光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ!
遂にここまで来た…というかこの設定を出すところまで来た…


ST179.貌を知る

ST179.The Hero With A Hundred Faces

 

 

 

 

 

 九龍天狗さんとの修行は、相変わらずといえばいいのかな。技量はあっちの方が上で、僕がなんとなく手加減されてるってのが判るくらいにはなってきたんだけど、正直手詰まりだ。

 戦闘訓練自体は毎回ちょっとずつレベルが上がってはいるけど、とてもこの調子だとクリアできる自信がない。

 

『――――――――』

 

 そして修行ごとのタイムリミットが来ると、天狗さんが何とも言えない目で僕を見て来る。その目に妙な既視感を覚えながら、僕は毎回「狭間の城」のテラスまで巻き戻されていた。

 またあの「空間が歪んだような」「いくつもの腕」で引っ張られて、空に引き戻されて放り出されるような形。流石に僕も色々と、疲弊した状態でこの扱いはどうにかして欲しいんだけどなぁ……。

 

「ふ、ふぅ…………、あっ、キリヱちゃん――――」

「に゛ゃああああああんッ! 今度という今度こそ逃げ出してやるううううッ!

 なによ『ウラシマ効果の発生を回避するために魔法的な迂回方法を述べよ』って! 時間関係だけで良いとか言って実質魔法の知識も必要じゃない!? 何それ虐め? いーじーめ! 絶対いじめよッ! うなああああああああんッ!」

 

 頭を抱えながらジタバタと、僕みたいに「扉の手前に」投げ出されて暴れてるキリヱちゃん。僕は身体的な疲れが大きいんだけど、キリヱちゃんは頭脳労働というか、そっちの疲れが凄いことになっているらしい。叫び方に魂がこもっていて、どう声をかけたものか。

 三太君はまだ帰ってきてないらしく、そっちの扉は鍵がかかったままだ(扉の施錠のところが緑色と赤色でトイレみたいになって見えるようになってる)。

 

「全く冗談じゃないわヨ、何考えてるのよあの女……って、九郎丸じゃない? お疲れ、みたいね…………?」

「う、うん。キリヱちゃんもね?」

「そりゃっそうよ! こっちに来てから固有能力全然使えてないし! 仮契約カードは多少練習したけど」

 

 でも今はちょっと使う気力わかないわー、って言いながら、へなへなと倒れるキリヱちゃんだった。

 フィジカル面では僕の方がマシだと思うから、とりあえず彼女を抱える。「あー、りー、がー、とー」ってキリヱちゃんの声が本当に投げやりだ……。

 

 今の時刻は一応、朝方なのかな…………? 城の入り口のようになってるテラスから見て左側、東より太陽がちょっと上り始めている。逆に夕焼けのように見えなくもないけど、日の光が強くなってるので目が少し痛かった。

 ちょっと流石に「自室」で寝たいなと思いながらキリヱちゃんと一緒にその場を後にしようとした。したんだけど、さっきの光景で一点、おかしなところがあったことに気付いた。

 

 最近あまりにもこうやってこの場所に帰ってくることが多すぎたせいで、つい見逃してしまったこと。あの「瓶」というか「壺」というか、そっちじゃない。テラスの反対側、扉よりも奥の向こう側。

 

 

 

「………………………………………………………………」

 

 

 

 と、刀太君だ…………! 体感的に一月ぶりくらいの刀太君だ!? ダーナさんの言っていた「時間が追い付いたら」っていう、多分その時が来たんだ!

 刀太君はちょっと懐かしい学ランな制服姿で、座禅でも組むみたいに胡坐を組んでいる。そして膝の上には、折れた重力剣。その柄を手で握りながら、刀太君は微動だにしていなかった。

 あの姿勢は、修行してた時に何回か瞑想と称してやっているのを見ていた。刀太君いわく「武器と心を通わせる、的な?」と言っていたのを覚えている。ちょっとカッコイイ感じの座禅だ。

 あんなカッコイイこと恥ずかしげもなく素面でやってるのは、絶対刀太君。偽物とか、ずっと会えなかった僕が寂しさで見てる幻覚とかじゃなくって、きっと本物の――――。

 

「ちょ!? 九郎丸、痛い痛いッ! 力強い、どーしたの貴女!?」

「ご、ごめん。…………えっと、アレ見てさ」

「アレって…………、ちゅーにじゃない! ちょっと本物!? おーい、とーた! とーた!」

 

「……………………」

 

 僕とかキリヱちゃんの声に、あっちの刀太君は「聞こえていないように」身動き一つとらなかった。じっと、そのままの姿勢。

 ちょっと? と少し怒ったようなキリヱちゃんは、僕の腕から降りて刀太君の方へ行こうとして――――。

 

 

 

「ちょ、ちょっと待って! キリヱ先輩っ!」

 

「わっ!」

「に゛ゃんッ!?」

 

 

 

 後ろからいきなり駆けて来た、チャイナドレス風の恰好の彼女。とてん、と転んじゃったキリヱちゃんと、「いきなり気配が現れて」思わず腰に構えて、でも夕凪をとりあげられてることを思い出して仮契約カードを探し始める。そんな僕らに「だ、大丈夫、敵とかじゃないから……」と彼女はどうどうと手を前に出した。

 

「とにかく落ち着いて……、あっ! まだ先輩の方にはいかないで!」

「って誰ヨアンタ! 先輩とか、また誑かしたわけあのちゅーに!!?」

 

 たぶ!? って驚いたお姉さんは、顔を赤くしてぴしり! と止まった。えっと、その反応は…………。また刀太君かな? うん。刀太君優しいし、この人も訳アリっぽいなら、変なかんじになっちゃっても不思議じゃないのかもしれない。

 

「キリヱちゃん、あの人だよ。こっちに来た時、刀太君に全裸にされてた……」

 

 そしてこの人は覚えてた。こっちに来た最初の頃に、刀太君に倒されて「覚えてなさい!」みたいなことを言って逃げて行った人。ちゃんとした服を着用してるから印象が全然違うけど、足の運び方とかからして間違いないと思う。

 もっというと、こっちに来る前にダーナさんが「()び出して」僕と戦わせた、あのコンバットスーツの人と一緒だ。

 

 そんな、クリーム色っぽい恰好をした彼女に、キリヱちゃんは両手を腰に当ててプリプリしてた。行こうとするたび声で止められるし、今も走ろうとしたら抱きかかえられて「うなああああんん!」ってまた絶叫してる。よっぽど精神的に限界なのかな…………。

 

「何で止めるのヨ! というか名乗りなさいよアンタ!」

「め、メイリンって言うけど、そういうキリヱ先輩も自分で名乗るべきなんじゃ……」

「アンタ最初に私を名指しで制止したじゃない!」

「そ、それはそうなんだ、けどさ…………」

 

 知ってたから二度手間じゃない! って少し叫んでから、ぜいぜいと肩で息をするキリヱちゃん。疲れたのかな、まぁまぁと言いながら僕はメイリンさんからキリヱちゃんを引き取った。

 

「あっ九郎丸先輩。ありがとうござい、ます」

「うん、どうも。本当に知ってるんだね……。えっと、メイリンさんは何で僕たちを先輩って?」

「私もタローマティ……、あっ! えっと、ダーナ師匠に弟子入りしたから、こういうのは年齢よりも入った順番かなって。ダーナさんから、カトラス先輩も含めて色々聞いたし」

「その心意気は良いと思うわ」

「カトラスちゃんとも知り合いなんだ……」

 

 それで、どうして僕たちを止めたのかと言う話を聞いてみた。メイリンさんは、少し困惑したような顔で刀太君の方を見る。

 

「今、先輩は…………、精神の内在宇宙? の中にいるらしいから」

 

「「内在宇宙?」」

 

 うん、と言いながら、メイリンさんは刀太君の足元の方を指さす。よく見るとその足場には、青白い円形の魔法陣が光っている。光量自体はうっすらとしていて、なんとなく見えるくらいだ。

 メイリンさんは「私も良く判らないんだけど……」と前置きして、困惑しているみたい。

 

「何だっけ…………、何かの古い契約? みたいなので、あの折れた武器に眠ってる精霊さんを呼び起こして、契約を結ぶとか言ってた、かな」

「契約……?」

「いまいち要領得ないわね」

「だ、だって、私、結構ダーナ師匠から嫌われてると思うし…………、新参だし、その、先輩みんな年下だし、接し方わからないし、えっと……」

 

「私の方が多分年上じゃない? 最低でも三十◯歳以上だし」

 

「「!?!!?!?!」」

 

 それはそうと、キリヱちゃんのそんな爆弾発言に僕とメイリンさんはびっくりしちゃった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「阿呆みたいな能力制御の経緯はともかく、ひとまずオメデトウといっておこうかねぇ」

 

「経緯?」

「どういうことだよ、兄サン」

「悲しい…………、事件があったんだ…………(諦観)」

 

 ニヤニヤと笑いをこらえている表情の師匠を前に、私は思わず遠い目をした。カトラスとメイリンが確認してくるが、それに答えられるような内容ではないのでここははぐらかし一択である。

 もはや見慣れた長い長いテラス部分。メイリンは手にフラフープを三つ持ち(ちょっと上達したらしい)、カトラスはカトラスで謎のアイテムを持っている。私はさてどうなのかと言えば、とりあえず黒棒を持ってくること以上の話はされていなかった。 

 とりあえず最近「また」着慣れた学生服を身にまとい、黒棒を背中に下げた恰好。面子は色々異なるが、なんとなく原作の修行編っぽさがちょっと出てきた気がする。あくまで気がするである。最近このあたりのガバ感覚が麻痺してる気がするが(原作とあまりにかけ離れすぎていて)、もはや今更だと肩をすくめる他なかった。

 

 さて。チュウベェをおそらく自分がいた時間軸か何かに連行した超の爆弾発言から翌日。……あの発言の後「サヨナラネ☆」と逃げるように姿を消した超についてはともかくとして。ヘッドホンをつけてない私の姿に訝しげな表情だったカトラスとメイリンだった。が、このあたり「制御できた」と軽く語り驚かれつつ、移動して今に至る。

 とりあえず二人にはいつも通りに修行しろと指示を出し、お師匠は「ついて来な」と先端部まで誘導した。

 

 ゆるい円形をした広い足場は、相変わらず原作通りか白い扉が三つ設置されている。そこよりもさらに奥、足場が少し心もとないと感じる位置に師匠は歩いた。こっちに来な、という指示に従い後を追うが、なんとなく「変な予感」がするので「第四の目(ザ・ハートアイ)」を(ひら)く。

 周囲には何もなし……、敵意やそれに準じる戦意もなし。もっともお師匠のことだから好き勝手自由自在にできる可能性は高いので、この懸念に意味があるかはわからないが。もっともそんな私の視界に「そう警戒しなくても大丈夫だよ」とお師匠から洩れた半笑いの感情である。それを察知して()じると、お師匠は腕を組んで「あんまり積極的に言いたくはないがねぇ」とため息をついた。

 

「そうやって警戒する姿勢は悪いと言わないが、今回はむしろアンタ向きだよ。喜びな」

「何を…………?」

 

 困惑する私に、師匠は鼻で笑う。

 

 

 

「今日からレッスン3――――――アンタのその魔法具(アーティファクト)百の顔を(ホ・ヘーロース・メタ)持つ英雄(・ヘーカトーン・プロソーポーン)』の修理作業だ。

 まあ修理と言ってもニュアンスはだいぶ異なるがねぇ」

 

 

 

 聞き覚えのないその横文字に、思わず私は「はい?」の言葉もなく、ぼけーっとした。頭が悪そうな顔をしているはずだ。「ばなな」である(直喩)。

 そんな私に「ん? そういえば正式名称を知らなかったかねぇ」と、まるで事前に知っていて当たり前の知識のように語ってきた。いや、えっと、状況的に修理といえば黒棒とかを指しているというのは想像に難くないのだが、本人(?)は「αの三角(グロス=ドリクト)」を偽名としながらも名乗っていたりするので、色々と知らない情報を投げられても困る(断言)。

 

 字としちゃこう書く、と空中に指で「百の顔を持つ英雄」と書くお師匠。当たり前のように指の軌跡が空中にマジックでサインしたように残り、なおかつ「鏡文字で」書かれていた。つまりこちらの正面から文字を見ることが出来るようになっているわけで、えっと、つまり? えっそれ原作設定ですかね? 知らないのだが。

 

「まあ、あんまり気にする類の話じゃないかねぇ。どちらにせよ、もう『終わった話』になるから」

「終わった話…………?」

「ネギぼーず直々に破壊されたんだろう? ということは、それはもうその名前の通りの機能を発揮できない状態にされたってこと、当初設定されていた魔法具としては終わっちまったってことさ。

 本来ならジャック・ラカンの使用している『千の顔を(ホ・ヘーロース・メタ)持つ英雄(・キーリオーン・プロソーポーン)』あたりを魔導書『咲待ちリンドウ(アルビレオ・イマ)』に記載された重力魔法をベースに色々と小細工をろうした代物のようだがねぇ」

「あのだから、知らない設定なのかこっち限定の設定なのか…………」

「面倒くさかったら全部ひっくるめて『この世界線限定』と思っておきな。そうしたら胃痛が少しは楽になるだろうさ。

 まあ、そうはいっても機能的に『心当たり』はあるんじゃないかと思うがねぇ?」

 

 まあ、そうと言われればそうなのだが。

 実際原作における「不死狩り編」というか九郎丸の実家以降、唐突に黒棒は姿を延々と変え始めたというのはあったが。巨大な質量の岩だったり、あるいはハマノツルギの形だったり、特に説明もなくポンポン出て来ていたものではあったが。

 だが、果たしてそれが原作のそれと同様のものなのか? と言われると疑問は残るし…………、もうこれ以上のガバはキャパオーバーなので、黒棒関係の管理は放棄しよう(白目)。

 

「そもそも折られている時点でガバ云々以前の問題だと思うがねぇ」

「思考読むの止めてください(震え声)」

「話が早くて良いだろう。

 まあそれはどうでも良いんだよ。重要なのは、『現在の状態では』外見だけを修理しても意味が無いって事さ。超質量の物体と『紐づけられて』製造された重力剣といったところで、その紐づけるシステムの根幹が崩壊したら質量的には硬いだけの棒っきれだからねぇ」

 

 棒呼ばわりは、黒棒本体の声が出るのだとしたら「失敬な!」と怒りそうな話である(実体験)。

 それはそうと、じゃあどうすれば良いのかと聞けば。師匠は「そこでコイツの出番さ……」と、その巨体の胸元(谷間だと思うが腕がもっと奥深くにズブズブ入っていたのでそれどころの騒ぎではない)を漁り、何かを取り出した。

 

 どう見ても工具箱である。……えっと、それは一体?

 

「魔女らしい代物の持ち運びが面倒だから、適当にまとめているのさ。ま、かなり曰く付きの品々が多いからねぇ。ストレス負いたくなければあんまり聞かないことさ」

 

 言いながら軽く展開する。ドック式、内部に骨組みがいくつかあり、開けるとガバッと大きく展開する摩訶不思議な物品だった。どうやら外は塗装してあったのか気づかなかったが、内部は木製である。

 そこからビンをいくつか、後はチョークのような黒い棒状のものを手に取った。

 

 利き手を出しな、と言われて、一瞬迷う「私」。

 

「…………剣を使う方の手を出しな」

 

 ならば「私」や「俺」が使っている右手が相応しいか。そちらを出すと、師匠はチョークで軽く円を描く。なんとなく生ぬるい感触……、それと同時に「次の瞬間」、雑な円形だったそれは何かしら黒い魔法陣として形状が変化した。

 おそらく普段通り空間魔法か何かの類なのだろうが、もはや驚く暇もない。そのまま師匠はチョークを地面に置くと「複数方向から」「全く同じチョークのようなもの」が出現し、それぞれがひとりでに円形と線やら何やらを描き、大きな魔法陣が完成した。

 

 この形状は…………。

 

「…………仮契約とかの、魔法陣?」

「正確には『もっと古いもの』さ。それこそ古代金星文明が使っていたくらいにはねぇ」

 

 陣のデザインにデジャブを感じて聞いてみたが、どうやら正解だったらしい。らしいがやっぱり要らない情報が多いんでもう少しご容赦頂けませんかねお師匠様よォ…………。こちらの内心は察してるだろうが、お師匠は何とも言えない表情にしてぼーっと見て来た。「今更何言ってんだコイツ……?」みたいな感情が伝わる虚無とらくがきみたいな表情であるが、おそらく誰に言っても伝わりはすまい。

 

「陣の中心のところ、丸く円を描いたけれど、そこに好きな姿勢でいいから刀に触れたまま座りな。座禅とかの方が色々と『安定するから』、オススメするがね」

「良し分かった!(ハイテンション)」

「何でそこでテンションが上がるのかねぇこの男は…………」

 

 そんなことを言われたらもう刃禅(オサレ)一択である(断言)。幸い普段からよくやっているし今でも黒棒を持っている時の座禅はその姿勢なので、当たり前のように膝の上に乗せて両足を広げた。

 なお師匠から「柄に手で触れな!」と文句を言われたので、渋々右の腿の上に置いてある持ち手を掴んでおく。

 

「で、結局これから何を…………?」

「レベル1と2でとりあえず、アンタ個人に対する自己認識はある程度変えられたからねぇ? そうなると次は『能力の性質』をどうするかって問題が出てくるのは、わかるかい?」

「わかりません」

「素直に返すんじゃないよ、少しは考えな!」

 

 そう言われても血風とかあのあたりとか……、OSR(好き)なのだが?

 

「思想や実現方式は有用っちゃ有用だが、アンタの趣味に全力なのはどうしたものかねぇ…………。欠点ばかりとは言い難いが頭が痛くなってくるよ」

「えっ?(無垢)」

「そこだけ本気でボケ倒すの止めなッ!

 全く…………、じゃあ、始めるよ。これからアンタは、その魔法具の内にある本体、人工精霊のいる場所、属に言う『内在宇宙(インナースペース)』まで向かってもらう。

 精神だけで行くことにはなるが、そこで『新しい名前を』名付けて来るんだ」

「新しい名前? って、おぉ……」

 

 説明を進めながら指を弾く師匠。と、私の掌の魔法陣と、周囲に描かれた魔法陣とが淡く、鈍く、不規則、不気味に点滅するように光る。それに合わせて師匠の手元の瓶から、カラフルに粉が散り魔法陣へと吸い込まれていき…………。

 

「百の顔を持つ英雄、という名前はかつての創造主が付けた名前だ。それが破壊された以上、同一の創造主でもない限り『全く同じ機能』を再現するのは難しい。だからそれを放棄するか、あるいは改造した別な機能にするか…………、何かしら修正パッチを当てないといけないってことさ」

「いや、お師匠なら簡単に直せるのでは?」

「構成が細かすぎて面倒くさいんだよアタシがやるのは」

「えぇ…………(困惑)」

「わざわざ質量を等値に変更してから『3-A』の面々の魔法具を中心に外形を置換するのとか、色々無駄な機能が多くてねぇ。本来は犬上小太郎が近接主体で戦うから、ソイツ用に刀という形にしたみたいだが」

「だから心当たりのない知らぬ情報を――――」

「これくらいは知っておかないと『もっと混乱する』話になるさ。諦めな。

 つまり、そういうのをアタシがやると『改良』『改善』は出来ても、それはもはや一から実装し直し、作り直しになるから、そう言う訳にもいかないだろう。使い勝手が根っこから変わったり人格が別人になったら、今更嫌だろう?」

「それは…………」

 

 ホルダー拠点の地下空間、原作通り(?)に黒棒を引き抜いてテンションが上がり続けた時の記憶。色々と使われ方で私に文句を付けながらも、武器だからと半ばあきらめた黒棒の記憶。聖天を使った際に私共々何かしらダメージを喰らって呻いていた黒棒の記憶。九郎丸と夏凜にボール(直喩)にされた私を色々笑い飛ばした時の記憶。アマノミハシラ学園都市で、何かしら制限がかかるとわかっていながら「本体」と思しき誰かが出て来た時の記憶―――――――。

 

「…………思わせぶりなことを言うだけ言って折れたのが、そのままリセットされるのも流石に……」

 

 実際問題、戦闘時はその質量的に欠かせない相棒ではあるのだが。それはそうとして「アレ」で出番終了というのはあまりにもあんまりすぎるため、やはり出来るなら、そのままの黒棒が継続してもらいたいところである。このあたり、自分の人格が「文字通り」ツギハギであることもあってだろう。だからこそ、周囲のヒトに早々そんなヤヤコシイ想いを味わって欲しいとは思えないのだ。

 ただ我ながら、照れ隠しのように口から出た言葉が色々アレだった。もっとも師匠は察しているのか、多くは言わずニヤリと笑う。

 

「だったら話は早いねぇ。まあ、おそらく『抵抗される』だろうから、対話になるか屈服になるかはアンタたちの今までの付き合い次第になるだろうがね」

「つまり内在闘争(オサレ)の類ですねわかります……!(ハイテンション)」

「一々例の用語言う時だけテンション上げるの疲れないかい? アンタ…………」

 

 いや、とはいえ考えてもみて欲しい。いくら別作品だからといえ自分の相棒たる武器に対して〇LEACH(本家OSR)さながらの斬魄〇(オサレ)ムーブができてしまうのだ。そりゃあ具象化(オサレ)じみたこともすでにしている訳だし、対話(オサレ)だろうが屈服(オサレ)だろうが痛くない範囲ならばっちこいである。久々にセリフがOSR(オサレ)で汚染されていて申し訳ないが、別に新作アニメのPV見直してテンションが上がったとかではないのである…………!(メタ)

 

 目を閉じて深呼吸してな、と言われたので、言われるがままに。

 そして数秒後に「心」が落ちた先、そこで対面したのは――――。

 

『……ん? 嗚呼、刀太か。久しぶり、になるのか? なにせここは娯楽がないから、ほぼ寝ていたものでな。時間だけが無限に余っていた』

「………………」

『む? どうした。私の顔に何かついているか?』

 

 

 

「いやお前さん何で顔がクウネル・サンダースと全く一緒なんだよ!? なんかあの時と全然違うじゃねーか雰囲気! OSR(それっぽさ)はどうしたんだよOSR(それっぽさ)はよッ!」

 

 

 

 思わずガバも顧みず理不尽に突っ込んでしまった私を誰が責められよう。そこには寝大仏のような姿勢で寝っ転がる風〇(命を刈り取る形)の本体のような恰好をした、しかし首から上は「色違いの」アルビレオ・イマそのものな、黒棒の本体がいたのだから。

 

 

 

 あっるぅえぇぇ…………? いや、あの時は髪を逆立てていたり、口元をマフラーで覆って隠していたから気づかなっただけか? あれ…………?

 

 

 

 

 

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