そろそろガバ突き付け後半戦です
ST166.Frequently Asked Questions: side Tena Vita
「……って、何で私だけ何処にも送られてないんだ? 何かこう、個別修行がどうのこうのって言ってた割に」
「お前はダメだよ。戦闘技術は『人間レベルで』極まっちゃいるが、今のままじゃ中途半端な模造品、どころかそれこそ自称通り『失敗作』のままだからねぇ。『本来の』トータの地点に、どちらかと言えば近いのかねぇ? 拡張性は低いが」
「本来のって意味わかんねーから」
なんか凄い感じのオバサン相手に適当に言ってる私……、なんか私だけ取り残されて寂しいとか、そういうことじゃねーけど。そんな私にオバサンは「まあ知らないに越したことはないかねぇ」ってこっちも適当な感じだ。
というよりか、気のせいじゃなければ。
「別に文句はないけど、オバサン、私のこと正直持て余してるだろ。持て余してるっていうか、テキトーっていうか」
「『不死者用の』メニューを色々組んでるところに来た
アンタは魂の質は『普通の女の子』だ。どれくらい擦り切れて倫理観や常識がぶっ壊されても、『妬んで』『僻んで』他人を害せる時点でね?」
「それ、フツーなのかよ……」
よくイメージできるフツーのやつって、もっとこう、他人に迷惑かけないとかそういうものなじゃないのか……?
「そこはケースバイケースさ。『人それぞれ』、人生それぞれさ。別に性善説も性悪説も支持するつもりはないが、極限状態でどう振舞うかより、有利な状況の時どう振舞うかっていうのが一つの指標かねぇ。衣食住足りて労働できるなら、と言う話さ。
で、アンタの生まれならどっちかというと妬むより折れちまう方が先だからね。その上で実際、トータの奴に捕まった時は子供達と普通に遊んでたろう。あの似合わないピンクっぽいジャージ着て」
「似合わないは余計だッ」
あの、なんかもう色々ヤバい気配プンプンの聖女サマに借りた、ピンク色したぶっかぶかのジャージを思い出す。いや私の肌とか髪とか目の色とか、どれとっても全然似合わないし。あれしか服なかったから借りたけど、そういうことじゃねーだろ。
私の恥ずかしがってる姿が面白いのか知らないけど、オバサンは「初心だねぇ」とかニヤニヤ笑ってくる。腹立たしい。
「ま、そんなアンタには悪いが……、アンタの修行は普通に連中と同じものは出来ないよ。アンタは『死んだら死ぬ』からね。トータの奴が内部の扉の
「…………そのくらい解ってるし」
「そのくせ内心ガタガタ怖がってたくせに付いてくるんだから、全くどれだけお兄ちゃん大好きなんだか」
「そんなんじゃねーし!? アンタもそういう揶揄い方してくるのかオバサンッ!」
私のオバサン呼びに少し眉間に皺が寄るけど、特に何も言ってこないから大丈夫……、だよね? 基本こういうのはナメられた時の方が怖い。だから出来る限り威圧するって訳じゃねーけど、態度は相手によってそんなに変えない方が良い。
じゃないといつ背中を撃たれるかわかったもんじゃないし――――。
「だからそれもケースバイケースだっていがねぇ? 民度とか、倫理感とか、教育の浸透具合だとか。逆にトータ相手には苦手意識持たれるがねぇそれ」
「えっ? …………ッ! い、いや別に『お兄ちゃん』がどうとか全然気にして……っ!!?!?! に、兄サンがどうとか全然関係ないしッ!」
「まあこればっかりは一朝一夕じゃどうにもならないだろうから、仕方ないといえば仕方ないかねぇ? キティですらそこまで丸くなるにはネギ坊主を育成するまでかかった訳だし。
じゃあその上で、アンタの修行だが」
言いながら、オバサンは帽子を脱いでその中に手を突っ込んで…………、なんかドラえも○みたいな感じ? で、何か取り出した。
パソコン? 古いなんか四角形の、白い感じなんだけど日焼けしたみたいな色してるっていうか、画面も液晶とかじゃないと思うし……。金持ちの家でしか見たことないけど、古いゲーム機みたいな感じの色使いしてる。
「何だ? これ…………」
「お前には今から、『パラディン』になってもらうよ」
「……パラディン?」
ラテン語だかで高位騎士とか、そういうのを指す言葉だったはず。戦った相手方の呪文詠唱で何度か聞いた覚えがある。けどそれになるって……いや、別に本当に騎士になるとかそういう事じゃないんだと思うけど、何かの比喩か?
そんな私の考えてることを察してるのか、オバサンは「比喩じゃないよアンタ」って、また帽子から…………、宇宙服? えっと、ネギ=ヨルダ様が現在着用なさっているアレに近いっていうか。全体のデザインは女性用だけど、これは? 宮崎のどかとかが着用しているタイプのそれに近いけれども。
「戦闘用スーツ、だねぇ。将来的には星間戦争のコンバットスーツのひな形になるものだが、どこぞの阿呆がタイムパラドックスしてしまったせいで基本性能は『循環関係』になっちまってるが、まぁ誤差といえば誤差だよ。
とりあえずこれを着て、そのパソコンを起動するんだ」
「起動したら……、何が起こるんだ?」
「『パラディン』になるんだよ」
だから意味がわからない…………。
「『パラディン』っていうのは、まー、この世界の縮図みたいなものかねぇ? よくある王道ファンタジーさ。
遠い未来の時代、魔法文明が栄えた時代。とある騎士によってまとめ上げられた世界に、『神』を名乗る存在が現れてそれを地獄に変えてしまうんだ。
騎士は「神」と戦うために準備するんだが、娘である姫と共に「神」に浚われてお互い別な何かに姿を変えられちまう」
「…………縮、図?」
「嗚呼。お前には色々『思う所がある』フレーズが多いだろう?
そこで登場するのが、騎士の部下だった主人公――――今回はお前の役割だ」
主人公は自らを鍛え上げ、単身「神」の国へと乗り込んでいくことになるというストーリーは、なんかよくある構図で面白みもあんまりない感じというか、むしろ古い? 気がする。
ただ登場するフレーズは所々、こう、何て言ったらいいのか。魔法文明だったり、「神」だったり、まとめあげた誰か、騎士の服として服が宇宙服――――――。否が応でも、色々と何か、示唆的っていうか、明らかに私に対して「察しろ」と押し付けられている気がする。
まあ、癪だけどとりあえず着替えはした。意外と見た目よりゆとりがある感じで、髪はそのままポニテのままでいいって言われたけど……?
「そのままコンピューターにログインしな。パスワードは入れてないから」
「これ普通に相当旧式でノートとかでもないのに、バッテリーないのにどうやって駆動してんだ……」
そんな疑問を口にしながら電源を入れて…………、長押し!? えっ、そうなんだ。しばらくじっとしてると「ぷしゅ!」みたいな音が鳴って、じわじわと画面が明るくなっていく。そんなパソコンの画面のアイコンをクリックすると…………?
「あれ? 画面真っ暗になった……?」
「じゃあ、行ってらっしゃいだねぇ――――」
四つん這いになって、地面に直置きされた画面をのぞき込んでいると。突然背後からオバサンが、私の尻を蹴っ飛ばして「画面に突っ込ませた」。
本当に、当たり前のように画面の中に突っ込まれた。ガラス管? が割れたとか、そんなチャチ話じゃない。本当に「画面の中へ」私の身体全部が「呑み込まれた」。
えっ? と。悲鳴とか上げる性質じゃないけど、そのままずるずる吸い込まれていって凄い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!? 何、何なの、三原色の光すごい飛び交ってて目がちっかちっかする! それより「テレビの中」に入るって何だよ! アメコミとかじゃあるまいしさぁ!
とりあえずこのままだと顔面から地面に激突しそうだから、「
「はっはっはっ、私は神だ。逆らうものはみな死ぬのだ。君に姫は助けられるかな?~」
「…………」
着地と同時に、何か本当にゲームみたいなことを言われたんだけど。空から声が降ってきて、どう反応したら良いんだろう私。
『まあもうわかってはいるだろうけれど、アンタの修行はそのゲームをクリアすることだ。今のアンタに足りないものが色々わかるだろうから、死なない程度にやりな』
「死なない程度にって……。あ、取説? これ。えっと、最初の所持金が…………」
『あと私のことをオバサンと呼んだ回数だけ、初期の予算を減らしてやるからそのつもりでねぇ』
「えっ!?」
それだけ最後に声が掻き消えて、私の文句に返すものは何もなく。
足元に落ちていたゲーム専用財布を見れば…………、えっと、大体十二円? くらいしか金貨っぽいのが入って無くて、思わず渋面になった。
※ ※ ※
『イラッシャマセ! ルーレットゲームでもヤらなイカ? ルーレット屋嘘つかないヨ』
『よォ! いらっしゃい。何について聞きたいんだ。情報1つ50
『いらっしゃいませ……。ここでは、完全に……治療……して、さしあげます』
『らっしゃーせ! ウチの薬どれもよぉぉ……く効きますよ!』
「いや本当にゲームじゃねぇか何を考えているんだ師匠……」
カトラスが行く先々で右往左往している映像を見せられながら、私は大変リアクションに困っていた。彼女の今の恰好はそれこそ今後、UQホルダーが遭遇するだろうラスボス陣営の「魔性の女」(語弊)である宮崎のどかが着用しているそれに近いが、所々に黒いラインとかも入っていて闇落ち感というか、それこそ「カトラスらしい」ニュアンスをしている。
それでいてカトラス本人は、色々とやり辛そうだ。どうやら例の「左右の手の能力」が最小出力でしか使用できないらしく、しかもハマノツルギ・レプリカすら生成して使っても、ステージが上がるごとに指数関数的に硬くなっていく敵に通用しないときている。
そしてツッコミを入れたいのは「ドラゴンの鎧」とか「ソード」とかついてるくせに、どう見てもパワーアーマーだったりビームサーベル的な何かだったりといった内容の品が大量に並んでいたり……。あっカトラスもツッコミ入れてら。仕方ない、気持ちはわかる。
名称とかその他諸々はドラク○とかのファンタジー系のくせに、目に入ってくる映像はほとんど近未来サイバーパンクSFチックな構造をしているので、脳が混乱をきたすのだ。
「で、そこのところどうなってるんですかねぇ師匠?」
「今時の子供のあの小娘だから、もっとバイオレンスな世界観を前提にしたほうが頭に入ってきやすいかと思ってねぇ」
「いまいちまともな返答になっていないのだが」
「どっちかといえばあの娘は『サイバーパンク』世界観の人間なんだよ。魔法が入って来て色々とっちらかってるが、基本はクローンゆえの苦悩やら人体改造の後遺症に悩んだり、同じクローン人間であるはずのアンタとの立場の違いだったりに苦悩したりねぇ?
その上でいうなら、アンタの母親である近衛ノノカが果たした役割も役割だが、それ以上にアンタが雑に絆したのが強すぎるんだよ」
「雑に絆したとかどういう意味っスかね(震え声)」
いつの間にやらカトラスの「ぼうけんの書」(比喩)を映していた画面も切り替わり……、今回は「テナ・ヴィタ編」となっている。師匠的にはカトラス・レイニーデイよりあちらが本名判定らしい。
「じゃあ例によって今回の好感度判定だ。腹括りな」
「まあ段々慣れて来た? 気もするんで、そのくらいじゃ全然――――――――」
【テナ・ヴィタ】
┣友:11 ・・・色々隠してる割に凄い気安いし、まぁ……
┣親:06 ・・・お兄ちゃんのこと全然知らないし……
┣恋:10 ・・・他の男とか知らないし境遇的に受け入れてくれる相手なんて……
┣愛:06 ・・・愛されてるかな? とは思ってる
┗色:12 ・・・むっつり
→ 計:45
「いや待てこれはおかしい(震え声)」
「現実だよ諦めて受け入れるんだね仕方ないね救いなんてないよ(無慈悲)」
一瞬で現実逃避しようとした私を、当然のような顔して頭上から殴りつけて来る師匠の暴言である。いや、だが待って欲しい。不正を、不正を疑うほかない…………! 九郎丸よりも接している回数が少ないはずのカトラスがなんでこんなことになってるんだ貴様ァ! 点数キリヱと一緒じゃないか貴様ァ!
原作ゥ! もうなんか夏凜あたりから色々と放棄してたしカトラスの状況的に好感度レベルも読めないなりに調整をかけていたのだが原作ゥーッ!? どないせいっちゅうねんこれ(謎訛り)。
真面目に大丈夫か? 私の命やら痛い事案やらもそうだが、それ以上にここまで原作から逸れて色々大丈夫か?
「まあ修正力みたいにヨルダ陣営には水のアーウェルンクスが、バアル陣営にはアンタの一つ下の妹が生えて来てるし、原作通りにはいかんだろうねぇ」
「――――――――」
「そんな視線を向けてアタシに文句つけたところで何も解決しないんだがねぇ?
…………まぁ時坂九郎丸の時みたいに自覚がないようだから、今回はしっかり振り返ってやろうじゃないか」
「キリヱの時も割と振り返っていたような……」
「映像だけだがねぇ? 解説はいらないくらいには『原作知識だけじゃなく』察していたから手加減はしてやったが…………。まぁ良い。スラムの映像から流そうじゃないか」
そう言いながら、倒れ伏した私を猫でも持ち上げるみたいにひょいっとして座らせ、頭を片手でつかみながら画面へと固定させてきた。
映像では、夏凜の聖属性魔法を帯びた血風を放った後に気絶しただろうカトラスを背負って、何やら話しているような…………、いやホントどこで撮影してるんだろうこれは。
「スラムに入ったあたりは、まぁアンタも想像がついている通りだろうねぇ。このあたりはあんまりガバはなかったが…………、血風を使ったのがまず少し布石になってるんだよこれが」
「布石? いや、嫌がってた覚えはあるんスけど……」
「あの娘のトラウマ的なのを刺激したってのは後で察したろう? それは当たってるんだが、心理的な揺さぶりがここで入ったことによって、アンタの周囲の状況、特に九郎丸の病んでる姿だったり聖女の色々と……、まぁ、アレだろ? な見せられて、完全に想定外すぎる状況に頭がパンクしているんだよ」
その上で料理は普通に美味しいし、生活してる上で聞かれたくない事を聞かない割には、そこそこ気を遣ってるし、かといって警戒を解いてる訳でもない。
「距離感が絶妙っていうか、本人のその状況に応じて『存在を尊重してる』っていうのは時坂九郎丸相手の時と同じようなノリなんだがねぇ」
「あー……、ひょっとしてこっちも、その?」
「アンタは『適度に絆されてやり辛いくらいに敵対して欲しい』って思ってたんだろうがねぇ。直接ネギ坊主というか、ヨルダ=バオトからの命令が来ていない状態だったものだから、アンタに対しての心象が滅茶苦茶の状態で共同生活なんてしたら、そりゃ愛着の一つや二つわくだろう」
加えて本人は近衛ノノカから色々聞いてた「普通の生活」っていうものを見せつけられたり、自分で体験させられてるんだからねぇ。
師匠のその一言に、とりあえず「友」の数値が高いのはまぁわかった。わからないではないが、それなりに親しみというか、距離感が近くなったというのを理解はできた。これもある意味では前提条件というか、私単体でカトラスと話していたらそういうことにはならなかったはずなので、つまりはやはり橘が悪い(責任転嫁)。
「その責任転嫁に意味は…………、まぁ続けるがね」
映像は早回しされ、私が灰斗に首を落とされた(半分自爆だが)あたりに。私を拾い上げて色々言い合ってるカトラスだが、それを見て「おや?」と思った。記憶にあるカトラスよりも、どことなく表情が笑っているわりに悲しそうというか…………。
「さっき言った通り、愛着を抱いた状態で『自分の身を護れなくなる』レベルで約束を守って死にかけている訳だからねぇ。罪悪感もしっかり抱くし、アンタに対しても好感度は上がるだろうさ」
「…………原作での怨嗟とかを考えると、馬鹿じゃないの? とか、そういう風な反発で捨てられそうなものだと思うんスけど」
「言っておくがこの時点で30点は超えているからねぇ。言っておくが九郎丸が低いとかそんな訳じゃないよ。まだ身体が『完全に』女性に傾いたことがないからってだけだ」
「しれっと恐ろしい事言わないでもらえると嬉しいんですけど(九郎丸→九龍的な意味で)」
「話を戻すが、前提としてこの娘は『50番台』、つまり交配目的のクローンたちによる脱走事件の鎮圧とかもしているからね。出た後も情報収集はしていたようだし、たぶん諸々の番号がどういう意図で作られているかの情報も持っている。つまりは、アンタと自分のDNAが離れているっていうのを認識したうえで、この兄妹距離感で、かつ『女の子として尊重してくれてる』距離感だ」
「いえあの、女の子を女の子として対応するの割と普通では…………? 特にカトラスに関してはガラス細工というか、爆弾処理みたいなものだし」
「でも結果は一緒だからねぇ? 意味ないよその恐怖心」
話している間にも映像は進み、私がカトラスを庇って戦闘しているシーンやら、魔天化壮暴走シーンやら、フェイトから色々言われた場面やら…………。
「そうやって色々ドキドキしてる布石が張られた状態で、約束破って自分守って、傭兵にバケモノ呼ばわりされて揺さぶられた後でさらにこう滅茶苦茶なことが続いているからねぇ。一種の吊り橋効果、というには伏線が多すぎるから」
「…………あのー、もしかしてなのだが、仮に刀太が『私』でなかったとしても?」
「同じように共同生活してれば『堕ちてる』並行世界はあるねぇ」
「ちょっとチョロすぎないですかね…………(震え声)」
「まあケースバイケースだが、九郎丸の時も言ったろ? アンタの他人への接し方は、擦れた心には中々劇薬なんだよ。
もちろん『受け入れざるを得ない』状況あっての話ではあるがねぇ」
その上で身体が回復したらどうなるか……と。そのあたり振られるまでもなく予測はついてしまうのだが、それはさておき一つだけ確認したい。
「…………諸々はともかくとして、あの、正直な話なのだが、何故この『色』の数値がぶっちぎりで高いのだろうか」
「元々『産めない身体』に改造されていたが、そういう知識だけは戦場で嫌と言うほど叩き込まれて警戒してたからねぇ。
気になる異性が出来て『産める身体』に戻ろうものなら、そりゃ言うまでもないだろう」
もともとむっつり気質だったのが、ため込んできた分暴走してると思っておきな? と。その一言と共に、私は思わず目線だけで天を仰いだ。……未だに師匠が頭を大きなお手々で固定してるので、動かせないのだ、仕方ないね(涙)。