なんかギリギリ登場させられたやつ(サブタイ参照)
ST141.Run Away With Full Afro Power
コタローくんが無理を言って関係者枠ということで、スタジアム? コロシアム? の最前列の席をとった。そのお陰で歓声にかき消されず、実況の声が良く聞こえる――――。
スタジアムの上で私やカトラスに手を振りながら、謎のサムズアップをかましてくる灰斗だが、個人的には彼もそうだがその隣にいる「少女」も色々と気になる所であった。浅黒い肌に小さい角を持ったチャイナドレス姿の少女は、その大胆に開いた背中から「新たに生えた」二本の腕で、「おっぱい!」と書かれたノボリを掴んで左右に振っている。
「オッパイが好きかー!」
「「「「うおおおおおおおおおお!」」」」
『――――チーム「
「ウム、今日もヨシ。オッパイに貴賎なし、オッパイ皆
ただし
「「「「うおおおおおおおおおお!」」」」
「いや騒げれば何でもありじゃねーか、姐さんや」
「そういうウヌもオッパイは好きネ」
「そりゃ並以上には」
「ウムウム、つまり信徒! 信徒皆兄弟! そこに何ら違いはないヨー!」
「「「「うおおおおおおおおおお!」」」」
「うわぁ……、いや馬鹿なのか全員?」
「相変わらずやなぁ、あの姉ちゃんも」
「ままならぬ…………」
オーディエンスが涌いているのも色々言いたいが、いや灰斗と一緒になんでお前さんまでいるのだ
なお試合については、二人の亜人女性(原作で何か見覚えがある気がする)のうち、両方を変身しない灰斗が瞬動と
「他にもチームメンバーいるみたいやけど、災難やなぁ。真面目に戦いたいやろうにアイツも」
言いながらコタローくんもコタローくんでオーディエンスに応じて「うおおおおお!」とか言ってノリノリなクチなので、後で嫁さんに言いつけるべきか否か……。ただそのテの目的があるわけではなく、単に場酔い的な浮かれ具合というだけなので、とりあえず隣でドン引きしているカトラスの肩を叩いて慰めておく。
結局そのままギブアップさせた試合終了後、そのまま観客席から回って裏側から控室に行くと、ツナギの上を脱いでタンクトップ姿になりながら、スポーツドリンクを飲んでいる灰斗がいた。なおコタローくんの姿を見た瞬間、ご無沙汰してますっ! と勢い良く頭を下げる彼である。
そんな彼の頭をガシガシしながら、コタローくんは気持ち良く笑った。それこそ近所の怖いお爺ちゃんが、悪ガキがちゃんと社会人やっているのを見て可愛がるくらいのテンションで。
「なんや知り合いみたいやけど、俺の側から紹介しとくわ。
コイツは
「そ、その話は止めてくださいよッ!」
「ははは、過去は無くならんもんやでー?」
いや、どうやらやり取りを見る限り本当に近所の悪ガキと怖いお爺ちゃんじみた関係であったらしい。カトラスが「あぁ~」と言わんばかりに見ている。やりとりから推察するに、先生、というのも技とかそいう言う事ではなく、近所の社会人として云々というか、そういうニュアンスが勝っているように見えた。
なお灰斗に対するコタローくんからの我々の紹介も、一応はざっくりと。それを聞いた彼は「えぇ~~~~~~!?」とだいぶ顎をあんぐりさせていたが。
「いや超有名人じゃねーか! お前らのお祖父さん!」
「あー、まぁ諸般の事情とかあって直接面識とか全然ないんスけど。
で、えーっと、どうしてまた出場してるんスか? 灰斗の
「そりゃお前、俺って一応格闘家だぜ? これでも一応はプロだし」
「警備会社所属のプロ格闘家ッスか……。それで参加を危ぶまれストップがかからない大会運営は、そんなに強いと見込まれていなかったか、あるいはそれ以上に人外魔境を想定している大会ということか…………」
「アッハハハ! それ言うなら俺より姐さんの方が問題だからなあ。色々と――――」
「ひぃぅッ!!?」
と、カトラスの妙な声が聞こえて、つられて振り向いてしまった。
「あっ、ちょっとお前、止め―――――ッ」
「ほぅ、これは中々オツなもの……。具体的に言うとこのサイズながら皮が肉にまだあっていないが故に上に引っ張られるこの年代独特のサイズの脂肪感だがしかしこの時点でこの具合になっているということは将来性については特に心配することも無く具合の良し悪しで言えば――――」
「いや止めんかい」
思わず折れた黒棒で叩いてしまったが、カトラスの醜態については言及しないでおく(兄貴的心配り)。とりあえず膝をついて体を抱いてキッと、「アイタッ!」の一言と共にスクール水着姿で蟹股の変なポーズのまま伸びたパイオ・ツゥを睨みつけていた。
しばらく事情を説明すると、コタローくんは早々に退散する。「後は任せたで」とだけ言い残して肩をすくめるあたり、どうやら本当にそこまで手を貸してはくれるつもりはないらしい。……彼個人の事情と現状のそれらを照らし合わせると、いささか寂しいものがあるが、このあたりは仕方ないと割り切る他は無いだろう。
「先生とお前らの因縁っつーか、そういうのは細かく聞かねーけど。まぁ、要するに金を稼ぎたいって訳だな! とは言ったところで、色々とあると思うんだがなぁ……。表向きに仕事を受けられないって言ってもな?」
「あー、とりあえず身バレが危険みたいな感じ何で、こっちの妹チャン」
「何だー? 何か賞金首にでもなっちまったか」
「そういう訳じゃないけど…………。って、コイツまた――――『
言いながら虎視眈々と背後に回ろうとしたパイオ・ツゥの動きを、手首から先だけ「シファー・ライト」に変化させて捉えるカトラスである。身長的には大体同じくらいだが、プランプランと足首を起点に垂れた状態になって「放せー! 放すときー! 放せばー! 放すネー!」と言う彼女に、私と灰斗はおぉ~と思わず手を叩いた。
「まぁ姐さんのそれは病気みてぇなモンだから気にすんな」
「出来るかッ! っていうか、何が楽しいんだ同性のブツ揉んで……。そっちのケでもあんのか? この女」
「いや全然? こう、オッパイは愛でて育てて幸せにするものだからネ」
「「意味がわからねぇ」」
「ハッハッハ! 俺もわからんわ!
でもアレだ、残念だったなー。賭け試合をやるんならお前らくらいなら簡単にイケるだろうが、参加条件があんだよ」
言いながら灰斗は文書アプリで、空中にドキュメントを投影する。主にまほら武道会の予選についての要綱についてだが、ポイントの計算関係は原作とそう差はないらしい。そのランクを指さしながら彼は説明を始めた。
「Eランクからのスタートで、勝者は敗者の分のポイントを稼ぐことが出来る。また倒した奴の実力に相当する追加ポイントを獲得して、ある一定値を超えたらランクアップ! ランクダウンは基本的に無ぇけど、100万ポイント稼ぐことで本戦参加のための実質最終予選チケット獲得! ってな流れだな。
で、ここの賭博対象になってんのは、Bランク、1万ポイント以上の実力者だ」
「あんまり弱い連中の戦いを見ても盛り上がらないから、っつーことッスかね」
「まぁそんなトコだな。でーアレだ。今の時点でもケッコー面子は集まって来てんだが、そもそも参加エントリーはしてんのか? お前等」
首を左右にふる私と、「一応、Dランク」と携帯端末でポイントを表示させるカトラス。おや? 原作では普通に出入りしていたことや今後の展開を踏まえると、既にBランクくらいにはなっていると思ったのだが、どうしたのだろうか……って、いや間違いなくザジしゃんに連れ去られたから発生したガバだ、うん。(???「それだって元々は金星の黒を正常化したアンタのガバが元だろうにねぇ」)
なお、そんな私たちを呆れたように見て来る灰斗。
「いや嬢ちゃんはともかく、刀太お前……」
「そもそも参加予定すらないッスからね? 本来。途中でどうするかって話があったんで、たぶん取り消しはされてないとは思うッスけど」
「なら何でここまで来てんだ?」
「そりゃ、まぁ……、そのまま放置もできないでしょ。妹チャンだし。参加するかどうか、迷うくらいには」
「いや、そんな話っていうか、そもそも私が悪い面が大きいっていうか…………」
「まっ! そーゆーヤヤコシイ家族関係の話は、俺は知らない。勝手にやれ。ただこっちに参加するってんなら歓迎するぜ?」
何はともあれ一度ポイント稼いでからまた来いよ、と肩を叩かれ、私とカトラスは部屋を後に…………、掴んでいたパイオ・ツゥを適当に放り投げて「オパーイッ!」なる汚い断末魔らしきものを背中に退室したりした。
この調子ならとりあえず、朝早くからこういうイベントをやっている訳で、この感じだとなんとか目途がつくくらいにはカトラスを一度放流できるだろうかと計算が脳裏をよぎる。どこかのタイミングで源五郎の事務所の方に赴いて、カチコミに参加する必要があるのだ。流石にそこの本業は忘れていないので、時間的には余裕があるようで無いのである。
そのまま地下闘技場を退室すると、カトラスは深いため息をついた。路地裏を歩きながら、垂れた前髪をいじりつつ愚痴を零す。
「…………なんていうか、こう、凄い嫌なんだけど」
「賭け試合がってことか?」
「それもそーなんだけど、こういうのを飯の種にしてのさばってる上流階級っていうか、上の連中っつーかが」
なんか実験動物同士を争わせて悦に浸ってるみたいで、と言うその言い回しから、もしかして過去に何かそれに類似する話に遭遇した、というか当事者になっていたのだろうかこの妹チャン。
「一応、主催もアマテル・インダストリとかだっけ? つくづく業が深いよ、私たちにとっちゃ」
「俺も含めてってこと、だよな」
「あー、うん。…………私らが生まれたのだって、きっと連中がのさばってきて吸い上げた金なんだぜ? しかもそんな私が、つい最近まで『世界から悲しみを無くすためー』とかお題目かかげて、私怨にまみれて色々やってたのとか、完全にギャグだろ。ここまでくると」
「まー、お前さんがそう思うなら俺はどうこう言わねーけどよ。あんまり自虐的になりすぎんなよ? ミニトマトだけじゃなくてトマト系全般が実は得意じゃないのがバレていじめられたりしてるわけでもないだろうし」
「いや何でそんなこと知ってんだお兄ちゃんッ!!? べ、別に、フツーのやつは苦手なのちょっとだけだし!」
話題を逸らしたら逸らしたで、顔を真っ赤にして振り向くカトラスである。なおその程度の事はスラムの時点でなんとなく表情で察したので、彼女に提供する場合は大体火を入れてお肉と一緒に出すとか、一工夫があったりなかったり。たぶんあのジュースというかジュレというかの、微妙な感触が苦手なのだろうとアタリはつけていていたりする。なおミニトマトだけはどう調理しても苦手そうだったが。
しかしまぁ何と言うか……、カトラスに関しては本当にどうしたものか。いい加減どう扱っても修正不能という立ち位置になってはいるが、キリヱ大明神に従えばやはりホルダーに迎えることも難しく、だからといってフェイト陣営に渡す訳にも、ラスボス陣営に再回収されるわけにもいかない。コタローくんの所に居候させてもらうのが一番安全と言えば安全なのだが、それすら当人から拒否されるという境遇はなんとも悲しいものがある。
それこそザジ・レイニーデイあたりが回収しにくれば色々と問題は解決しそうではあるが、本人は割と嫌がっているし…………。原作を思えば適当に放り出すのも一つの手ではあるが、流石にそれが出来ない程度にはもう情が涌いてしまっている。
優先度上はどうしても下になることもあるが、それはそうとして痛いのは嫌なのだから。身も心も、傷というのは残り続けるのだ。
だからこちらを見て「何だよ?」と顔を赤くしてる、ちょっとカワイイ感じになってしまった妹チャンに何でもないと言いながらその頭を撫でる。拒否はしなかったが、なんで撫でられているのかさっぱりわかっていない顔をしているカトラスに、私はどうとも言えなかった。
それこそ本来の末路だろう、荒廃した大地での寂し気な振り向き顔――――。決してトラウマというわけではないが、あれを、今を生きている彼女にさせるのは、あまりに忍びない。それだけは、おそらく私も無意識に思って行動してしまったのだろうから。
「肉まん二つとレモネードで」
「えっと、コーラと肉まんとミドル牛まんと春巻きセット、あとフカヒレスープに揚げワンタンと、えっと…………」
「いやまず持ちきれんのかよって」
表通りに出た後しばらく進むと、ビジネス街の通りに超包子の屋台が有った。昼食にはまだ少し早いが、ここにある以上は昼休憩か何かのサラリーマン目当ての設置だろうと当たりをつけ、声をかけて注文をする。……朝も思ったがカトラスがどうにも食いしん坊さんである。別にそんないっぱい食べるタイプの女の子でもなかったろうに、何があったというんですかねぇ。なお当然こちらの奢りである。
屋台手間の簡易テーブルとベンチ(お客さん用に設置されてるもの)に買ったものを一通り置いて、ちょっと嬉しそうに春巻きを齧っているカトラス。そんな彼女に向けていた微妙な視線に、やはり「何だよ」と半眼を返された。
「私、そんなに大食い? このくらいの年齢ならフツーだろ、フツー。むしろ兄サンの方が少ないくらいだし」
「まあちょっとな。今日はあんまり時間かけるつもりもなかったし……」
「何それ、早く食えって催促?」
「いや単に話題の流れ」
別に他意はないと伝えたものの、カトラスは少し顔を赤らめて視線を逸らし、ガーリックシェインプもどき(商品の名前は忘れた)を爪楊枝に刺してこちらに向けてきた。
「別に食えるけど、急ぐんだったら消費するの手伝えよ。ほら…………、く、食えよ」
「………………」
「な、何だよその目。早くしろっての」
いや言動の具合が夏凜とか九郎丸とかキリヱとか忍とかマコトとかと差が減ってきているお前さんは一体どこに向かおうというのだ妹チャンさんや(震え声)。とりあえずそのエビの揚げ物を爪楊枝からとって口に運ぶ。流石に超包子仕込み、味は問題なく美味しいのだが、どうしても味がしない今のこの心境よ。そんな私の様子に「どうしたんだ?」と不思議そうなカトラス。確信犯では……ないよな? そこだけは安心しておこう、うん。
そんな風に早めの昼食をとっているタイミングで。何処からか聞こえてきた叫び声に、思わずレモネードを吹き出しかけた。
「――――うおおおおおおおおおおおおお!
アフロパワアァァァ、全・開いいいぃぃいいいいいいいいッ!」
キュピキュピーン! みたいなアプリの連動音と共に放たれたその謎の絶叫。
は? と引き攣った笑みを浮かべるカトラスと、腹筋が引き攣って動くに動けない私は、そのまま大通りを疾走(逃走)するアフロ頭に髭面の青年……、青年? を見送った。