死亡回生については本作的な解釈をもとにつくってますので、原作出身だけど原作と一緒というわけではない(ハズ)です…、原作、原作?(混乱)
ST184.Gravity Sword "ATTRACTOR".
現実世界といっていいだろう、肉体の有るこの世界に意識が戻ったその時点で、メイリンが何だか見覚えのある相手に斬りかかられているのを見た私がとった行動は、速攻での背後からの強襲だった。
何故そんな恰好やら何やらのままこっちに戻ってきたのかとか色々セルフで突っ込みたいところは有るが、それよりも相手が相手である。
「――――なん、で? コノエ・トータ……?」
血風創天で背面から袈裟斬りにされた彼女は、しかし分断された胴体を「血で繋ぎながら」、いまだにその命を散らさず、ややずれた胴体のままこちらから距離を取る。尾がなかったり背部にファンネルのように飛んでる剣が影を纏い翼のようになっていたりと、あるいは本来ならあるはずの尾がまるで切断されたように無くなっていたりと、色々姿に違和感はあるが、その顔は比較的最近対面した相手のそれである。
オティウス・ラウヴィア。折れたその角は忘れようもない彼女である。
しかし、その彼女は一つだけ決定的に私が知る彼女と違っていた。容姿や格好や、そんな問題ではない。
「何かわからねーけど、アンタは逃がすと何か拙い気がするからここで叩くぞ」
嘘である。実際は何故逃がすと拙いか全然わかっている。わかっているが、その一番致命的な部分に関しては、私はもはや何もかもが遅すぎた。
このオティウスは、「原作の世界線」のオティウスだ。
そしてこの彼女は、既に「UQ HOLDER!」において退場した後の時系列のオティウスだ。
それが意味するところは、すなわち――――彼女は既に任務を完了し、原作の桜雨キリヱの「
魔人、オティウス・ラウヴィア。原作においてはほぼ設定レベルでしか言及がなく、結局キリヱをどうこうしたという以上の話が存在しない相手である。私としても一度相対した後、私たちの世界線においては現在ホルダーの拠点地下へと幽閉されているとか何とか。ともあれこっちの彼女は封殺したも同然であるが、それは目の前の彼女においてはなんら関係はない。
なんなら思考に浮かび上がってくるワードに「私の方が先輩」とかそういうフレーズもないので、どう考えてもキャラも別人だろう。
つまるところその思考は一つ―――――並行世界に移った桜雨キリヱの抹殺である。異常な固有能力を再発されては困るからと言う、念の入りようであった。
「あら、貴方とは直接面会したこともありませんし……、見たところ『我々と関わっていない』頃のコノエ・トータと見受けますが?」
「とある宗教法人の集会襲撃したらアンタが居たんスけど、たぶんパラレルワールド的な別人だよな。思考というかニュアンスが違いすぎるし、『和睦』ってフレーズに聞き覚えは?」
「和睦…………? ちょっと何を言ってるかわかりませんねぇ」
浮かんで来る思考もその言葉通り裏はない。間違いなく「魔人」関係の設定があーだこーだしているこっちの世界線のオティウスではないだろう。
「まあ大して関係ありません。どうせ異世界でもコノエ・トータは我らが邪魔でしかない。このオティウス・ラウヴィア、『新たなる夜明け』に捧げる贄を一つ二つ増やしたところで何ら問題はないでしょうねぇ」
両手を広げてニヤニヤ笑う様は魔人らしいといえば魔人らしい。悪魔っぽいというか、それこそこっちのオティウスのように先輩ぶったりする感じもなく、逆説的に人間性を感じ取れない。悪魔としてはこっちの方がよりイメージにそぐうだろう。
しかしその結果といっては何なのだが、こう…………。
「薄い」
「……薄い?」
「えっ、薄いって何、かな」
オティウスのみならず、彼女を警戒したまま武器を構えているメイリンまで一緒に聞き返してくる。
いや、まあ言う必要性がないことなのだが………………、初手煽りは基本だ。
「なんつーか、キャラが薄い。キャラ付けが安っぽい。
まるでバトル漫画の終盤に数合わせで出て来たぽっと出のボスキャラみたいな感じでキャラの味付けと勢いが弱くて薄い感じで、なんつーかこう、ぺらっぺらって言ったら良いか? ぺらっぺら(メタ)」
「ぴゃ!? な、何てことを言うのですコノエ・トータ!!? 失敬な! 古の時代から語られる悪魔の一人である私になんて言い様!?」
あ、こういう怒るところの動きとかはこっちのオティウスのそれっぽくもあるか。そう言う意味では育ちこそ違うが、魂とかそういうのは同一人物と言われて違和感はない。パラレルワールドの同一人物、というやつだ。
ともあれ、私に対する感情やら何やらを乱しに乱した結果、様々な情報を読み取れる。どうやら彼女の能力の一つに「異世界ランダム移動」めいたものが存在するらしく、能力を封じた後のキリヱが「更なる力」に目覚めるよりも先に、別な世界線に飛ばし魔法能力に制限をかけたと。もっともどこに跳んだかまでは彼女自身がコントロールできるものではないので、その飛ばした先のキリヱを殺しにいくことを含めてまでが任務と。
その途中、彼女の上司たるアガリ・アレプトから追加の命令が発生し、道中に立ち寄ったこの場でも私やキリヱを殺そうとしていること――――。
「まあこっちは『どうにかなる』だろうけど、キリヱ相手は流石になぁ…………」
我々の世界線のオティウスを
彼女同様に並行世界を渡るオティウスが誰かいるかもしれないが、そこまで面倒は見切れないにしても、目の前にいる実行犯については冗談抜きでどうにかしておくべきだろう。
なにせここは「狭間の世界」――――本筋から外れても多少は許容してくれるはずだ。なにせ時空が入り乱れているのだから。
『桜雨キリヱのために後で頭を抱えそうなダブルスタンダードしているところ悪いが、血がつけられているぞ』
「おっと?」
私の内から(おそらく精神世界から)語りかけてくるエヴァちゃんの声。人工精霊はもう抜き取られているから、おそらくエヴァちゃんモードの星月だろう。何故アキラさんからそっちに変えたのか……。それはそうと、腕やら身体やらをちらりと見てはみるが、残念ながら死天化壮の布地アーマー地やらと完全に溶けてしまっており、オティウスの血らしきものは見当たらなかった。
そんなこちらを見ながら、身体を繋ぎ再生させ途中のオティウスは微笑み、頭上と足元へ白と黒の剣を向けて。
「では、失礼な貴方も、“一巡周ってまた会いましょう”――――――――
無駄なことを、と「第四の目」により何をしようとしているのか、何が起きようとしているのか理解しながら、あえて私は特に抵抗せず。
その結果、私の死天化壮は消し飛び、全身から力が抜け――――。
※ ※ ※
「せ、先輩に何をしたんだ、あなた!」
そう叫ぶメイリンに、オティウスはけらけらと笑いながら、目を閉じ気を失ったような近衛刀太を一瞥して微笑む。
「言った通りですとも。『一巡周って』もらいました」
「意味が、わからない――――!」
光線銃の引き金を引くメイリン。その一閃を、両側の剣を重ねて斬り払い一蹴。否、その光線ごと光線銃が「消えた」。姿を消した、文字通り跡形もなく。
その異常事態に、やはり理解が追い付かないらしいメイリン。頭の良さはいわゆる超鈴音レベルかどうかはともかく、それなりに現代人よりも学をおさめていそうな彼女でさえ、何がおこったのかに説明がつけられないらしい。
「タローマティのような時空干渉……? いや、もっとシンプルに、物体そのものが『時空に埋もれた』、みたいな………」
「あら貴女、伊達や酔狂でここまで来てはいないのですね。初見としては正しい物の見方でしょう。
でも『埋もれた』という表現は正しくない。『物理干渉できるレイヤー』から上部のグレードに送り、『一巡周って』もらっただけ、ということです」
「一巡……? まさか、永劫回帰思想を元にした時空間魔術ッ!?」
「流石にそこまで究極的な力はもっていませんが、感覚は近いといえるでしょう」
くつくつ笑うオティウスは、黒と白の剣を自らの背部に伸びている影の翼へと入れ、その構成要素の一つとした。
余裕の表情を浮かべる彼女に、メイリンは「有り得ない……」と何度もぶつぶつと繰り返す。
「時空間永劫回帰仮説、時間はループして滅亡後に同様の物理現象が再生され、世界は何度も何度も同じような歴史を繰り返してるという仮説は、2096年のAI葉加瀬聡美の広域量子演算コンピュータ製造にまつわる論文で否定されているはず……、少なくともこの世界線、宇宙のワンバースから『脱出』しない限り、内部生命もまたエントロピー増大にともない、いずれ消滅する定め…………」
「あら、そこまで結論を知っているのなら、察するまでもう少しですかね。
ヒントは――――『横軸』」
「……ッ! まさか――――」
顔が青ざめるメイリン。そんな彼女にオティウスは半眼で妖しげな笑顔を向ける。それこそ、まるで悪魔めいて嘲笑うように、事実を突きつける。
「――――私の固有能力『
そしてそれは、先ほど私が血装術で干渉したコノエ・トータの魂も同様に――――。
嘘でしょ、と。メイリンは震えた声で指をさす。
「いや、だって、そんな簡単に、えっ?」
「簡単ではありませんとも。これをすることで私は『並行世界の私』の命を消費することになりますとも。
それが私の
これが、彼女がキリヱの
能力は「この世界」において発動することを前提として作られているもの。物理法則が異なれば、その異常極まりない特殊能力もまた正しく発動せず、結果としてキリヱは、不老と魔術のみ残った状態でその世界に降り立つことになった。
それはすなわち、どうあがいても自力で元の世界へと帰ることが出来ないと言う意味でもあり――――。
「その条件はたとえ誰が相手であっても例外はない。
すなわち、永遠の別れということですね――――自力で並行世界でも渡り歩く能力を持たないのならば。
まぁもっとも? 魂だけの転移は異世界の肉体への上書きになりますが、事実上『別存在となる』ことに等しい。もはやそこにあるのは、只の生きた躯に他なりません」
「そん、な…………、わ、わ、私だって、まだ『縦軸に関して』色々作ってるって段階だっていうのに…………」
「何、問題はないでしょう。一人は寂しいですものね。
じきにあなたを始め、他の人々も送って差し上げますとも――――能力を失った後の桜雨キリヱは殺しますが」
「流石にそれを許容する訳にはいかないんだよね」
「えっ?」
「――――ッ!? 何、です!!?」
驚いた様子のメイリンとオティウス。とはいえ、そんなことおかまいなしに
一度消し飛んだせいで血装術のための血がなくなってはいるけど、身体的には生命の危機相当の扱いにはなっているらしく、魔族であるはずの彼女の顔面を僕の拳はやすやすと打ち抜いた。
予想外の一撃だったせいか、飛び跳ねて転がるオティウス。背部の翼も解除されて、周囲に八本の剣が散らばる。
困惑しているらしいメイリンに「やぁ」と軽く手を振ると、何故か頬を少し赤く染めて、引きつった笑いで「は、はぁい……?」と返してくれた。うーん、僕も謎挙動だけど彼女も普通に返しちゃったし、あっちもあっちで混乱してるってことかな。
オティウスのうめき声。流石に我に返ったかな?
改めて左肩が前になるような立ち位置のまま、身体を斜めに向けてオティウスを見やる。彼女は頬を抑えて上半身を起こし、有り得ないものを見るような目で僕を見ていた。
「有り得ない……、有り得ない、有り得ない、有り得ない…………!
貴方の精神は既に別世界に跳ばされたはず、それが何故まだ……? ハッ! ひょっとしてコノエ・トータ、貴方は多重人格だということですか!」
「えっ!? そうなの先輩!!?」
「いや、そこまで判りやすいものじゃないよ。僕ですら把握しきれていないくらいだし」
僕? と、ここでメイリンが一人称の違いについてようやく気付いたらしい。
そう、今ここにいるのは「私」ではない。「僕」だ。
神楽坂菊千代という自我の認識自体は崩れていないが――――それでも何かが欠けたが故に、「私」ではなく、僕は「僕」であるという認識になっている。
「まあ、大した問題はないよ。記憶に欠損もみられないし、ちょっと『僕が』『私じゃなくなった』くらいで」
「ごめん先輩、ちょっと何言ってるか本気でわからないだけど……。わ、わかるように話してもらえない、かな?」
「わかったら
「……全く意味が解りませんが、しかし! 貴方の血装術は貴方自身の魂に紐づいていたはず、コノエ・トータ。魔族の能力とはそういうものです。
であるならば、何かしら精神に異常をきたした貴方は、以前のように技を振るうことができない! つまり、もはや私に抗う術はないはずです!」
オティウスが実際言う通り、現状は「第四の目」も血装術も使えない。血装術は
あのラスボスであるヨルダ=バオトだって、自らの精神で敵の肉体を乗っ取ることまではしていない。相手の精神を洗脳し、自らの意のままに操るという流れが結果として洗脳みたいな状態に見えるとか、そんなシステムだったはずだ。心を折り抵抗できなくしたうえで、自らの言う通りに行動させる。つまりどうあがいても、本人の肉体性能を十全に発揮させるには、本人の魂が必要だっていうことだ。
ただ、申し訳ないんだけど「丁度」、そのあたりの問題は解消してしまったところだ。
「いくよ黒棒……、いや、
黒棒を構え、その切っ先だけをオティウスに向ける。何をするのかと、困惑している彼女へ――――。
「――――血装」
次の瞬間、黒棒の先端が「四つに解け」、それぞれが卍型のブーメランの羽根を形成。ぐるぐると0から100の超急加速をもって、風圧と衝撃波と「僕の血液」を飛び散らし、オティウス本体に衝撃ダメージを与えた。
気分はちょっとだけ、
ついでに近くに居たので、メイリンも「ひゃんっ!」と巻き込まれて尻もちをついてるけど、ゴメンそっちのフォローは後回しで。変なところ打ってなさそうだし、大丈夫大丈夫……。
状況を理解できないでいるオティウス。打撃自体は大きなダメージは入っていないものの、そもそも今明らかに「黒棒が」血装術を使ったようなその光景に混乱しているらしい。
衝撃波により舞い上がった砂煙――――その内側で、既に黒棒から放たれた血により、こちらの準備は終了していた。
「何故、そんな馬鹿な……?」
「悪いが、
砂煙を切り払う私は、改めて
…………内心を視ると「馬鹿な」とか「をのれUQホルダーめ」とか、そんなテキトーな感想ばっかりでやっぱりキャラが薄いぞこの女。もっと色々頑張れ(無茶振り)。