私たちは皆 生きながらに死んでいる
即ち只々生きること
それだけであるなら 生きているとは言わない
私たちは何かを持たなければならない
己を何かを示せねば
その歩みの後に何も残すことは出来ぬのだから
ST155.Q?
夢を見た。私が見る夢にしてはえらく久々に見るもので、軽い走馬灯なのでは? と疑ってしまうあたり、ここ一年以内の私の生活の酷さを思い起こさせるが。
熊本での村、中学校でのこと。
端的に言うと、私は嫌がらせされていた。クラスの一部の女子グループが中心となり、あとは仲良し四人を除けばぽつぽつと。
どうも主犯格だった朝倉清恵的には、肉丸なのか白石なのか
そもそも原作の刀太も、無邪気で底抜けに明るく能天気な馬鹿「のように」振舞っているだけで、根っこはネギぼーず譲りのジメジメダウナー陰鬱少年である。「私」個人の経験の有無もあるのだろうが、それらも作用しているのだろう。結果的にぱっと見の言動はともかくとして、実際にはこんな有様である。
少し付き合えば抜けも多いことは気付くだろうが、かかわりが薄ければ小生意気に見えたのだろう。
まぁそれについては、それなりにやり返したが…………。大人げない話になるので、少し置いておこう。正直、あの後全く関係ないところで別な事件が起こって、それの解決に奔走した結果が今の彼女との関係性だ。
一通りの「事件」が終わって、私と彼女とは和解した。
ようやく普通のクラスメイトになれたのだ、と思っても良い。
…………自意識過剰でなければ「それなりに」好意を抱かれもしたが、そういうモーションを彼女はかけてくることはなかった。ならば、それはそういうことだ。私と彼女の間には、実際それ以上に何もないのだから。伊達マコトとのデートの時に言ったこと、そのままである。
だから、そんな彼女から送られてきたあのメッセージは。少しだけ私にとっても予想外で。
『朝:近衛君と出会わなければ、こんな思いをすることもなかったのに』
『朝:大っ嫌い』
まあ、やはり女心とは私が「私」だった頃からいまいちよく判らないものだなぁと。そのことだけは、何度となく身に沁みざるを得ず。そんなメッセージを送るような「仲の悪さ」ではなかった、朝倉と私との最後の時点での関係と。それでもなお送られたメッセージのそれに対しての、朝倉の心情とを想い、私はどうしたものかと、結局それについては考えることを止めた。
実際それ以降メッセージアプリはブロックされていることもあり、彼女との連絡はとんとついていない。
だからこれは、単なる感傷でしかなく――――――思い浮かんだエヴァちゃんの、今にも泣きだしそうな顔に、嫌に胸の内を締め付けられるような、得体のしれない痛みが残っていた。
「…………ぇ、……あっ! 起きたんだ、刀太君」
目を開けた私を出迎えたのは、ほっとした様子の九郎丸だった。シャツにネクタイを解いた姿で、ここだけ見ると完全に華奢な女の子である。
身体を起こし、咄嗟に黒棒があるかを確認する。と、視線が動いたのを見た九郎丸が「こっちだよ?」と、ベッドの下から取り出した。相も変わらず折れているその姿に苦笑いを浮かべるが、いやこう、アイコンタクトしたわけもなくこちらの考えを察知されているのは、少し妙な感覚なのだが……? いや、考えてみればそもそも「熊本時代」からの付き合いなのだ、ホルダーの面子で私と接していた時間は、雪姫の次に長い。多少はそういう考え方のようなものを、察されても不思議ではないか。
そして、同時に感じた胸の違和感――――包帯巻になっている上半身裸の身体のうち、胸の中央を探ると。そこには「砕くことのできない」氷の結晶で埋まった、胸の貫通痕があった。
いつか、誰かにされたような「血装術封印措置」である。おぼろげながら浮かんで来る脳裏の光景やら、前後の時系列を整理するならば…………。
「……そうか、まぁ負けたわけだなあの無理ゲーめ」
例の事件の後に諸々あって雪姫と戦うことになった私、カトラス、あとアフロと千景だったが。結果については現在の私の状況が全てを物語っていた。……そもそも見たこともない技のオンパレードで色々困惑必須だったのだが、それはともかく。
「あっ、カトラスどうした?」
「その前に、今どこにいるかとか聞かないんだね刀太君……」
「それは予想が付くっつーか」
そう、今私は――――仙境館にいるらしい。それこそ原作7巻、旅館側のテラスにソファで作った簡易ベッドのようなものの上で寝かされていたようだ。大きな提灯に海の匂いでなんとなくわかる。
そんな私に、九郎丸は少し上を向く。情報を頭の中で整理してから口を開くようにして――――。
「―――― 一緒に拉致されてるわヨ? っていうかアンタ、私が言ったこと全然わかってなかったじゃない! なんで夏凜ちゃんに言っちゃうのヨッ!」
おっと、堂々と腕を組んで、旅館の制服姿なキリヱ大明神のおなぁりぃぃ! である。プリプリ怒ったように頬を膨らませる様子は大層お可愛らしいが、その登場と同時に「ぐべっ」と悲鳴を上げた足元の三太から退いてやれ(良心)。わざわざ霊体化していない三太の方も、不意打ち的に蹴り飛ばされたのだろうと推測はつくが。
いやそんなこと言ったって無理だって、と。キリヱにカチコミ前後の話をすると、「そーゆーことじゃなーいーのー!」とフン! と顔を背けられてしまった。
「もともとアンタが、あのカトラスちゃん捨て置けないのなんて最初の最初から最後の最後までどう周回したって一緒だったんだから、後はどう雪姫にギリギリのギリギリまで隠し通せるかって話なのよ。なのに何でそうアレなのよアンタは~」
「アレとか言われましてもですねぇ…………?」
「キリヱちゃん、まあ落ち着いて……。三太くん、大丈夫?」
「…………ひ、光が見えたッス。小夜子が光の向こうで、こっちに手ェ振ってて……、最後は猫になった」
「何言ってんだお前(困惑)」
頭を打ったらしい三太の発言に色々と心配になるが、まあ「疑似実体」であるのだから内臓器までは完ぺきに人間のそれを踏襲はしていないだろう。頭をぶつけても脳が損傷はしないだろうと仮定し、とりあえず立ち上がり「死天化壮」を――――。
「………って、ありゃ? あー、そうか。そもそも無理かこれ」
胸の「氷で封印された」傷痕、九郎丸が最初につけた私の血装術の基点となっているそこを見て、思わず苦笑いが零れた。
そんな私に、九郎丸とキリヱは微妙な表情。三太は「いや、しかし凄かったな雪姫サン……」と無邪気というか素直な三太。癒し、癒しである。だがいつまでもそうは言ってられまい。枕元にまとまっていた長着を手に取る私に、どうするのかと尋ねる九郎丸。
「どーするのかって言ったって、とりあえずカアちゃんと話さねーとだろ? 九郎丸たちから聞いてもいいけど、より正確な話というか、まあ色々『ケンカ』になるだろうし」
「なんていうか…………、うーん」
「全然落ち込んでないわよね、アンタ。負けたら色々、問題あるんじゃないの? カトラスちゃんのことだって――――」
「……いや、私のことそう言ってくれンのは有難いけど、そういう話じゃねーだろ? 『お兄ちゃん』的には」
と、そうこう話しているとカトラスが現れた。……服装は何と言うか、おあつらえたように中華風の丈が短い恰好だ。ネギぼーずが十歳時代に着用していたアレを思い出させる。というか身長対比からして本当にそれなのでは…………? 意外と物持ちは良い雪姫なので、ネギぼーず用にいくつか用意があるかもしれない。
と、それはそうとしてカトラスの一言に「お兄ちゃん…………?」と不思議そうな九郎丸やらキリヱやら三太である。そんな視線を前に「ばッ! ち、違うそうじゃなくって、兄サン! 兄サンだからッ!」と謎の慌てぶりで言い直すカトラスであった。
「まー、何考えて私のこと未だに『軟禁もしてない』のかさっぱりなんだけどな。ただそっちより、もっと違うことだろ? 兄サン的に、あのエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルに言いたいことって」
「……………………あー」
「いや、言いたくねーならいいよ。どうこう言える立場じゃねーし、私」
「(むむむ……、何ヨあの、なんだかわかり合ってるみたいな距離感?)」
「(刀太君、カトラスちゃんの胸とおへそのあたりで視線が行ったり来たりしてる……)」
「(な、何ですって!? ちょっと、やっぱりおっぱいなの? おっぱいよね? おっぱいしか見てないくせしてあのちゅーにはああああああッ!)」
「(……オレは何も聞かなかった、オレは何も聞かなかった……、ていうか誰?)」
外野がヒソヒソ話しているのはともかくとして、適当に着衣してマフラーを……、マフラーを……? おや、失くしてしまったのだろうか。まぁ部屋に何着か他のものも用意はしたので、後で取りに行けば良いだろう。
テラスより「ちょっと二人きりにしといてくれねー?」と言ってからその場を後にする。雪姫をまずは探すところから始めないといけないが、しかしいかんせん移動能力が封じられているとなると、色々洒落にならない。
こうして生身で歩くと、改めてわかってしまう――――いつかのように、まだ一人でこの世界に立つのに恐怖があったそれを。それこそ友達を作り、クラスメイトたちと話すようになり、そういった「乖離」のようなものも幾分紛れていったが。いかんせん、こうして完全に封印されているとなるとまた話は別である。
胸が、寒い――――物理的にではなく、遠く、寒い。
しかし、それでも前に進むことが出来るのは、きっと、
そう、思いたい――――。
「――――ん? 刀太ではないか。どうした?」
そんなことを言うカアちゃん、雪姫ことエヴァちゃんは、「ネギま!」時代に魔法世界編の終盤で殴り込みをかけて来た時のあのドレス姿だった。個人的に一番可愛いらしい服と思ってる恰好なのだが、一体何故そんな恰好で船着き場にいるのやら……。イベント的には周囲の風景も込で原作 11 巻を連想してしまうが、時期的にも何から何まで違うだろうとツッコミを入れたい。あちらはビーチの方だったので、まだ違いがある分救いはあるが。
まぁこっちに来いと手招きされ、特に断ることもないので、近寄る。と、大体1メートルくらい手前のあたりで、彼女は慌てた。
「ちょ……っ、そ、そこだ!
そこからこっちには来るなよ?
良いか、絶対だからな! ぜーったい!」
「いや一体どーしたし……、しゃべり方キリヱ化してるぞカアちゃん」
「この馬鹿息子がっ。
手加減してたとはいえアレだけ本気でぶっ飛ばして、ちょっと顔を合わせづらい親心を少しは労われッ」
「労わるくらいなら初めからもっと手加減するべきなのでは?(マジレス)」
「黙らんかっ!」
てい、と。トコトコ足早に接近してきたエヴァちゃんは、そのまま私の胸を軽く殴った。と、その硬さに「しくじった……」と嫌そうな声を上げて、手の甲をさする。自分で作った氷を自分でぶん殴ってたら世話ないのだが、一体どうしてそこまで動揺しているのやら……。
腕を組んで、また私から数歩距離を取り。下から半眼で拗ねたように見上げる彼女は、見た目通りの年齢の女の子にしか見えなかった。伊達に物心ついているか怪しかったころのネギぼーずから「可愛い」だの「キレー」とか言われていない。
「っていうか何だその恰好」
「気分だよ。
どうせならお前の好きそうな恰好とかを選んだ方が、まぁ、ちょっとはタシになるかと思いはしたが」
「何で私の好みとか普通に知っているんですかねぇ……?(震え声)」
「(私……?)いや、そりゃ知ってるだろ。
私、お前のカアちゃんなんだから。
どれだけお前のこと見て来たと思ってる――――
そう言われても、と困惑する私に、ニヤリと微笑んだ表情を消して、エヴァちゃんは続ける。
「大方、お前のことだ。処遇でも聞きにきたんだろう?――――まほら武道大会までの一年間、アジトからの外出禁止だ。
ついでにお前の吸血鬼性も封印する。その武器じゃ、どの道戦えはしないだろう」
「いや、あの出席日数の問題があるんでココ監禁はちょっと勘弁なんスけど」
私のその当然と言えば当然の一言に、エヴァちゃんは一瞬目を見開いてため息をついた。
「……お前がそう、何て言うか妙に『世間並』の感性をしてるのは知ってるから、そこは心配するな。
いざとなれば龍宮経由でいくらでも出席日数やら成績やら――――」
「いやだから! そーゆー裏口手段で卒業とかどう考えてもダサいっつーの! って言うかそれ以前に、クラスメイトとか何て言えばいいんだよ……。熊本から逃げた時とちげーだろ状況」
「ダサいダサくないの問題ではないし、それくらいはペナルティだッ。
あの時、言ったことはちゃんと聞こえていただろう? ――――お前が心配なんだと」
そう言われると弱い。実際、この二年で培われた彼女との親子関係を、否定するだけのものが私にはない。エヴァちゃんも「これでも情が移りやすい方だからな」と、それだけは苦笑いを浮かべた。
「だから駄目だ。
お前にまだ全然、話すことを話せてはいないが…………、それとこれとは別問題だ。
お前の安全を優先するためには、これが一番良い。あの『17号』や『53号』はこちらで適当に処理しておくから、お前は何も考えなくて良い。
それが一番いいし、そうする
「…………処理するってどーゆーことだよ」
私の一言に、エヴァちゃんは返答せず。視線は横に逸らし、遠くを見つめていた。
「……お前だって判っているだろう?
あのカトラスとか言ったか、フェイトの奴は『
アレが、お前も敵対していたディーヴァ・アーウェルンクスを率いる『あの』勢力の一派であることくらいは」
「…………」
「お前がスラムで色々あって肩入れしていることくらいは判る。
大方『血装術』で体内に干渉した時、『視る必要のないものまで』見てしまったんだろう」
「……!」
「だが、だからといって私の結論は変わらん。
危険すぎる――――それも、生かしておけないほどにな」
それこそ「今のネギであるなら」、私ですら気づかないようにあの娘を外部から操るような魔法を仕込んでいても、なんら不思議はないからな――――。
エヴァちゃんの、エヴァンジェリンの一言は。それこそ一切の感情や事情を切り捨てる、残確なまでの現実的な問い詰めであった。
そして、同時に。
「お前だってそれを理解してるから、私の方に連絡を入れず勝手にやっていたはずだ。
……何より大事な、お前本人がだ。気付いた時にはどんな顔をして叱るべきか悩んだよ」
「……………………」
「お前が、それを判らない奴じゃないのも、判る。
伊達でも何でもない『カアちゃん』だからな。
だが、お前がそうまでして自分を大事にしないなら、私にも考えがある――――」
そして、こちらに背を向けたエヴァンジェリンの一言に。私は、胸の冷たさが酷くなったような錯覚を覚えた。
「――――本来、義理など『戸籍だけの関係』なんだ。
もともと赤の他人で、今じゃ雇われ主従だが。
それがお前が勝手をする原因であるなら…………、もうそれはナシだ」
それは明確な拒絶の言葉であり。私が今まで色々と動いていたことに対する、明確な否定だった。
親子でも何でもないと、その一言に。原作でのエヴァンジェリンの心境を一通り考えれば、それが文字通りの言葉だけではない、もっと深い部分での解釈の余地がある言い回しであることに違いはないのだが。それでも、私の塞がった胸には風穴が空いたような、冷たい感覚が這いまわる。
それくらいに「道具でしかない」と突き付けられるのは。真意がどこにあるのであれ、近衛刀太という肉体を持つ人格としては、堪えるのだろう。
とはいえ、胸の氷を叩いて文句を言うくらいの精神的な余力が残っているくらいには、「私」もそれなりに場数をくぐってきていた。
「……だったらせめて、『これ』、解除しろって言いてーんだけど」
「誰がするかっ。
そんなことをしたら、お前はまたどこかに勝手に消えて、また勝手に色々やらかすだろうが。
そんなこと、私の視ていないところでなど許容できるわけがない。
…………そもそもお前が『あの時』と『全然違う』お前になってしまったのは、たぶん『私のせい』なのだから」
全く因果なものだよと。
その言い回しに、何か、妙なニュアンスを含んだエヴァンジェリンであったが。
そして振り返ったエヴァンジェリンはどこか悲し気な表情で――――。
「だったら、ウチの小間使いとして雇おうかねぇ。
……全く、まだ『ギリギリ7巻』なんだから、ちょっと早いんだよ
「――――ッ、貴様、ダーナ・アナンガ・ジャガンナータ!」
「はい?」
突然背後に現れた
と、覗き込んでいる師匠がニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべ、自己紹介。
「こういう形式じゃあ初対面かねぇ? つい先日『黒歴史』な頃のアタシを見てたようだが。
狭間の魔女、『揺籠』のダーナさ」
「キティ、アンタとは 200 年ぶり? 300 年ぶり? かねぇ。文通だけなら
「ひ、人の恥部を無造作にバラすのを止めんかッ!
別に乙女乙女してとか、全然なかったからな刀太!」
ひょいと「肩を」「左右から」「肥大化した手で」摘ままれ持ち上げられながら、顔を真っ赤にして抗議するエヴァちゃんに。とりあえず条件反射で「アッハイ」とだけ返しておいた。
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