受け取り側としてはこうもなる、的な話
ST180.DEATH-CLAD VS ...
場所は何処だと言われると困る。橋のような場所、というには
さて。私と黒棒の中の人は現在、軌道エレベータ―に「垂直に」立ち相対していた。起き上がり立ち上がった黒棒と、一歩後退しながら顔が引きつっている私である。もちろん本当に軌道エレベータ―に立っているという訳ではなく、要は精神世界とかの類なのだろう。
私ならばスクラップ場のような形になるが、黒棒の場合はこのような形になるらしい。
もっとも、当の本人は眠たげに欠伸をして一度伸びをする。どうにもやる気が感じられないが、本人いわく「折れてからほぼ寝ていた」とのことなので、それも仕方ないだろう。気を取り直して一度咳ばらいをし、私は再度黒棒にツッコミを入れた。
「…………でお前さん、何故顔がクウネル・サンダースそのものなんだよ」
『私としては何故、刀太が我が製作者の事を知っているかという疑問が出てくるが……。まあ、出来た
「まあ詮索されたって『何故か知ってる』としか、今の俺には答えようがないんだがな」
『ほぅ? それはそれは……、私が眠っている間に、何やら色々変わったようだな』
したり顔でニヤニヤしてくるその相手、黒棒本体とも言うべき人工精霊は、ついさっきも愚痴を言った気がするが首から上が完全にクウネル・サンダースことアルビレオ=イマの2Pカラーであった。あっちが青系統ならばこちらは黒系統、ただし肌は本家よりも少し白めで、表情の作り方が全然違った。涼し気に性格が悪い訳ではなく、ややヤンチャの残った近所で土方でもしていそうな兄チャンみたいな、そんな風である。
なお首から下は相変わらず
クククと堪えた後、ニヤリと笑った黒棒の本体……、面倒だから黒棒に改めて統一するが、黒棒は「それもそうだろうな」と一応は同意を示した。
『元々、私はアルビレオ=イマが作り出した「自身の分身といえる人工精霊」をベースに改造に改造を重ねたものだ。重力魔法を使う関係上、自分自身をベースにした方が手っ取り早かったらしい。だから、元が同じである以上は色々と要素は残るだろう。
顔に関しては完全に嫌がらせだろうが』
「何で嫌がらせされてるんだ、お前……?」
『大方「格好良く仕上げろ」と言った私の意向に全力で揶揄いをしかけたんだろう。はた迷惑な話だ』
何故そう自分自身の分身にまで性格の悪いお遊びをしかけるのか。表情に出ていたわけではないだろうが、黒棒は「まあ、そういう男だ」と肩をすくめた。
『元々、私を作り出した術式すらかの「
「エヴァちゃんの使い魔?」
『ちゃん!? いや、本当に命知らずだな刀太……。
お前は知っているか判らないが、彼女の最初の使い魔…………、
また知らない設定が飛び交ってる……。言いぶりからして、おそらく「チャチャゼロ」のことを言っているのだろうが、もうそれが原作基準かどうかという話はこの際だから一回置いておこう。そろそろ検証キャパが限界を通り越して底なし沼になっている。一度でも足を取られたら後は抜け出せないままにガバの深みへと吸い込まれていくだろう。
……星月からツッコミの声がしないということは、いつかのダイダラボッチの時よろしく彼女はこちらに一緒に来ていないと言う事だろうな。まあ、これはこれで良いのやら悪いのやら。
『それで? わざわざこんな所まで出てくるとは、私の修復の目途が立ったという事か?』
「それが無理っぽいからこっちに来た、っていうのが正解」
『? なんだと?』
眉間に皺を寄せる黒棒へ、お師匠から言われた話をかいつまんで説明する。要するに、以前の機能が使い物にならないから、何か名前を付け直さなければいけない、という話だ。
それを聞いて、黒棒は無表情になり「まあ、納得はした」と何度か頷いた。
『確かにそういう方法をとるのならば、武器としてまた使えるようにはなるだろうがな。だがそれはそうとして、それが何を意味しているかお前はわかっているのか? 刀太』
「どういう意味かって……、いやわからぬが」
『ハァ。…………簡単に言えば――――』
次の瞬間、黒棒は「自らの手に出現させた」黒棒で、私へと斬りかかった。
「はい?」
瞬間「嫌な予感」を感じたと共に「
『…………簡単に言えば、それは私への処刑宣言に等しいのだ』
えっ? 処刑宣言って、そこまで大事な話なのか? 理解が追い付いていない私に「まあ普通はまず起こり得ないことだから無理はないか」と黒棒は肩をすくめる。
『道具的には打ち直し、再利用にニュアンスは近いのだろうがな。内部に存在している魔法式としての私は、まず間違いなくそれで大きな変容をさせられることになる。変化の大小ではなく「再定義」というのは、術式としては塗り替えに等しい。
それによって私に人格の、何が、どこまで変わるか分からないが…………、「自分自身の人格の変容」に、恐怖を抱かない知的生命体はいないだろう』
「……………………」
『お? お前のことだからてっきり「生命体はちょっと違うだろ」と言ってくると思っていたのだが』
「いや、最近そーゆーのは本当全然笑えないっていうか……」
なにせ直近ここ体感上は1月程度、その「自我の曖昧さ、不安定さ」について「正体付きで」つきつけられているのだ。それこそ夏凜相手に盛大に色々やらかしていた事実を突きつけられたことも含めて、それがなければ今こうして会話すらままならなかった可能性が高いのである。
だから「第四の目」越しに見える、表面上は取り繕った黒棒の内心の。その実、本当の意味での物質的な肉体が無いからこその、「心」自体が変容することへの恐怖心が、恐ろしい程に見て取れた。言葉にすらなっていない、震えた感情である。
それに対して、恐怖心を、痛む心を無下に受け入れろと強いることは出来なかった。強いれるくらいに、私自身がこの自我崩壊の恐怖と向き合えてはいなかった。
「でも、このままだとどうしようもないんだよなぁ……。お前、まだ外でしゃべれないだろ?」
『嗚呼。ペナルティはしばらく前に切れていたが、もはやそれどころではなかったからな』
ペナルティ? というとアレか、アマノミハシラ学園でわざわざ本体である黒棒が外に出て来ていたあの時、時間切れで帰るとか言ってた際の「しばらくしゃべれなくなる」というもの。確認すると、黒棒は特に反論もなく頷く。
『正確に言えば、私の自由意思決定に関する機能を封じられ、ひたすら道具としてしか使えなくする措置だな。
そう簡単に本体たる人工精霊が外に出て居たら、簡単に「私本体を」壊されかねないが故の措置だ。文句は有るが、妥当な初期設定だろう』
「はぁ、まあ確かにそう言われればそうだが…………」
『もっとも、いざ復活すれど「外」へ向けて一切しゃべれない以上はやることもないからな。会話機能と言うより、意志を表出させる機能自体が破壊されたと言うべきだろう』
こちらが一定の理解を示したせいか、黒棒はそれ以上に斬りかかってくることはなかった。ただ頭を悩ましている私に苦笑い。何だよ、と問えば「当たり前だろう」と笑みを深くする。
『…………てっきり「そのくらい諦めろ」と返されると思っていたからな。我慢しろというか、潔く死ね、くらいのことを言うのが、一般的な魔法使いの在り方だろう』
「生憎魔法使いじゃないもんでなー。後、多分ネギ・スプリングフィールドとかでも無理強いはしようとしねーと思うぞ?」
そのあたりは、しっかり少年漫画しているネギぼーずであるからして、そうだろう。「ネギま!」時代の小太郎君あたりも「そんなん悪役の理屈やろ、男なら黙って全部救わなアカンわ!」くらいは言って返してきそうである。要するに、黒棒が思っている以上に
逆に言うと、そこで現実的な捉え方をしっかりするあたりは、彼の大本になっているアルビレオ・イマの人格が反映されているという事なのかもしれないが。
そう言う意味で言えば、私と今の黒棒の関係は、形を変えたナギ・スプリングフィールドとアルビレオ・イマとの関係にも近いのかもしれない。なんとなく感慨深いものがある。
おそらく所持している情報量は、私とは大本が違うが似たような部分もあるだろう。だから私と似たようなことを考えたのか、お互いなんとなく力の抜けた笑みを浮かべ合った。
『だが、ならばどうする。私を残したまま「百の顔を持つ英雄」という定義を書き換えるというのは、不可能だぞ』
「そこは何というか、裏技みたいなものがあるんじゃねーかなってのは思う」
なにせ師匠が私をここに送る際に、その類のことについては一切言及しなかったのだ。事前に覚悟を決めろ! という方向性ではなく、わざわざ「第四の目」の制御まで待った以上は、何かしらこの視界で解決する手段があると思ってしまうのは、私の考えが楽観的すぎるだろうか。
一応ダーナ師匠は、人が足掻いてもがき苦しむ姿を見るのが大好きな困ったお人だが、最終的にはきっちりフォローするタイプのお人だと思っているというか、そこは最低限信用している。
『ならばどうする?』
「どうするかなぁ……。ここで色々対策を出し合おうにもアレだし、戻って私室の漫画とか見ながらアイデア練る訳にもいかねーだろうし」
『…………だったら、やれることは一つか。いや「やらなければいけないこと」かもしれないが』
一つ? と。問い返そうとした瞬間、黒棒から「戦意」の二文字が漏れ始める。オイオイどうしたと訝し気に警戒する私に、黒棒は持っていた自分自身の外形を投げて寄越した。
目をそらさず、投げ渡された重力剣を「血の腕で」絡めとり、手元まで引き寄せた。
………………ん? 血の腕? えっ血装術? いや待ておかしい、何故無傷のまま使っている。
思わず胸元を見れば、そこには九郎丸によって付けられた傷は相変わらずなくなっているにも関わらず、当たり前のように「その箇所から」以前同様に出血し、「意のままに操れた」。
困惑する私に、黒棒はニヤニヤと少し意地悪そうに笑う。
『嗚呼、そういうのは初めてか。ここは精神世界だ、自分の気の持ちよう一つで武装くらいは自由自在だろう』
「いや、そう簡単な話でもないはずなんだが…………。今まで出来た試しがないし」
『それは、流石に私の知ったことでは無いが、カンは良いな。相変わらず』
「はい?」
『パピルス・タピルス・ロン・ジンコウ――――
そう始動キーをつぶやいた瞬間に黒棒の思考が「見えなくなり」、同時に猛烈な怖気を感じて私は
その私の危機回避の予想通りと言うべきか、一瞬前まで私がいたところに黒棒はハマノツルギを振り下ろしていた。エレベーター外壁部分にヒビが入る。なおもこちらを見続ける黒棒はニヤリと笑い、音もなく一瞬でこちらに接近してきた。
瞬動術!? お前も出来るのかそれと続ける暇もなく、斬り上げる黒棒の一撃が右の頬を傷つける。傷が熱い、熱を帯びて血が噴き出すが、しかしそれも数秒で再生を…………。
「再生しない!? くッ…………! 血風ッ!」
再び振り下ろしにかかった黒棒のそれに、空中に置き血風。重力剣で
「血風創天――――」
『フッ!』
突きいれる形で発動する血風創天。うーん、これも久々である。だが黒棒はハマノツルギを使い、難なくその射出される血の奔流を「真っ二つに切り裂いた」。
オイオイ……と引きつった笑みを浮かべながらも、一応左手をポケットに突っ込み、半身を向けて重力剣の切っ先を向ける構えを取る。実際イメージ通りだと言われた通りに、難なく血装術関係を自在に扱えているが、そんなことより斬りかかってきた意図がわからない。今度こそ本格的に不明だ。
そんな私にハマノツルギを肩で担いだ黒棒は、ニヤリとそれこそ
『一応、言っておくとだな。もう私の「正式名称」は知っているようだが、能力に関しても付け加えるなら――――――――私が模倣する魔法具は、特に「
「…………えっと、ネギぼーずのクラス?」
『ん? 嗚呼、そこは知らないのか』
微妙な情報の食い違いはあったが、それはそうとして……、
えっ? つまり「第四の目」が通用しなくなったのって、今の黒棒には「
いや、それで切りかかってくるとかますます意味不明なのだがっ!?
「和解っつーか、一応はお互い落としどころ探そうって感じの空気だったろ、一体どうしたお前さん!?」
『私自身、そう言うつもりだ。だが私はお前よりは大人なんだよ、刀太。どうしても、最後の最後で失敗してどうしようもなくなるという展開を、その可能性を捨てきれない』
そのことと一体何の関係があると。お前さんの考えがそうであることと、今の状況に結びつきがつかないと問えば、彼は「だからこそだ」と言う。
『…………最悪、これが今生の別れになる可能性もあるからな。人工精霊が「命」を語ればあの男はいけ好かない笑みを浮かべて揶揄い倒してくるだろうが、今この状況で私に何が出来るかと、それを考えた』
「いや、考えたって……」
『ある意味「死に際の戯言」だがな、聞け。
私自身、出来ることはそう多くない。「意図的に」あの男が私という人格を自分自身の人格から大いに引き離している以上、私が重力魔法を使って戦ったところで、あの男と対決する際の戦闘経験にはなるまい。
ならば出来ることは何かと自らに問うた――――――――すなわち、最悪のパターンをな』
ハマノツルギを下ろして、構え直す黒棒は。
『仮にもし、何かしらの理由があって「
「いや、誰だよ!?」
『お前の祖母にあたる人物の一人、のはずだ』
いや、そこは本当のことを言えばわかっていないフリをしているだけだから別に良いとして……。何と言うか、黒棒も黒棒で「私」というか近衛刀太について、原作で知らないことも多かったが知っていることも多かったということなのだろうか。その物言いは最悪の仮定だと言いつつも、どこかで「そうなる可能性が高い」と確信を秘めているようでもあった。
いや、「第四の目」を開いていても思考が確認できないから、いい加減切ろう。そっちに回していた意識を血装術の制御へと転換する。……まあ、とはいっても「人格が」「別々に」駆動している訳でも何でもないので、こういうのは気分の問題なのだが。
一応、私はまだ「私」として、一つの個だと言えていた。…………辛うじて。
「つまり、自分が残せるものは――――」
『最悪の展開での最悪の相手、刀太にとって一番の鬼札たる相手を想定した戦闘経験くらいだろうとな』
「いや、理屈はわかったけど、それこそいきなり切りかかってくる必要は……」
『安心しろ、殺すつもりはない』
「あってたまるかって話なんだが!? いやそれ以上に私が痛いの嫌だってお前知ってる――――だろッ!」
コイツ、まだ普通に話してる最中に斬りかかってきやがった!? しかもやっぱり瞬動のキレが頭おかしいくらい良いぞ。ひょっとしてアレか? これ
死天化壮の自動迎撃で鍔迫り合いをしながら、歯を食いしばって黒棒を睨む。黒棒は黒棒で、ニヤニヤとやっぱり性格が悪そうな表情をしていた。
『だからこそ、だ。……言い忘れていたがな、刀太。私はあの男から
それはそうとして、お前を始め周囲の人間が混乱したり絶叫したりして嘆く姿を見るのは嫌いじゃない』
「やっぱ相棒お前、れっきとしたアルビレオ・イマの人工精霊だよお前よォ!(正当ギレ)」
『自覚はあるさ、だからこそ度し難いんだがなぁ
つまり、お師匠と違ってフォローアップせず最後の最後まで揶揄い倒す所存だということになるわけだ。何と言うか、我が