光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ!
 
更新遅れに言い訳すると、ちょっとフラグ管理とか情報整理もあって、数話ほど難産続きそうです…汗


ST176.いわば「第四の目」

ST176.The Heart Eyes

 

 

 

 

 

 獲得したこの「サイコメトリーもどき」な能力に名前を付けろとお師匠も言ってくるのだが、すぐさまOSR(それっぽい)のが出て来る訳でもなく、だからといってメンタル的にはこの状態はだいぶ心が痛い。なにせ見ればメイリンも「大丈夫かな、この人」とか「ようやく弟子入りしたけど、トータさん痛そう……」とか、カトラスからも「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」とか飼い犬が尻尾振ってるような情動が大量に振り撒かれており、この状態で九郎丸たちの前には帰りたいとは思えなかった。

 そんな私を見越してか「とりあえずそれをコントロールできるようになるまで、もうちょっと延長かねぇ?」と言ってくれたのは、まさに神対応というやつだ。お師匠、アンタがナンバーワンだ!(野菜王子)

 

「その褒められ方のどこに喜んだら良いんだアタシはさぁ……」

 

 相も変わらず当然のようにこちらの考えを読んで勝手に応答してくれるお師匠。なおこれは私だけじゃなくカトラスや他のメンバーにもやっているらしく、時々「あんまりお兄ちゃんお兄ちゃんって好意向けてると、素の行動にも出るよアンタ」とかアドバイスして「うるせぇ!」ってブチ切れられていたりもしたが、それはさておき。

 

 修行といっても一週間程度で終わるものを想定してると言われたのだが、やってることは私とカトラスに関しては延々と組手と瞑想である。なおその間、修行をしていない時間だけ私はお師匠から「U」「Q」と左右にそれぞれ書かれたヘッドフォンを貸してもらっていた。

 

「それを付けている間は、能力が強制的にオフになるからねぇ。流石に寝れないのは辛いだろう」

「あざーッス! お師匠、あざーッス!」

「返答軽すぎやしないかいアンタ……」

 

 どれだけダメージ受けていたかは良く判るがね? とおっしゃられるお師匠の言う通り、このヘッドフォンをつけたら同時に漏れ出ていた思念が視認できなくなったので、本気の本気で大感謝感激である。

 

 そしてカトラスとの組手だが。

 

「これは――――――――、なんか普通に強くなってるな。身体の使い方っつーか」

「その全部! 兄サン、余裕で受け止めといて! 言われても嫌味にしかならねーからッ!」

 

 いやそこは正直スマン(本気)。

 師匠から提供されたフリフリな衣装を着用して赤面していたカトラスだが、実際戦場で磨かれてきたのだろう身体の動かし方というか戦い方が色々変わっていた。端的に言えば「遊び」が増えたと言うべきか。遊び、といっても弱体化したという意味ではなく、良い意味で「次の動きの予想が付きづらくなった」というべきか。

 なら何故私が全部受けられるかと言えば……、正直スマンとしか言いようがないのだが、「思念を視る」能力がまだオフにできないからである。

 

 カトラスはフェイントで動きに遊びを持たせていたり、選択肢をこちらに与えている訳ではないようだ。どうも「そういう動きをしないと」生き残れなかった、という感じから来ている。とはいえそうなると、最終的な攻撃の着地点や中継点もわかってしまうので……。

 例えば右フックのモーションに途中まで持って行って、相手の動き次第で足払いかそのままフックにもっていくかとか、瞬間的にめぐる思考も「なんとなく」察してしまう。

 

 これに関して、戦闘中は例の「嫌な予感」じみたそれが、極大強化されたような状態となってしまったのだ。

 

 …………そして何が一番恐ろしいかと言うと、カトラス本人も「右」とか「左」とか使えばいくらでも血装術が使えない私を倒すことなどできそうなのに、師匠からも制限かけられていないのに「あえて」肉弾戦に拘っている所と言うか。

 

 ちょっと肩と肩が触れたり、顔と顔が近くなったり、抱き着くように投げたりするときに思考の色が一瞬ピンク色になるのは本当お前止めろ(震え声)。

 

 

 

「む、むむむむむ――――――ッ!」

「はい、はい、失敗したらすぐ復帰。でないと電撃10万ボルトだよ」

「死にますからダーナ師匠!?」

「アンペアはごくごく少量だから、超高速で全身に激痛が走るだけさ。大丈夫大丈夫、アタシの見てるところなら出力は間違えないから」

「ダーナ師匠の見てないところでやったら暗に死ぬって言ってます、よね!」

 

 

 

 一方のメイリンだが、例のアオザイ風の恰好のままやらされている修行が、それはそれで問題だった。

 フラフープである。まごうことなくフラフープである。

 

 それを見て「いやまさかな……」と嫌な予感がした私だが、この嫌な予感は攻撃が当たるとかの危機感知の例のアレではない。つまり、久々? な気がする特大ガバのお時間である。

 そもそもそのフラフープ修行というのは「UQ HOLDER!」原作において、刀太の魔力制御をさせるためのトレーニングとしてお師匠が準備していた代物だ。体内にある「火星の白」「金星の黒」の魔力(あるいはその「扉」に繋がっている遺伝子情報群)が体内にいびつ、まばらに散らばっているせいで、自然発生的に生成される魔力がいびつな色になり混じり合っていない。そうであるがゆえに近衛刀太は自らの魔力を使えず(色同士が反発する)、「気」による身体強化も同様の理由で限界点が早く、と色々リミットがあると言う事だ。

 これを解消するために、体内の魔力を「意識的に」無理やり攪拌することで、それぞれの属性の魔力を二つに分けて使用する、というものである。

 

 絵面にOSR(それっぽさ)の欠片もないという欠点を除けば、修行としてはそこそこ有用なのだ。…………原作だとお師匠の趣味のいやがらせが炸裂して、フラフープ回しに色々オプションがついていたが。

 

 以前の私の場合は、九郎丸につけられた胸の疵を中心に魔力がほぼオートで回転しており(どうやら星月の手も加わっていたようだが)、自動的に分離されていたため血装術を使うのにも何ら問題が生じていなかったのだが。

 何故それと同様の修行を、わざわざメイリンに施しているのかと言うことだ。……つまりえーと、控えめに言って妹か? また妹ちゃんですか?(震え声) 恐ろしすぎて全く確認する気も起きないので、現状は現実逃避一択なのだが。

 

「安心しな、結婚は出来るよ」

「全然安心材料にならないんスが…………」

 

 私に向けてそんなことを言うお師匠の一言が、肯定も否定もしていなくて不気味極まりなかった。カトラスのように遺伝子情報の離れ具合が多ければ、実質従妹程度の血のつながりになるというのが、何より劇薬そのものであるのだった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 さて、この能力の扱いについてだが……、全く慣れた気配はないというか、本当、オフとかどうやったら良いのだろうか(震え声)。ここ数日の感じからして、体感的には「黒」の方の扉よりは「白」の方の扉寄りの能力のようだが、そっちの制御は全然出来た試しがない。感覚的に私は「白」より「黒」寄りなので、血装術ならもう最近は大体なんでもできる気がしていたが、こっちは繋がり方も全然思いつかないのだ。

 それで思い出したが……。確か帆乃香いわく「黒」は勇魚、「白」は帆乃香の扉が私には内蔵されている、的なことを言っていたような覚えがあるような、ないような。いや、これもどう考えても原作にそんな設定なかっただろう案件なので、いまだに心の平穏が保たれることは無い。

 

 ことはないが、もうしばらく夏凜とかそのあたりを忘れられるなら、枝葉末節の思考に走る他ないのだ(鋼の意志)。

 

「…………修行編と言えば」

 

 そういえば、まこと今更ながらだ。ヘッドフォンの位置を調整しながら、暗くなった表のテラス(?)で夜空を見上げる。本当に今更の話だが――――この修行編、狭間の城にて。いまだに私は、エヴァちゃんと遭遇すらしていないのはどういうことだろうか。

 

 黒棒を背中から抜き、ヘッドフォンをずらしてみる。……もっとも、声は聞こえず、黒棒はやはり黒塗りされたように何も視えないのだけれど。

 

「あれだけエヴァちゃん関係で色々ありそーな感じを出してたのに、私のことばっかりふれてエヴァちゃんについて全然情報が出てこないのがむしろ不気味すぎるくらいなんだが……」

 

 とりあえず素振りをしながら、最近読み直した原作「UQ HOLDER!」に想いを馳せる。

 本来ならこの修行編とは、つまり「エヴァンジェリン編」であり、彼女の過去篇であり、なんなら「転生オリ主過去改変ヒロインモノ」(死語?)のようなことを仕出かすことになる。

 この狭間の城は、お師匠が言っていた通りに時間やら空間やらが入り乱れている。それはつまり、メイリンのように未来ばかりではなく過去――――過去、この場にてお師匠の下で修業を積んでいたエヴァちゃんとて、例外ではない。

 それぞれの時間軸から外れた対象を、お師匠は夢や幻に例え、後を追うように情を深めないようにと注意をしていたこともあったか。それを知らなかった当時の近衛刀太はこの修行編にて「過去の」エヴァンジェリンと遭遇し、仲を深め――――。

 

 そんなことを考えていると、視界に「在り得ざるものが」映った。

 

 こちらからもっと先、一歩踏み出せば落ちそうな位置。伸びた足場のさらに先端部分に近い所で、人影が素振りをしている。

 それは、まるで黒い刀をもった学ラン姿の誰かであり、ツンツンとした黒髪に「ふっ! ふっ!」と威勢よくあげる息遣いは聞き覚えのあるもので、聞き覚えしかないもので、それでいて「修行! 修行!」という思考だか思念だかが漏れ出ていて――――。

 

 

 

「――――止めておけ。ありゃ劇物(ヽヽ)だぜ? 相棒」

「……ッ!」

 

 

 

 まるで衝動的に、何かに導かれるかのように一歩踏み出そうとした私を、後ろから「少女の声が」止めた。同年代? くらいのその声もまた聞き覚えのあるそれであり、振り返れば「黒塗りされたように」「思念が見えない」。

 そんな彼女は、長谷川千雨の顔をした星月は、私より少しだけ高い位置にある視点から肩をすくめた。

 

「まーアレだ。相棒、今けっこうギリギリで自我を安定させてるだろ? だっていうのに、自分からまーた自己同一性破壊(アイデンティティクライシス)しに行く必要性だって全然ねーだろって。いわゆる危険情報ってヤツだ。知らないに越したことは無いだろ?」

「…………そもそもお前さんの考えが読めないのもかなり疑問なのだが」

「それは、私の考えだって相棒にとっちゃ劇物に違いはないからな。調整くらいはするさ」

 

 あごをしゃくるように指し示す星月。その視線につられて再び前を見れば、そこには既に「本来の」「近衛刀太」らしき何かの姿は、もうない。その微妙なやりとりに作為を感じ、思わず彼女を半眼で睨んだ。星月はこちらから目をそらして「あー」と言葉を選ぶ。

 

「言っておくけど、こっちの都合で相棒の得ている情報の量を操作してるとか、そう言う訳じゃないからな? ガバどころか精神崩壊騒ぎに直結しそうなレベルだから止めに来たわけだし」

「…………あの、パラレルワールドなのか別な時間の私なのかは定かではないが、それと接触することが危険だと? それ程の何かがあると?」

「んー、今の相棒相手なら言ってもいいか。

 もしアレが、相棒が『自覚した』能力に目覚めた後の相棒であった場合、お互いの接触はすなわちマインドクラッシュ! って感じになる。鏡合わせって言ったらわかるか? 無限鏡、鏡の中に鏡がある、循環参照の方程式、無限演算…………、あるいはエントロピーの増大による物性限界、フリッカー現象」

中二病(それっぽい)単語が飛び交うのはちう様の姿してるからか?(適当)」

「ちゅーにじゃねーしッ! 大人の女だ私はッ! っていうかその揶揄い方はマジでケンカ売ってるとみたっ!」

「へ? あっ、ちょっと待て――――」

 

 唐突にこちらの両頬を引っ張りにかかってくる星月(ちう様)。よほど腹に据えかねたのか、あるいはその指摘が羞恥心を煽ったか。

 なんというか、こういう微妙な振る舞いが明らかに大河内アキラの状態の彼女とも違う。それこそ近衛刀太の姿をしている時とも全く違っており、まるで「本当に」この場に当該人物がいるかのような錯覚を覚えるくらいには、漫画やアニメそのままの彼女の振る舞いであった。

 

 なお体力まで変わっているらしく、ぜいぜいと肩で息をする彼女と、やり返して同様に疲れた私である。しばらくその場で仲良くきゃっきゃうふふとアホみたいに取っ組み合いをした後、深いため息をついてお互い反省した。ギャグマンガのノリだろこれ、という具合に。

 

「…………話を戻すと、つまり? えっと、私とその別時間の私とが『お互いに』『お互いを』読み取り合って、その結果なんか中身がバグる、みたいな感じで大丈夫か?」

「……まぁそんな感じだな。だから相棒の姿をしている相手と、相棒が『直接接触する』のはどう考えてもガバ以外の何物でもねぇってことだよ。最悪その場でゲームオーバーだし」

 

 私が言うんだから間違いない、と。その物言いを聞いて、少し察してしまった私である。

 

「やっぱり星月、お前は私の人格が『こう』であることを知っていたな? いくつか別な記憶やら人格やらが、妙な形で入り組んでいるーみたいな状態になっていると」

「………………ま、まぁ、知らない訳じゃなかったが……(というか『ベースを組み上げた』のは私だし)」

「何かボソボソと言って誤魔化そうとしてないか?」

「し、してないしてない! いや、いきなり情報の洪水をわっと浴びせるようなこともする訳はないけど!」

 

 あからさまに慌てている星月だが、やはり何か隠していると見るべきだろう。

 だがなんとなく「わからない」までも「嫌な予感」がする。その先の情報をあまり根掘り葉掘り聞くと、それこそ私の精神が崩壊してしまいかねないような――――「知らないはずなのに」「知っている記憶」が囁いているような、そんな感覚。ひょっとしたら、例の「1周目」の私が知っていたことに関係しているのかもしれない。

 あの私は、星月を敵ではないと言ってはいた。とするなら、情報を隠すことに関しては何かしら私にデメリットが大きいことがある、ということだろうか。星月本人の隠したい情報なのか、あるいは「私」に問題が生じるから隠しておきたい情報なのか。外見から微妙にわからず、また「精神でも」伝わらないというこの状態だからこそ、今の今まで誤魔化されてきたという見方も出来るかもしれない。

 

 だからこそ百パーセント信じることは難しいが…………、それは普通の人間関係においてもそうなのだ。今更と言えば今更な話である。だがこの能力がオフにできない以上、星月とは唯一、私に最も近い位置にいる最も遠い他人であるとも言えた。

 

「それはそれでOSR(悪くない感じ)だな」

「相棒お前、今、またロクでもないこと考えたな……」

「いや何故わかる」

「これでも相棒が『生まれた時から』の付き合いだからな。話しかけたりするようなことは全くと言っていい程なかったが」

 

 星月も動揺しているせいか、あるいは私がサイコメトリー的な能力に目覚めたせいか。その口が段々と緩くなっており、聞き捨てならないセリフも増えて来た。だが少なくとも「まだ」大丈夫だという感覚があるので、ここはもう少し追及しても良いだろう。

 今後の心象もあるが、ある意味で「これ以上踏み込むとヤバいタイプの情報」を見分けるための材料として。

 

「…………私が生まれたころから、とは」

「二年前、だな。少なくとも神楽坂菊千代が近衛刀太の肉体に『発生した段階で』、私はお前のすぐ傍にいたんだ。……って、なんか真面目くさるとエヴァンジェリンみたいになるな、もっと砕けるぜ」

「いや、私に聞こえる声は何も変わらないが」

「セリフ回しの差別化って難しいだろっていう話」

 

 そういうメタなこと言うのは止めろ(戒め)。

 ただ私が何を探ろうとしているのかを察したのか、星月は肩をすくめて笑う。

  

「んー、相棒のその人格っていうのは、やっぱり例の『原作スタート』の時期その前後で変わってるっていうのはわかるな?

 で少なくとも、相棒が考えると危険なのは『自分の素材が元々何であるのか』ってことだな。無茶苦茶言ってる自覚はあんだが、神楽坂菊千代の元になった人格『それぞれの』『バラバラな記憶について』は、思い出した範囲で考えるのは別に問題はない。今までだってそうだったろ?」

「それは、確かにそうだが…………」

「それ以上追及するのはまずいってことだ。それは、思い出せない部分っつーのは思い出せないなりに理由があるんだ。たとえそれが相棒にとって、本意だろうが不本意だろうがさ」

 

 まだあんまり話せないから、詫びと言っちゃなんだけど――――。

 

 星月が人差し指を立てて、私の額を押す。……ちょっとツメが長いのはどういうことだ、別にネイルアートとかしていないのに。ものぐさか? ちう様それは流石に現代女子としていかがなものか…………。

 そんな私の感想が漏れたのか「うるせっ!」と言ってぐりぐりされて痛い! 両手で止めようとしたが途中で引っ掻くようにするのを止めたので、こちらも一旦手を離した。

 

「第三の目、真実の目…………、あの72番が使ってるアーティファクトだ。覚えてるか?」

「あ、あー、えっと………………、サリーか?」

「流石に妹チャンの名前は憶えてるな? ああ。これはある意味で、あのあんちくしょうにも対抗できる能力だと私は思う。だからあえて、それにメタを張った名前なんか良いんじゃないか?」

 

 それを聞いて、ふとアイデアがわいてきた。第三の目の上をいくもので、かつテレパシーであるのだとするなら…………。あえてラテン語に拘る必要もないかと、直感的に単語を省略して、名づける。

 

 

 

「つまり……、第四の目(ザ・ハートアイ)?」

 

 

 

「…………以心伝心(ハートトゥハート)とかそういうニュアンスを持たせたいんだろうけど、いやシンプルすぎて妹ちゃんの『真実の目』って字面は負けてね?」

 

 じゃあもっと良い案を出せと、ニヤニヤ笑う星月に羞恥心を感じて反抗してしまった。

 

 

 

 

 

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