前回共々、脳内夏凜ちゃんが全力全開すると話が思ったように進まないやつ定期
※第一話前書きに、称号に関係するようなしないような・・・なポエム追加しときました。
ST13.BLADE Is The First And Last Event Of Life
夏凜、九郎丸と共に探した一空であったが「しっそうちゅー」と適当に書かれた張り紙が部屋には張られており、どうやら本格的に初対面は後になりそうな気配があった。ちなみに一瞬舌打ちしそうな顔になった夏凜ちゃんさんであったが、やはり私や九郎丸の目があるせいか咳払いをしてクールな顔を取り繕っていた。
再び表に出た私たち三人。源五郎パイセンは携帯端末でゲームをしながら時間を潰していたらしく、私たちの姿を見るとすっと仕舞って木陰から立ち上がった。と、何故か私の服装をじっと見るのは一体何だ……。まぁ服装がわざわざあつらえたような黒和服に赤い長マフラーなので、気になると言えば気になるのだろうが。
「その恰好…………、良いね。良いと思う。誰のセンスだい?」
「あー、お金は夏凜ちゃんさんに貸してもらっ「あげたつもりですが」、いや流石にそこまで甘えるのも。夏凜ちゃんさんに借りて、京都で買ったやつです」
「うん。……そうだな、君とは良い酒が飲めそうだ。今度一緒に呑みに行こう。ジュースくらいは出す」
「はぁ……、わかりました、お願いします」
まぁ確かに相手の経緯を考えれば、恰好のセンスというか、遊び具合というかは源五郎パイセンの趣味に合うのかもしれない。
「で、えーっと……俺たち、どうしたら良いんだ? 普通に下っ端……あー、語弊があるなぁ、男衆でいいか? とかの一員になるには、特に俺とか色々しがらみ多そうだし……。
九郎丸も抵抗あるんじゃないか?」
「えっ!? い、いや、僕は別に、だって男だし……」
「ふむ……、ハァ」
ちらりと九郎丸を一瞥すると、源五郎パイセンは「なら頼むよ」とも言わずに頭を左右に振った。おそらく性別不定であれ現在がどちらの性別であるかは能力的に見抜けるはずだ、そこのところ察して無理と思ったのだろう。少し肩をすくめながら、軽く会釈しておいた。
夏凜はと言えば、ふむと一息つくと何やら指先で中空に文字やら何やらを書いている。月々の金額がいくらだとか計算めいたのをしているが、一体何の検討をしているのやら。計算結果でも出たのか、頷くと私の肩を後ろから掴んで引き寄せた。……抱き寄せすぎだ、首の後ろに「むにゅん」とでも形容できる感触が、変形していた。何度も言うが一体何だその距離感の近さはッ!?
「では、そうですね。処遇が決まるまで、しばらく私の小間遣いのような形で引き取りましょうか。刀太も九郎丸も、まずはここの面々に慣れてもらった方が良いでしょうし。子供二人引き取るくらいの経費は、私の給金からすれば問題ないですし。こちらで寝泊まりしなさい」
「は、はい!?」
「何か問題でも、九郎丸?」
「い、いや、だって女一人に男二人部屋なんてそれは……」
言いながらちらちらと私の顔と、指同士をつんつんしている手元で視線が行ったり来たりしていた。……そんな色々ヘンな九郎丸の顔を、夏凜はじっと穴が開くように見つめる。無表情の視線に謎の圧を感じたのか、気づいた九郎丸は一歩引いていた。
「その程度でどうこうされるほどヤワではないです。大体二人ともまだ子供だし、気を遣うものではありません。大人が頼れと言っているのですから、ある程度は甘えて良いです」
「で、でも……」
「それに
だって部屋とかも全然別でしたし、みたいなことを言う九郎丸だがまず気づくべきは夏凜の言った「アナタ」のニュアンスである。私的には女性が女性に向けるような気安い物言いに聞こえたのだが、九郎丸本人は気付いているのか、それとも気づかないくらいに違和感がないのか……。源五郎パイセンも顎に手を当てて「ほぅ」とか言ってしまってるし。
「ふむ。
「――――ダメだぞ? 刀太と九郎丸は
と、私たちの頭上、微妙に近いとも遠いとも言い辛い距離感から声が降ってきた。瞬間、警戒して刀を構えながら見上げる九郎丸。表情は見えないが私の肩を握る手に力がこもる夏凜(痛い)、クールなまま顔を上げる源五郎パイセン。
あと、さんざんアニメとかの方で聞き覚えのある声なので特に驚きもせず顔を上げる私。
「えーっと、雪姫か?」
「なんだー? 詰まらん。
せっかくだから驚かせてやろうと思ったのに」
そこにはフワフワと浮かんでいる、袖のないセーラータイプの服を着ている雪姫……というか、皆大好き? エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(本体)(十歳)の姿があった。「ネギま!」時代からよく見る袖のない黒セーラーとミニスカートの組み合わせである。丈が短くひらひらしているが、中身が絶妙に見えないのはもはや一種の伝統芸かもしれない。
いや、ネギぼーず相手には割と堂々と見せていた記憶もあるから、そういう意味では実際のところ意図して見せてるのか隠しているのかというのは……、業が深い話な気がしてきたから一旦それは置いておいて。
当然のように小さい雪姫に驚く九郎丸であるが、ここで例によって簡単な事情(小さい姿が本体)説明をしながら「年齢詐称薬」を口に放り込む。いつもの雪姫の姿に瞬間で戻ったのだが、相変わらずこの薬の使い勝手は良いらしい。
「すごいですね雪姫さん。それに元々の姿も可愛かったし……」
「嫌味のない素直な言葉は良いぞ九郎丸、気分が良い。
しかし刀太は意外と驚かないな?」
「吸血鬼とか言ってたから、姿かたちに何の意味もないとか言って不定形だったり自由自在だったりするんじゃとか思ってはいたけど。いや、薬で姿誤魔化してるのはちょっと予想外だったけど……」
「フフン、笑い事じゃないぞ? お前たちだって余程のことがない限り、身体の成長率はそのサイズで固定だ。『大人になる』代替手段の一つや二つ、あっても損はないだろう」
「それもそうなんだろうけど……、で、何でその、ナンバーズ? というか、ナンバーズって何かって話か――――」
「そうです雪姫様! どうしてこの子たちをいきなり、責任が重い立場に引き入れるのですかっ!」「苦しい、苦しいから夏凜ちゃんさん、ギブギブ……!」
声を荒らげながら、ぎゅううう、ともはや一切の躊躇いなく私を後ろから抱きしめた夏凜である。九郎丸は目を白黒してるし、源五郎パイセンは「悪感情をこそ好感情に反転させたのか、やるね…‥」などと小さく呟いている。私はと言えば胸首頭そろってロックされて締め上げられているような状態なので、もはや乳の柔らかさ的なクッションなど意味をなさない有様であった。
「ナンバーズは、言うなればウチの幹部級用心棒みたいなものだ。
特にホルダー加入者の中でその不死性/不滅性の高いメンバーを厳選している。
能力だけで言えば間違いなく二人ともナンバーズ待遇が必要だと思っているのだが……」
雪姫は目を半眼にし「……ホントにお前ら何もなかったんだよな?」とか言ってから、ため息一つ。
「九郎丸に関しては知り合いのツテで頼まれている。コイツは人体実験によって不死身と言えるほどの超強力な再生能力を得ているが、その根底、不死性を『保証するもの』自体は全く別のものだ。
それが『上の連中』にとって重要なものであるらしくてな。殺されて解放されるのを待ってるような連中に、みすみすくれてやるのも癪だ。是非その力を使いこなせるくらいに成長し、存分に力を振るってもらいたい」
「っ!?」
「上の連中って上役とかじゃなくって物理的に上って意味か……」
軌道エレベータから沿って指を空に向ける雪姫の言い回しである。彼女の立ち姿の決まり具合もあってか、ビシッとしているというか、
一方の九郎丸は、自分のことを誰が依頼したのかと雪姫の言葉で混乱しているが……、まぁ直に察するだろうから、私は肩を叩こうと……、って身じろぎするたびにハグを強めるな、息の根が止まるわ夏凜ちゃんさんよォ!(不服)
「刀太に関してはもっと酷い。私の眷属としての吸血鬼性と、コイツ自身の血縁関係が問題になってくる」
「血縁と言いますと……」
「元を辿れば高名な“
そんな万能細胞みたいなコイツが私並かそれ以上の吸血鬼性を得てみろ? 利用しようとする勢力はアホみたいに増えるだろう。
少なくともココとていつでも万全という訳にはいかない。一人で対抗できるだけの力を養う必要はある」
「なんかさらっと俺も知らない俺の血縁情報とか出すの止めろよ、後で詳しく教えろよカアちゃんよぉ……?
まぁ、色々横に置いとくとして、実地訓練しろって感じか……。『自分だけでも生きれるように』っていうのは、俺の考え方と合ってるからいいんだけど……」
何か不満かと聞かれたので、夏凜の腕を首から少し引きはがしながら理由を……、「このためにでっち上げた理由を」言った。
「…………なんか親のコネで入社してるみたいで、カッコワルイ」
「嗚呼……」「確かに」
身体的には年が近いせいか、九郎丸は私の不満に納得がいくらしい。源五郎パイセンもその正体というかを考えれば似たような結論に至るのだろう。なお夏凜は何も言わず私の頭上に自分の顎を乗せた……、いや、もう何も言うまい。
と、雪姫はツボにはまったのか大声で笑った。
「な、なるほど? 確かに恰好が付かないのは問題だよなぁ刀太、我が息子よ!
不死者としてハッタリやら恰好付けは結構大事だからな。面子、という程ではないが、それを気にする姿勢は悪くない」
「なんか魔王サマっぽいポーズとってるの何なんだよ……」
「だが、そんなお前らに朗報だ。ナンバーズに関しては、ちゃんと試験がある。簡単な面接じゃない、不死身さを確認するし、戦闘能力も併せて確認になるからな」
ほれ、と。気が付くといつの間にか、夏凜の腕の中から引き抜かれ、私は雪姫に首根っこを掴まれていた。見れば九郎丸も同様であり、驚いた顔をしている。
「な、何だ? 時間停止でもしたのか?」
「体術、武術、そのあたりを齧ればそれなりには、だな。
さて…………、うん、長々と期間をとっても良いが、あまりダラダラすると張り合いがないだろう。私の目がないとお前はサボるというか、現実逃避を始める傾向があるからなぁ刀太」
「えーっと……、何? 話の意図がわかんねーっていうか」「雪姫さん……?」
「よし、期間は一月としておこう。一月以内に『出て来れたら』クリアとする。それなら親の依怙贔屓だの何だの言う輩も出ないだろう」
いやだから話をしろ、何を勝手に進めるんだと。そもそも「出て来る」ってどこからだとツッコミを入れる間もなく、私と九郎丸は「突如開いた地面の穴」の底に、投げ捨てられた。
「わあああああ、と、刀太君!?」
「あの母ちゃん何も説明なしに放り棄てやがったぞ!? どうしたそこまで段取りガバガバ人間だったか!」
このあたり、もうちょっと穏便な流れと状況説明を受けた上で「地下迷宮」に落とされるだろうと原作知識から踏んでいたのだが、一体どうした雪姫。私のガバが移ったか? いや、もし移ったのだとすると今後の事を考えて恐怖以外の何物でもないのだが、それはともかく。
落とされること自体は元から想定していたので、当然対策の準備もある。
胸の中央に右手を当て、例によって
「と、刀太君、これは……?」
「応用編、みたいな感じか? とりあえずこれで一気に上に戻って、雪姫に文句付けてやらないとな。大体俺の服とか私物全部ぶっ飛ばしたくせに、携帯端末の替えもまだ買ってくれてないし……」
『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック――――』
「――って冗談じゃねぇぞあのカアちゃん!? ガチで氷魔法ぶちかまして来やがる!」「と、刀太君――――!」
火山噴火の落石がごとく大量に落ちてくる氷塊に、思わず顔が青ざめる。
と、床の形成で手いっぱいの私の前に、剣を構えて九郎丸が立つ。そのまま目にもとまらぬ速さで剣戟を
いや、元から「黒棒」を入手したいからここには来る予定ではあったが、いくら何でも滅茶苦茶が過ぎる……。
もしこれが歴史の修正力的な何かであるのなら、俺は……、いつかこれを仕組んだ神的な何かをぶっ飛ばす。
黒棒を使った完成版の
だから、今は仕方ない。せめて打撲のダメージだけでもどうにか出来ないかと、血液操作で何かをやろうと……っ、氷塊が胸部の傷のところを上手いこと貫通して覆ってしまい、上手く血と魔力が放出できない!?
まずい、このままだと――――――――あっ。
※ ※ ※
「…………変われば変わるものというか、恐ろしいものを見たかもしれない。
普段、あれだけ
見ているこっちまで変に頭が痛くなってくる。確かにカリンは刀太に対して、以前のテレビ通話の情報の時点で般若と化していた。嫉妬の鬼だ、その後の有様は、関わる気を失せさせるものがある。
それがいざ来てみたら、何だ? 逆・光源氏のようなものでも狙ってるのかという有様で溺愛してると来たものだ(少なくとも僕にはそう見えた)。
ギャルゲーじゃないんだからと思わないでもない勢いで堕とされている様は、流石に想定外である。
少し頭を冷やせと、頭上に氷塊を受けて倒れるカリン。
…………「ぎゃふん」とか現実で初めて聞いた。
「源五郎、後を任せて良いか?」
「どちらに行かれるので?」
「せっかく戻ったんだから、今サボってる奴の折檻でもしてやろうかってな。
……丁度今、なんかわからないけどムシャクシャしている所だし」
「かしこまりました」
触らぬ神に祟りなし。首肯した後、どういう理屈か澄ました風の表情に戻って気絶してるカリンに肩を貸す形で持ち上げた。お姫様抱っこは常々「雪姫様専用です」と絶対零度で公言している彼女だった、僕も無駄に「残機」を減らす趣味はないので、それに倣う。
「しかし、まさか
しかし…………」
休憩室に彼女を運んで適当に寝かせた後、僕は思い出す。
僕が「この世界で」生を受けてから、その時点から持っている「ゲーム的なシステムを」「僕や世界そのものに対応させる」能力。その代表格たるステータス画面に、少し妙なものがあった。
称号も例えば「中二病」「むっつり」「PRAY人生」「メンタルクラッシャー」あたりは判る方だが……、いやちょっとよくわからないのもあるが、それでも先頭にあった「
でもそれ以上に――――。
「何故本名が『二つあった』んだろう」
今まで見てきた人間の中で、この表示を見るのは初めてだった。
例えば悪霊に憑依されている人の場合は、その人間のステータスと別に憑依している相手のステータスが出るようになっている。二重人格なら状態異常に記載されるし、偽名などは通称の欄に併記されることが多いのだが。
彼の場合はそういうものではなく、本名の欄で横一列に併記されていたのだ。
つまり――――本名:近衛刀太/神楽坂菊千代 、と。