切りはちょっと悪そう何ですが、冒頭だけ先行でアレです。
ST127.Accept The Sadness
「――――――よぉ、随分ゴキゲンじゃねぇか? 妹。せっかくだから俺も混ぜてくれよ。『72号』」
「――――『17号』でち? 失敗続きで既に素体の原形も崩壊したはずの出来損ないが、何の用でちか」
既にネギ=ヨルダの庇護から出奔して久しいくせに、と語る少女。身長は私よりもやや高め、目は三白眼で髪型は真ん中分けなツーサイドアップ。肌は恐ろしく白く、そして体はジッサイ平坦である(失礼)。ただその額には、紋様のように浮かび上がっている縦に開いた「第三の目」。
「オイオイ、こういう場合はちゃんと『姉サン』って呼ぶべきなんだぜ? デュナミス様とかディーヴァのヤバイ姐サンからすら教わってねーのかよ」
「私はそっち側には行ったことがないでちが、違和感があるでち――――出来損ないの姉サンの、その身体には」
「ん? コレか。まーアレだ、『生え変わった』んじゃねーか?」
「冗談は今のその立ち位置だけにしておいて欲しいでち。その立ち位置にも文句はあるでちが」
そんな黒く古いセーラー服の少女と相対するのは、「右腕を変質させた」少女。髪型はいつかの時と異なりポニテールとなっており、前髪はぱっつんとしいる印象だ。そしてタンクトップにミニスカートとブーツな恰好をした彼女は――――両足共に「義足ではない」「綺麗な素足」をしていた彼女は、薄い金髪をなびかせながら、ニヒルに微笑み私を見やる。
スクラップが散らばるこの廃棄場。遠くを見れば軌道エレベーターが聳え立つ「私の精神世界」のように一見して視えなくもないこの場所において。その遭遇は必然ではあったが、状況に関しては完全に想定外も良い所だった。
「よー、大丈夫かよ? 『お兄ちゃん』」
「…………お兄ちゃん、だと?」
「へ? ――――あっ! い、いや違ッ、そんなんじゃなくって、えっと、兄サン! そう、兄サン! ヘーキかよ、ロクに反撃できてなさそうだったけどさ」
「いや、というかお前今出て来て大丈夫なのか? ちょっと前に思いっきり学園都市の方で――――」
「あ~~~~、とりあえず黙ってろってのッ! そんなに大変そーなら、少しくらいは手を貸してやるから。弱い者いじめみたいで、絵面が酷えし」
「介入理由が雑でち。…………そんなに簡単に絆されてて、いくら何でもチョロすぎではないでちか?」
「ほ、絆されてとかいねーしッ!」
若干慌てて顔を赤くしながらも、しかしそのままテナ・ヴィタ――――カトラスは、こちらに額の「第三の目」を向けて来る少女を相手に、腰から仮契約カードを出してニヤリと嗤ったのだった。
※ ※ ※
そもそも何故そんな、原作基準で考えてみて展開が素っ頓狂にちぐはぐな状態になったのかと言えば、色々あったがさて何から思い出すべきか――――――――。とりあえず話を数日前に巻き戻す。
「チャ・ン・刀ゥ! 一緒に飯食いに行こうぜェ? 時坂も一緒にさ~ァ~?」
「え、えぇ!?」
「いや九郎丸、その照れっぷり意味わからねーから……」
クラスメイトの
そんな彼が何故かクルクル回りながらこちらに接近してきてくる様はその声の
昼休みの御柱西中(つまり旧麻帆良本校)、ネギぼーずと愉快なクラスメイト達がわいのわいのしていた教室の雰囲気を思い出すここで、授業終わりのチャイムと共に坂田がトリプルアクセルでも極めそうな勢いで誘いに来たのだ。普段なら九郎丸は三条(クラスメイトの女子)とか例の豪徳寺とかの女子グループに回収されることが多いのだが、今日はそれを見越して先行してきたのだろうか。
九郎丸も九郎丸で男子から食事に誘われる経験は熊本以降も結構あるのだが、クラスメイト男子からというのは初めてだからか、ヘンな風に困惑している。……というより、ひょっとしたらまた身体の割合が「女性側」に傾いたのか? その照れ方は。前の悪夢のような嫁力選手権のビデオいわく「大体七割」くらいが常に女性身体な九郎丸だが、そこから更に傾くようなイベントが何かあったろうか……、い、いや、そんな怖い話はともかく。
「別に良いけど、他の奴も誘うけど良いか? 『市川人形』以外でって意味だけど」
「おぉ? まあ『市川人形』今日休みだからなー。でー誰だ? ひょっとしてまた新しい女子か!? ――――ハッ、ということはもしかして以前から噂になっている同時期に転校してきた――――」
「――――釘宮、どうせ聞こえてるだろうから飯食いに行こうぜ」
自分の席で黙々と片づけをしているニット帽の釘宮大伍へ向けて声をかけた。帽子の端が若干ぴょこぴょこ動いてたのが見えたので、ほぼ間違いなく我々の話は聞こえて居ただろう。そんな彼はこちらを横に見て、眼鏡の耳元を押さえて位置を調整した。
なお、そんな私たちを見て愕然とした表情の坂田である。「な、何でクラスでもひたすら無口を貫き通すクールオブクール、一部女子から『氷の王子様(笑)』呼ばわりされてる釘宮がァ!?」とか褒めてるんだか妬んでるんだか弄ってるんだか判らない言葉を高速詠唱でのたまい出したので、軽くチョップ。
「いまいち誘われる謂れがないと思うんだが」
「まぁそう固い事言うなよ。飯、奢るからさ――――坂田が」
「なんで!? いや別にそれくらい良いけどッ!?」
「なら遠慮なく。――――新しいオペアンプを買おうと思っていたところだ、節約できるならそれに越したことは無い」
「嗚呼意外とノリ良いのねン……!!」
「お前さんエレキ弾くのかマジかよ、全然匂わせてなかったろそんな話全然……」
「凄い刀太君、一切物怖じがないや……」
九郎丸に謎の感心をされているが、そんな彼の背中に三条はウィンクしてサムズアップ。こころなし「ガンバ!」とでもエールを送っていそうな謎の得意げな笑みだが、そっちはそっちで結構謎な交友関係を築いているらしい。
なお最近こうしてクラスメイトと食べることも少なくないため、昼食の準備は弁当より御握りが2つ程度。私も九郎丸も、その上で時と場合に応じて追加で物を買って食べている。このあたりは学生時代の食欲のままなので、特に違和感なく弁当やら総菜パンやらを追加することが出来るのだった。大人数のラッシュにも流石に慣れてきたのもあるし、おにぎりを持って来ているのもあって一品だけに狙いをつけられるのが私と九郎丸には功を奏していた。
そしてそれぞれ適当に買って屋上へ。なお本当に奢ってくれるあたり坂田は普通に良い奴である。ご馳走様と同時にスマンなと軽く応じておく。なお坂田は坂田で転校生である私と九郎丸の二人がクラスに馴染みやすいように色々気を遣ってくれているので、私も特になんら気兼ねなく素直に頭を下げられた。
「あ、ダイゴ君!? め、め、め、珍しいお昼時に外に出てるなんてーっ!」
「誰、あの美少女? 誰あの美少女!!?」
「釘宮の従兄妹」
「成瀬川さんだね」
と、道中に遭遇したツーサイドアップをブンブン振り回している成瀬川ちづを加える形で(というより「私も行きたいですー!」と大声で主張、早々に釘宮が鳩尾を押さえ始めたあたりで決定である)全員で屋上へ向かった。普段なら九郎丸や釘宮たち犬上一族のいない状態で市川人形というクラスメイト(なお苗字である)を交えての昼食が多いのだが、まあそれはそれ、これはこれである。
というわけで、流石に校舎のモデルがモデルであるせいか、庭園風になっている屋上で適当な場所を見つけて座り、昼食開始。
案の定、無言の青空食卓である。
九郎丸は「こんなに黙々としていて良いのかなぁ……」みたいな顔をしながらコールスローをお箸でつまみながら何故か木製ベンチの上で正座。「嗚呼、話題が無ぇ……」と心で涙でも流していそうな坂田はもそもそとフルーツサンドを意外と小さい一口で食べる(女子かな?)。成瀬川は釘宮に話しかけたそうに自作のお弁当(色が全体的に茶色い、というか野菜が少ない)を食べており、釘宮に関しては総菜パンのチリドッグを虚無の表情で食べていた。
静寂、周囲の生徒たちのわいわいガヤガヤとした話し声が聞こえてくる。いまいち内容は要領を得ないが、それでも以前よりは落ち着いている……、浮つき切れないのは、流石にダイダラボッチ昇天時のアレのインパクトが強すぎたか。とは言えそれでも前を向いて生きていられるのは、今を生きている人間だけの特権で。
「―――――って、何そこでお通夜みたいな顔してランチしてんのよ!? もっと学生らしく元気な感じになりなさいヨ!」
「ひゃッ!」
「おおおおおおッ!」
「きゃあッ!? き、キリヱちゃんっ!」
「ははっ、は……」
「…………」(無言で胃を押さえる)
そして、唐突に私や九郎丸の背後から声をかけてくる桜雨キリヱである。両手を構えて上げて「ぎゃーッ!」とちょっとした怪獣めいたポージングをして叫んで来る(失礼)彼女に、私や釘宮以外は大体驚いていた。九郎丸に関してはおそらく殺気や害意が無いから気付かなかったのだろうが、それはそれとしてお前ホントその「きゃあっ!」って甲高い叫び声いやお前ホント……(女の子)。
とりあえずこぼれそうになったシチュー(マカロニが浮いている即席麺系のもの)をフーフーして一口飲み落ち着く。
「き、キリヱ大明神じゃないッスか、一体全体どうしてこんな下界に舞い降りられていらっしゃられてんでごぜいましょうかッ!?」
「アンタに大明神呼ばわりされる謂れとかないわよこのボンボン生え際!」
「ボンボン生え際!?」
「いや、まー確かにボンボンって言えばボンボンだけど、生え際は言いすぎだろ生え際は……。ワックス付けすぎてテカってるのは俺も思うけど」
「チャン刀お前もか! 裏切りものぅッ!」
「っていうかイヌメガネ居るじゃない。何? どういう組み合わせ? このちゅーにだけとの組み合わせだったらまだわかるけど。同病相憐れむみたいな感じで」
「とりあえず褒められていないってことだけは判るよ」
「イヌメガネ?」
言いながらも、釘宮は黙々と食べ進める。そうかお前、外で食べようとすると成瀬川に高確率で引っ付かれて噂になるから極力教室内で食べたかったけど、それでも誘われたからには義理があるから外に出て来ざるを得なかったのか、そっかー ……。素直に悪いことをしたと、軽く頭を下げると、彼も彼で虚無の表情のまま肩をすくめた。気にしていない的なニュアンスを感じられるようになっているのは、こう、大明神がおっしゃられた通り同病相哀れむ的なサムシングである。同族嫌悪が発生しないのは、おそらくお互いがお互いに被っている被害が被っていないからか……。
なお「イヌメガネって何ですか貴女さっきからちびっ子のくせにッ!」と突然ヒートアップした成瀬川に食って掛かられるキリヱ大明神。当然のようにちびっ子と言われてキレない彼女ではなく、それを「まぁまぁ」と止めに入…………ろうとして成瀬川とお近づきになろうとする坂田という絵面が軽いカオス状態であった。
なおキリヱ的に、釘宮が前回の事件で思ったほど役に立たなかった的な感想があるせいか、普段の私並に当たりが強かったりもする。もっとも外見が大層お可愛らしい(失礼)ままなのと、言うほど言動に悪意のニュアンスが含まれていないので、軽く放置しているようだった。あるいは実際、思ったほどに役に立てなかったと気にしているのだろうか、最近以前にもまして胃を押さえている気がする。
「…………ところで近衛、何で俺を誘った。誘われたことが迷惑とまでは言わないが、いささか理由が思い当たらなくてね」
「まーあんまり理由がある訳でもねー、って訳でもない訳でもない訳でもない訳でもない訳でもない訳でもない訳でも――――」
「どっちなんだい……?」
「刀太君、ひょっとしてループしたものの結論、どっちにするかわからなくなっちゃった?」
いや、実際彼個人に用件はあったのだが、誘ったこと自体にはそこまで理由はないのだ。少なくとも釘宮とは知人から友人にクラスアップするくらいには胸襟を開いてお互い色々抱え込んでいた内心をゲロった(汚い)つもりである。そう悪くない関係は築けているつもりだったが、学校でこうして昼食を一緒に摂るというのは得意と言う訳でもないように見える。どうやらそこまで友人関係に明るい性格ではないということらしい。
……というより幼少期は犬上小太郎が過保護を発揮しいじめられっ子だった彼を保護者的立ち位置から守っていたらしいので、身の安全は保証されたが友人はさほど多くないのかもしれない。その手のスキルが磨かれていないと考えると、中々にこう、何とも言えない感覚が……。いやそれはともかく。
「あー、ちょっと聞きたいことがあってな。教室だと色々あんだろ? お前さんの家の流派の話とか」
「ウチの流派ね。どっちの話だい? 奏でる方と
「いや内実を聞きてーって訳じゃなくってな……、ん? 九郎丸どうした? って、おっと」
「と、刀太君、そういう風に技を習うのなら神鳴流をオススメするよ! 刀太君のお祖母様も修めていたわけだし、絶対適性はあると思うんだ!」
私の両手を握って距離を詰めてくる九郎丸だが、お前さんのその謎のハイテンションを前提に考えるとまるで変態の素質があると言われてるように聞こえて甚だ遺憾である(失礼)。一旦それを離させて、そういう話じゃないと苦笑い。
「そっちの実家の流派だけど、武器を使った技とかってあるよな。よく弓でお前さんが色々やってるようなのとか。そういうのを見込んで、ちょっとツテがあれば紹介してほしい感じの話なんだが」
「いや、そうだね……、勘違いさせると問題が出そうだ。少し話そうか」
右手と左手を顔の高さに上げ、それぞれグッと握る釘宮。と、その親指側の隙間から、ミニチュアサイズのような小さく黒い狗のようなものがひょっこり顔を出した。いや、形状もどこか仔犬めいている。
「あっ、かわいい……」
「元々、狗神遣いといっても二種類存在する。精霊としての狗神を使役するやり方と、狗神を身に纏うやり方。この場合、狗神自体にも種類があるのだけれど、ややこしいからそこは省く。
僕は『両方使える』けれど、使役する方法の際に魔法具を間にかませることで、少し異なる性質を帯びさせているんだ。
つまり、ウチの流派に直接武器を使用した技はない…………、応用編としてはあり得るけれどね」
左手の狗神はそのままぼうっと音を立てまち針のような形状に姿を変え、もう片方の狗神は人差し指にまとわりつき、黒く鋭い爪のような形状へと変化した。と、それらを足元の影に触れさせると、その姿はいつの間にやら消え元の状態に。
そんな釘宮に対し、私は少々落胆した。
「それで、一体どう言う用件だったんだい?」
「あー、そうだな。武器修理……、というより魔法具の修理になんのか? たぶんお前の祖父ちゃんって、魔法世界とかで絶対修行とかしてると思ってるんだけど。そっちのツテで何か良い業者とか知らねーかなって思ってたんだが……」
「なるほど。武器を扱う流派の技があるなら、確かにそういうツテは作っていそうだね。俺の祖父は。
けど残念なことに、そういうまどろっこしい……というより手入れが必要な作業を苦手としているから」
そう言われてしまえば納得しかない。「ネギま!」時代の犬上小太郎の熱血! 友情! 努力! 勝利! な性格からして、自前で流派を作ろうとするなら得物はこの身一つと言い出しそうと言えば言い出しそうではあるか。
少し肩を落とす私に、九郎丸は「元気出してっ」とポンと手を置いてくる。
「でも魔法具……、って、黒棒だったっけ。あの重力剣。確かに折られたままだと問題だよね。代わりの武器が何かあれば良いんだろうけど……」
「いや、まーメインウェポン変えるつもりはねーんだよなぁ。使い勝手良いし、今のところ血風射出して破損しなかったのってアレくらいだったし」
「武器が壊れて……? えっと、大丈夫なのか近衛。確か借金あるんだろう? 組織の仕事で稼ぐのに支障があるんじゃないだろうか」
「というわけで絶賛支障が出てるわけで」
「そうか。……、そうか」
特にそれ以上会話を交わす必要もなく察した釘宮の虚無の目に、私も似たような目で引き攣った笑みを返し。
それになんだか、九郎丸がヤキモキしているような微妙な焦り顔をしていた。
活報の[光風超:感想1000件(大体)突破記念募集] の方もまだまだ内容募集中ですナ!
期限決まりましたので、ご注意くださいっ!