光る風を超えて   作:黒兎可

131 / 236
勝った! 深夜更新のカルマに勝った!(なお)
 
鮮やかに? 地雷処理する熟練のチャン刀と、逃れられぬ何かな誰かさん


ST131.収束する何か

ST131.THE INSIGHT

 

 

 

 

 

「いえ、その、確かに『約束』はしましたし貴方を一人にするつもりは毛頭なかったし、そういう意味ではたとえ貴方から拒絶されてもその本心のところで孤独であるのなら、それをおそらく一番理解できているであろう私が傍に居るというのは当然であって、そのつもりで、それは『クーリングオフ不可』ですしなんならあの日『予約済』されましたから、色々と体面の問題もありますが特に拒絶するつもりも何もなかったのですけれど、ええと、それ以前の問題として私個人はそういった感情を他者へ向けるのはそもそも許されざる立ち位置ですし、そもそも『家族を』二人も失った『呪われた娘』だった私に『先生』が手を差し伸べてくれたからこそ今の私があるとはいえ、そもそもそんな先生の言いつけを護らず全て空回り善意であの人を失わせてしまいあまつさえ『人ならざる』何かへと変えてしまった私が、それでもあの人の大きな愛の範疇に入れてもらえているだろう私がこんな状態というのも、更にいえば『家族』を持つことすら私は烏滸がましい立場ですから、せめてそう辛いことにならないようにと出来る限りのことをしていて――――」

 

「落ち着け」

 

 目を見開いたまま彼女のキャラ的に見たこともないくらいに顔を紅潮させて、漫符でいえば目をぐるぐるさせてるレベルのパニックっぷりを発揮する夏凜である。思わずその両肩に手をやって軽く揺さぶってみるくらいには明らかに状態がおかし――――熱っ! ちょっ、貴様なに何も呪文とかその類のを唱えていないくせに「神聖魔法」を放ち始めてる! しかも何か色が白じゃなく薄い桃色になっているのはアレか、今の夏凜の脳内お花畑永眠一歩手前みたいな状況でも表しているとでも? お前がオンリーワンだ(震え声)。

 と、はっとした顔になった途端私が触っているところを見て「ひゃうッ!」とCV(声の人)的には違和感がないまでも夏凜的には色々ツッコミを入れたい声を上げて、自分の身体を抱きしめて数歩後ずさった。顔は相変わらず真っ赤なままで、そのまましゃがみこむ。そう、改めて「異性として」意識されたみたいな挙動をされると、私もどう反応して良いか色々判らないのだが……。

 

『ふみゅー、ふみゅ?』(※特別意訳:『このエロ聖女って今絶対「色欲」が4から跳ね上がったやつだぜ、ビッグブラザー?』)

 

「何が言いたいか判らないのだが……」

 

 と、いつの間にやら出て来たチュウベェである。私の頭の位置くらいで、フリーズして石みたいになっている夏凜相手にしらーっとした目を向けている。というか女性とみると基本は誰彼構わず突撃していくタイプの性格になってしまったと思っているのだが、チュウベェ的に夏凜はそういう相手にはなっていないということなのだろうか。何かしら一定の基準でもあるのかもしれない。

 そんなことを考えながら私の周りをフワフワ浮いてシャドーボクシングのようなことをしてくるチュウベェの頭を指で抑えるように撫でていると、夏凜がようやく再起動したらしい。立ち上がり、私の両肩に手を置いて――――。

 

「――――と、刀太。今からキスをします」

「一体何の宣言だお前さん!?」

『ふみゅー!?』

「お覚悟を! ――――っ」

 

 無表情を装っているが頬が紅潮してたり若干ジト目気味だったり焦点が合ってなかったりそれこそ指摘事項は指数関数的に膨れ上がるのだが、そのまま強引に唇を近づけられても、彼女は口と口がふれる手前の位置で、目を閉じ、それこそ相当箱入りな生娘が勇気を振り絞っているかのような表情にまでなって、そこで動きが止まってしまった。

 息遣い。ほんのり漂うシャンプーの匂い。ふ、ふ、とわずかに気合でも入れようとしているのか、変な息遣いが聞こえるが、それでも彼女は動けないらしい。私は私でその振り払えない程の何故か強力な腕力(死天化壮とかはほんのり溢れてる神聖魔法を警戒して出来ない)で身動き取れず、そのまま眼前ミリ単位で固定されているお綺麗な顔を前に身動きが取れない。

 とはいえいつまでもこの体勢でいるつもりもないので、逆にこちらから息を「いつかのように」吹きかけ返した。

 

「はひゃ~~~ッ!」

「いやだから叫び声……」

 

 キャラ崩壊もなんのその、お姉さんぶっている声ではなく完全に愛らしい声音(つまり舌足らずな感じ)で私から飛び退き、両手で顔を覆って再びフリーズした。

 チュウベェと顔を見合わせると、まるで提出ギリギリの書類を送信する直前で社内のネットワークがクラッシュし全ての作業が水の泡となってしまったブラック企業勤めの悲しい戦士たちのような黒々とした目と無垢な表情。言外に「オマエガドウニカシロヨ、コレ」と言われているのは察するが。とりあえず夏凜の発言を一旦振り返りながら、整理して口を開く。

 なお口調は「私」から刀太に戻す。……というより素でこんな状態になった彼女の相手をしたくない(白目)。面倒くさい(断定)。

 

「…………あー、つまり? 今までのあの距離感は、本人的には『そういう』のを意識していたわけではないと」

「………………」

 

 顔を隠したままだが、首肯。

 

「いや、でも今までだってキリヱとか九郎丸とかから、なんか似たようなことっていうか、色々言われてたんじゃないッスか? それに対して違うの、とか色々言い訳付けてたような気がするっスけど……」

「…………外からどう見えるかと、私がどう思っているかは別なものだから。でも『貴方』本人がそう感じているとなると、少し話が違ってくるのよ」

「いや、それこそアレだろ。俺こそあー、要は『思春期』な訳だから。気が付くとよーく身体の欲と言うかは持て余すし、そんな距離感で迫られたら、勘違い? じゃねーけど、相手がこっちを好いてくれてるかどうかって感じるくらいは当然あるだろって」

『ふみゅー』(特別意訳:『まぁビッグブラザー「そのテの」本とか全然持ってないけどなー』)

 

 私本人からの否定に、しかし夏凜は「違うのです」と顔を上げた。

 

「…………いや何ッスかその顔、見たことないっていうか人間ってそこまでその……」

「…………恥ずかしすぎて愧死してしまいそうよ。いえ、まぁ自業自得なのだけれど」

 

 少し待って、と言いながら夏凜は首のリボンを外し、胸元のボタンを第二まで開けて……、ってだからそういう仕草が色々問題あるのだとわかっていないのか? 素か? やはりえっちが過ぎるのではこの女性、このエロさで鋼鉄の聖女とか無理では? いや今までが「独り」だったから逆にこう拗らせたという説もあるが。ともあれ開けた胸元に掌をうちわのような風にして仰ぎ、深呼吸。多少はマシな表情に戻り(それでも恥ずかしそう)、一度咳払いをした。

 

「とりあえず齟齬をなくす目的で……、夏凜ちゃんさん的には、今までどういう意図だったんスか?」

「…………私にとって大事な『先生』に、貴方を重ねていると言ったことはありますね」

 

 首肯する私に、照れながらも微笑みを浮かべる夏凜。いや、こう、そのレベルで抑えられてると表情の感じに大河内さんとかをオーバーラップさせてしまって色々と私も危険なのだが。とりあえず目をそらして続きを促す。

 彼女は腹の前あたりで指を絡めて手を組み、視線を落とした。

 

「私自身、こう、チョロい自覚はありますし、単純な自覚や絆されやすい自覚、惚れっぽい自覚もあります。そもそも雪姫様を尊崇する今に至る経緯も、『先生』にあの方を重ねた面が無い訳ではありませんし……、決裂する前の十蔵も…………、いえアレはないですか。

 まあ、他にも私に『イシュト』という呼び名を付けた男やら、色々いましたが。それでも、どれ一つとしてまともに『成った』試しが有りません」

「はぁ……」

「『成った』試しがない、というのは、私が『為せた』試しがないということでもあります。私は結局、関係する誰しもを幸せに出来た試しがない…………、それこそかつてから今に至るまで、『先生』に祓ってもらった(ヽヽヽヽヽヽヽ)にもかかわらず、私はずっと呪われた罪深い女なのでしょう」

 

 だから力になりたかったと。夏凜の一言は、そこに込められた感情は重い。

 

 総合すると、彼女は自分が人を愛する資格はないと――――愛そうとした相手を幸せにできた試しがないのだから、そんな私は人を好きになるべきではないと。そう自覚しているからこそ、自分は誰かを好きになることなど有りえないと。そういう考え方に至ったということなのだろう。

 その割に原作での雪姫に対する空回っていたアプローチの数々が脳裏を過るが、とはいえあれは考えてみれば雪姫――エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが未だに生きているからこそ、なのだろうとも考えられる。ある意味で原作の夏凜は、今度こそはという意気込みが強いのだとも言える。だからこそ、彼女と仮契約をしようとして、その「神の愛」、自らの不死性の根幹たる「先生」からの後押しが雪姫を拒絶した時の、その絶望ぶりというのはすさまじく大きかったのだ。 

 

 変な形で感情の振れ幅のようなものが分かってしまい、嫌な汗が流れて来る。……そもそも彼女の語るその話自体、原作「UQ HOLDER!」のそれと全く同じかすら最近は疑い出しているのだ。ガバはどこにでも潜んでいるからね仕方ないね(諦観)。(???「すっかり疑心暗鬼が板についてきたねぇ」「先輩も悩むだけ無駄な話ネこれは……」)

 下げた頭を上げない夏凜。もう顔は赤くない。そこにある感情は、声音の通りのどこかほの暗いジメジメとした気配を帯びていた。

 

「だからこそ、私自身そういう感情は抱くことはないだろうけれど、それでも『貴方が』求めているように、受け入れてあげられるだけの何かを返してあげたかったのですけど……、そう感じられていたのだとするなら、それは私にそういう心があるということですから。

 これでは結局、何も変わりない――――」

「…………いやー、まー、そういう訳でもないとは思うッスけど」

 

 私の一言に、夏凜は口をつぐんだ。

 

「そこら辺がどういう感情だったかとかは今更考えないッスけど、でもまぁ……、上手く言えないッスけど、それで確かに『私』が救われた面もあったんでしょうし」

「救われた……?」

 

「――――貴女が察しているように、『私』の人格は色々と複雑なものであるから。だからこそ、ある意味では不安定である自覚は大きい」

 

 いくら近衛刀太に寄って振舞おうとしたりしたところで、本来の私の氏素性「であろう」それが、必ずしも今の私を肯定してくれるとは限らない。既にキリヱに五万回以上も周回させてしまった前科もあるし、それに伴って「自分ではない自分」との意識の統合という工程すら経過した。ある意味でそれは、本来であれば「私」にとって自己認識崩壊(アイデンティティ・クライシス)そのものであるが。それをしてなお立とうとして、立つことが出来た理由に周囲の人間たちとの関係がなかったとは言わせない。

 

 そして夏凜に限って言えば――――。

 

「……いたずらに全肯定とか、そういう訳ではないとは思うけれども。それでも、私が今ここにいること、そのことだけは全力で貴女は肯定してくれていたと思う。

 ある意味で雪姫にすら話すことのできないところに、察していても、そこまで大きく追い詰めるようなことも最初以外はしなかった。…………だから、それだけでも大きいのだ」

「それだけでも?」

「おいそれと話せる訳じゃないからな。私の――――『神楽坂菊千代』という曖昧な自己認識は」

 

 だから、そこだけは感謝を。

 彼女の抱えるそこに、その全てにどうこう言う権利も何もない。それは原作の近衛刀太がそうであったように、今の私ですらそうである。ましてや彼女個人からその過去すら話されていない今の私が、何かを言える話ではない。

 

 だから、少なくとも。彼女が私にしてくれたことについては、それだけでも大きく、感謝を。

 

 その意図がどれくらい伝わったかは不鮮明だが。それでも夏凜は顔を上げて。……少し赤くなった目元を拭い、私に微笑んだ。

 

 

 

 その後、ルキやらアポやらスラムの相変わらず元気な子供達と再会して遊んだり、夕食を食べたり、寝静まった後に付近をパトロールしたりと色々あったが。ところでそれはそうと、夏凜が見ていないところでチュウベェが突然私の肩を叩きだしたのは一体何だったのだろうか。(???「そりゃアンタ、根本的な疑問やら問題の解決を全部放り出して肯定するだけ肯定したら何が起こるか自覚してないから焦ってんだろうねぇ」)

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 教会の手前で子供たちからわーわーまとわりつかれながら、ツンツン頭をした気だるげな眼をしたあの少年はシチューを配っていた。

 いい加減に私も「地上での」暮らしに慣れてきたところだ。人間のやりとりなど声を聞かずとも口の動きだけでもある程度判る。

 

『今日はギター持ってきてねーの?』

『九郎丸のお姉ちゃんは?』

『悪ぃがどっちもねーなー。ただ手品は新しいの出来るようになったけど』

『それより勉強教えてくれよ! チャン刀兄ちゃん』

 

「……フフ、中々慕われているようじゃないか」

「いや、ただの女の敵でち(ヽヽ)

 

 私の感想に、隣の「彼女」は気に入らないのか舌打ちまじりに応えた。唾でも吐き出しそうなほどに嫌悪感を隠そうともしない。私とは異なり双眼鏡を覗き込む彼女は、そのままリュックサックから、こう、味が非常に独創的なことで有名な栄養ドリンクを取り出して、キャップを開けてストローを入れた。

 …………まぁその変な飲み物を好む嗜好に思う所はあるが、あまりとやかく言う話ではあるまい。私は彼女の、私の腰より少し上くらいにある頭を軽く撫でながら話を続けた。

 

「そうは言うがな。あの我々にとって『天敵』とも言わんばかりの女を上手い事言いくるめるのなど、並の所業ではいと思うがね」

「そんなこと関係ないでち。子供とかに優しいのは素だと思いますけど、女心を察して、それを中途半端に踏みにじって絆しにかかるのなんて女の敵に違いはないでち」

「中途半端ということは理解しきれていないという意味ではないかね。私が擁護する話ではないだろうが、可哀想ではないかね」

「知らないからと言って済まされる話ではないでち。責任をとるつもりもないのにそんなことするべきではないでち」

 

 責任云々は私の年でそうこう話すことではないが、この娘は先ほど「真実の目(テリティウス・オクゥス)」であの少年を捉えた。一体何を「視た」のかまでは定かではないが、直接会うまでの微妙な表情から嫌悪を浮かべるようになったあたり、あまり良い物ではなかったのだろう。

 まあ、別に私からしても彼の心象がどう悪くなろうと、あまり関係はないのだが。……とはいえこの娘含め、あのネギ・スプリングフィールドの縁者であるのだ。家族同士でも自分の宿命(サガ)次第で殺し合うのが「魔人」といえど、程々で止めなさいと思う程度には、私も人間界での生活が長くなった。

 

「では、どうするのだ? サリー(ヽヽヽ)。言った通り私は君の保護者だが、()の依頼は受けるつもりはないが」

「そんなもの、決まっているでち。今日は実行しても失敗するでしょうから手は出さないでちが――――『闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルや、『万能射手(アルカナ・サジタリウス)』龍宮真名などに気取られるより先に、あの兄弟を鹵獲するでち」

 

 言いながら彼女は、飲み干したビンを放り投げ腕を組みニヤリと微笑み…………。そして、得意げに表情を()めた後、数秒で目を丸くして「でちッ!?」と情けない声を上げた。嗚呼またかと、私はため息をつく。

 

「も、漏るでち~~~~~ッ! お花、お花をつめる場所は何処でち~~~~~~~~!」

「…………『それ』さえなければ、先日とて件の二人も仕留められただろうに」

 

 まあ私も「石化」でサポートしてやることはなかったのだが。親代わりとしては、この小用の近ささえどうにかなってくれればと、何にとは言わないが切に願うばかりであった。

 

 

 

 

 




活報の[光風超:感想1000件(大体)突破記念募集] の方もまだまだ内容募集中ですナ!
期限決まりましたので、ご注意くださいっ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。