光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ!
 
今回も例によって独自解釈注意・・・、サリーちゃんカトラスちゃん登場まではまだしばしお待ちを汗


ST128.終わった後の物語

ST128.idLe Life

 

  

 

 

 

 さてお昼休みが開けて早々。件の「彼女」との遭遇、その発端としては真壁源五郎と共に仕事に出たことに起因する。

 

 基本的な活動日は休日、緊急時は学校に病欠(と言う名の裏側では事情判ってる奴)を出して出動と言う形にしてもらい、この日はめでたく初出動の日。授業は午後を休ませてもらって、瞬動など使うほどではないが足早に向かったのだった。

 学園の入り口手前にいつか見たような見なかったような黒塗りの高級車が一台止まっており、扉が開くとそこの奥には源五郎パイセンがいた。座席で足を組み、踏ん反り返りながらソシャゲをして遊んでいる。格好は相変わらずスーツだがネクタイは黒い。表情もどこか陰鬱で、まるで喪服である。

 

「よろしくお願いしまッス!」

「うん、ヨロシク。

 …………それで、何故君までついてきているんだい? 時坂九郎丸」

 

 源五郎の問いに、私の後に乗り込んで来た彼女は苦笑い。……彼女と言いつついまだ表向きは男として通しているのは「ま、まだ完全に性別分離が終わっていないしっ」という事情らしいがお前それで良いのかお前(震え声)。(???「乙女心ってやつかねぇ……」『!』「いやアンタも同じ立場だったら似たようなことしているだろうが」)

 

「その、僕も刀太君とホルダー加入、不死身衆(ナンバーズ)任命は同時期でしたから。そういった話は細かく聞いておいた方が良いのかなと思って。

 一応、夏凜先輩たちにも聞いたんですけど、メンバー内でもあんまり源五郎先輩のお仕事について詳しい人が少ないらしいって。だから少しでも一緒に行ければと思いまして」

「…………まあ飛び入り参加だけど、問題ないと言えば問題はないかな。ただ一つだけ二人に言っておくことがある」

「「言っておくこと?」」

 

「――あまり引かないようにね。あっちだと、僕にも立場というものがある」

 

 そう言って源五郎は眼鏡の位置を調整し、私と九郎丸は一瞬顔を見合わせたのだが。

 

 

 

 彼が言っていたことは、概ね予想通りと言うべきだったか、予想外と言うべきだったか。

 

 いかに新東京、アマノミハシラといえど、都市の外れに行き外のスラム近くになった立地、さらに路地裏やら整備されておらず倒壊しかかっているビルがひしめく光景はちょっとした世紀末。背後を見た時の繁栄具合と比較して、その落差に驚く人間も多いだろう。

 だがそんな中で、男衆たちが運転する車がとあるビルの手前に止まる。立ち上がる源五郎に促されるまま二人で降りると、事務所の中から大勢人が出てきて頭を下げた。ホルダーに勤めている男衆とも違い、それぞれ色々独自色のある「派手な」連中は全員その動きの統率のされ方にブレがない。何というか、ホルダーの男衆の場合動きに微妙なラグがあると言うか、おそらく身体を一般人サイズに調整したりする関係で色々と無理が出てるせいなのだろう。そして一同が「ご苦労様です!」と大声で頭を下げる様に、私と九郎丸はちょっと引いていた。なんならほぼ全員サングラスをかけていないこともあって、視線の鋭さや顔の傷などの威圧感が強い。実際に戦ったらまた別な話なのだろうが、メンタル的に青少年な九郎丸と小市民な私はやはり気圧されていた。

 

「おう、今帰ったぞ。ご苦労。

 影巻、話は忘れてないな。ウチのシマに手ェ出したシノギしてる連中、顔、割れたか?」

「はい、真壁の叔父貴ッ! (タマ)ァ取るんじゃねぇってのも守ってやすッ」

 

 先頭で頭を下げる小さくリーゼントめいた髪型にサングラスの男に、源五郎が適当に確認している。その振る舞いと言うか動きが完全にヤクザ者のそれであった。気のせいか語調までガンガンに詰めている形で、爽やかクール眼鏡の気配はどこかに蹴り飛ばされている。もはや完全にインテリヤクザのそれであり、気のせいでなければ目つきまで変わっている。

 人当たりのそう悪くないお兄さんの意外な一面に九郎丸は顔がやや青く、とりあえずそんな彼女の肩を軽く叩いて気合を入れさせる。

 

「(と、刀太君、結構落ち着いてるね)」

「(まぁたまーに組がどうこう言ってることもあったし、そう言う関係なんだろうってのは思ってたからなぁ)」

 

 より厳密には原作知識なのだが、細かくは知らないといえば知らない。ただ源五郎本人がプレイしていたベースになっているゲームが龍が○く(割と何でもあり)な世界観のそれなので、彼の立ち位置もそれなりに準じた立場でこの世界に異世界転移されているのだろう。振る舞い一つとってもどことなく桐〇ちゃんを想起させることもあり、甚兵衛に義兄弟の契りを交わして弟子入りした流れを考えても相当に漢臭い(ヽヽヽ)話だったのだろう。

 そしてそんな私たちに近寄ってくるヤクザ者たちが数人。何だ何だと我々を数人は舐めてきているような視線のふりかたである。特に九郎丸相手には綺麗な顔をしてやがんなぁえぇ? とガンを飛ばしている辺りからして、おそらく所謂お雑魚である(適当)。実際、源五郎と話している影巻とか言ったか、彼を筆頭に数人は私たちを一瞥した後は「視界に入れようともしない」。むしろ避けているようにすら感じられるので、勘なのかそれ以外の何かなのかはともかく、こちらの実力を察しているのだろう。

 

「真壁サン、このガキ共何なんスか?」

「真壁の兄貴のオモチャって訳でもねーでしょうし――――」

 

「馬鹿野郎共がッ! 見て何も『感じ取れ()ぇ』ならガタガタ抜かしてんじゃねぇぞッ!

 大体何が兄貴だテメぇ()ッ! 叔父貴と呼べ!」

 

 影巻と源五郎に呼ばれていた男がサングラスをずらして大声をあげる。ひいぃ、と一瞬うめいた後に「スミマセン」とやや憮然としながらだが頭を下げて来た。と続けて源五郎が視線だけで殺せそうな目をその新米っぽい連中に向ける。

 というか威圧感やら剣呑な雰囲気に伴い、画風からしてもはや別な漫画と化しているレベルである。陰影つけられるアシスタントが変わりましたか?(震え声)

 

「一応、俺の後輩だ。『アソコ』でのなぁ。つまり見た目で騙されんじゃねぇ、俺みてェな『バケモン』ってことだ。八つ裂きにされたくなかったら、縁日で射的(テキ)やってる時くれぇの愛想撒け」

「「わ、わかりやしたッ!」」

 

「ば、バケモノ……」

「まぁ否定はできねーからなぁ」

 

 一喝とは言わないまでも注意だけして源五郎は仕事の話に戻るらしい。

 ショックを受けている九郎丸だが、彼女に関してはその身にご神体のようなものを取り込み一体化している上に呪術的な方法で疑似的な不死身であるからして、この段階で一般人類はその気になったら勝てるはずもない。私というか近衛刀太という観点で見ても吸血鬼(魔人とかニキティスは言っていたか?)であるのだから、その気になった際の被害度は一切変わりあるまい。つまりはどっちもバケモノであるし、専用装備もなく通常の物理兵器程度では全く苦も無い訳である。

 

 それでも約一名、こちらに足をかけてこようとした男がいたので、それに関しては脚部だけ死天化壮しながら歩き、引っ掛けてきた足を蹴り飛ばした。九郎丸に先行して移動していたこともあるが、私はともかく九郎丸があんまりこういう場に慣れるのは精神衛生上良くないので、必要経費である。

 

 なお死天化壮の特徴としては「座標固定」と「魔術的な理屈での移動」であり、つまりは見た目や実際の質量はともかく、強度だけで言ってもぶつかった相手の体感はそれこそトラックと正面衝突したくらいの勢いでもおかしくはないと言うことだ。

 なので足を押さえてうめき声を上げるスキンヘッドの青年の襟首を「持ち上げて」、下から見上げるように笑いかけた。

 

「ま、そういう訳でヨロシクだ。ホラ」

「ッ……!」

 

 足は折れていないだろうがしばらくテープで固定した方が良いかもしれない。そしてそんな彼と私の様子を見て何かを察したのか、九郎丸が少し非難するような目で見て来た。ビビっている訳ではないにしろ借りて来た猫めいて声が出ない九郎丸だが、それでも真っすぐに善性を向けてくれるのは有難いところである。が、それはそれとして誤解しない程度に後で弁明はしておこう。

 なおそこまで反抗的だった彼は、周囲数人が寄ってたかって頭を下げさせる。ケジメはつけないといけないという理屈から私刑に処されたりこちらが面子の問題で襲い掛かられないあたりは、まだ民度が良いのかもしれない。……そう思ってしまう時点で私的なヤクザ観は割と末期なのだろうか(白目)。

 

「お前ちゃんと頭下げろッ! 真壁の叔父貴だってアレで『ずっと年取って無ぇ』んだ、この人らだって本当は……」

「あー、いや別に構わない。『私』は気にしない。とはいえこういう場は初だから、物珍しくはあった。そこだけは謝る。

 それはそうと、源五郎先輩の話は色々聞いてみてーかな?」

「(刀太君、あの物言い意外と様になってる……?)」

「真壁の兄貴の話ならアレだろ? そりゃ生ける伝説『不死身の虎』『潟山の虎』って言ったら真壁の兄貴しか居ねぇからな!」

「そうそう、だからお嬢だって――――」

「あっ馬鹿お前ッ!」

 

 と、話がそこに飛び火しそうになった瞬間に猛烈な「嫌な予感」。思わず黒棒に手が伸びかけるが、発した相手が源五郎と知って納得である。原作描写からしても彼個人が割り切って話す分にはともかく、他人の口からおいそれと面白半分に語られたくない内容があるのだろう。

 というより、概ね察しは付いているのだが。おそらく「この世界で」出来た、おそらく死別しているだろう恋人関係の話のはずだ。一応頭を下げると、源五郎は肩をすくめた。

 

 事務所の廃ビル一歩手前なそこから地下に移動する私たち。こう、下の施設の方は案外としっかりしたつくりであり劣化が見られず、そして一番奥の大部屋のような場所を開ける影巻。源五郎に促されるまま中に入ると、そこはちょっとしたバーのような施設だった。ただカウンターには誰もおらず、線香のあげられている位牌が一つ。

 

 しばらく三人にしてくれと言うと、影巻は頭を下げて退室していった。

 

「……はぁ。本題の仕事の話の前に、これで少しは緊張がとけると良いのだけれど、九郎丸」

「――――へ? あ、あ、は、はい、そうですね、叔父貴」

「いや呼び方移ってる移ってる……」

 

 思わず慌てだす九郎丸の背中を軽くポンポンしながら落ち着かせる私である。対して源五郎はカウンターの裏側から牛乳パックを取り出し、ワイングラスに適当に注いで私たちに渡してきた。

 

「若い連中が済まないね。だが、さっきみたいに少し『折って』くれた方が彼のためにもなる。ああ見えて繁華街で『擬態』してる時は普通の営業マンらしく、銭勘定はキッチリしてるらしいからね。手を出すと危ない、と分かれば下手なことはしないだろう」

 

 九郎丸の方に視線を向ける源五郎だが、どうやらちゃんと私のフォローはしてくれるらしい。流石のパイセンである。もっとも私の対応も対応で正しかったのかは不明だが、おそらく私と九郎丸の「現在の」ステータスをゲーム的に見て、お互いの心理状態から感情の具合を察知しているのだろう。

 

「折るって、源五郎先輩? それでも刀太君、一般人相手に……」

「いや一般人じゃねーから。下手にナメられて仕事の邪魔されたり変なことされたら、そっちの方が拙いだろ? 今回のは特にアレなんだから。

 別に普通に応対してくる分には特に『何の感情もない』から普通に応対するけど、こーゆーのはトリアージだろ。優先順位は付けとけ」

「うーん……」

「納得できないのなら、そうだね……。九郎丸、君を余計なトラブルから守るためにあえて泥を被った、と捉えて上げると良い。実際あの場で手を出したのはあっちの方が先なんだから、あまり責めてあげないように」

 

 いまいち納得していない様子の九郎丸だが、それでも私にありがとうと一言。おそらく流派の関係もあって、人外の力は正しく人外ないし非一般人相手に振るうべきだという考え方なのだろう。そのあたりは多少、私とは違う。

 正当防衛を盾に何をやっても良いとは言わないが、ある程度お互いに妥協できるラインを作らなければいけない場合もあるのだ…………、でないと別種の死亡フラグとなる可能性すらある。私や九郎丸など「不死者」ならばまだしも、忍やマコトなど「一般人」相手では、最悪の場合を想定しなければいけなくなるのだから。

 

「……まぁウチは『みかじめ』とかはやっていないから、そういう意味では他の連中よりも比較的『クリーン』だったけど」

「それどうやって稼いでたんスか……」

「と、刀太君本当、なんていうか物怖じしないね……」

「物怖じしないってその意見には同意するよ。逆に強がっているというのもあるかもしれないけれど」

 

 強がっているか。……まあ基本的に痛いのは嫌なので、強がっていると言えば強がっているのかもしれないが。状況的に酷いことにさえならなければそれで良いという認識ではあるのだ。そのためなら虚勢くらいは張るし、なんなら最悪「本気で」殴り飛ばす必要すらあるかもしれない――――。

 っと、これでは危険思想になってしまうのでは? とセルフツッコミを入れる。一度深呼吸をし、グラスを傾けて飲んだ。

 

 苦笑いしつつ、源五郎もグラスから一口。

 

「この辺りも、数十年前まではもっと賑わっていたんだけどね。軌道エレベータに運び込む資材あたりでテロがあって、それが切っ掛けで妖魔騒ぎがあって今じゃこの有様さ。

 こんな所に迷い込んでくるのは、後ろ暗い所があるか、大きなものを背負って一旗揚げようって連中くらいなものだよ。ただ妖魔の話で言うと未だにここは危ないからね」

「それで、あんなあからさまにゲームみたいなヤクザヤクザめいた格好してるんスか?

 そーゆーのって、意外とフツーに社会生活とかにまぎれてる印象でしたけど。だから逆にこう、一般人を近寄らせないために威圧する、みたいな意味で?」

「そういう側面も無い訳じゃない、かな。

 ウチの組の商売は――――主に妖魔関係がメインだったから。退治だったりトラブル解決だったり、今でも仕事としてはそれを継続している。何かしら大規模魔法暴走事件でも起これば率先して救援にあたるし、それにカコつけて政府の建築系の入札とかも…………いや、まあそういう話は止そう。今は関係ないか」

「あー、確かになんか怖ぇから、追及はナシの方向で。って、確かクラスメイトも言ってましたけど、妖魔って得ても売ってもケッコー儲かるんでしたっけね……。

 って、どうした? 九郎丸」

「……………えっと、その、カウンターの奥にある写真は……」

 

 九郎丸が指さした先、カウンターの上に置かれている、やや色の褪せた写真。髪型が違うが大人版エヴァちゃんこと雪姫(ベリーショート)のスーツ姿、今よりも顎髭が適当で相変わらずコンビニ店員みたいな恰好をしている甚兵衛。その隣にいるのは例のカラフルなネクタイを着用して微笑んでいる源五郎と――――彼と同年代に見える銀色の髪の女性。雰囲気がどこかぽやぽやして浮世離れしているような微笑で、額から二本の赤い角。亜人か妖魔かの血を引いているのかは不明だが、その距離感からいくらか察する物が有った。

 

「……まぁ、隠している訳でもないけれどね。

 僕の大切なヒト……、ココを継いでボスとなっ()、その彼女だよ」

「過去形、ッスか」

「それは…………、済みません」

「いや、別に構わない。面白半分に武勇伝交じりに語られるのは我慢ならないけれど、ごく普通に、知り合いの亡くなった家族(ヽヽ)を少し悼んでくれる。それくらいの程度の、普通に軽い感傷で充分さ」

 

 わずかに遠い目をしながら眼鏡を直す源五郎。どこか遠い目をしながら、ふたたびグラスのミルクを一口。

 

「…………そもそもアイツも、ヤクザ商売なんて乗り気じゃなかったからね。こっちで世話になって、初めは用心棒として雇われた僕だったけど、気が付けばこのザマだ。

 元より『生きること』自体への執着は薄かったけど、この『不死身』を自覚したのは彼女を庇って『僕だけ生き延びた』時だったからね。…………先輩として忠告するなら、物事には時に、僕らの全く想像できないことも多い。

 だから色々な展開を想定して、心構えだけでも準備しておくべきだってこと、かな」

 

 決して自分の能力だけを過信してはいけない、何があるかわからないからね――――と。

 声ににじみ出る寂寞な空虚さに、九郎丸は言葉が続けられず。私も頭を下げて、小さく応じることしかできなかった。

 

 

 

 ………………それはそれとして、その写真の彼女に眼鏡をかけると完全に「ネギま!」時代の祝月詠のそれを思い起こさせる顔立ちだったりして、別な意味で感想が出て来なかったりもするのだが。

 

 まぁこう、漫画で顔のパターンと言うのは美形を描こうとすればするほど画風的に似通って行ってしまうものなので仕方ないと言えば仕方ないのだろうが(明日菜とかエヴァとか)。

 

 

 

 

 




活報の[光風超:感想1000件(大体)突破記念募集] の方もまだまだ内容募集中ですナ!
期限決まりましたので、ご注意くださいっ!
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