光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ!
少しだけ過去に迫る・・・流れのままにガバる(いつもの)


ST156.「戦え少年!」

ST156.“My Love, Stay Alive.”

 

 

 

 

 

 狭間の魔女ことダーナ……、本名は長ったらしいのでこの場ではスルーするが、彼女の素性が何なのかと言えば簡単に説明すると、「エヴァちゃんの師匠」である。存在としては、いわゆる魔族こと「裏金星人」である先史文明の人類に相当なレベルで近い知的生命体、その更に上位種である存在「吸血鬼の貴族」の一人である。彼女個人について言うなら、先ほども言った通りエヴァちゃんの師匠なのだが、これが中々クセが強い。吸血鬼に「されてしまった」彼女をついでとばかりに略しゅ……もとい拾い上げ、無理やり修行をつけ、一人の超越者「もどき」としての生き方、心構えなどを叩き込んだ張本人だ。かの時空間超越別荘ですら、おそらくは彼女の魔法技術をエヴァちゃんが頑張って再現したものであり、それとて完全ですらないと言えばいかにダーナ師匠が規格外であるか想像できよう。

 原作においては準お助けキャラポジションであるが、最初期に刀太たちに修行を付けた後は積極的に本編に介入しない。それは彼女の能力によるところが主な理由であり――――。

 

「あんまり頭の中で人の事を延々と語るもんじゃないよ、本人の前で。照れるじゃないかい」

「えぇ……?」

 

 というか人の頭の中を読まないで欲しい。当然のようにそんなことを言いながら、師匠は余裕たっぷりに荒地〇魔女(ハ〇ル厄介ファン)亜種めいた風貌でニヤリと微笑んだ。

 姿かたちはだいぶ異なっているが、彼女はポヨ・レイニーデイによって呼び出された「タローマティ」というらしい相手と同一人物、だろう。時系列としては、おそらくあちらが過去にあたるはずなのだが…………いやだから、同一人物だからといって師匠に関しては説明が本当に面倒くさいので、一旦放棄だ放棄(やけっぱち)。

 

「シンプルにネタバレしてしまえば楽だろうにアンタもねぇ」

「さっきから何を訳の分からぬことを言っている!

 というか離せ!

 あとそっちの貴様、刀太からも離れろっ!」

「あら嫌だねぇ、何でそんな独占欲をガンガンに見せて来るんだい。

 キティ、お前さんもう親子でも従業員でも何でもないんだろう? まさか『にも関わらず』、此処よりも安全地帯であるアタシの根城じゃなくて、わざわざ此処で監禁するっていうのかい。いくら何でもちょっと自分を過信しすぎだと思うがねぇ」

「黙れダーナ貴様!

 刀太、そいつから離れろ……、そいつは『貴族』だ!

 私やお前と異なり、正式な『人類の上位種』!

 上級魔族、真性魔人、『古代高位神』、『否召喚悪魔』だ……!」

 

「いやあの、血装術が使えないんで無理なんスわ(迫真)」

 

 私の一言に、慌てていた様子だったエヴァちゃんは一瞬硬直。と、そんな彼女をけらけら笑うと、師匠はその姿を「一つにした」。私の背後の師匠だけ残り、ぶら下げられていたエヴァちゃんはそのまま尻もち。「ぎゃふん!」とこれまた魔族(吸血鬼)恒例めいたアレな悲鳴を上げている。……と言うかそれ以上に、師匠の知らない肩書こっちへ放り投げて来るの止めてくださいませんかねぇ(白目)。

 逃げないんで放してくださいッスと言いながら手を退けると、師匠は「物分かりが良い弟子は嫌いじゃないよ」とニヤニヤと見て来た。

 

 とりあえずエヴァちゃんに手を差し伸べて引っ張り起こす。バランスを崩してこちらに抱き着く形で倒れて来た彼女だったが、軽く私の胸を叩いて腕を組みそっぽを向いた。そんな私たち疑似親子を、師匠はそれはそれはペットの奇妙な行動でも見たかのような、微妙な目で嗤ってくる。

 

「ハッハッハ……。やれやれ、全く『思った通りに』酷い顔してるじゃないかキティ。自分の言葉でそんなに傷つくなら言わなければ良いだろうに。義理の息子にすら察されてちゃ世話ないだろう」

「…………ッ!

 いや、これは私たち親子の問題なのだから、部外者はアドバイスを求められていないのにツッコミを入れるな!

 大体、コイツの察しの良さは私に限定されたものでもないわッ!」

「そりゃまぁ『魂的に』そうなるのは妥当だろうけれどねぇ」

「……魂的に?」

「キティは知らない方が良い話だよ。さて、それはそうとトータ。……いや? せっかくだ。私のことは師匠と呼びな、弟子」

「あ、ハイ……、師匠」

 

 言いながら私にウィンクしてくる師匠。「アンタの考えてることは大体お見通しだから、先回りしてガバ潰してやるよ」と気遣われたことがなんとなく判ってしまい、苦笑しながら頭を下げた。

 と、そんな私の横のエヴァちゃんが、いつの間にやら師匠に「高い高い」されていた。わきの下に手を入れて持ち上げられた彼女は、明らかに突然のその動きに動揺している。

 

「しっかしキティ、アンタ何だい何だい? せっかく年齢詐称の術を使えるって言うのに、わざわざ義理の息子相手に二年間見せてこなかった方の本当の姿で、そんな話するとかねぇ……。せっかくそんな鶏ガラみたいなおチビちゃんじゃない方が好みだって判ってるくせに、そっちであんなこと言うのかい、そうかいそうかい…………」

「貴様ァー!

 というか何の話をしているのだ、何の話をッ!」

「いやぁ? べっつにぃー? ……………………まぁ、女の子だねぇって思ったくらいだよ」

「その顔を止めろ貴様、その顔をーッ!」

 

 完全に幼女化しているエヴァちゃんである。考えてもみれば、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル本人、地の性格は子供らしい部分も多い。「ネギま!」でも「UQ HOLDER!」でもそうだが、気を許した(本人は否定するが)相手から全力で揶揄われると、全力でムキになって反抗する部分があった。そういう意味では大人の姿でない分、それをベースに弄り倒される今の状況は、7巻(ヽヽ)時点の邂逅よりも余裕がないのかもしれない。

 

 と、エヴァちゃんが師匠から離れた時点で、微妙に嫌な感覚を覚える。それとほぼ同時に師匠が後方を見て「嗚呼」と言い、指を弾いた。

 

 

 

 次の瞬間、ローブ姿の誰かが現れて、「アチョー!」とか言いながら「飛来する斬撃」を拳で殴り、叩き落した。

 

 

 

メイリン(ヽヽヽヽ)、しばらく時坂九郎丸と遊んでやりな」

「…………へ? 九郎丸先輩とって、ちょっとタローマ――――」

「その名でアタシを呼んだ奴は普段の三倍は厳しく修行つけるって教えてやったろうに、学習しないねぇあの娘は」

 

 身長もそれなりに高く、身体の起伏もそれなりに有る彼女。声とか少しだけ見えた顔の感じからして二十代の女性に見えたが、そんな黒髪の彼女は慌てて師匠に何か言おうとした。が、当然のように指を弾かれた直後、その姿を消す。

 あの「飛来してきた斬撃」が九郎丸のものだとすると、おそらくこっちの様子を確認して、急に現れた師匠を警戒したのだろう。そのまま斬撃を飛ばしたが防がれ、更には刺客のように一人送り込まれた、ということか。

 

 というかメイリンって、誰だお前…………、誰だお前ッ!? またガバか、ガバなのか!!?(驚愕)

 

「安心しな、今回はお前のガバじゃないよ」

「何もいってないんで思考読むの止めてくださいッス、師匠……。というかツッコミ慣れてる?」

「まぁ『ようやく直に』言えるようになったからねぇ。間近で聞いてると想像以上に喧しくて、ちょっとは楽しめる」

「…………む?

 刀太お前、なんでそうすんなりあの女を師匠呼びするんだ。

 初対面だぞ、いつもみたいに微妙な警戒心というか、アレはどこに行った?」

「あー ……」

「それだけアタシが良い女ってことだろうねぇ――――アンタと違って」

「な、何っ!? どういうことだ貴様、刀太!」

「いやあの、こっちに掴みかかるの止めてくださいッス『エヴァちゃん』」

「へ? …………ッ」

 

 当然のような抗議の意思を乗せて軽く返しただけなのだが、私の一言にエヴァちゃんは目を見開いて、しかしそのまま何も言わずに私から手を放し、俯いた。どうしたことだろう、その妙に傷ついた反応。

 普段なら「何がエヴァちゃんだ、せめて様と呼べ様と!」くらいは言ってくるだろうイメージがある。それこそ原作を踏まえてもそうなのだが。とはいえ「理由も判らず謝る」というのもそれはそれで怒られるので、どうしたものかと師匠の方を見る。

 

 宇宙に放り出された猫みたいな顔して、肩をすくめて両手を上げていた。全身で「処置ナシだねぇ」という意見表明をされましてもですねぇ……。

 

「そうなるのが嫌なら『あんなこと』言わなければよかったろうに。それこそ、そういう変な所で律義っていうかドライっていうかな部分は知ってるんだろう? 親子『だったんだから』。

 理由さえ説明してしまえば、納得して普段通りに戻るくらいの柔軟さと共感力の『妙な高さ』はあるんだから、意地張らずに――――――」

「だから黙れと言っているだろうが!」

「――――やれやれ、本格的に処置ナシじゃないかい。

 だが、それはそうとアタシも『やることがある』からこっちに来てるんでね」

 

 師匠はそのまま自分の右手を背後に、というか「私とエヴァちゃんの死角に」入れ、勢いよく振り上げた――――と同時に数人この場に現れる、というより「押されて」倒れるような形に。

 九郎丸に関節技(フットロッカー)()めているローブ姿だったメイリンとかいう彼女(よく見れば全身タイツ)と、仮契約カードを奪われて武器を召喚できず苦労してる九郎丸。訳も判らずひっくり返ってス〇キヨみたいなポーズでパンツ丸出しになってるカトラスと(隠せ)、受け身を取る暇なく転んでお腰を痛められてるキリヱ大明神。トドメに、振り上げた師匠の手で髪を掴まれて、鎖鎌みたいにブンブン振り回されている三太。軽い地獄絵図である。

 

「っていうか今の何、どうやったんスか……?」

「まぁアレだよアレ、目の錯覚を利用した」

「錯覚って――」

「見えない収納(ヽヽ)から必要なモノを取り出した」

「――いやどういうことッスかッ」

「……諦めろ刀太、こういう奴だこの女は…………。

 それより三太を放してやれ、ダーナ」

「ふんっ」

 

 ぺしり! と振り回していた勢いのまま地面に叩きつけられる三太に同情を禁じ得ない。

 いやしかし、原理は不明だが、特撮ヒーローとかが「お前それどこにしまってた!」というレベルの大きな変身アイテムを取り出して構えたりするものの応用? なのだろうが、それにしたって収納限界くらいは考えて欲しいものである。

 と、大慌てで身体を起こしてスポーツタイプのパンツを隠しながらこちらを睨むカトラスから視線をそらしていると、師匠は私の目を見て。

 

「一応、アンタの弟子入りは『過去も未来も』確定なんだが、一応聞いておこうかい。

 強くなりたいかい? コノエ・トータ」

「…………死なない程度にっていうか、『死なせない』程度にっつーか」

「曖昧な返事だねぇ……。もうちょっと『心が動く』ようなことを言ってみな?」

 

 脳裏に過ったのはカトラスもそうだが、この人生で遭遇したディーヴァやらでち公やら。そして原作で最終的に戦うことになる相手を思えば――――。

 

「少なくとも、カアちゃん(ヽヽヽヽヽ)にこんな顔させねーくらいには。……マザコンだ何だ好きに言えってんだ、仲間も家族も誰にも、心配かけて言われないようにしたいって思って何が悪いってんだ」

「痛いのは、嫌なんだろ?」

「それでも、俺が何もしねー理由にはならねーから」

「――――――――」

 

「――――あほほほほほほッ! 馬鹿だねぇアンタも。

 そんなんじゃたとえ何度生まれ変わったって、生き方は変わらないだろうに」

 

 状況が読めねぇと何故かドン引きしてるカトラス、首から下が地面に刺さって抜けない三太、「どこかで聞いたことある声ね?」と不思議そうなキリヱ、「弟子ってそれは……」と不思議そうな九郎丸と、いまいち表情が見えないフードのメイリンさん。

 そして、私の後方で息を呑んで、何も言ってこないエヴァちゃんで――――。

 

「畏れず前を見て歩み続けろ、かい? ――――」

 

 そして師匠は、深くため息をついて。

 

 

 

「――――『雪羅姫(せつらひめ)』だってもう持っていないだろうに。これだからキティは。全く、罪な女だよ『いつも』」

 

 

 

「――――えっ」

 

 その師匠の一言に――――「私」にとっては母親代わりの形見であったその刃の名と共に。知っていても不思議ではないだろうが、それでもこの場で突き付けられるにしては「違和感のある」言い回しに気を取られ。同時に私の胸は「消し飛ばされ」、強い眠気に襲われた。

 

 

 

   ※  ※  ※

  

 

 

 ――――ハハハ! 驚いたぞ、凄いなお前……。腐ってもアレは■■■の人形だぞ? 普通は不意打ちでも首は落とせんはずだが…………、やはり「血」か――――

 

 ――――終わりだよ、これで、私は。見た通りだよ、嗚呼、キクチヨ……。フフ、■■■が居ないのが残念だが、お前達(ヽヽヽ)にも世話をかけたな――――

 

 ――――良いか? 生きると決めたなら、意味などなくとも生きるものだ。……やれやれ、困った子だ。この私相手に、まいったな……。こんな時何と言えば良いか――――

 

 

 

 ――――この……、この(雪羅姫)は我が心、我が命。そこに映したお前の姿に、恥じないように生きろ。まっすぐに、恐れに足を取られず、それでも踏み越え、前を見据え、しっかり、一つ一つ――――

 

 ――――戦え(生きろ)、少年! 男の子なんだから―――― 

 

 

 

「…………酷い夢見だ」

 

 何で「私」にとっての母代わりだった彼女の死に際の夢など見なければならないのか。全く嫌になる。部分部分、記憶も歯抜けで、覚えている部分と覚えていない部分があって。ただあの後、剣と眼帯だけはもらいうけ、前も後ろもわからないまま、とりあえず足を進めた。そのことだけは覚えている。

 覚えているけど、それはそうとして痛いものは嫌だ。彼女の下で育てられていた時の経験以上のそれを味わいつくしたことで、当時からもだいぶ精神が変化した自覚はある。だが、人生っていうのはそんなものだし――――それすら「私」が私であると『保証してくれない』ことが、何よりも強く辛かった。

 

 ため息をついて上体を起こせば、何故か上半身裸のまま寝かされていた。包帯はとれており、当たり前のように傷は存在しない――――存在しない?

 はっとして自らの胸を撫でるが、そこには明らかに強烈な違和感がある。傷痕だ、傷痕がない――――雪姫ですら凍結して封印する他なかった、何をやっても残り続けたあの九郎丸の傷が、その存在を跡形もなく消していた。

 

「…………オイオイオイオイオイ、どうしろというのだ師匠も」

 

 ほぼ間違いなく、師匠の仕業である。原作に置いて「狭間の魔女」ダーナは、「初対面だった」カトラスによって襲われ、部分部分能力を封印されていた近衛刀太のそれを復活させたのだ。そんな彼女からすると、いつまでも胸に九郎丸の力が残り続けていることが、嫌だった可能性も高い。そういう「ハンパな」方法で能力を使うのを嫌うというか、適当な話だがそういうイメージがある。

 イメージがあるが、だからといって完全にこちらの攻撃手段を封じられてもその…………。

 

 部屋の周囲を見回し、そのスケール観や既視感のある光景から現在位置を断定する。ほぼ間違いなく、師匠の拠点である「狭間の城」、キリヱのレベル2の「あの部屋」が接続されている、天空の古城のような場所だ。

 まさか二回連続で殺されかかりながら気絶させられるとは思っていなかったこともあり、とりあえず深呼吸。つまりこれは原作8巻、修行編に突入したという風に考えても良いのか? だが師匠の言っていたことからすれば、まだ7巻くらいの時系列にいるはずなので…………、駄目だヒントが足りなすぎる。

 いっそのこと師匠を探して直にお話できないかと思い服を探したが、そこには「あつらえたように」原作刀太が着用していた学ランが存在した。

 とりあえず適当に着替えて少しストレッチ。動作確認的に「今までの身体能力」が低下している訳ではないらしいが、雪姫に封印されていた時同様に「金星の黒」との繋がりを感じない。当たり前と言えば当たり前なのだが、さてどうしたものか――――。

 

 

 

『――――――――あっ』

 

 

 

 ふと聞こえた声の方を向くと。そこには「桃色の長髪をした」「巫女装束の」「二十代くらいの女性」が立っていた。顔には白い(カラス)の仮面。髪は結っておらず、背中には「六つの輝く羽根」が生えている。

 そんな彼女は、私の様子を前に目を見開き。しかし少し視線を逸らした後、一度咳払いをした。

 

『…………お目覚めになりましたか、近衛刀太、様。

 …………狭間の魔女様が、お待ちで――――』

 

「いやお前、九郎丸だろ」

 

『――――ひゅッ!?』

 

 思わずの指摘を前に、その明らかに姿の違う九郎丸は――――仮契約で呼び出されている神刀・姫名杜であるはずの九郎丸は、その場でずっこけた。

 

 

 

 

 

 




質問コーナー、一応本日(16日)締め切予定なので、ギリギリ滑り込みの方はお早目にです・・・!
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