※期間が1月設定したと思ってたのに1年になってた特大ガバがあったので修正しました汗 ご指摘どもですナ
以降はその前提でオナシャス!
ST15.Show Must Go On
「へ? 一月でここクリアしろって? しかも事情説明無しで放り込まれた?
マジか、あのロリババァついにボケたか?」
「割と前からボケてはいそうッスけどね……、色ボケなら」
「刀太君っ」
「はは! 母親相手に随分言うじゃねえか坊主」
「いやだって、全体の話からすると絶対俺って、雪姫の知り合いの血筋だろってのは思うし。引き取って面倒見てるって何かこう、そういう義理的な感情がスタートだろって疑惑がなんとなく……。
まぁ今更別に良いんだけど、家族だし」
「おう、そうか。そういうのは本人相手に言ってやれ」
「たまに言ってるッス」
「…………うン? おう、そうか」
「にしても何だろうこの味、何かに似てるような…………、マグロ、馬刺し? 煮ているのに生っぽい味がするのはどーゆーことなん……?」
「馬刺しか…‥、熊本思い出すね。僕が刀太君の家に厄介になったとき、雪姫様に歓迎会だって奮発してもらったっけ」
「ほー、そうかそうか。ちなみに今食ってるソイツはト――」
「「詳細は知りたくないです!」」
「何でぇ何でぇ、命に貴賤なしってよく言うじゃねぇの。食っちまったら腹の中では皆兄弟」
「いや死生観どうなってるんスか……」
甚兵衛の拠点……というより、ネギま! 時代から更に圧倒的な崩壊をした某所の外れ。彼の手料理(曰く「
九郎丸の自己紹介において、不死身歴五年、という言葉に一瞬違和感があった。確か四年とどうこうとか原作だと言っていた覚えがあったが……? いや、要は原作から半年とは言わないまでもずれ込んでいるということか。
例によって確実にビリヤードされているというのが証明された訳だ。影響度の見積もり、ちょっと無理だなこれ……。大体、今頃刑務所に繋がれてるだろう橘センセが悪い(責任転嫁)。
その後、甚兵衛の自己紹介が原作通りの流れで入る。
千四百年前、今でいう福井県あたりで人魚の肉を喰らい不死身化。時に仲間を作り、時に子供を拾い弟子に取り、時に女と出会い色恋から死を看取り、時に護国のため気まぐれに従軍し…………、とちょっと待て、明らかに原作で語られてるエピソードより量が多いぞ。
「いや意外と聞き上手だな坊主。なんか要らんことまで話しちまった」
「へ? あー、そっすか?」
「おう。なんかこう、変に相槌がいいのか知らんが、上手いことこっちの懐に入ってくる感じだな。経験だが、情緒不安定な奴とか依存しやすい奴なら一発でグズグズのメタメタになっちまいそうなすり抜け具合だから、気を付けとけよー。
特に女」
――――脳裏に浮かんだのは、温泉浴衣の胸元をはだけさせたままそこに私の頭を挟み抱きしめ妙に優しく撫でつつ「大丈夫だから、お姉ちゃんに甘えていいから、もう怖くないですよ……」とか寝言でほんのりウィスパーな感じでささやく旅館早朝の夏凜……。
今更、心当たりしかなさすぎるアドバイスを言われた。
遅い!(無茶振り)
ちなみに九郎丸は、甚兵衛の過去話に細かいエピソードが入るにつれて涙が止まらない様子だ。特に家族や仲間、恋人やら軍の友たちとの別れについて。今の所そういう機会は私たちも未経験だが、彼の言葉に含まれる寂寥感に思う所があったのだろう。
なおこれでも、雪姫関係の話については結構スルーしてるので伏せられている部分はまだまだあるような気がするが。ポーカーフェイスなのか大した話だとでも思っていないのか、彼は肩をすくめて頭をかいた。
「しかし一月とかマジで厳しいな。送り込んだってことは出来なくもないんだろうが、下手すると睡眠時間は計算に入ってないかもしねぇな」
「あー ……、(頭が)痛いの嫌なんスけどねぇ」
「だ、大丈夫! 刀太君が寝てる間は僕が頑張るから!」
「いやそれってお前、最終的に寝てる時間無いんじゃね? 九郎丸。
別にこーゆーのは、誰かが大変な思いする話でもないだろ……、って、結局試験ってどういうことなんスか? センパイ」
「まぁ、そうだな。一応話してやるか」
この場所が新東京の地下からホルダーの拠点まで伸びている迷宮であること、クリア条件は無限のように湧く妖魔共をある程度まで減らすこと。
「本館の倉庫の奥からも、ココまで道は伸びてもいるんだが、あそこ開けるとバケモノ共がまとめて地上に湧くようになっちまうからなぁ。出入口が地上に近すぎるのがイカン」
「け、結構無茶なスケジュールなんですね」
「無茶じゃないだろ。流石にそこまでボケちゃいねーと思いたいが、雪姫も……。いやむしろ息子びいきか? あの雪姫でも。こりゃ帰ったらイジれるネタが増えてる系かねぇ」
さて、と立ち上がる甚兵衛。腕を組みなおし、にやりと笑った。
「とりあえず今どれくらい出来るか直にみてやるから、付いてこい。先輩の腕って奴を見せてやるわ」
自信満々な言葉に、私と九郎丸は顔を合わせて、少し笑った。雪姫ともまた違うが、なんとなく頼りになるこの感じに、安心感を覚えたからだ。
※ ※ ※
拠点からそこそこ離れた、開けた場所。滝が近くでダバダバと水音を立てているのを背後に、甚兵衛はカロリーバーを齧っていた。
「一緒に掛かってきて良いぜ。って言っても、九郎丸の嬢ちゃんは補助以上の『気』は使わないこと。地形変わると住める場所が減る」
「嬢ちゃん…………、だと……?」
「だ、誰が! 女ですかッ!!」
言いながら早々に切りかかる九郎丸だが、軽くあしらわれている。昔は剣を齧っていたという言葉に偽りなく、ローブを適当に脱いでひらひらと闘牛のごとくかわしている。……が原作では確か上半身裸だったと思ったのだが、どうして地上のコンビニ制服など着用しているのか真面目に謎だ。
あ、左腕を切られた。
「もらった――――!」
「動きは悪くねぇが、ちょっと素直すぎンな」
ひゅん、と。瞬時に切り飛ばされた腕と、九郎丸の剣の位置を「イレカエ」る甚兵衛。その手が九郎丸の鳩尾を殴ると同時に、空中の剣を掴んで適当に構えると、ちゃきり、と峰に返した。
すかさず反動で体を返して徒手空拳に移る九郎丸だが、それも慣れたように往なし、時に蹴りを交えて蹴り飛ばし――――ここだっ!
待機していた右腕で「
それを黙ってみている私ではない。すかさず「
「血装術たぁ渋いねぇ。意外性も悪くねぇけど、まだまだだな」
と、その瞬間で私と甚兵衛の座標が「イレカエ」られた。
だがそれも想定済。既に右腕に「血風」の準備は終えており――――。
「えらく物騒だなぁ。何だ? さっきの戦い方見て作戦立てたのか」
「!?」
――――いつの間にか復活していた左腕を使って、私の右腕の座標を「イレカエ」、自分の手元でつかんだ。痛みすらなかったぞどうなってるんだあの能力!?
UQホルダー・不死身衆ナンバー2、宍戸甚兵衛。不死性は人魚の肉による強化再生であり、戦闘に使うのは本人いわく「イレカエ」と呼ばれる、仙術由来の瞬間移動および物質転送、空間置換能力だ。本人が認識した範囲と範囲を、おおざっぱな理解ですら意図したとおりの状態に「イレカエ」る。それに加え、本人が今まで生きてきた十四世紀ほどにおよぶ戦闘経験から手を出した、経験した武術や闘術、およびそれらの知識や蓄積に由来する勘所。戦闘力や能力に限ってではなく、総合力で最強と数人が名を上げている(まぁいくらか贔屓もありそうな二人だが)。
速い、というよりまるで「見ていないのに」「見えている」ような動きと準備の良さ。こちらの動きを初見含めて一瞬で判断してるか、瞬間の条件反射で対処していることになる。一体どんな蓄積度があればこう動けるのか……。それをすまし顔で行い、呼吸一つ乱れず汗もかかない。
つまり
「――――っ!」
「おっと! いや爆弾仕込みやがったか!」
とはいえ、それを前提にしているので私にも対策の打ちようは多少ある。奪われた腕で待機状態になっている「血風」を、遠隔で起動させた。……嘘だ。厳密には「飛蹴板」で移動した跡に少し血液を残し、線になるよう形成し飛び散らせていたが正しい。
つまり甚兵衛の足場に散ってる私の血を持ち上げ、切り離された腕に接続し、遠隔で
流石に少し予想外だったのか、袈裟斬りされたようにぐらりと上半身が傾き――――次の瞬間、何事もないよう「接続された」。
「今のは冷や汗かいたぜ。ちょっと『奥の手』使っちまった。……あー、成程。お前まだ完全に自分の身体を『バラバラになった状態で』掌握しきれてないんだなぁ。いや、眷属成り立てっていうのならこれが普通か? むしろ雪姫の方がおかしいのか」
ほいっ、と言いながら周囲の散った血を「イレカエ」、どこかへと散らした甚兵衛。すぐさま私の腕をその場に落とすと、九郎丸の剣で掌を貫通させ固定――――いや新しい傷が残ったらどうする痛いぞアレ絶対!? 今直接の接続がされてないから痛覚ないけど! 嗚呼可哀そうに海から引き上げられた魚が必死にもがくように痙攣してて……、我が腕ながらキモい。(語弊)
九郎丸が拳を構えながら私の横に並ぶ。
「悪い、両手なくなっちまったわ」
「悪いとか、それどころじゃないよ刀太君! 大丈夫?
それに、一体アレは……」
「詳細は判らないけど、まぁ見たままじゃね? 視界に入ったものを入れ替えられる、的な」
「当たりだぜ、俺はこれを……『イレカエ』と呼んでいる」
「……そのままだね」「だな」
「ネーミングってのはシンプルなのが良いんだぜ若人。ウチにそういうのメッチャ凝りたがるどっかの真祖様もいるがぁ」
知ってた、と答えるわけにもいかず、九郎丸の解答に追従した。まぁ当人は一切気にしていないらしい。
もっともその厄介さは既に二人そろって折り紙付きだ。その気になれば人体をバラバラにすることも出来るだろうし、かと思えば私たちの座標も瞬時にバラバラにできるだろう。つまり戦闘に際して、思考する時間を与えてはいけないということだ。
「刀、なくてもいけるか? 九郎丸」
「神鳴流には一応、体術系統もあるけど、それでも剣の方が得意かな?」
「じゃあまず取り戻さないとな……、よっと! 捕まれ!」
再び飛蹴板を足場に形成すると、一度猛烈な速度で接近し――――と、それも瞬間「刀に刺さった腕の位置」と置換させられた。
何でもありか「イレカエ」!? 運動速度が乗せられた、切り飛ばされた腕が彼方へと飛んでいくと同時に、足場の飛蹴板が粉砕されバランスを崩す私たち。
そこを見逃すことなく「鉱石のように黒々と光る腕で」手刀を振り下ろした。
「ッ、
帯のようにゆらめく気を帯びた刀身で、その手刀を下から迎え撃つ九郎丸。反動で弾き飛ばされる際、私をお米様だっこ(※肩担ぎ)して距離をとった九郎丸。
ついでとばかりに再生した右手で血風の準備をする私だったが――――。
「――――おし、大体わかったわ。はい終了!」
「えっ!?」「ホラーのメインクリーチャーじゃねぇんだから……!」
距離をとって甚兵衛が居た方を振り向いた瞬間、その背後から声をかけられれば心臓も止まりかねないというもの。腕を組んで「ははっ」と笑う甚兵衛に、私と九郎丸はその場で脱力した。
「ま、場数は踏んでるんだろう。チームワークとしても悪くはなかった。後足りないのは、極限の臨場経験かね……。ま、まだペーペーに求めるにゃハードル高いわな。
九郎丸はもうちょっと変則的な戦い方も学べ。型がしっかりしすぎてて、ある意味で『先の推測が付きやすい』。練度を下手に落とさないようにするためには、それだけ同様の練習が要るだろうが……、とりあえず刀太の動きみてりゃ覚えるだろ、コイツ得物のせいか下手な素人より発想が自由みたいだし」
「は、はい!」
「刀太の方はなんというか…………」
「何っすか?」
「あー、何か板作る奴は良かったな。足場に板作るやつは。どう見ても後退するような姿勢のまま前進してくるのはちょっとホラーの怪物みたいで威圧感あったわ。スリラーとかやってるM.J.みたいで」
「いや判るッスけど何っスかその例え……」
「でもその分、あの回転する奴は隙が大きいな。その気になったらビームみたいに出せるんじゃねーか? なんでわざわざトマホークみたいにしてんだ」
「ビームは無理ッスね……、というか血の再生力が追い付かないッス」
飛蹴板については瞬動術とそのうち併用することが前提にする予定なので、これについては使い勝手含めてそう言われるのは中々嬉しいものがあるが、血風については言い訳の仕様がない。
と、何やらうずうずしていた九郎丸が会話にカットインしたそうにこちらを見ていたので、視線で促した。
「えっと、前に確か斬撃を飛ばすみたいな使い方をしてたよね。さっき僕がやった拡散斬光閃みたいな形で。あっちの方が使いやすいのかなって思って」
「まあ実際、それ想定してる技だからなー。
でも残念ながら武器の強度が…………」
「「強度?」」
元々「血風」は「血風創天」の前段階的な意味合いが強い。構成として例えるなら
強いのだが……、最初に「血風」があの形になった時点で、あの後少し一人で試したのだが。そこら辺にあった木の棒に血風を「まとわせて」放つと、外部を覆い、また内部に浸透した血と魔力が音速を超えて射出されるせいか、一瞬で内側から自壊する結果になった。元々黒棒での使用を想定してるとはいえ、いくらなんでもこれは…。
あの時点でこれは通常運用は無理だと判断し、以降は血風自体を使うのを重点的に練習していたのだ。……というか、あれの使い勝手が思ったより悪かったから、イメージが血風で固定されてしまったんじゃって今思った。
「要はアレか。液体が浸透できる隙間があると、その隙間を起点に一気にぶっ壊れると」
「雑に言うとそんな感じッス」
「なるほど。ソイツは……、ある意味で持ってこいか?」
へ? と。疑問符を浮かべる九郎丸と、おおよそ展開の予想がついたというか、もしかして? もしかして? と誕生日プレゼントを前にした子供のように、内心テンションが上がっている私。年甲斐もないとは言うまい、一応まだ十四歳なのだ(公称)。
こっちだと促す甚兵衛の後に従い、やってきたのは甚兵衛のボロボロ拠点とは似ても似つかない施設。城壁かダムの一部か、あるいは橋か。レンガ造りというのに劣化の気配がないのを見るに、魔法的な施工が施されているのだろう。
というか、ネギま! でおなじみな、どこぞのチキンでも売りさばく店頭に笑顔で立っている白いお爺ちゃんを改悪したような怠惰そのものを自称する司書が居た隠れ家施設だった。
甚兵衛から軽く紹介されても、まぁおおむね予想通りだ。個人的にはその屋上部分から内部に入る流れだったので、ちょっとした聖地巡礼である。ちょっとわくわくしてるというか、きょろきょろしてるというか、この後の一大イベントが待っているのもあって、落ち着かない。
九郎丸にもそのテンションがわかるのか「なんか楽しそうだね?」と不思議がられているが、私の様子に微笑ましいような笑みを浮かべる九郎丸も悪いが気にならないくらい、普段から平常を欠いていた。
「刀太、お前のさっき言ってたのに対する正解は、たぶん質量だ」
「質量?」
「そう。電気と似たようなものって言ったらわかるか? 抵抗が強ければ強いほど、流体は抵抗がより少ない方に流れる。その点で言えばお前さんの……、『
そうすりゃ流体は隙間から全部出て、本体を壊さない……、と、それだ」
指をさす台座に刺さった、黒い刀。持ち手、鍔は薄く、どこか幾何学的な模様とダイヤルのようなものが持ち手に彫り込まれている。
「そいつはさっき言ってた邪悪なる魔法使い、アルビレオ・イマっつーヘンなのが鍛造した、強力な魔法剣だ。巨大な質量を持つそれを、重力魔法を駆使して自在に操る……と聞く。
ま、扱いが難しいってんで雪姫の奴もずっと放置したままにしてる訳だな」
そもそもアイツ、剣を使うってガラじゃねぇだろうし、と。そんな言葉を聞きながら、私と九郎丸は近寄った。
黒棒である……、原作刀太の愛すべき長い付き合いとなる武器である。
「グラヴィティ・ブレード……、重力剣?」
「おー、それっぽい……! へ? っていうかこれジャストじゃね?」
「だね、やったね刀太君!」
いえい、と思わずハイタッチする私たちだったが。ふと気になって、その台座をよく見た。
その下には、何かポエムめいたものが掘られていた。
グロス=ドリクト、我が友の子とその仲間達を守りたまえ。
クウネル・サンダース
いやそっちの名前を残してるのかよと、思わず前半の文章やら見知らぬ名詞っぽいものより、筆記者の名前の方に意識が行ってしまった。