消えてしまってそうだ。

 だがまぁ…………、学校生活という形を中心に縛ってやれば、案外真面目だから『完全に逃げ出すようなことは』しないだろう、あの様子だと。

 わざわざそれを早く切り上げる言い訳を、アイツにやる必要もあるまい」

 

 しばらくはそれで様子見だと言うと、フェイトは単に「成程」と言い、バカ娘は「へぇ~?」と何か言いたそうなことのあるニマニマ笑いをしていた。

 

 何だお前、ケンカを売ってるなら言い値で凍らせるぞ貴様。

 

 

 

(???「意外と自分たちの母校で学校生活を楽しんでいそうだったからっていう親心というか、乙女心みたいなものは自覚が薄いのかね、キティも」)

 

 

 

 

 




活報の[光風超:感想1000件(大体)突破記念募集] の方もまだまだ内容募集中ですナ!
期限決まりましたので、ご注意くださいっ!

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