光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ!
ちょっとだけメタネタ注意 & 師匠、ついにストレス解消開始


ST161.坂の上を見上げる

ST161.Climbing Preparation (GABA Mountain).

 

 

 

 

 

「とりあえずそこに直るネ、正座」

「アッハイ」

「素直で宜しいが、それで簡単に許すと思ったら大間違いネ。……見た感じ、『修行に来た当初』の刀太サンか。『百の顔を持つ英雄』もまだ折れていたようだし、映像的に」

 

 師匠の拠点、「狭間の城」。外観だけで言えばいわゆるSF近未来やらスチームパンクやら古代の超テクノロジー的な外観の一都市のような施設である。その下方、何やら魔力でも推進力にしてるのかは定かではないが、エネルギーを発しているらしく発光している棘というか塔というか、そんな箇所の一室。石造りの書斎のようなこの場所で、私は彼女に正座させられていた。腕を組んでこちらを見下ろす彼女は、少しだけチャイナ風の装飾が施されたバニースーツ姿に素足で、かつ身体的には「私の知る」だろう原作の彼女よりは幾分成長している。

 

 超鈴音、いつかにも詳細を思い起こしたことがあるが、どうも本格登場のようなのでもっと細かく、改めて。宇宙人にして未来人にして超能力者にして異世界人である。ネタバレしてしまえば彼女は「ネギぼーずの血を引く」未来人であり、おおよそ 2100年代の裏火星より、二十一世紀初頭の麻帆良学園へと来訪した。目的はただ一つ、「未来においておこる」「よくある小さな」「しかし人によって大きな」ことを回避するため、書き換えるため、つまりは歴史を変えるためにである。その未来においてもおそらく超天才的だろう頭脳を用いてタイムマシンを開発し、過去の麻帆良学園で自らの先祖であるネギぼーずと接触。彼の受け持つクラスの生徒として潜り込み、そのまま色々東奔西走していた。本編終了後は世界を渡り歩くある種のフィクサーというか「あしながおじさん」というか黒幕というか、そんな立ち位置で飄々としているらしいラスボス系少女であった。

 そんな彼女は当然のように「UQ HOLDER!」の方にも出演しており、しかしその登場は最後の最後まで回されることになる。そもそもがキラーカードであり、使いどころ的にもチート過ぎてお前が出てきたら大体終了だろと言われかねないポテンシャルなので残念ながらその扱いは当然ではあるのだが、まあそのせいで逆説的になんで出てこれなかったのか問題とかも色々あったりして私としてはコメントが難しいのだが…………。

 

「―――――フム全く、大体先輩はそもそも色々何度もお説教はしてきたが、少しは『ネギぼーずの血筋』というものを…………って、話聞いてるネ?」

「へ? あ、いや……」

「むぅ、……、いくら私が美少女だからて、そうナマの脚ばかり見られると照れるヨ」

「いや位置的に仕方ないだろうが、目線の高さ的に……」

「そういう問題ではないネ」

 

 言いながら顔を少し赤くしつつ、しかし特に隠す挙措も見せないのは一体何故なのだろうかと小一時間問い詰めたいが、ともかく。おだんごシニヨン二つに三つ編みを垂らさずリングになるようにしている彼女は、中学時代よりも幾分大人びた風貌で「ホントに重症の様子ネ」とため息をついた。

 

「こればかりは仕方ないカ…………、ハァ。

 とりあえず着替えるネ。『来たれ(アデアット)』――――時間軸渡航機(カシオペア) XIII 號(十三号)

 

 言いながら「ネギま!」連載時に本編ではついぞお目見えしなかった、劇場版用にデザインされたらしいその「超包子」印が胸元に眩しいバトルドレスへと恰好を変えた。見覚えのある格好かつ露出がだいぶ減ったので一安心一安心というところだが、それはそうとその魔法具ちょっと待てお前ッ!? 十三号って何だ十三号って!!?!? 元祖「ネギま!」でも三号機くらいだった訳だし、ホルダー時系列で複製しててもその号数までの開発設計どう考えても異常極まりないだろいい加減にしろッ!(動揺)

 思わずツッコミを入れると、そうは言っても技術は進歩するものだし的なことを返してくる超である。

 

「マ、そもそもこれ自体が魔法具(アーティファクト)である以上、細かくどうこう言うのは野暮ってなものネ。世界パクティオー委員会は『過去』『現在』『未来』問わずすべての時空において希少な『魔法エネルギーを使用する』道具全般を収集し解析しレプリカを作成している以上、たとえ私の発明だとしても私個人の手を今は離れてるアイテムということだ、この懐中時計型のタイムマシンは」

「ちなみに今、超さんが開発してる最新版のカシオペアって何号なんスか?(純粋な疑問)」

XVIII 號(十八号)ネ」

「既に超過してんじゃねぇかナンバリング…………(白目)」

「アハハー、マ! 通常の仮契約でのアーティファクトてそんなものネ。一応、私も強者判定喰らてるのは予想外だたが」

 

 正座したまま軽く眩暈を覚えてバランスを崩すと、膝の痺れが一気に回りその場に倒れた。やれやれネと言いながら手を貸してくれる超のそれをとり、しかし立ち上がれないので少しゆっくりさせてもらう。意外と高い体温が伝わってくるのに夏凜とはまた違った妙な安心感を覚えるのだが、きっと錯覚である。そもそもこの超が居れば大体何とかなるという話でもあるので、というところは大きい。

 

 しばらくしてから超が薦めた椅子に座り、お互い適当に向き合う形に。そこでふと思い出し、私は彼女に礼を言った。

 

「…………えと、えぇと、何のことネ?」

「いや、色々とな。キリヱも何か世話になったみたいだし、三太の時のだって…………って、これは大丈夫だろうか? えっと、『アレ』以降の超さんってことで合ってるだろうか、貴女は」

「あー、アレかネ? 『シン仮契約(ネオパクティオー)』のアプリの術式スクロールのことカ。……ドローンで映像見ていたことよりも先にそちらを言われるとは、何と言うか色々予想外ダヨ。

 アイヤ、礼には及ばないというか、こちらもこちらで事情があったことネ。『最終的には』同様の結末に至るのなら、時空に負荷をかけるべきではないというタローマティの」

「時空に負荷を………………?」

「そうネ。

 もしあそこで、刀太サンがあの魔法具を持っていなければ――――キリヱサンがまた何度か巻き戻して、周回と別データとを行ったり来たりして初めてそれを確保するという流れになていたから、ざっくり百五十回前後カ? くらいは繰り返しになっていたネ。

 流石にそうグダを巻く必要性を感じなかったからタローマティに上告して、納得してもらたカラ、直接アレを届けに行たネ」

「頭が痛ェ……」

 

 つまり、ダイダラボッチ出現前に超が現れて、三太と水無瀬小夜子の仮契約用の魔法アプリを用意していなければ。タイムパトロールを師匠に「させられている」っぽい超がまた面倒なことになったということだ。

 おそらく私にもキリヱにも色々とボカされてはいるだろうが、彼女の能力による「セーブデータ」の情報量次第では時空崩壊の危機がある、らしい。もっとも、下手するとそれすらも色々ぼかされて「わかりやすく」されているだけで、そのテの専門家からすればもっと酷いレベルの可能性すらあるとも思っている。だから彼女が仮に「時空崩壊の危機ネ!」とか言い出して色々動き始めたら、それは本当に危険な事態なのだろう。

 

 つまりは、知らず知らずのうちに恩が溜まっていっているということだ。……本当ならキリヱ大明神が超たちにある恩ということになるが、事情を知っていることと結果的なアレコレを考えれば、私の方が助けてもらっている割合が大きい。

 改めて頭を下げると、苦笑いの超。

 

「そう畏まるような話でもないネ。それより刀太サンは自分の身を心配した方が圧倒的に良いと思うが」

「私の身を?」

「そうそう。意図せずとはいえタローマティの修行をぶっちぎったことになるネ、これはかなり怒られるヨ…………、こ、怖いが、とりあえず弁護くらいはするネ。アレは事故だたし。(私のせいにされそうだが……)」

「こっちで再生した? のは確かに意味不明だし、あと確かにそこの窓の向こうを見ると、どう見ても暗闇に星空だから時間帯が一瞬で切り替わったというのは理解しているのだが…………」

 

 私の疑問に、彼女は「そうそう、時間軸がずれ込んでるネ」と返す。言いながらどこからか取り出したスケッチブックに、さらさらと絵を描き始めた…………って、無駄に上手いぞ? この拠点である「狭間の城」を描いているのが一目でわかる。

 

「刀太サンも『既に知っている』とは思うが、ここの拠点は狭間の世界――――『どこでも』あて『どこでも』ない時空間座標にあるネ。お陰で大体タイムマシンの設計開発に失敗したら最終的に放り出されるのがここだが、ゲームで例えると…………、マップの外の暗黒空間? ずーと落下し続けるみたいな枠外エリア、というところネ」

「枠外…………」

「クト〇ルフ的にはティンダ□スの猟犬とか彷徨てる所ネ」

「そっちの方が解りやすい」→「真・這いよれ!ニャル子さん 嘲章」もヨロシク!(メタ)

「そういえば前に修理を依頼された『無限抱擁』の術式ベースも確かこの空間を模倣していたような……」

「その情報は要らない(震え声)」

 

 また何か変なガバにつながりそうな話をされかかったのにストップをかけると、彼女は「相変わらずネ」とけらけら楽しそうに笑った。……何だろう、前から思っていたがやはり超から私への距離感というか、感情のベクトルがだいぶ気安い。よくはわからないが、だいぶ親しい友人間のような空気を醸し出している。この空気感にも色々言いたいことはあるが、だがこの場合何をやってもガバにしかならない気がするので、とりあえず私は口をつぐんだ。

 

「タローマティ自身はここを自ら制御しきれているという風に振舞ているが、実際、私が見たところはそうでもないネ。ここに『世界をどう繋げるか』を制御しているのがあのお師匠だが、彼女が眠っている間にどこか別な時空と繋がていると言う『レベルですらない』。

 ここは明らかに『世界線ごと』入り乱れているネ」

「世界線ごと…………?」

「世界線の考え方は……、適当に言うと、タイムパラドックス解消という意味付けでの異世界発生説のようなものだが、その発生した世界が辿る過去から未来への軸を一本の線に見立てたものネ。

 タローマティにとて、それらの教義(運命)は全て手を出して操作することが出来るものであるが故に、ここは逆説的に『すべてと繋がり得る』可能性を内包している。だからこそここは『縦軸(タイムライン)』『横軸(パラレルライン)』もすべてが曖昧で――――」

 

 

 

「――――なんだ、こんな所に居たのかい刀太」

 

 

 

 ひぇ!? と思わず超共々、声が裏返った。どちらからともなく思わずお互いに抱き合うくらいには、唐突に響いた師匠の声は恐ろしかったと言って良い。気のせいでなければ四方八方室内の「全方位」から「耳元で囁くような」超絶ステレオ音声が聞こえた、というかもはや輪唱して反響して「鳴り響いた」と言って良いレベルである。いたいけな(?)少年少女が追い詰められたところで誰が責められよう。

 と思っていたら、普通に私からすれば右側(超からすれば左側)の扉が開かれ、通常のデラックスサイズ(比喩)なお師匠が入ってきた。最初はともかく登場の仕方事態に変なサプライズがないのは逆に新鮮でこう、安心します……、安心します……。

 

 と、師匠は私たちの様子を見て肩をすくめた。

 

「やれやれ、『そっち』になっても仲良しとは時坂九郎丸から色々言われるんじゃないかい? 超」

「あ、アイヤー ……、驚かしにかかるタローマ、いや、ダーナ師匠も色々問題行動と思うネ」

「アタシは良いんだよ、正直『ここに居る』アタシでさえ『夢みたいなもの』なんだから。

 …………それはそうと、今日アンタがアタシのことを『背教』時代の名前で呼んだ回数分、新しい仕事を――――」

「アイヤ! と、とりあえずお師匠も来たし私はこれで――――サヨナラッ!」

「いやニンジャじゃねぇんだからさぁ…………」

 

 言いながら手元のカシオペアを操作し、その姿を消す超。状況が悪くなったから逃げたということなのだろうが、それにしたって雑である。そして、そんな彼女の去り際を見て「どちらにせよ『この時間軸の』アタシからは逃げられないだろうにねぇ」とか言う師匠がやっぱり一番怖いというオチであった。

 救いは……、救いはないんですかァー!

 

「救いなんて有るわけ無いだろ仕方ないじゃないか。それこそアンタ自身が救いになってやらないとねぇ」

「だからナチュラルに思考を読んでくるのを…………、って、あー、えっと」

「まあ安心しな? 『体力測定』はアレで予定通り終了だったから、別に問題はないよ。後で桜雨キリヱたちが帰ってきた時に色々と文句を言われるだろうが、そこはまぁ自力で何とかしな」

「あぁ……、ハイ(遠い目)。

 って、『予定通り終了だった』?」

「そうだよ。ほら、ああやって修行をしてるのさ――――」

 

 師匠は言いながら指を弾く。と、書斎の窓「上下四つ」のうち三つが、まるでテレビ画面のように変化し…………、ってオイオイオイオイオイ!? キリヱとか三太とかはおおよそ原作通りだからいいけど九郎丸の修行ちょっと待てお前!? あの九龍天狗と日本刀大量に刺さってる荒野で手に取って斬り合ってるの完全に天鎖斬〇習得の修行(オサレ)だから! ばっさりカット修行シーン(オサレ)じゃねーか!? 何で私じゃなくてそっちがB〇EACH(オサレ)してんだよどうなってんだ世界!!?!?(驚愕)

 

「まあ結果的にってだけだから、あんまり嫉妬してやるもんじゃないよアンタ」

「いや別に嫉妬する話でも無いというか、どちらかと言えばメタ的に世界線がぶっ壊れたか的な心配が先だっただけなのだが……」

「アンタがそれを言うかい、正気かいッ!?」

 

 目を見開いて変なポーズで後ずさった、珍しい師匠の驚愕シーンである。原作でも早々お目にかかったことのないような具合だ。

 

「って、そんなにびっくりされましてもですねぇ……」

「まあ『魂魄的には』近衛刀太だし、アンタが危惧するようなクロスオーバー的な世界観浸食みたいな現象はないから、そこは安心しておきな。タグにクロスオーバーと運営から付けられたとしても、名称やらノリやら裏テーマ的に雑に取り入れてる程度だろうからねぇ。

 どっちかというと『魔法先生ネギま!』関係シリーズと『UQ HOLDER!』のクロスという意味合いが強そうにも思うが――――」

「メタいメタいメタいメタいメタいメタいメタいッ!? いや師匠あなたいくら何でもそこまで自由に発言するのはアウトだろうに何を言っているのだチュウベェすら一応この世界にアレ(ヽヽ)が存在してるから鳴き声がああなってるという裏付けがあるのに……!?」

 

 と、そういえばチュウベェは今何処に――『こっちで確保してあるから気にしなくて良いよ』、アッハイ(便乗)。

 

「まあ一応は別作品だからねぇ。アンタだって『ネギま!(一期)』と『ネギま!?(二期)』、『FINAL(劇場公開版)』と『FINAL・DC版(作者原案版)』は別物だっていう認識だろうに」

「あの、いい加減その辺でお願いします……、平にご容赦を…………」

 

 そろそろ本格的に胃が死ぬ(断言)。釘宮、なんでこの場に居ないんだ釘宮、一緒に鳩尾押さえてぶっ倒れようぜ……(血涙)。

 

「その釘宮大伍にしたって、アンタからすればガバ以外の何物でもないだろうに――――」

「人が気にしてることを……! というか何なのだ師匠あなた、明らかにこう明確にこちらの心を折りに来てるとしか思えないのだがッ!!? パワハラ! パワハラ!」

 

 思わずキレ散らかした私に、師匠は猫みたいな気だるげな表情をして肩をすくめる。ついでに両手も上げて「打つ手なしだねコリャ」とでも言いたげなボディランゲージだ。

 

「言い返せる程度には留めてやってるから、まだマシだと思っておきな。あるいは『トレーニング』の類だとねぇ」

「はい?」

「修行だよ、修行――――アンタに関しちゃ、『一周目』のトータが統合されてるからねぇ。失った技術も多くあるが、不死者としての基礎的な部分もおおよそ『アンタ自身が思っている以上に』完成している。

 となるとアタシのすることとしては、心構えを付け直してやること、後は今までボトルネックになっていた部分を改良してやることくらいだからねぇ」

 

 

 

「――――改良とは、どういうことだ?」

 

 

 

 わー!? と思わず声を上げてしまった私である。気が付けばこちらの膝の上に、白黒ローブ姿のエヴァちゃんが座っていた。……いやエヴァちゃんではないのは丸わかりなのだが。ローブの色からして星月に違いない。というかエヴァちゃんスタイルで現れるのは、今の私としては色々とばつが悪くて心臓に悪い……。

 そんなこちらの気も知らない星月に、師匠はニヤリと笑った。

 

「アンタも近衛刀太と繋がっている以上は、近衛刀太の一部であることに違いはないからねぇ。裏側で色々小細工して準備することは出来ても、抜本的な部分の解決方法については、案が出せないだろう?

 例えば、今は封じられた『胸の(きず)』とか――――」

「それは……、正直、この相棒があまり違和感を持っていなかったから、必要ないかと判断していたのだが。大体いくら『統合された』からといえど、相棒の今の練度だと『無から』『自らの血液を』練り上げて操るのは至難の業だぞ? ダーナ」

「えっと……、前に言われたっけ? 確かに傷があると、金星の黒がストップすると命が危ないとか――――」

 

「――――それだけじゃなくて、例の魔天化壮(デモンクラッド)だっけ? あれに『なりやすい』のも、胸に疵が残り続けているからだよ」

 

 マジで? と。これには思わず目を見開いてしまう私である。もともと九郎丸につけられたあの貫通した刀傷ではあるが、あれが存在するお陰でほぼ自動で回天のような現象が起き、体内の魔力が上手い具合に攪拌され「金星の黒」へのアクセスがやりやすくなってること、またいちいち新たに傷を作らず血を排出できることなど、利点しかないと思っていたのだが。師匠自らそう断言する以上は、実際それはデメリットなのだろう。

 

「死天化壮……、ある意味で常に死に近いっていう状態だからねぇ。ネーミングとしては案外妥当なんだよ。

 お陰でこう、ちょっと小突いて(ヽヽヽヽ)やるだけでバランスが崩れやすい、っていうのは間違いない。大体、全身粉々に砕かれても暴走していないアンタなんだから、トリガーはもっと別なところにあるというのは少し考えた方が良いと思うがねぇ」

「はぁ…………、はい」

「…………そういう所は本当に思った以上に素直だねぇ。いや、アンタがアタシを『知ってる』からこそっていうのは判るんだが、妙な感覚だ」

「そうおっしゃられましてもですねぇ……?」

「まぁ『同じ話を』『何度も繰り返すのは』趣味じゃない。要は、アンタが代替え手段を何か発見できるようにしてやるって言ってんだよ。そこは感謝しなさい」

 

 それについては本当にありがとうございますなので、素直に頭を下げる。ついでに星月の頭も抑えて一緒に頭を下げる。……髪サラッサラだな、エヴァちゃんもきっとこんな具合なのだろうという予想が立つ。

 そんな私と星月を見て、師匠はむず痒いというか、同時に苦虫でも噛みつぶしたようなというか、そんな微妙な表情を浮かべた。

 

「……………とりあえず、ヨロシクお願いします」

「……まあ良いよ。断る話でもないし」

「どうもです。

 ……あっ! そういえばなんスけど、黒棒って何か直す方法とかないッスかねぇ? えっと……」

 

 そういえば「再生してから」黒棒のことをすっかり忘れていた。きょろきょろと探していると「これかい?」と言いながら、帽子をずらしてその中から「折れた」黒棒を取り出す師匠。

 

「修理できなくもないだろうが、どっちかというとねぇ……。それより先にアンタにはやらないといけない事があるから」

「「やらないといけない事?」だと?」

「次の行程に移る前に、まず必ず通らないと後々問題になりそうだからねぇ。まあ――――」

 

 私と星月の疑問符に、師匠はそれはそれは良い笑顔を浮かべて、こう言い放った。

 

 

 

「――――とりあえずアンタが落としてきた女関係が、どういう心理的経緯を経てそうなったかについて事細かにレクチャーしてやるよ。いうなればアレだ、『ガバ』の反省大会だねぇ」

 

 

 

 その一言と同時に思わず星月を膝から落としてダッシュ。「ぎゃんッ!?」というエヴァちゃんのちょっと汚い叫び声をバックに部屋から逃げようとした私だったが。扉を開けた瞬間、その先がどう見ても学校とかの更衣室、おまけに向こうで誰か身長の高いロングポニーテールな娘が着替えを…………ッ!?

 

「そっちは、ちょっと『まだ』早いよ。戻ってきな。

 ……さぁ愉しい愉しいガバ回収タイムさぁ」

 

 その後ろ姿が、何か気配を感じてこちらを振り向こうとして――――その「大河内アキラ」の横顔が見えるか見えないかのところで、私は再び部屋の中に引きずり込まれた。

 

 

 

 

 

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