ガバの代償を負うでち公と、親の介入的なアレ
ST134.Steele Blood Stream
『ガバの塊じゃないかな、こう。容姿的に似ていないわけだから、そういう所ばっかり似なくても……』
「いや、近衛刀太相手はともかくとして『私』とは二人そろって血はつながっていないのだから、そもそも似ている似ていないという次元の話ではないだろう」
『魂的にはそういう訳にも……、あっ、いや、まあいいかな』
「オイ何今言いかけた」
『だ、だ、大丈夫、大した話じゃないってば。…………でも、二人とも似ている所は有ると思うよ? 懲りずにガバ生産し続けるところとか、あとは中学二年生が誇大妄想抱えているときに夢想していそうな無双的センスとか』
「フォローするように人の心を抉ってくるの止めろ(マジレス)」
男の子の心はそういう部分で割とデリケートな部分である。男女平等がうたわれてから随分時が経ち、とはいえ出生率の低下やら何やらで色々と制度も社会情勢も右往左往してしまった2080年代現在であるが、そうはいっても女の子が男の子の心を慮って立ててくれると割と男の子は頑張れちゃったりすると思うので、そこのところは大事な概念である。三太とか見ていると。
『逆もまたしかりだと思うけれどねー。あの夏凜さんとか』
「いや、とはいえあんまり頑張りすぎも良くないだろうって。ある程度でバランスは必要かなとは」
『そういうかじ取りが、ある意味で相棒が鬱にならないで済んでるところなのかもね。……まあ、あの聖女さんに関してはちょっとどうかと思うけど(前までは母性が勝ってたけど今完全に異性が勝って捕食者の目になってる時があるし)』
「いや精神世界でボソボソ言われても聞こえないんだが」
『聞かせようと思ってないからね。いやー、でもそれにしても…………、被っちゃったねー、仮面』
「被っちゃったなぁ、仮面」
被ってしまったんだよなぁ……。まぁ『内側』から見ているので、外からどう見えているかまではわからないのだが。なお現在「暴走した近衛刀太」に追われている「カトラスとサリーの二人」を、その追っている側の視点から見ている私と星月であるが、特にその状況に何か言うことは無い。しいて言えばすべてはサリーのガバであってそれ以上でも以下でもないのだ。
普段のように変色した空とスクラップ置き場と軌道エレベーターのようなそれが見える場所……、立地的にはさっきまで私たちがいたあそこの近くに似たような場所もありあそうな気はするが、そんな場所で空を見上げて、私と星月はそろってため息をついた。
いや、星月に関してはほぼほぼ大河内アキラの容姿をしており、何の気を違えたのか知らないがマントの下がスクール水着になっていたりしてお前もお前で一体何が何なんだという話なのだが。
さきほど何が起こったかと言えばシンプルで。カトラスに勝ち目がないとみたサリーが、私の胸に風穴を開けて「
しかしこう、外では相変わらず
なにせ風穴をあけられた胸元から延々と「金星の黒」の魔力を捻出し、それを起点に血装術による疾風迅雷以上の「瞬間移動」めいた高速移動。もともと死天化壮自体が血装術による排出血液の座標移動をベースの技術としているため、本能に振り回されている(割には明確に殺意のようなものがあるような容赦のなさ)私のそれは、もはや人間の判断速度を超えている訳で。
突然現れたような状態の私相手に、サリーもカトラスも明らかに翻弄されていた。サリーに至っては黒棒を適当に使っているが、その動きの拙さを目掛けて集中的に攻撃している私らしい。まあ純粋な獣として考えると、相手の弱い所を集中攻撃して仕留めるのは理には適っているのでその動きも判らなくはないが、それはそうとして自重しろ闘争本能。誰か抑えてくれるオッサン求む(四文字)。
『その、私はそういうの得意じゃないというか……(そういう意味だと「私」は近衛刀太に負けている立場だから……)』
「それはそうと、これってあの時みたいに解除できない?」
『難しい、かな。その、暴走状態の相棒自身の練度が上がっちゃってるせいで、血を使って干渉して意識を戻そうとしても逆に封じられちゃってるって言うか……』
「致命傷じゃないか……」
いやこれ下手するとどっちか殺してしまうかもしれないんで、そろそろ一肌脱いでくれませんかね師匠ォ!? 無敵の時空干渉能力でなんとかしちゃってくださいよ師匠ォ!(???「そういうのは私よりはキティに頼んでおくんだね」)
そもそもサリーもサリーである。胸に穴が開いて呻きだし仮面が形成され始めて明らかにヤバイ気配ぷんぷんの私を前に、唖然として後退するカトラスめがけてマウントとろうとしてるとか。しかも血装術で作った首輪をこちらにかけて、私の血に干渉して操作しようとするが。はっきり言って「統合前」ならいざ知らず、キリヱ大明神から受け取った「私」と統合された今の私にとって、お前のそのレベルの操作術など全然大したことがないのだ。
『でち公、お前それ、いや止めろよそれ、洒落にならねぇから…………』
『何を怖がっているでちか? フフン、こんなもの「特化型」の私の手に掛かればほら、この通り――――これで姉サンの好きにはさせない、で、ち?』
『――――――――――――――――ッ』
たとえ「私」がしっかりした自我をもって操作しないにしても、それこそ暴走しているからこそ本来より容赦なく、サリーが行おうとしていた操作を振り切ってその場で足を掴み、猫と鼠がワーキャー言って戯れながら命のやり取りをする友情のようなそうでもない物語かのごとくビタンビタンと妹を叩きつけまくって純粋な物理暴力を振舞う悪魔の姿がそこにあった訳だ。
『痛っ、洒落になってないでち! 死ぬでちー! こんなの死ぬでちー!』
『あーもうっ、世話の焼けるッ!』
なおあまりに見て居られなくて救出するカトラスと、その直後に一目散に逃げたサリーが今の状況である。
スクラップの山の隙間をかいくぐるように走る二人の妹と、それを本気で殺そうとでもしているかのような暴走状態の私である。原作のようにただ無目的に攻撃をしている訳でなく、明確に「殺意の波動」にでも目覚めて居そうなレベルで一切合切容赦のないこちらであるからして、流石のカトラスも封印とかそういう手段をとる余裕がないらしい。
というかおそらく、四肢を固定したらその瞬間に傷口から血風放って無効化して首捕まえそうだし、この状態の私(震え声)。
『こんなはずでは……、何なんでちか、何でこっちの血装「乗っ取って」くるでちー! 漏るでち、こんなものに追われたら夜トイレいけなくなって漏るでちー!』
『おいでち公お前のせいだろ何とかしろー! お前のせいだろどう考えても、何勝手に怖がってんだよ! くそッ、『
お互い敵同士でこそあるがそれ以上に私が厄介な状態になったせいで呉越同舟めいているカトラスとサリーであるが、涙目で表側からパンツを押さえているサリー相手に追い詰められている時の私みたいなテンションのカトラスはコンビとして絶対やっていけない(漏らさせそう)。しかし死ぬとかよりも漏れる方を気にしているあたり、あっちの妹も妹で割と余裕がありそうだった。
なおカトラスもカトラスで、以前よりは本当に余裕があるらしい。輝く左手をぶんと払い、私の身体にまとわりついている追加装甲のような悪魔めいたシルエットと化しつつある死天化壮本体に一撃を与え…………なんで与えた傍からその箇所より血風が生成されているんでしょうか暴走状態の私の人体(震え声)。弾き飛ばされるカトラスを一瞥すると、距離的に近いせいもあってかサリーの方へ目線がロックオンされる。
『ひぃいいいいい! く、さ、去るでち! こんなの、私の尊厳がどうなっても良いでちか!? 漏るでちよ! 漏れちゃうでちよ!!?』
「だいぶ混乱して来たなあっちも……」
『というかいい加減にするでち、こんなのだったらさっき調子に乗って色々飲むんじゃ――――あっ』
「『――――あっ』」
へなへなと、女の子座りでその場に崩れるサリー。その動きがあまりに理性やら何やらで判断したそれではなく、本当に唐突だったせいもあったのだろう。ラリアットのように動いていた暴走状態の私はその首を獲るようなこともなく、しかしその絶望感が強すぎたせいか手放した黒棒だけはちゃんとキャッチする。暴走状態でもちゃんと自分の武器は確保したがる辺り、やっぱり戦い辛いのだろうかこの魔天化壮。
そして、刃を手にした私を前に、サリーは立ち上がり。……って? いや、お前さんその両目、白目と黒目が反転しているみたいになって明らかに人間的なそれではなくなりつつあるのだが? というか何処から取り出したお前さんその「頭にかぶった」笠みたいなやつ。羞恥に震えているところ悪いが、他の要素が気になりすぎてそれどころではないのだが。
『…………バアル様などもはや関係ないでち。もう、兄弟など殺して私も死ぬでち~~~~~~ッ!』
「自業自得なんだよなぁ(煽り)」
『怒り方に血筋を感じる(煽り)』
思わず星月の方を見たが、彼女は彼女で視線を逸らす。意外と上手い口笛を吹いて完全にごまかす姿勢だがまぁそれはそうとサリーの方である。キレ散らかしながら、その変貌しかかった状態で私に斬りかかろうとして。
しかし、サリーの剣がこちらに届くことはなかった――――すなわち、「折れた黒棒」の先端に形成された「血の刃」が、サリーの脳天を貫くことは無かった。
「…………いや、この娘は『継承先』が決まっているものでね。そう簡単に殺されては困るのだよ。ネギ・スプリングフィールドの孫よ」
私とサリーとの間に、高身長の黒ずくめスーツ型の老紳士が、帽子の位置を整えて呆れたように笑った。
…………えーっと、その白いお髭と髪型は確か、ヴぃ、ヴぃ……? 駄目だ一回しか出てないからちょっと名前思い出せない……。
『ヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・ヘルマン。自称・伯爵、没落「貴族」だけど本来は上位魔族だね、相棒』
あーそうそうヴィルヘルム――――ってどう考えても魔界関係者というかバアル関係者だろこのタイミングでの登場と言うか「ネギま!」踏まえてのお前さんの立ち位置!? というか「UQ HOLDER! 」原作の方で出てこなかったくせにどうしてこっちで出て来たお前さん!!? 当てつけか何かか!
※ ※ ※
意識を取り戻して上半身を起こす。両腕はまだ「解除」されていないから、そう深手を負って「均衡」が崩れた訳じゃないらしい。と、それを確認して「お兄ちゃん」がどうなったかって思って――――。
立ち上がって周囲を見渡すと、あのでち公といつか見た「悪魔みたいな」お兄ちゃんの間に、脚がスゲー長い爺が立っていた。
爺は妹が被ってた笠みたいなのを手に取る。と、ボロボロと崩れて砂とか粒子みたいに風に乗って散っていった。
「
「でち……」
「それから、『漏らした』ことについては訓練してもなおらないなら初めから飲むなといつも言っているだろうに」
「でちっ!? な、何をいうでちか! 私に死ねというでちか!!? あ、アレでちよ! アレアレ、人間っていうのは生きるためだけに生きるにあらずでち! 生きがいを奪うとかマイクロマネジメントでちよ!」
「いやそこまでかよ……」
なんだかスラムでたまーにキレていたお兄ちゃんを思わせる感じの表情の感じに、なんでか内心少し不機嫌になる。
「真正魔族を目指しているくせにその物言いでは、『観測』あたりからまたダサい
「で、でもこれは譲れないというか……、そもそも『味がしない』のに生きてるって実感を教えるために習慣づけたのは『義父』の方でち」
「私とてまさかそこまで耐性がないとは思っていなかったがね。
さて……、それはそうとしてだ。オトシマエと言うのはつけなければならないが、ふぅん?」
なぜか動かないお兄ちゃんだったけど、妹に突き付けていた刀をそのまま振り上げて爺の肩を下から斬り上げた。でも爺は爺で傷ついてねーし、斬られたところは血じゃなくて黒い影みたいなのが煙みたいに立ち昇ってる。そのまま爺は顔色一つ変えずにお兄ちゃんを蹴り飛ばして、遠くに――――行くかと思ったけど、いつの間にか出来てた「血の尻尾」が爺の脚に絡まっている。驚いた顔の爺はそのまま空中で止まったお兄ちゃんに引っ張られて、びたんびたんってゴミの山に叩きつけられていた。
「悪魔パンチする暇も無しか。んー、『あめ』『すらむぃ』『ぷりん』。君たちならば粘液生物だから物理攻撃は――――」
『ムリー!』『ヤバイって言ったらヤバイかラ』『っていうかー私ら出たら間違いなくあの血のやつで消し飛ばされて欠片も残らないゼ』
「おっと――――っ」
「いいとこなしすぎでちさっきから!!?」
振り上げられた瞬間、爺はお兄ちゃんの「血の尻尾」を切断して、同時にその手元に「丸っこい」仮面みたいなのを取り出す。その口の部分が展開して、光線が放たれて――――たぶん魔法攻撃なんだろう、それを浴びたお兄ちゃんの身体が、石みたいになっていって。
でも、数秒で石とか岩とかそーゆーのを叩き割るみたいな音がして、お兄ちゃんは仮面を握りつぶした。
そのままほぼゼロ距離で、先端が真っ赤になって折れた部分が再生したみたいになってる血の刃で、その血の刃自体があのなんかブーメランみたいなのに変化して、爺の下半身を消し飛ばした。上半身、しかも胸から上だけになって、ついでに仮面ごと手も砕かれた爺はそのまま刀で斬られるようなノリで地面に叩きつけられて、妹が声を荒げる。
「でち!?」
「んー、なるほどな。では逃げるとしよう」
私だけ「召還」されて逃げる訳にもいくまい、と。そう言って爺は無事な方の手で妹を掴んで、そのままズブズブと影に沈み込み――――それを逃がすような今のお兄ちゃんじゃない。高速で爺たちの前に現れて、そのまま刀を向けて巨大なプロペラみたいにブーメランのアレを展開して――――。
「で~~~~ち~~~~~~ッ!!?」
結局、たぶん逃げ切れたんだろう。お兄ちゃんの一撃に肉片とかそういう「嫌な」感覚が乗ってなかった。周囲に飛び散った瓦礫片を見ても血の跡とかは見当たらない。
そして得物を失った、ガイコツなんだか悪魔なんだかよくわからない頭のシルエットしたお兄ちゃんは、その視線を私に固定して。
「あっヤバ――――」
だから私が構え直して反応する前に接近してくるの止めて! 怖い!
眼前、30センチも距離がないくらいの位置にいきなり現れて、そのまま振り上げた刀を振り下ろそうと――――。「左」で受けて、その先端の血だけは分解して、また腕切断だけは免れたけど、さっき妹相手にするように「装填」していた右を翳して、魔力の砲撃をしようにも、背中から生えて来たみたいな「もう一本の」腕が空へと無理やり向けて、距離を取ることを許さない。
オイオイ本気かよと。私の首を捕まえて、そのまま剣先からあのブーメランみたいなのを生成して向けて来るお兄ちゃん――――。
「……あー、まぁ、悪くはないか。別に」
でも、不思議と私の心は澄んでいた。今にもお兄ちゃんに殺されそうになってるっていうのに、そこにどう考えてもお兄ちゃん自身の意志も無いって状況なのに。
それでもどうしてか、不思議と満たされていて――――だから、思わず。
「…………結構、嫌いじゃなかったぜ? お兄ちゃん」
『――そういうのは、本人の意識が戻ってからやるべきだと思うぞ。
「狙ってるなら」猶更、な』
私から思わず零れたその言葉に、知らない誰かの声が投げかけられる。と、その瞬間にお兄ちゃんの全身は、私を捉えていた右腕以外「凍結した」。巨大な氷に呑まれ、囚われ、身動き一つできない状態で。その腕を「蹴り砕き」、その
転がった先でハマノツルギ・レプリカを作り出し、右手で杖替わりにして立ち上がる。身体的な痛みよりも、困惑と状況に混乱している。だってあの少女、十歳くらいの「綺麗な金髪」をした少女の姿は、誰がどう見たって。
「エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル……?」
『ほぅ、知っているのか。
まあ「本体じゃない」から、私はお前が誰なのかとか全然知らないが。
……それより気を付けろよ、すぐ「戻ってくる」ぞ』
言いながら、そんな、十歳くらいにしては妙にエロい感じに透けてる黒いネグリジェに裸足な姿のまま。砕ける氷の中から現れる、相変わらず悪魔みたいな姿のお兄ちゃんを前に、ニヤリと嗤った。
『本体もお守り代わりに仕込んだろうに、まさか本人の暴走を止めるために出て来ることになるとは……。
ぼーやでも、もう少し落ち着きがあったぞ?
なぁ、トータ』
私が言えたことじゃないけど、こう、凄い性格の悪そうな笑顔だった。
活報の[光風超:感想1000件(大体)突破記念募集] の方もまだまだ内容募集中ですナ!
期限、本当にそろそろですので、ご注意くださいっ!