光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ!
今回はちゃんと本編・・・、ところどころクリスマス期に更新しようとした名残が見え隠れしてます汗


ST136.白い世界

ST136.White Out

 

 

 

 

 

 

 雪姫なんて偽名を名乗って、お兄ちゃん達不死者共を良いように扱っている首魁、「闇の福音」エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。最終的に私たちの製作者に対して対抗する道を選んだけど、もとはと言えばソイツの後押しもあって私やお兄ちゃんたちは生まれるに至った。

 かつてスラムでも大人の姿で相対していた、そんな奴が目の前にいるっていうのに、私はその変にじめじめしたみたいな表情を見て、文句の一つも何故か出せなかった。

 

 と、ソイツが私の方を振り向いて嫌な感じに嗤う。

 

『オイ、名前を教えろ。

 本当にお前が誰か知らないんだ、私は。

 こう、「本体じゃない」からな』

「へ? あ、ああ。テナ・ヴィ――――いや、カトラスだ。

 ……って、何? 本体?」

『色々事情があってな、カトラス。

 私はかつて相当雑な理由で作られた人工精霊なんだよ。

 もっとも魔力はともかく、実力他は遜色ない自負はあるがなぁ。

 あっちみたいに「弱体化」もしていないし』

「弱体化って……、いや、それは別にいいんだけど。

 アンタ何だ? っていうかいつから居たんだ。なんであんな、お兄ちゃんが暴走した状態で出て来てんだよ」

 

 その前に止めとけよという私の一言に、カカカとその人工精霊は腹を抱えていた。

 

『それは許せ。

 トータが危険にさらされたとはいえ、起動のための魔力すら封じられていた身だ。アイツの胸が粉砕されて、それでようやく式がスタートしたが、いかんせん隙がなくってな』

「…………お兄ちゃんの魔力をベースに実体化してんのはわかったけど、それで?」

『かつてルーマニアで野良吸血鬼を一匹仕留めたことがあったが、あれより酷い。

 まさに戦闘用に調整された殺戮マシーンのようなものだろう――――っと』

「ッ!?」

 

 瞬間、また少女姿の人工精霊に蹴り飛ばされる――――今度は上だ。と、私たちがさっきまで居たところに平然と悪魔的なシルエットのお兄ちゃんが立っている。たぶん数秒遅れたらそのまま刀を振り下ろされるか何かしたんだろうってのがわかるくらいに、その移動と出現は唐突すぎて違和感しかなかった

 

『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!

 ヒュバクソン・テーン(契約に従い)・ディアテーケーン・アクソン・メ(我に応えよ)

 アイオニア・バシリッサ・トゥ(闇と氷雪と)・スコトゥス・カイ・テース・キオノス(永遠の女王)――――』

 

 人工精霊は今時何故か呪文詠唱しながら、光の弾みたいなのを兄サンに打ち込む。それを右腕だけ振り回して振り払い、視線が私たちの方に固定されて――――。

 

『―――― 終わりなく白き九天(アペラントス・レウコス・ウラノス)!』

 

 ギリギリ詠唱が終了したタイミングでお兄ちゃんが私たちの眼前に現れて、そのまま人工精霊を切り裂こうとした。いくら高速といったって流石に距離が離れてれば、私も多少は準備ができる。「左」の方の魔法無効化能力の範囲をお兄ちゃんの血装術めがけて直線状に広げると、それがぶつかった刀の刀身が血に戻り中折れしたままの黒い刀に。振り回す速度が速すぎたのと重量が変わったせいか、ものすごい勢いで空ぶるような動きになっていた。

 それに併せて、お兄ちゃんが突然発生した竜巻に呑まれる――――。それこそ瞬間移動めいた速度で竜巻から逃れようと行ったり来たりしてるけど、そのお兄ちゃんの速度に一瞬だけ遅れるように、竜巻から伸びていく氷の蔦と雷みたいなのが延々と追跡していく。吹き荒れる防風、周囲一帯に飛び散る氷の欠片のせいもあってか、露出していた肌が妙に肌寒い。

 

 結果何が起こるかって言うと、スクラップの山が凄い凍る――――ここだけ局所的に嵐みたいなのに襲われながら。

 

「な、何だよアレ……」

『…………チッ、速度だけで言ってもギリギリか。

 となると仮に捉えたとしても、脱出されるのは時間の問題だな』

 

 思わず引いた私に答えないで、ぶつぶつと何か独り言を言う人工精霊。舌打ち、そしてお兄ちゃんが雷撃を受け、その全身に氷の蔦が絡まり。そのまま数秒で動けない状態まで雁字搦めになって、全身が凍結した。

 

 

 

 …………それから数秒もしないで、段々と周囲が暑くなってきたんだけど。

 

 

 

 気象が色々狂ってる秋とはいえ氷魔法を連発されていたから普通に寒くなってたんだけど、それがまるでいきなりお風呂のお湯でもかけられたんじゃないかってくらい熱くなってきた。そして凍り付いたお兄ちゃんの、その氷の塊が汗をかき始めて……。

 

『やはりか全く。

 作戦会議するくらいの時間は作りたいところなのだがなぁ』

「何だ、コレ……? アンタ何か知ってんだろ、人工精霊!」

『嗚呼落ち着け、別に隠しはしない。

 隠しはしないが、お前、科学とかそういう話に頭痛めないタイプの女か?』

「は?」

 

 全く予想外の、というか意味の分からない質問に困惑すると、人工精霊は大きくため息をついた。

 

『さっき使った魔法「終わりなく白き九天」は、対象として設定した相手を延々と追尾し続け、捕捉した後その本人の魔力の揺らぎをもとに、延々と本人の体内と周囲から「生命エネルギー」を吸い上げ凍結を続けるように出来ている。

 もともとは魔法障壁頼りの連中を一網打尽にするために派手に作った術「らしい」が…………、吸い上げる量が量だから、術で発生するマイナスの温度と相殺しきれないんだろう』

「え? えっと、いや、何でそれがこんな凄い蒸し暑いみたいな状態になるかって、さっぱりわからねぇんだけど……?」

『ハン!

 やはりこの手の話は苦手か、そんな感じはしたが』

「どういう意味だよ」

『落ち着け、バカレンジャー最下位(バカアスナ)相手でも解るくらい簡単に説明してやるよ。

 基本的にエネルギーってのは7種類――――運動エネルギーだったり位置エネルギーだったり電気エネルギーだったりと色々あるが、こういうのは最終的に熱エネルギーとして転換されるものなんだよ。

 いわゆるカロリーってやつだな。

 まあ「気」だの「魔力」だのってのは術で転換される前の生命エネルギーの時点では「科学エネルギー」に分類されるが、これとて何かしら現象を引き起こせば熱を発生させる。

 で、本来なら発生した熱がどれくらいであろうとあの術で生成する冷気だの氷だので相殺してなおかつ再拘束が間に合う訳だが…………、あの馬鹿は「あの」状態で無理に動こうとしたり、そのせいで無理やり運動エネルギーをかけて身体が損傷したのを再生したりしているんだろう』

「…………?」

『つまり、あの拘束状態を私たちが視認できない速度で無理に動いて解除しようとしたりしているってことだ。

 その結果、延々と溜まった魔力が奴自身の体温を上げるだけじゃなく、周囲へとじわじわ伝播しているってことだろう。

 いや? むしろ「金星の黒」の仕様からいって、それだけの熱を体内に込めていると身体が融解するから周囲へと拡散させて安定させ、その拡散させるって化学反応でまーた熱が発生していそうだが……』

「いや、えっと、………………とりあえずヤバい?」

『…………まぁ、とりあえずヤバいってことだ』

「わかった」

 

 馬鹿を見るような呆れた目でこっちを見て来る人工精霊だけど、なんかこう、言ってることはわかるような、わかんないような、微妙な感じだし。それを自分の言葉に置き換えて説明とか出来る気がさらさらしないから、今回はなんかそんな目を向けられても仕方ないような気になってくる。

 いや、だって別に戦場じゃ熱は殺傷兵器の結末でしかないから、回避する手段と暴発させない手段だけ覚えて居れば良いものだった訳だし…………。左腕ぶった切れた時は、再生しなかった上に焼き潰されてそのまま再生治療の余地すら全然なくなっちゃったし。

 

「まあそれは判ったけど、結局どーすりゃ良いんだ? あのままだとお兄ちゃ――――あっ、に、兄サンにまた絶対ぶっ殺すって勢いで追われそうなもんなんだけど」

『…………とりあえずお前の教養レベルでわかるくらいに作戦を教えてやるから、こっちに来い、カトラス』

「お、おぅ…………って、その生温かい目は止めろ。流石にそこまで馬鹿じゃないから」

 

 人工精霊に、まるで初めてつかまり立ちが出来た赤ちゃんでも見守るような感じ? のヘンな目で見られて、思わず反発した。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 ヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・ヘルマン。略し方としてはヘルマンが的確だろうが、「ネギま!」における彼は何であったかと言うとやとわれの中ボスであった(雑)。立ち位置的にはどの陣営と言う訳でもなく、純粋に悪魔あるいは魔族として地上に召喚され、与えられた指示を全うしようとした。本当にそれだけの敵なのだが、彼がおそらくかつてのフェイト陣営に使役されたことやら、このタイミングで序盤敵として登場した小太郎と合流し共闘したことなど、イベントとしてみると意外と色々とあったりした。なおこの際にエヴァちゃんは「ぼーやの成長をみるため」とかいって手出しせず、しかしいつ何が有ってもすぐ助けられるよう近くでハラハラ見ていたりとかそんなオチもあったりしたが、キャラクター要素として言うとそこまで取り上げられた人物ではないという話なのである。

 とはいえ、彼自身はネギぼーずとの因縁が意外と深いのだが、それはともかく。そんな彼にサリーが養育されているっぽい描写が入るのは、まあ納得できないまでもないが、それはそうとして途中に上がった「ザリーチェ」と言う名前について……。

 

『あ、あの、相棒? 現実逃避しているところ悪いんだけど、大丈夫? 結構大変なことになってるけど』

 

 思わず考える人のポーズをして沈黙し始めた私に、大河内さんビジュアルの星月はちょっとだけ頬を赤くしながら焦った様子で空に投影されているこちらの視界の状況を説明したりしている。何というか、その振る舞い自体には本当に大河内さんらしさを感じてカワイイとしか言いようがないのだが(本音)、それはそうと私はお前自身に対して一定の心理的ボーダーラインを張ってるからあんまりそういうことするな(建前)。

 

「とは言ってもな。こちらから、今の身体の方は干渉できないのだろう? なんなら人工精霊の方のエヴァによる攻撃すら、ギリギリ躱しているようだし」

 

 一番の問題はこれである。いつどこで仕込まれたかは全然気づいていなかったが、どうやらどこかのタイミングで人工精霊のエヴァンジェリン……、「ネギま!」においてはネギぼーずが「闇の魔法(マギア・エレベア)」習得に際し、ラカン(公式バグキャラ)が持っていた巻物に封じられていた存在である。いつかの時代までのエヴァンジェリンの人格を有し、魔法世界編には出演できなかったエヴァちゃんの代理をこなしてネギぼーずに修行をつけたり闇の魔法の修練に付き合ったり、ついでに言うとネギぼーずから「そういう師匠も好きですから!」的な発言をされて顔を赤らめていたりと(可愛い)、魔法世界編においては引っ張りだこだった彼女だが。

 以前の混沌ここに極まれりなお料理対決的な時に出てきていたのをふまえると、どうやらあの後は回収されていたらしい。もっともその後のことについては、本人の弁が正しければ麻帆良の別荘に放置されていたとみるべきか。

 

 それはそうと、私の確認に星月が深くため息をついた。

 

『というより、えーっと何て言ったらいいかな。……1周目? の相棒の魂がいくらなんでも頭がおかしいっていうか。あまりの修練規模の影響が強すぎて、相棒本人に自覚が無くても肉体面にも結構影響が出てるというか』

「こちらから干渉できないっていうのも、そういうことか」

『だね。むしろ、外側から血装をある程度封じてもらったりでもしないとかな』

 

 簡単に言えば檻を壊さないと出ていけないみたいな感じだね、と。

 今度は私がため息をついて、再度頭上を見上げた。

 

『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック――――って、前衛なんだからちゃんとやれカトラス』

『いや、いきなり腕六本にして殴りかかられたら対応できねーってのッ! というか、私だって「左」の方は長時間維持できないしッ!』

 

 …………とりあず頭上に映る光景の流れを思い返せば。人工精霊の方のエヴァンジェリンが出て来たかと思えば「終わりなく白き九天(アペラントス・レウコス・ウラノス)」を発動して暴走状態の私を拘束したものの、そのままどうも強引に力業でぶち破り、そのまま襲い掛かったのをカトラスと人工精霊とで抑え込んでいるような、そんな状態である。

 なお暴走状態の私に容赦の二文字は相変わらずない。唐突に腕を増やして殴りかかったかと思えば(おそらく阿修羅みたいな状態)、殴り飛ばしたカトラスが後退したと同時に増やした血で出来た腕を物理的に伸ばして、その伸ばした先から血で出来た上半身をさらに生成しタコ殴りにしている有様。本体も本体で黒棒から血風を投げて人工精霊のエヴァンジェリンをどうにかしようとしているが、カトラスの「左」側の影響もあってかヘルマン相手の時ほどの追撃は出来ていない。

 

 いや、それはそうなんだがいい加減カトラスの身体に痣が出来始めているのがちょっとその……。いやいい加減止まれこの暴走状態、兄貴ってのは後から生まれて来る家族を守るために先に生まれてくるんだろOSR的なロジックとして!(戒め)

 

『いや相棒、たぶん戦闘衝動的な本能はそういうロジックかなぐり捨ててると思うから……』

 

 そして人工精霊のエヴァンジェリンもエヴァンジェリンである。私側からみて、彼女の口元が時折吹雪くせいで変に見えづらかったり、あるいは声やらが絶妙に「ずれて」聞こえて何を言っているのかわかりにくかったり。何かしら自分が使用する術をこちらに悟らせないための措置なのだろうか、とはいえそもそも私自身、ラテン語も古代ギリシア語もどちらも未履修(当然)なので、詠唱が「長い」ってことしかわからないのだが。

 いや、まあ「長い」という時点で相当ロクでもない術である予想自体は経つのだが。おそらく何かしら色々と仕込んでいるタイプの「オリジナル呪文」なのだろう。先ほど使われた「終わりなく白き九天」もそうだが、基本的に既存の術を無理やり改造したタイプの術は、全体的に詠唱が長くなる傾向がある。もともと存在している古代呪文などの強力なタイプの呪文をベースにいじっていることもあるのだろうし、と予測は立つが単に担当者がいないのででっち上げただけの可能性もある(メタ)。とはいえ結果が結果ならなんらそこに問題はないので、果たしてどんな術が選択されるのやら――――。

 

『――――閉ざされし氷城(スクラギメノ・カスト・パゴゥ)!』

 

 

 

 そして、彼女がその魔法を発動した瞬間――――空から雪が降り始めた。

 

 

 

 いきなりホワイトクリスマスめいて地面に猛烈に積もり始める雪は、明らかに物理現象ではありえない速度で積もっている。とはいえ吹雪いているようなわけでもなく、光景としては違和感がある。早回しをした映像でもなく、ただ当たり前のように、世界は雪に覆われた。

 ただの綺麗な雪、とはとても思えない。なにせこの精神世界らしきどこかにいるはずの私ですら、その光景が見えた瞬間に四方八方全てから「嫌な感覚」が涌いてきている。おそらくそれは肉体の私も同様なのだろう、その場で立ち尽くし、人工精霊のエヴァンジェリンやカトラスに襲い掛かるのを停止してしまった。

 

 術の効果自体はわからないが、この感覚はさながら水無瀬小夜子のダイダラボッチ内部に侵入した時のような……。おそらくだが、この視界全域を覆う雪そのもの、その一つ一つ自体がかなり危険なブツなのだろうと予測は出来る。

 動けずにいる私を前に、そのまま人工精霊のエヴァは、カトラスの耳になにやら吹き込み…………。って、いや何やってんだお前さんいきなりカトラスの顔をロックして思いっきり唇奪いに行ったぞいやホントお前さん何だお前っ!!?(驚愕)

 

『――――って、な、む、むーッ!?

 …………っぷはッ! 何なんだ、いきなり何!!? 何で私、キスされたし! っていうかキスですらねーよ、何だよ何で私、唇噛み千切られてんだよ!!!?!?』

『カカカ。まあ気にするな。

 さっきも言ったが必要なことだ。

 さて――――』

 

 そう言うと、人工精霊のエヴァンジェリンは「どぷん」とその身を影に落とし。

 頭上に映る、私の視界――――髑髏に角と悪魔めいた仮面越しのそれが「砕け散り」。視界が一瞬真っ白になったことから、やはり雪に何かしら仕込みがあると見るべきだろうか。いやそうだとしたら、どう考えても危険極まりないが、その仕込んだ雪が周囲一帯を完全に覆っている訳なのだから。というかカトラス大丈夫だろうか(現実逃避)。

 そして再度眼前に現れたエヴァンジェリンの人工精霊は。

 

『まぁ、2度目だしな。喜べ?』

 

 そんなことを言って少し照れたように微笑むと、仮面が再生するより先に私の顔面に自分の顔を寄せ、目を半眼にしたまま…………。星月が顔を真っ赤にしながら、私にあわわわとしているがこう、色々とこう、何と言ったら良いでしょうか…………。

 

 

 

 気が付けば私は、元の肉体の主導権を取り戻しており。

 眼前には、人工精霊のエヴァンジェリンが『ご馳走様』と舌をぺろりとして、私の「湿った」唇をその綺麗な指で拭った。

 

 

 

 ……やはり神は死んだのでは?(震え声)

 

 

 

 

 

 




※アンケ内容についてはお正月に色々検討予定です。コメントあざますですナ!
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