今回はもうなんか色々本気で注意回。そして私も過去にガバ描写があるか確認しきれていない現状なので後々修正も入るかもです汗
ST157.A!:Insufficient
『どう…………、して……?』
「いやだって、完全に九郎丸だろ……(原作 23 巻的に)」
『――――と、刀太くん……!』
困惑しながら仮面を外したその九郎丸。髪の色は一気に真っ黒に戻り、背中の羽根も何処へやら……って、思いっきりノースリーブタイプというか、「ネギま!」でせっちゃんがかつて着用していた胴着タイプの背中が思いっきり出ている型の恰好だった。と、感極まったようにそのままこちらに飛び掛かり、私の胸に顔を埋めてわんわんと大声で泣いていた。
『刀太君……、僕、ああ…………、刀太君…………!
ごめんね……、
「…………」
姿かたちでいえば、青梅勝四郎を偽名としていたカチコミ用の美人バージョンな九郎丸だが。その、詳細を聞くにしても嫌に恐ろしい気配しかしない、零された一言に。私は瞑目し、その背中を抱きしめ返してポンポンと叩いた。
時坂九郎丸――――その身に宿る神刀・
つまり、自らの意志で
「…………事情は聞かねーけど、前に話したろお前」
『あっ…………、そ、そういえば、そうだったね――――ひぅ』
「何で人の顔を間近に見て硬直してるんスかねぇ(震え声)」
自分から抱き着いておいて照れるとか流石に止めて欲しいというか、より女性的になったその姿の状態でそんな乙女乙女しい顔されても色々と困るだけなので正直止めて欲しいというか、止めてクレメンス(震え声)。
そんな風に言い訳めいたことを考えながらさてどうしたものかと思案していると、ぬっと九郎丸の「影から」師匠がひょっこり頭を生やした。思わず引きつった私に鼻先5センチくらいの位置まで迫ってきていた九郎丸が(近い!?)「どうしたの?」と涙目のまま不思議そうにする。と、ぬっと伸びた手が九郎丸の後ろ髪を掴み、無理やり引っ張り上げた。
『きゃあッ!』
「全く、何を完全にアタシの予想通りの展開してるんだいアンタは……。だから言ったろ? 今の近衛刀太は『お前の知ってる』近衛刀太の数十倍のレベルでカンが良いって。『経験値』的な理由でも」
『す、すみません、ダーナさん…………。えっと、刀太君……』
「あー、何て言ったらいいのか…………? 何を聞いたらいいのか、って話なんスけど」
それはそうとして状況が混沌としている。まず何と何がどうして何とやらというか、繰り返すが何をどう聞いたら良いのかというところからさっぱりである。中途半端に事情を分かってるし(原作的に)、九郎丸のリアクションやら以前までの推測やらを踏まえれば当然のように予測できることもあるが、だからこそ逆に「何を言うのが」不自然でないかという、そっちの問題もあったりする。
そんな私に肩をすくめると、師匠は九郎丸に仮面をつけさせた。再び桃色に髪が発光し、羽根が生える。
「コイツは
「いや何スかその色々もりもり過ぎる名前……」
というより九龍は完全に九郎丸の(ある意味)別名だし、勝四郎は私が名乗らせた偽名だし…………。
「そういうことにしておきなって話さ。でないと『桜雨キリヱによって』『五万回以上』『時空周回を跨いだ』『一周目の』アンタみたいに、最終的には吸収統合か対消滅せざるを得なくなるからねぇ」
私の脳内の疑問に対して、当然のように返す師匠。仙境館に居た時含めて、どう考えてもこちらの思考を読んできていやがる……! あの、その。なんというか色々と平にご容赦ください(震え声)。
「アンタがそうやって、文字に起こした時『
「チュウベェですらツッコミを入れないようなメタ発言を……!?」
『め、メタ……?』
熾天使九郎丸……、というか「九龍」と呼べと言っていたか。詳細はわからないまでも、師匠がそう呼べと言うからには、この場合何か必要があるのだろう。九龍天狗ちゃんは、それこそギャグ顔というかデフォルメしたら目が真ん丸で描かれるような困惑のご様子。
困惑してるのはこっちの方なんですが……、その…………。
と、しばらくすると師匠が窓の外を見て「時間だね」と何度か首を縦に振り「アンタはもう仕事に戻りな」と九龍天狗ちゃんの背中を蹴っ飛ばした。腰をさすりながら『あっ、じゃあまた後で……!』と、ちょっとクール目だった初対面時(?)のそれを普通に投げ捨てて、いつもの九郎丸な様子である。
そして彼女がいなくなったのを見計らい、指を一度弾く師匠。特に外見上何かが変わったわけではないが、これは…………?
「防音結界だよ。『狭間の魔女』であるアタシの防音さ、それこそ他所の世界のアタシかアタシが許可した相手以外は聞くことは出来ないだろうねぇ」
「何っつーか、ホント何でも有りっスね師匠…………。っていうか何で防音?」
「――――これならアンタだって素で話せるだろう。外に気を遣わなくて良いんだからねぇ、
当然のように察されている「私」の名前に表情が引きつり、特に何をしろと言われたわけではないが両手を上げて降参のポーズをとっていた。お手上げ状態である。
「まぁ、何と言うか『察されてる』だろうし下手したら『聞こえてる』のだろうとはずっと思ってはいましたが…………、ちょっと色々、情報量が多すぎて
「安心しな、まだまだ序の口だよアンタ、
「そもそもメイリンって一体…………」
「アンタのガバじゃないけど、まぁ結果的には半分はアンタのガバになる娘だよ」
「――――――――」
「現実逃避して白目剥いて気絶しようとしてんじゃないよアンタ、ほれッ」
「アウチ!」
倒れかかった私の鳩尾に蹴り一発入れたくせに衝撃は「背後から来て無理やり立ち直らせられる」とかいう物理現象の無視よ、一体どゆことネ……?
「超じゃないんだから、もっとしっかりしゃべりなアンタ」
「あの、せめて精神的なプライバシーくらいは確保していただけると……」
「悪いがこればっかりはねぇ……。『深淵を見る時、深淵もまたこちらを視ている』っていう理屈から難しいものがあるね」
「さっぱり意味がわからないのだが…………」
「判らなければ『今は』そのままで良いよ。後で色々察した時に、嗚呼あの時言っていたのはこういうことだったのかーくらいに覚えておけば。何でもかんでも準備済で全てを不可分なく回収できるっていう展開は世の中に中々あるもんじゃないが、アンタの抱えてる『自己同一性』に関する恐怖は、ある程度はどうにかなるみたいだし。
正直な話、アンタの記憶にあるだろう『UQ HOLDER!』についても、アタシからすれば『そういうエンド』の一つってことになるから、そこはイーブンってところかねぇ」
当たり前のように自分のいる世界がフィクションとして作られている可能性についてもスルーして流すダーナのお師匠は、なんというか想像以上にダーナのお師匠しており、絶対に敵わないと思わされるだけのパワーがあった。
まぁ座りな、と言いながら「いつの間にか」設置されていたテーブル。造形が中世なんだか近未来なんだか微妙なラインの幾何学模様が走った椅子を引き、これまた同系統の模様が描かれたカップに注がれた液体を飲んだ――――。
「…………、水?」
「嗚呼、そうだねぇ。世界的に見ればプレミア物だが、アンタはそのうち好きな時に好きなように飲ませてもらえるようになるもんだから、何も考えずに飲んどきな」
「何も考えずにと言われましても…………。あ、でも只の水のはずなのに、妙に落ち着――――」
「そりゃ『本当の意味での』
「――――く、ぎみやッ!?」
いや魔人? なんだか吸血鬼なんだかって相手に何てもの飲ましてくれてるんだこの師匠!? 思わず咽た私に、意地悪そうにニヤニヤ笑うダーナ師匠は、「害はないから安心しな」とだけ言って自分も同様のそれを一口飲んでいた。
「愛情を感じる良い水だねぇ…………。
さて、それはともかく。少しはこれで『状況が理解できた』かい?」
師匠のその一言に、私は深呼吸。……本当に飲んで大丈夫なのか疑心暗鬼になりながら、コップの水を一口ちびりと飲んで、改めて思考を回した。
「……………………何というか、もはや私が知っている『UQ HOLDER!』からはこの世界って外れてます?」
本来ならエヴァちゃんと一緒に師匠を襲撃してますよね、と。
私のその一言に、ダーナ師匠は腹を抱えて大笑いした。
「いえ、あの、笑われてもちょっと困ってしまうのですが……」
本来であれば、いわゆる原作8巻の修行編において。最初の時点で近衛刀太はこの「狭間の城」で目覚めた際に、いまだ十数歳のエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルと遭遇する。誰に対しても警戒をしている、しかし未だ心の底に暗い感情が渦巻く前の素直なエヴァちゃん。この修行編は、近衛刀太やその周囲の「不死者としての」レベルアップと同時に、そんな過去のエヴァンジェリンとの交流を深め、彼自身のルーツを探るその足掛かりになる編である。
故にこそ、それが本来なら発生している段階で、あの九郎丸が来たり師匠とこうしてお茶(?)しているという状況は、中々に不可思議かつ不可解なものがあった。
そんな師匠は目元の涙を拭い、私に軽く手を振る。
「嗚呼、悪いねぇ。そこをいきなり聞いてくるあたりアンタはちゃんと『近衛刀太』してると思って。感情の種類は違うにしても、やっぱりキティに、いやエヴァンジェリンに『愛』を教えられる『運命の男』であることに変わりはないねぇ。嗚呼、心配しなくても『ある程度』イベント順序だけを意識して動いていれば、なんとかなるよ。キティの心象はともかく」
「あ、当てつけか何かッスか……」
「事実だろう? だって――――」
「――――アンタあの子、キティと『そういう関係に』なるイメージが、全く湧いていないんじゃないかい?」
頑なに何が有ってもカアちゃんと呼んでいたその振る舞いは、つまりそういう事だろ、と。
指摘された事実に。私はどうしても、背筋を這いまわっているようなこの苦い思いを拭い去ることが出来なかった。
そんな私に、彼女は同情するような力のない笑みを、視線を向けて来た。
「まあ心中は察するよ。察するだけでどうこう言うのは野暮ってものだろうが。
下手を打てば『それが切っ掛けで』キティが絶望し、果てにあの子が『積極的に』世界を滅ぼす側に回るかもしれないとかねぇ。十分ありうる可能性だし、だからそれを検討したアンタはあの子を『愛せない』と自覚した瞬間、その関係性に『親子』としての側面を強くするために動き始めた。
まぁ身体的にも? 大河内アキラみたいな『本当の』
「いえ、そもそも齢十歳の肉体に欲情する程『私』も飢えてはいないので……って、そういう話じゃなく……!
…………………………………………」
私自身が、エヴァちゃん――――エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェルに対して、本来どういう感情を抱いていたかと言うと。恐ろしいことに「何の感情もわかなかった」というのが、初対面の時のそれである。
病院で目を覚まして
不死身による機能不全か何かかということもなく、クラスメイトで言えば朝倉やら、後に絡みが多かった九郎丸、もはや何が何やらと言う暇もなく色々と怖い(断言)夏凜やら……いや例を挙げると生々しくなってくるのでストップするが、そういった類のものがエヴァちゃん相手には全く出なかった。
むしろ、心のどこかに鬱屈とした感情すら湧いてきており――――。
それら全てをふまえて、「UQ HOLDER!」における
エヴァちゃんの姿を前にした時点ですら、可愛い、愛らしい、露出が激しいといった類の感想は出て来るが。それで私自身、何かしら強く「そう」なる訳でもない。視線を引き付けられたとしても、本当に、彼女だけに限っては何もかもが事情が異なっていたのだ。
ただ、そんな事情は最初からお見通しだろう師匠は、彼女にしては珍しく突き放さず、仕方ないという風に寂し気に微笑んだ。
「いや、そういう話なんだよ。まあ落ち込む理由も判るがねぇ。人工精霊の方のあの子――――二百年はいかないだろうが、それくらい前のキティからすらあれだけ好意を示されてちゃ、自分の
悪い手ではないよ、実際。アンタの知る世界の流れでも、近衛刀太から迫られるまではキティも『そういう目では』極力見ないように動いていたようだし。
だから自分の主義主張である『痛くないように』したいっていうのをメインに据えても、あんまりイベントの流れからは積極的に逸れようとはしていなかったようだし。……桜雨キリヱに関しちゃ、『原作同様』ちょっと対応が甘い気がするが」
「……………………」
「ま、どんなに落ち込んだところで、アタシから言えることはあんまり多くないんだがね。野暮も過ぎれば馬に蹴られて28箇所の刺し傷だぞ! 確実に殺したかった! みたいになっても痛いからねぇ」
「何で唐突に
「いや、あまりにも元気がなさそうだったからついねぇ」
師匠の発言があまりに自由極まりないのはともかく。
というかそういうツッコミは律義にするんだねぇ、と言われてしまい。頭の中が真っ白に――――否、真っ黒に染まった私は、思考が酩酊して、言葉をそれ以上返すことはできなかった。
そんな私に、師匠はしかし意地悪げな笑みを浮かべる。
「…………ただまぁ、アタシに言わせればそれはちょっと勘違いなんだよ」
「……勘違い?」
「そうさ。基本的に人間に限らずだがね? 恋愛感情っていうのはその育った環境に大きく依存するもの。近衛刀太じゃなくキクチヨにとっての『母親』って相手は、母親であると同時に『育ててくれたシスターの仇』であるってのが重なって複雑だったり、それを少しキティに投影していた面もあったってのもあるだろうがねぇ――――」
もはや当然のように知られている「私」の過去を明言してくるあたりには、もはや文句を返せる余力も無く苦笑いが浮かんだ。
「――――だけど嫌い合ってる親子でもなければねぇ。基本、その人間っていうのはどうしても愛する相手を探すとき、その相手に自分の親を投影して見てしまうものさ。ましてやキティは
詳しく知りたきゃ、キティの所に今いるサムライみたいな和尚に説法してもらえば良いが……」
「師匠から見てもあの和尚さん、そんな扱いなんスね(遠い目)」
「何なんだろうねぇあの男は……、別に『そういう魂』が関係してる訳でもないだろうに…………。
いや、その話はともかくだ。その前提があればこそ、本来ならアンタが『近衛刀太』でなくとも、キティを愛してあげることは出来るんだよ。そこだけは、間違いない」
「そんなことを言われても…………」
「もしそれが出来ないというのなら、アンタの心の内に滞留しているその『黒々とした』何かは、決してアンタがあの子を愛せない絶望『なんかじゃない』。
もしそうなら、可愛いとかきれいとかすら思えないんだからねぇ普通は。
だとすれば、そう思えない感情の正体。もっと言えば、それを抱いている『アンタ』の正体っていうのは――――――――」
「――――――――ちょっと喋りすぎだぜ? 『背教』タローマティさんよ」
そう言いながら「テーブルの上」私と師匠の間に現れ彼女を見下ろしているのは…………、聞き覚えのある声、聞き覚えしかない声。振り返らずともわかる、わずかに揺れる黒と白のローブにその背丈は見間違えるはずもない。おそらくその「近衛刀太」の顔をした誰かは……。
「……………………アンタは変わらないねぇ。
自覚させてあげた方がそこの
「…………って、いうか星月お前まで黒棒みたいに実体化できるのかお前オイオイオイオイッ!?」
この液体、一般的には悪魔やら怪物特攻だろう「聖水」と言う割に呑むと本当、不思議と落ち着くのだがこれは一体……?(現実逃避)
※これでもチャン刀側からエヴァちゃん側への感情が重い理由の「一部」です(後は星月ちゃんが知ってる無自覚案件)
ご質問とうとうありがとうございました! 結果についてはあちらの活報をご参照ください・・・