意外とピンチかもしれないし、そうでないかもしれない
ST147.Physiognomy Indicates
「全く、『まともじゃない』頭が組織の上に居ると何をやったところでどうしようもないという典型例だな……。僕らも色々注意しないと」
「真壁の叔父貴?」
「……いや、何でもねぇ。とりあえず片づけンぞ。『物』も回収しとかんとなぁ」
ホール出入口からしばらくの場所、大きな廊下とロビーが混じったような中途半端なエリアで。取引を主導していた大頭と、例の宗教組織の幹部数人。彼らを簡単に制圧して魔法催眠ガスで気絶させ、僕はため息をついた。
大頭、別口の所の古い連合から来てるヤクザはともかくだ。彼もまた例の「幸福の轍」の被害者である。薬物中毒に陥っていたらしい彼は、逃げまどう宗教組織の幹部へとすがり、彼らが逃げるのを防いでいた。それに同情するかしないかはともかくとして、宗教組織の幹部連中は初めから何も救いだとかどうだとか、彼らが言っていた教義など簡単に投げ捨てている。
金儲けにならないから、捕まる訳には行かない、と。そう逃げ出そうとしていた彼等は、一言で言えば只の「人間」だ。下手に狂信者がそういう立場でも問題なのだろうけど、こうも経済合理性のみしかいう事がない連中が、人から金を吸い上げているというのに思う所はある。思う所はあるけれど、それをどうこうするような立場に僕はない。
組織がそこに存在し、ある程度の人数で構成されているのなら。なにかしら腐るところも出て来る。それは僕らUQホルダーだって同様で、だからこそ反面教師にしないといけない。
ため息をつき、視線を横に振る。小さいリーゼント風の髪型と言っていいのか。そんな頭の舎弟、影巻に「薬物」の回収指示を出した。彼はサングラス越しに目を閉じて、頭を下げた。すぐさま他の若い衆に声をかけて、薬物の回収に回る。
合同作戦ということで、他にもホルダーの構成員から数人、サブと言う彼を中心として防御あるいは肉壁代わりに前に出す。彼ら自身は僕らほどではないにしても「心臓を貫かれた程度」では死なない面子をそろえた。これで事前のシミュレーション的には問題がないはずだ。
だが、こういう場合はえてして想定外のことが起こりうる。
こういうフラグ「外」管理みたいなものは、僕が「こちらに」来てから長く経験している、その分詳しいのだ。
『ピカピチュー! ピカピチュー!』
[パイセーン! パイセーン!](※ゲームウィンドウ表示)
「…………君は、えっと、チュウベェだった。どうしたんだい?」
後その鳴き声を止めるんだ、と。こちらに飛来してきた世界で未だに二番目に有名なネズミキャラクターを装うその小型妖魔に、思わずチョップを突っ込んだ。「ふみゅ!?」と空中でくるくる回転するけど、特に気にはしない。
フラグ「外」管理について色々考えながらヤクザ妖刀・風来坊を収納アプリより取り出し、念のためリボルバーを適当に一つ見繕っている最中での、突然の出現。確か刀太の契約従魔だったはずだけれども、どうして彼の方ではなくこちらに現れたのやら。聞いてみれば相変わらず色々怪しい声をあげながら、しかし「視界の下方向に表示されている」僕のウィンドウには、意外と真面目な内容が流れた。
[中で女魔族出現! ビッグブラザァが適当に応戦してっけど、『
「神聖魔法云々は判らないけれど、内部が大変ということだね。…………仕方ない、中にいかないと――――ッ」
そして話を続けようとした瞬間、斬、はら、りん、と僕の身体を刀が「通過した」。
叔父貴、と僕を呼ぶ声が複数聞こえる。身体が崩れ落ちながら、背後からの襲撃にステータスウィンドウからマップ情報を表示させる。地図から現在、周囲にいる人間の情報を「僕の」知覚できる範囲で、どこに誰が居てどう襲撃されたかを確認しようと…………。
いや、いない。僕の知らない相手ならば表示は「UNKNOWN」の通知が来ているはずなのだけれど、それがないということは既知の相手ということで…………、
そしてそんな僕の姿に「はぅぁッ!?」と、妙に可愛らしい声が聞こえた。
「…………?」
女性の声に心当たりはないけど、そういえば以前『
だとすると、その中で直近そういった危険性がありそうな相手で、かつ「刀二本」を得物にしている相手は…………。
近衛刀太、佐々木三太、時坂九郎丸など並ぶマップの名前からすぐさま検索し、その相手の位置を把握。僕はヤクザ妖刀を仕舞い、周囲に「下がれ」と指示を出しながら
砕ける窓ガラス(アクリルじゃないのはあえて高級志向であったせいか)――――表には環境整備が行き届いている証のような、あるいは町並みに温かさを与えるために植えられたような街路樹が見えるばかり。だけど僕の銃撃に揺れる木々に、その上に明らかに「不自然に」「火花と金属音を散らす」何かが居た。
やがて銃弾が切れ、それを乱雑に投げると。当たり前のようにその「弾丸が通過しない空間」に剣閃がひらめき、乱雑に自動小銃が砕けた。
思わずメガネの位置を直しながら、収納アプリよりワイシャツを取り出す。
「………………人が仕事中に
「――――あらあら、そんなつれへんこと言わんといてぇな♪
どうもー、神鳴流です~~~~♡」
ゆらり、と。ゆらめく空間。まるでCGの「透明」というテクスチャーがはがれるみたいな微妙に気持ちの悪い空間の割れ方をした。現れたのは…………、不思議〇国〇アリス? 桃色なエプロンドレス風に、金系茶髪で眼鏡をした、十八歳くらいのティーンエイジャーの少女だった。
容姿に見覚えはない相手、だけれども。声や振る舞い、「彼女」にそっくりな部分は相変わらず。また技の流派を含めて、マップに表示されている人名は以前対決した「祝月詠」その人であると出ている。あと、こちらに「しな」を作ってウィンクしてくる謎のアピール(?)具合にも年代を感じるというか、おそらく彼女で間違いはないだろう。相も変わらず両手に刀二本、舌なめずりする勢いで非常にオリジナルな(狂った)笑顔を浮かべている。
どういう理屈かは不明だが、サイボーグの肉体ではなく「生身」の女性の肉体となってこちらに来ていた。
「約束通り、
「…………仕事中なので、せめて後にしてもらいたいのだけれども」
「スマンなぁ、本当はフェイトはんから薬物サンプルの回収に協力しとけって言われとったんやけど……、そないな細マッチョ見せつけられて色々辛抱たまらんわ♡ 滾らん女おらへんもん、ウチ悪くないっ!」
「そもそも『こう』した諸悪の根源は貴女では? ……っていうか業務放棄ですね」
「細かいことはえぇやん? ――――我流神鳴流・斬魔閃」
と、彼女はニコニコ微笑みながら「瞬動」で僕の手前まで移動し、軽く左腕を振った。飛ぶ斬撃はそのまま柱に直撃し、その裏に隠れていた「彼」を震え上がらせる。
佐々木三太……、恰好は今回の僕ら同様にスーツ風である。
彼には万一、建物が崩れるなどの場合も含めて刀太たちにナイショで待機してもらっていたのだけれど。今回に関しては少しアテが外れたらしい。
「え、怖ッ!? 何それ、いや、怖ェ!?」
「あーれ? 思ったよりしっかりしとるユーレイさんやなぁ。
「…………三太、君は刀太の方に行け。彼女および九郎丸の流派の事を考えれば、こちらのサポートに入るよりあっちに向かった方がいいだろう」
「げげェッ!?」
神鳴流、詳しくはしらないけどステータス表示において確か対幽霊などの非実体系の相手への攻撃手段が豊富だったはずだ。これくらいの情報でおそらく十分伝わるだろう。僕のため息を受け「マジで同門ッスか!?」と悲鳴を上げた。
まあ、「早ぅ」と睨んだろう月詠さんの視線を受け、悲鳴を上げながらその場から退散するあたりは、なんというか君も苦労するね……。
そしてあいさつ代わりに、僕に向けて剣を振るった彼女に対し。収納アプリから取り出している途中だったヤクザ妖刀で受け、そのまま飛ぶように後退した。
彼女の視線は僕の身体……、というより、ボタンを留める暇も無かった側、はだけた胸元や割れた腹筋に注がれていた。
「なんやその、お綺麗な身体にたっくさんウチが『跡』残してえぇと思うと…………、それだけでお米何杯でもイけるわぁ♡
にゃ~~↑にゃ~~↓にゃ↑↑にゃ~~↓にゃ~~↓♪」
「歌に対して物騒ですね…………、ぴゅっ」
もっとも、動きが以前よりも洗練されている彼女のそれに、すぐさま対応できる僕でもなく。ヤクザ妖刀を残して全身バラバラにされながら、顎から上だけ残しつつ今回の対策を色々と準備するのだった。
※ ※ ※
「――――確保ォ!」
「くっ…………、殺せっ!」
「いや殺したらアンタ送還されんだろ多分、この間そーゆーの見たぞ?」
「ぬぬぬ…………」
そう言うのは大して詳しい訳ではないが、先日「魔天化壮」状態で倒しかけたヘルマンやらがそんなことを言っていた覚えがある。あるいは原作「ネギま!」の描写から考えても、召喚的な方法で来た魔族は倒された場合に「死なない」というか、そういう可能性は高いのだ。故に決して下手は打たない。というより打ってはいけないのだ、かなりこういったことには慎重である(戒め)。
ちょっと
「――――まあ攻撃手段がないのなら、予想は出来たことだけれどね、『刀太くん』」
「ふァッ!?」
思わず変なうめき声を上げてしまったが、こればかりは仕方ない。
咄嗟に黒棒を構えながら背後を振り向いたが、その場にいたのはさも当たり前のような顔をして私に向かって歩いてきている
髪型はセミロングヘアを適当に垂らし、全身が濡れ
そんな私の視線を受けて、しかし彼女は両手を後ろに回して、少しだけ前傾姿勢になりこちらの顔を見上げるように…………、特に理由のない赤面止めろ(震え声)。
「どう、かな…………? 『個体名イシュト=カリン・オーテ』を参考に合わせてみたんだけど」
「感 想 と か 聞 く な (超震え声)。
って、それより九郎丸――――」
「――――と、刀太く……ッ」
見れば、美人さん九郎丸はその状態のまま、全身に半透明な水のコート状の何かを纏い、そのまま倒れて動けていない様子だ。アレを見るに例の「
そして上着の内ポケットに入れたまま腕が動かないということは、おそらくネオ仮契約カードを取り出そうとした段階で拘束された、と。
私もちらりと携帯端末を見るが、チュウベェの存在はまだ確認できない。と言うよりこの場合はもう戦力としてカウントするべきではないだろう。とすると……。
「………………、
「ぴゃー! 止めなさい後輩ぃぃぃぃぃ!」
「あっ」
とりあえずその場に血風を展開して設置し、直線的に追跡が出来ないようにしてからオティウスのお腹を抱えて
と、後方から「ヴィシュ・タル――――」と始動キーの発音が聞こえてくるので、少しだけちらりと見れば。水のぷよぷよしたクラゲのような何かが複数出現し、ディーヴァの腕の動きに合わせてこちらに迫ってくる――――。
「――――刀太!」
「――――おぉナイスタイミングぅ、三太!」
「ぴゃあああああ! だからもっとレディは丁寧に扱いなさい後輩いいいいい!」
と、いつの間に現れたのか合流したのか知らないが、悲鳴を上げながらこちらに走ってくる(浮遊してくる?)三太。そい、と彼に向けて手に持っていたオティウスを投げると、「あっ」と言いながらとりあえずは受け止めてくれた。
「な、何? 何いきなり投げてんの!?」
「ソイツ、敵! 重要! 確保、退散! 雪姫連絡! オーケイ!」
「…………わかんねェけど連れて逃げれば良いんだな!」
「そゆこと!」
会話は適当で数少ないがこれでもフィーリングで通じる中学生的な雑コミュニケーションよ。少しだけ気楽と言うか、最低限のやりとりだけで「えっちょっと待ちなさい私このまま良い所なしで出番終わり!?」と色々察して焦り出す彼女へ、全力笑顔でサムズアップを送る。
「……精霊か何か? にしては強い訳でもないというか――――」
「――――本題はこっちだったからね、刀太くん」
ふと声の方、前方右手前側を見れば、その場に転がるホルダー男衆および潟山組の若い衆の姿。全員気絶だけにとどまっており外傷はなく、その中心でディーヴァはアタッシュケースの中身を確認していた。足元には複数、同様のものが転がっているが、そのうちの一つを手に取ったのだろう。
こう、おそらく2080年代ではほぼ通用しなくなっているであろうフロッピーディスクのようなものが、敷き詰められるだけ敷き詰められている。
「未使用のもの、最低でも20個。…………これで『半分』は終わり、かな?」
「……なるほど、アプリの回収の方が目的、と。って何で?」
「何で、とは? 前にも言ったけど、ヒントになるようなことは話さないよ。刀太くん」
ケースを閉じたディーヴァは収納アプリを起動して、仕舞いながら私に視線を送ってくる。……なんというか、以前「ダイダラボッチ」内部で遭遇した時のディーヴァの感じと雰囲気に差がなく、一目見ただけでなんとなくやり辛い。そんな感想が私の表情にも出ていたのか、ディーヴァは突然顔を少し赤らめ、前髪をいじり始めた。って、何で?(純粋な疑問)
「そ、そんな顔をしたところで教えないから……、教えないったら」
「……………………刀太君?」
いや、だから九郎丸のその目はさっきから一体何なんだと。それはそうとして先ほどからディーヴァ本人が「自分に」海天偽壮を使用していないのはどういった理由からか。それを使えば私云々は関係なくすぐ逃げられるだろうに。
と、いつかのように仮契約カードを取り出した彼女へ死天化壮で接近し――――。
「――――ひぅ」
だから意味も無く顔を赤くするの 止 め ろ (超超震え声)。
いや、まぁ見た目や身体の成長度合いに反して精神的には経年数以上にはるかに少女というか女の子というか、もっと小さい子を想定するべきメンタルをしているというのは知っているが。だからといって本当に小さい子が大きなお兄さんお姉さん(妙齢)に対して懐くというアレを発揮している訳でもあるまい。おそらく何かしら意図があっての…………。
それはともかく、仕舞途中のケースへ向けて、黒棒の先端から血風を放つ。ゆるく円を描きながら投げるように放たれたそれは、血風創天ほどの威力や大きさにはならずとも、今の移動速度が乗ったものになるので、結果アタッシュケース自体は簡単に破壊できる。
それに「あっ」と言いながら、足場にあった他のものを弐つ手に取り後退するディーヴァ。
「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト――――
「
折れた黒棒だが、その刀身だけに血風を纏わせ、ディーヴァの狙撃を「自動迎撃」する。本来であれば血風は散らされてしまうが、石化効果のあるこれであれば狙撃自体に「物質として」干渉できる――――黒棒と接触した瞬間から泥になった水の矢を払い、のし、叩き、そして残る二つのアタッシュケースにも血風を放とうと――――。
「
次の瞬間、私は唐突果ての見えない程「霧の深い」、障害物がないような広い平原へと投げ出された。
そろそろアンケ締めますが、あくまで参考までということで・・・
現状だとおおむね、18:00~24:00(前後30分)くらいのいずれかで投稿って感覚になりそうです汗
【短期アンケート】今後の参考なんですが、更新時間って何時が良いでしょうか。
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06:00
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12:00
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18:00
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24:00