す、数話以内には出てくるのてお許しをば汗
ST187.Misunderstand x Misinterpret
大きな翼の生えた、人狼のような魔獣。それを前に、学ラン姿な刀太君は仮契約カードを構えて重力剣を呼び出す。……僕たちみたいに衣装がランダムじゃないのがちょっとズルい気がするけど、刀太君は特に何も言わずに重力剣を頭上に掲げて。
『血装――――――――
刀身から飛び散った大量の血が雨みたいに降り注ぐ。それにびっくりしたのか魔獣が飛び退いて、その一瞬で飛び散った血の一部で真っ赤に染まった刀太君は、一瞬で死天化壮を身に纏う。
明らかに動きというか、速度というかが洗練されてる気がするんだけど、ほんと一体何があったんだろう、ここ最近。
そんな僕の疑問なんておかまいなしに、状況は進んでいく。刀太君は自分の周囲に血風(あのブーメランみたいなやつ)を出現させると、それを遠隔で飛ばして魔獣の周囲に。直接襲い掛かってこないで、自分を囲んでるその血風に、魔獣は警戒しながら見回す。
そんな魔獣めがけて、瞬動みたいな素早い踏み込み――――斬りかかった刀太君の剣を受ける様に爪を立てる魔獣。
そんな魔獣の周囲に飛ばした血風が集まって――――。
『血風創天――――』
重力剣についてないはずの血風たちは、そのまま「勢いよく回転し出して」、中央の部分から刀太君が振り回す血風を射出する。
状況的に逃げられないと思うんだけど、それでも魔獣は刀太君から飛び退いて、翼を使って空を駆けていく。駆けて行くんだけど、射出された血の奔流はまだ途切れて居なくって――――。
『遠隔だけどいけるか? あー…………、
――――その奔流「から」大量の血風を射出した。って、えっ!?
「ちょっと何アレ、やりたいほーだいじゃないのヨッ」
僕の横でキリヱちゃんが唸り声をあげてるけど、それも気にならない。
カトラスちゃんは「ますますバケモノじみてきたな」とか言ってるけど、そっちも気にならない。
メイリンさんが「カッコイイかも……」とか言ってるのは…………、ちょっと気になるけど、一旦おいておこう。
「ぱ、パネェ……」
「そ、そうだね……」
あんな精緻な操作というか、血装術の使い方は今までできなかったはず。だから、絶対刀太君はここでの修行の成果が出て、レベルアップしてるってことだ。
そんな刀太君の動きを、みんなでテラスに集まって、あの壺みたいなやつで覗いてみている。相当古い映写機みたいな感じの装置になってるこれで、前はカトラスちゃんの動きを見ていたけど、今回は刀太君の修行を見ている最中だ。
なんでこんなことになってるかというと……。刀太君があの黒棒を修理し終えたタイミングが、僕たちと微妙にずれているからだ。
大体3日くらいずれてるから、ダーナさんが週2日の休日を最近設けてくれているのも、僕らと刀太君とでタイミングがずれている。
おかげでこうして、休日はたまに刀太君の修行を直に見ることが出来るようになっているからか、皆ちょっと興味津々で覗いているんだ。
で、その結果が。
「鬼ね……。翼のコントロールを奪い取って、地面に叩きつけようとしてるわ」
「パネェ」
「いや、確かにやべぇけど佐々木三太、お前もうちょっと語彙増やせよ」
「あ、あんまり組手してる時とかは意識してなかったけど、こう見るとあのコートみたいなのってヒラヒラしてて格好良いな……。うん、いいセンスしてる」
リアルタイム映像の刀太君は、尸血風の死霊魔術で部分的にコントロールを奪った羽根で、魔獣の飛行を妨害してるみたい。あっ、安定感がなくなってそのまま墜落してく。そんな魔獣を見ながら頭上に円を描く刀太君。
あの動き、UQホルダー加入の試験をしてた時を思い出すなぁ……。
それはそうと、似合っててカッコイイとか呟いちゃうメイリンさんを思わず見ちゃう僕とキリヱちゃんとカトラスちゃん。
うん、何と言うか…………、全然知らない人なのにしれっと現れて刀太君と仲良くしてる大人のお姉さんという、何とも色々と言いたいことのあるポジションに居る人だった、この女性。
僕たちとしては、色々気が気じゃない。
あっ、映像の中で刀太君が魔獣を倒した。斬り殺さないで、最終的には血装術で作った腕で首を絞めて落としてる。
『まあ、こんなもんっスかね師匠』
『――――上出来といえば上出来だよ。アンタがどう思おうがね』
そして映像の中に現れたダーナ師匠が刀太君の首のあたりを捕まえて「ひょいっと」音を立てると、こっちの「画面の方へ向けて」投げて――――ッ!?
「――――ぎょええええええええッ!」
「わあッ!?」「に゛ゃああッ」「おっと何だッ!」「やべぇ……」「イヤーッ!?」
僕、キリヱちゃん、三太君、カトラスちゃん、メイリンさんの順でリアクション。瓶から思いっきり刀太君が「打ち上げられて」、全身びしょ濡れのまま空中で絶叫した。それに合わせて僕たちも叫んじゃったりしたんだけど、い、いい、今のは一体…………。
……もうちょっと前に出てたら、き、き、キスくらい出来た、かな?
「止めときなアンタ、桜咲刹那から『変態』の通り名を継承したくはないだろう」
「わあダーナ師匠!!? ってそれより、へ、変態!?」
「ぬあああんッ! どこから出て来てるのヨッ」
ジト目で僕に声をかけたダーナ師匠は、首から上だけが瓶から「にょき」っと生えていた。なんか生首が入ってるみたいで、ちょっとグロテスクに見えなくもない……。
あっ、瓶に四本「足が生えて」、カタカタ言いながら立ち上がった!?
皆リアクションしながらその生理的な気持ち悪い絵面に逃げて(一番怖がってたのはメイリンさんだった)、一瞬視線をそらしただけなのに「いつの間にか」普段通りのダーナ師匠がそこにいた。瓶は消えてるし、もう何と言うか、一体これって何が起こってるんだろう……。
「ま、さっきも色々言ったが『思った通り』アンタはこれ以上、技能やら使い方についちゃ経験の積みようがないね。なんならキティのハウスで宍戸甚兵衛や他の連中と戦った方が、まだ刺激になるだろうさ。
今日はとりあえず『今何をどれくらい出来るか』試す意味でアタシが殴り合わなかったが、どうだい?」
「どうだいと聞かれましても……。そろそろチュウベェを解放してもらいたいんスけど」
「えっ?」
「えっ?」
しばらく沈黙する二人。やがて、ダーナさんの方がバツが悪そうな顔をした。
「悪いねぇ、忘れてたよ」
「ちょっと何言ってるかわかんないッス」
「アタシだって色々忙しいからね? いや、ちょっとくらいそういうミスがあっても変じゃないだろうさ」
そんなこと言いながら、ダーナさんは胸の谷間に手を差し入れて(!?)ごそごそと何かをやって取り出した。黒い球状のボールみたいなそれは、日の光を浴びると徐々に崩れて消えていく。
中にはこう、あの雷獣…………、刀太君が「チュウベェ」と名付けたあの子がいた。
何かこう、目が真ん丸になって、真っ白になってる感じ?
「も、燃え尽きてるじゃない……、真っ白にッ!?」
「キリヱ大明神、そのネタわかるのか」
「わかるわヨ、っていうか大明神呼ばわり止めなさいヨ!」
ぺしん! と刀太君にチョップして苦笑いされるキリヱちゃん。い、いいなぁ……。その、何と言うか「女の子」を自覚してから、ああいうからみ方みたいなのって全然できないし、僕。
熊本時代だって……、熊本…………、あれ? 元からあんまり、そういう「男の子」らしいからみ方とか全然してなかった、僕ッ!?
「おーい、生きてるか」
『ぴ…………、ぴかぴ……』
「だからその鳴き声止めろ(白目)」
あっ、チュウベエの鳴き声に刀太君が白目剥いてる……。
ダーナさんの手から譲り受けたチュウベエを肩に乗せると、刀太君はため息。
とりあえず今日はもう自由時間! ということで、ひとまずみんなでお昼ってなるはずだったんだけど……。
「き、キリヱちゃん? いいのかな、その、刀太君とメイリンさんだけ先に行かせて……」
「三太もいるし大丈夫でしょ。それより九郎丸、作戦会議よ作戦会議。そこの妹チャンも」
「「作戦会議?」」
僕とカトラスちゃんは思わず顔を見合わせる。
気づかない? ってキリヱちゃんは両手を腰に当てて、フンと鼻を鳴らした。
「怪しいのヨ、あのちゅーに。なんかずーっと、あの刀修理してちょっと経ってから、ずうううううううっと! 元気ないの!」
それは……、うん、そうかもしれない。少なくとも最近の刀太君は、何かを必死で隠してる感じがする。
振る舞いはいつも通りなんだけど、何と言うか「やりとりに覇気がない」っていうか。おしゃべりも普段より長続きしないし。でも話しかけた時のリアクションはいつも通りの感じで、ただ普段よりちょっと雑というか。
……あんまり気遣われてないって言うか、そういう余裕がないのかな? と思うくらいには、普段は色々こっちを見てくれてる感じがするっていうか。
「怪しいも何も、
「妹チャンはまた別件じゃない。そーゆー
「何で今横文字使ったの? キリヱちゃん……」
「兄サンの影響か……?」
「ち、違うわヨ! ちーがーうーッ!
うなあああああッ! もう、修行中に読まされた本が色々なジャンルありすぎて変な語彙ばっか増えてるじゃないのヨ!」
しばらく絶叫したり頭抱えたり唸り声をあげてジタバタした後、キリヱちゃんはぜーぜー肩で息をして僕たちをじっと見て、びし! って指を突き付ける。
「つーまーり! 私たちで元気づけてやるのよッ! 最近影がなんか薄い気がするから、そのアレコレを払拭するのッ!」
「か、影が薄い…………」
「いや、個人修行してるだけで影濃くなったりするのはむしろやべぇだろって……」
薄い、影が薄い……、言われてなんとなくその自覚はある。天狗さんにも全然勝てないし、僕に関してはひたすらに神鳴流の技術を「物理的に」叩き込まれて教えられてるような形になっているんだけれど、それだけで全然進展もない。
さらに言うと刀太君もメイリンさんに気遣う分が増えて、僕とかキリヱちゃんとかの接触回数が減っているんだ。
カトラスちゃんは元からあんまり変わってないんだけど……、って、あれ?
「あ、だからキリヱちゃんってば、メイリンさんは誘ってないのか」
「そういうことヨ」
「ん? いや、仲間外れにしたって今、一番兄サンと一緒にいるんだし、別に――――」
「その油断が命取りなのヨ!?
あのちゅーにってば、見た目ちょっとお姉さん好きのおっぱい星人なんだから! 夏凜ちゃんがケアしてない今いきなりあんな丁度良い感じに湿っぽいお姉さんをぶつけたら事後るに決まってるでしょーがッ!?」
「「じご……!?」」
「今はまだそんな気がなくったって、私たちが動くことで加速するに決まってるわヨ! ぜーったいッ!」
き、キリヱちゃん流石にそれは言い過ぎとかなんじゃないかなぁ……!? そういうのだったら僕がやるし! 年齢詐称薬使えば、僕だってちゃんと大人のお姉さんになれるわけだし!
あっ、カトラスちゃんも顔真っ赤にしてブツブツ言ってる……。イメージとちょっと違う感じがするけど、軽いパニック状態なのか「わー!」とか自分の妄想に言ってる感じだ。……刀太君より年下ってことは僕よりも年下なんだから、つまりカトラスちゃんて結構むっつりちゃん? うん、大丈夫、僕はそんなにエッチな子なんかじゃあないから、うん。カトラスちゃんの将来が心配な僕だった。
…………カトラスちゃんより勇魚ちゃんの将来が心配な僕だった。
いや、ほら、帆乃香ちゃんがいるからセーブは出来てるだろうけど、将来的に……。
「っていうか、兄サンのそーゆーのって、どうやって調べンだよ。全然情報もないし、本人に聞いたって絶対誤魔化すだろ」
「それが問題って言えば問題なんだけど、こういう時のために…………、じゃん!」
「あっ、久々に見るね。キリヱちゃんのそのカメラ……」
いつの間に準備してたのか、キリヱちゃんが「帽子の中から」取り出したのは(収納アプリの出入り口そこに設定してるのかな?)、彼女の
「この
「「おおー!」」
って何がだ? って困惑してるカトラスちゃんに、魔法具の能力を説明するキリヱちゃん。
撮影してから過去十二時間の範囲で起こった出来事を撮影することが出来る、みたいな道具だと理解したカトラスちゃんは、少し思案して「無理じゃね?」って言ってくる。
「な、何がヨ」
「いや、ここって時空が乱れてんじゃないの? だとしたらそれって『誰にとっての十二時間か』って話にならねー?」
「一理あるわね……。誰を対象として見た場合の十二時間かわからないから、っていうことね」
でもまあ見ればわかるわよね、ということで。キリヱちゃんのそのハンディカメラ? っていうのかな。そんなサイズの魔法具の液晶画面を、三人で見る。
そして、絶句した。
「何、これ…………?」
「えっ?」
「や、べぇ……」
キリヱちゃんの撮影した写真は、「三枚とも」「大量の」「刀太君の死体」が転がってて、それで埋め尽くされているような有様だった。
※ ※ ※
九郎丸達に心配をかけているのを「
正確に言えば、立ち回る余裕がないということだが。……自分の行動とその結果、因果関係で結ばれたガバの結果が、雪姫というかエヴァちゃんに特大ダメージを与え続けていたという事実をつきつけられた現状としては、はっきり言って「全く受け止められていない」。
だからこそ彼女たちに相対して気が晴れるかと言われても、そう簡単な話でもない。夏凜にさんざん甘やかされたとしても、ある意味でそれは逃げである――――逃げてはいけないことからの逃げである。
なにせこれほどの罪悪感を抱えてなお、私は彼女へと「そう言う類の感情を抱けない」。
この心の機微と行動一つが、結果的にエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの方へと影響を与え、その絶望がまわりまわって「ヨルダ・バオト」との最終決戦の際に一切の妥協もなく完膚なきまでの失敗へとつながりかねない.。
原作「UQ HOLDER!」において、エヴァンジェリンと主人公たる近衛刀太の関係性こそが、ある意味では後半の主軸でもある。むろんそこには他ヒロインたちとの関係性も大きく、キャラクターに着目すれば必ずしもそうは言えないだろうが、話の本筋に直結しているのはエヴァちゃんただ一人。親子関係から始まり、過去の想い人疑惑へと変わり、「自己都合で生み出した生命への罪悪感」など色々な感情を経由するが、一貫して共通している部分がある。
近衛刀太が、エヴァちゃんを愛しているという只その一点だ。
「とはいえこればっかりは、無理なもんは無理だからな……」
だって、仕方ないではないか。身体的な理由も含めて欲情できないのは当然としても、私にとってエヴァちゃんとは「ネギま!」のヒロインであるという認識が強すぎるのだ。「UQ HOLDER!」でのエヴァちゃんについては、私の方がある程度大人になったから「漫画として」受け入れられた部分があるが、だからといって実際に相対したときにどういう感情を抱くかは全くの別問題。
そこに親子の愛情を形成しようと試みていたことと、そしてこの罪悪感とが上乗せされた今、果たしてどんな顔をして会えば良いと言うのだろうか。
『どうしたんだい
音声的には「ふみゅー?」と聞いて来てるチュウベェだが、私の頭の周辺でフワフワ漂っているチュウベェの言ってることはストレートに理解できるようになっているので、ますますため息。調理指導中のメイリンに「ど、どうしたのかな?」と訝しがられているが、何でもないと返すほかなかった。
九郎丸達は絶賛「私のために」会議中らしいので(
そんな訳で落ち込んだ気分が回復する目途もないのだが、メイリンに話を振ってもそれはそれで恐ろしいようなことを言ってくる。
「タイムマシン?」
「うん。友達が……、すごい頭が良い友達が作った設計図なんだけど、そこから上手く色々準備できないかなって。その人はその人でもう勝手に作っちゃってると思うんだけど、私は私でちゃんと形にしないといけない。
だからそのための場所と機材とか、そういうのをちゃんと確保できるようにしたいってことで、ここに弟子入りしてた側面もあるんだ」
メイリンからの警戒値も「第四の目」を使わずとも判るレベルで0に等しいらしく、話せば話すほど次々彼女の未来の情報がポンポン出てくる。メイリン自身が「呪文詠唱できない」体質だったりとか、未来人は割とそういう体質が多いとか。
「そもそも呪文詠唱できない体質って、どういうことなンだ……?」
「えっ?」
「あー、何だかんだ言っても三太ってそのあたりエリートだからな。感覚的にも実際的にもわからねーか」
伊達に水無瀬小夜子に改造された人工
そんな不思議そうに声をかけて来た三太(胡坐かいて料理の出来上がりをワクワクして待ってる)に少しだけ微笑んでから、メイリンは虚空を見て。
「えっと確か……『
「あー……、成程」
「?」
不思議そうにしているメイリンには悪いが、おおよそその口調らしきもので当たりが付いた。タイムマシンの設計図やら知り合いの天才やら、あとは極めつけにその口調。
そうかこの人、超の未来側直接の関係者確定か…………。名前とか若干キャラが被ってるの、どうにかならなかったのかな?