毎度ご好評あざますナ!
アフロが、アフロがどんどん遠のく・・・(出番)。
ST140.Every Dog Has Its Day In LIFE.
「ごめんね~、昨日はせっかく来てもらったのに。ホラ、コタくん反省っ!」
「…………」
「返事!」
「……ま、まあ、悪かったわ。色々ピリピリしてたんは認めるけど」
「全く、まーたそういうこと言ってー。
あっ、味とかどう? 重くない? コタローくんのリクエストで、最近は朝は種もののお蕎麦なんだけど、上に乗ってる具。ひき肉とニラとニンニク炒め。ちょっとお腹に重かったりしたら、言ってね? 別なのに変えるから」
「………………」
「何よーコタローくん。さっきから凄い嫌な表情してるけど――――」
「…………あー、いや、なんか事情は色々察するところあるんで、あんまり責めないであげてくれると……」
思わず止めに入る私に、忌々しそうな、それでいてバツが悪そうな表情の犬上小太郎(イケメン)。どうやらあの独特な体型は、釘宮いわく「鎧」のようなものだそうで、こちらのおおよそ二十代後半くらいで、顎髭がそれこそ髪の毛に負けないくらいツンツンしているお兄さん的外見の姿が本体らしい。もっとも服装は巨体のものと共用らしいので、作務衣はだいぶガバガバとなっているが。
そんな犬上小太郎をポカポカ軽く殴っている(割には小太郎の方はいっさい反抗できていない)彼女は、御歳の割にかなり子供っぽいボタンのパジャマの上から、さきほどまで小太郎が羽織っていた半纏を借りて前を留めており、どうにも「服に着られている」感が抜けきらない。顔立ちは流石に中学生時代よりは大人らしいラインになっているが、そばかすやら含めてどこか子供っぽい部分も相変わらず。どこぞのこのせつやら隊長やらではないが、こちらもこちらで実年齢を無視した見た目をしている。また真ん中分けの赤っぽい色の髪は適当でオシャレに頓着していない……、というより寝坊か何かして慌てて寝癖を直してきたから、といったところなのかもしれないが、デフォルメしたら確実に黒目真ん丸な印象のまま小太郎相手にびしばしと色々と文句を言い募ってる。
翌朝、である。いきなり深夜に訪ねて来た我々に対して、彼個人の私怨とそれにとどまらない因縁とで軽く殺されかけたりしたが、孫の釘宮が早々に介入することでストップがかかり。そのまま居間に布団を敷いて雑魚寝して翌朝と相成っていた。時刻は九時を回っているが、ようやく朝食と相成っている犬上家にて、我関せずと遠い目をして朝食を食べている釘宮、箸の扱いがちょっと危なっかしいカトラスに、コタローくんからの視線が痛い私であった。
なお、彼の嫁はそれこそ旦那の不機嫌さなど完全無視である。
「大体コタロー君、この子って刀太くんって言うんだよね。確か『野乃香ちゃんの子』だったでしょ? なら一応『近衛』の本家筋って言っていいんじゃないのかな。『代理出産』でも、近衛って名乗らせてるってそういう意味があると思うよ?」
「そういう問題やあらへんわ、夏美。なんでもかんでも
「それでもー! 子供をこんな寒空の下、物騒っぽい地域に着の身着のまま無一文に放り出すようなことはやっちゃ駄目でしょ! ちづ姉の墓前に言いつけてやるよーだッ」
「あの、頼むからそれはホンマ堪忍してくれや……」
絶対枕に立って長葱ケツに刺しに来よるわ、と。コタローくんは自身の嫁――――犬上夏美に軽く土下座していた。
犬上夏美、旧姓は村上夏美。彼女については、何か話すことは……、話すことは…………、まぁ一応あるのだが個人エピとしてはそこまで決まり手がないというか(雑)、そういう扱いこそがある意味で彼女のキャラクターであったともいえる。彼女自身は「ネギま!」時代をみるなら「キラキラした主人公じゃない脇役」だの「どーせ全然成長してなくて子供っぽいですよーだ」といじけていたりしているが、まあこのあたりは年相応に成長していた彼女に対して、周囲が周囲だったせいもある(少年漫画的お約束)が、そういうちょっと小動物的な性格の人物であった。
当たり前のように2-Aおよび3-A所属の生徒であり、しかしネギクラスでありながらも彼女自身は小太郎との縁の方が深い。京都での修学旅行時にネギぼーずと敵対していた彼が諸般の事情から脱走、辿りついた麻帆良学園にて犬化してたところを拾ったことから縁が出来ている。ルームメイトの那波千鶴ともども、それから紆余曲折あり彼の保護者というかお姉さん的なポジションを継続することになり、魔法世界編において彼と仮契約。以降そのまま順当に関係性を深めていき、いわゆる「ハッピーエンド」のルートにおいてはめでたくゴールインしていた(嘘は言っていない)。
それこそ「UQ HOLDER!」においては小太郎関係は影も形も確認できなかったため、その後については色々と不確かではあったが、私が近衛刀太として今まで辿ってきた中では、釘宮大伍や成瀬川ちづという彼女と「同じ髪色」やら「そばかす」持ちがいたため、そこも確かにゴールインしていたのだろうと推測はしていたのだが。
実際にこう、思い切り尻に敷かれている様を見るとこう、生のこのせつを目撃した時のような何とも言えない謎の感慨がこみあげて来るものだった。
それはそうとしてお蕎麦「は」美味しいです(ニラひき肉だけ分けながら)。
なお横のカトラスがお残ししている肉を見てちらちらと気にしているようなので、特にアイコンタクトも交わさず彼女のそばつゆの中に入れてやった。ぱあぁっ! と嬉しそうな顔をするがお前さんホントお前さん…………、そういう表情それこそトロッコレースで近衛刀太追い詰めていた特くらいしか見せてなかったろう原作を読み直せ原作を……、原作…………。
いや読まなくていいよもう(諦観)。(???「そろそろこの娘に関しちゃ修正が効かない自覚が出て来たようだねぇ」)
と私の視線に気づいたのか、夏美姉ちゃん(鋼の意志で姉ちゃん呼び)は少し照れたように手を振って笑った。
「あはは、えーっと。近衛刀太くん、でいいんだよね? 私のこと知ってるかなー。村上夏美って言ったんだけど、当時は」
「あー、とりあえず祖父さんの教え子の誰かっぽいってくらいは推測が……」
「まー、そだよねー。私、そんなにネギくんとどうこうってあった訳でもないし、そんなに戦闘に貢献してた訳でも……、訳でも……、ハァ…………」
「い、いや、夏美姉ちゃん頑張ってたやろ? アレ、明日菜はん救出しに行った時とか」
「でも公式資料とかも残ってないだろうし、エヴァちゃんも教えてないだろうし、ハァ……。
えーっと、気を取り直して。その感じだと、ダイゴくんのお祖母ちゃんって紹介した方がわかりやすいかな?」
「……お祖父さんの修行が行き過ぎた時に、ストッパーによくなってもらっていたよ」
釘宮、遠い目をしながら追加解説。なおカトラスは話こそ聞いているようだが手が片時もお蕎麦を離れない。お前さんひょっとして金欠になってから数日本当に何も食べていなかったのでは……? いくら「金星の黒」が多少正常になったとはいえ、私ほど無茶は利くまいに。
もっと食え、とばかりにお肉を追加してやりながら、話を続ける。
「そのあたりは、えーっと、ケッコーキビシイ感じだったってーのは話くらいは。
…………って、そうなると、その、『そういう』年代の割に二人とも大分お若い?」
「小太郎君が『血筋』もあって寿命が普通よりもちょっと長めだから、魔法使いの『本契約』した私もそれでつられているってだけだよ、アハハっ。
お陰でコタローくんもこう、長瀬さんから『やってみるつもりはござらぬか? 道場主』って依頼された後、少しでも『それっぽい』威厳を出せるように色々苦労してたんだよね~」
「嗚呼、ひょっとしてあの格好って…………」
脳裏に描かれるずんぐりむっくりな髭面の巨体。なるほど、確かに今の若者感が抜けていない姿とあちらを比較すれば、あちらの方が謎の圧力というか迫力というか、そんなものがにじみ出てはいるか。と、私の納得した表情に嫌そうな顔をするコタローくん。
「何や? あの動けるデラックス師匠ボディに何か文句でもあるんか坊主?」
「いやー、むしろアレはアレで中々
「お、おぅ、それはサンキューな……、アカンわ今時の若者のハマるポイントわからへんわ…………」
まあそれこそ本家
ただし
「私としては、コタローくんはそのままのコタローくんでいて欲しいなーって思うけど……。こんなに格好良いのにあんな鍛冶とかしそうな妖精さんみたいな恰好して。私だってあんなコタローくんと一緒に外に出るときは、年齢詐称薬で調整しないといけないし。
こんなにまだまだ若いって、龍宮さんにだって言われるのに~」
「せやかて夏美も最近、鏡見て小皺増えて来たわ~って煩くなったし、それなりに俺かて若い言ってもオッサンなんやから、子供っぽいだけで十分オバサ――――って、いやッ! 止めっ! ちょ、夏美姉ちゃん孫の前――――」
「孫の前でそんなこと言う悪いコタくんなんか、こうなんだからねッ!」
「嗚呼…………(祈祷)」
「一体何を合掌して拝んでいるんだ君は…………」
「えぇ……?(引)(口の端についたひき肉を取って食べながら)」
それこそ釘宮が言っていた通り大変仲の良いお姿に思わず全世界全てのキリヱ大明神に祈りを奉納したくなる衝動にかられた私は置いておいて。(???「完全にお門違いなんだよねぇ……」「『私全然関係ないじゃないのヨッ!』とか怒鳴り散らしそうネ」)
「まぁ何っつーか、おおよその事情はそっちのコタローさんから聞いたんスけど、その上で泊めてもらってありがとうございます」
「全然平気だよ~。むしろネギくんの孫に頼られて泊めないとか、委員長とか聞いたら今でも妖怪変化して駆けつけてきそうで怖いし…………」
「何でこう危機感があらへんのや、夏美姉ちゃんは…………。お前もやで、ダイゴ。百歩譲ってこっちの刀太っちゅーんは身元がしっかりしとるとしても、隣でなんかカワイイ顔してめっちゃ蕎麦すすっとる娘っ子はそうでもないやろ」
「………………とはいえこの近衛に関しては、その素性とかは『知りたくもない』ですけど、変に縁が結ばれましたから。『妹』というなら、無下にもできません」
流石にこうもタイミングが合うとは思ってませんでしたけど、と釘宮はそう言ってごちそうさまと手を合わせた。
「まぁええわ。ダイゴ、『別荘』使うんなら、あんまやりすぎんよーにな。お前の年代はあんまり言い訳きかへんから。背も伸びるし」
「判ってますよ。じゃあ、また」
「おう! …………って、別荘?」
立ち上がって部屋から出ていく釘宮に軽く手を振るが、そんな私の疑問に「言う訳あらへんやろ」と半笑いのコタローくん。
「こっちの話やらから、お前等には教えへんわ………………って、いやホンマよく食うわな、そっちの娘っ子。夏美も何を、わんこそばごっこしとんねん」
「へ? い、いやー、なんかブルドーザーみたいにひょいひょい食べてるものだから、道場来てる子たちとか思い出して、こう、つい……」
「いや、へ? お前そんなに食べてんの?」
「………………そ、そろそろ止めるしっ」
どれだけお腹が空いていたのかは不明だが、明らかにスラムに居た時よりも大飯ぐらいになっている妹チャンである。いや、今までの場合と違って身体の具合も勝手が変わっているというのもあるのだろうが、果たしてこの場合の振る舞いとしてはどうなのだろうか。コタローくんからは他所の家の食事を遠慮なく食べ進める仮想敵扱いされているし、夏美姉ちゃんからは「いっぱいお食べ!」と近所のおばちゃんかお祖母ちゃん的思考で盛られてそうだし……。
ただ指摘されて恥ずかしかったのか、ある程度のところで「ご馳走様」と顔を少し赤くしながら手を合わせた。
そんな私たちを見て「だーから嫌やったんや」とやれやれと肩をすくめた。流石に彼の事情というか、そういうものを前提に考えると頭を下げざるを得ない。
「あー、何か…………、お世話かけました」
「…………お前らの生まれに関係なく『ネギの孫』っつーのは、俺は認めたくはあらへん。でも、こう、だからと言って『こう』慣れっつーか、そういう感じが出ると多少は情が涌くからなぁ。
わざわざエヴァンジェリンさんとか龍宮タイチョーの所やのぉてウチに来たっつーことは、なんか訳アリなんやろ?」
「一応はそうなんスけど、そういう意味も含めて、昨日色々言われたこともすべてが間違ってる訳でもないっつーか。…………正直、カアちゃん、雪姫……、えーっと」
「あー、知っとるから構わへんわ。『雪姫』っつー名前な? エヴァンジェリンさん」
「そうッスか。……カアちゃんから色々聞くとは言ったけど色々あって流れてるんスよねぇ、俺に関しては。その、『生まれ育ち』についてとか」
「あ゛ん?」「どういうこと?」
私の一言に違和感を持った二人の反応だが、むしろ私の方が「ん?」という感じになってしまった。一体何に対する疑問符なのだろうか、というところで、カトラスが口をティッシュで拭いながら指摘する。
「…………そもそも兄サンが二年前くらいから記憶喪失って話、知らないんじゃねーの?」
「…………あっ、それは盲点だった。ままならぬ」
今まで大体において最初に説明するか、関係者は何故か説明しないでも知っているか、そういう話をする必要がない相手があまりに大半だったため、すっかり私の経緯説明の必要性が頭から抜け落ちていた。
とはいえ話せる部分が限られているので、さてどう説明したものかと頭を悩ませる私であった。
※ ※ ※
結論から言うと、条件付きで滞在が認められた。
主に私がここに来るまでのさっくりとした経緯と、カトラスについて辛うじて話せる部分だけ。ただ途中で夏美姉ちゃんがカトラスに同情し始めたあたりで、コタローくんの視線の鋭さも少しだけ取れたのは収穫と言えば収穫だった。
「…………なんつーか、だいぶ大人の事情に振り回されとるんやなぁ、お前。そっちの娘っ子に関しちゃ正直、全然アレやけど……。まー、お前が責任もって取り押さえるんなら、家賃出せば離れの部屋くらいは寝泊まりに貸したるわ」
「もー、そんな意地悪言ってー。大丈夫だよ? カトラスちゃん。お食事はフツーに出してあげるからねっ!」
「なんでそんな甘いんや!? お前、『あっち』で酷い事になったん忘れたんかッ!」
「でも…………、確かにアレは許せることじゃなかったけど、それはそれ、これはこれ。
ちゃんとネギくんのお孫さんしてる子を相手にしてまで、そういうことはしないの。可哀想じゃん」
「せやから、そういう問題やあらへんって…………」
まぁええわ、と。とりあえず彼としては、このあたりが妥協点ということらしい。
さて、釘宮に関してはコタローくん曰く「修行中やから、しばらく放っておき」とのことなので。一旦は彼についてふれず(むしろ我々を遠ざけたがってる?)、「稼げる所だけ紹介したるから、ついて来ぃ?」と手招きした。
作務衣姿に下駄、狗神で造り出した半纏と帽子に杖……、恰好だけで言えばどこぞの
「…………反吐が出る」
「まぁそう言うなや、娘っ子。これも『必要があるから』裏向きで用意されとるやつや。需要があるっちゅーことは、そういうことやで。
表向きに顔出して稼げへんっちゅーなら、こーゆーヤクザな所に顔出すしかあらへんやろ。地下闘技場――――まほら武道会予選、戦っとる参加者連中使ってやっとるギャンブル場とも言えるわ。ファイトマネーとかは『裏火星』参考にしとるから、意外と出るみたいやけど。
……って、どした? 刀太」
「いや、何でもないッス」
壁に思いっきり「
いや、とはいえホルダーが思いっきりこういう場所を取り切っているとは限らないし、原作だってカトラスがこの場に居た(おそらく出場していたのだろう)ことを考えると、流石に参加者の膨大な人数をさばき切りはできないのだろう。個人個人まで細かくエントリーをチェックされないだろうという意味では、問題はない、のか?
ともあれ、地下闘技場である。コミックス7巻、本来なら「家出して」彷徨っていた刀太がとある紹介で流れ着き、カトラスとニアミスしていたはずの場所である。簡単に言えば近代的コロッセオというか、小規模の地下体育館風の闘技場というか。
って、あれ? そもそも何故そんなものをコタローくんが知っているのだろうか。別に本人が出ていた訳でもないだろうし、そもそもあまり金に困っているようには見えなかったのだが(釘宮の学費など含めて)。そんなことを聞けば「一応、門弟がやっとるからなぁ」と肩をすくめる。
「オレも詳しくは知らへんけど、話くらいなら通せると思うわ。ちょっと待ってな?」
そう言って空中に小型ディスプレイを表示させるコタローくんだが、流石にこう、フツーに現代の携帯端末というか魔法アプリというか、その手の関係のものは使いこなしているらしい。と、そこの画面にぼうっとホログラフィックで表示された顔に、思わず私は呆然とした。
「おぉ、
『――――お、お久しぶりっす、
「世間狭し(諦観)」
「マジかよ……(引)」
そこには清掃業者みたいなツナギを着用して、目印のように目立つバンダナをした灰斗――――かつてスラム編においてギリギリレベルで戦わされた人狼の彼が、私とカトラスを見て、楽しそうに指さしてきた。
いや先生とかお前さん、自分のこと我流って言ってたじゃねぇか一体何なんだよ流派はどうなってんだよ流派はよぅ!(震え声)