今回から修行編も徐々に徐々に大詰め…
ST189.Kick Back A Happy Days.
「つまり貴様も、あの魔女の被害者ということか。
……トータのことといい、一体どれほど被害をもたらしているのかあの女」
「あの人もあの人で意図なり理由なり、あるいは同情もあると思うでござるよ。あの御仁とて何でもかんでも好き勝手に色々できるような立場にはないようでござるし」
貴様何故庇う、と半眼になるエヴァちゃん……、というかキティちゃんに、私は肩をすくめた。恰好も変装状態から変わらず、チュウベェも術式兵装したままの私なので、このまま正体はバレないで話が進行すればガバはない、はず。そもそも私が変身している「カイン・コーシ」(自称)というような存在が原作にいなかったと言えば居なかったことになるのだが、そのあたりは登場してきていない、語られていないという一点で押し通せばギリギリ回避できるはずだ。
つまり何が言いたいかと言えば……、俺は悪くねェ!?(絶叫)
ぜっさんテラスにて、特にこちらに茶を出すわけでも無く、しかし椅子だけは薦めて対面に座るエヴァちゃんである。面白くなさそうな顔で紅茶を飲み(自分だけ先ほど操られていた人形の一体に紅茶を淹れさせている)、テーブルにおかれたチャチャゼロの前身たる人形を半眼で睨んだりしながら、こちらと対話していた。
まあ、私の方も事情説明と言いつつ経緯についてはかなり嘘八百そのもので、東の国から来た法術師だの、お師匠とは数年前に弟子入りして世話になっただのという感じで自己紹介。まあ口調がこの、いかにもとってつけたようなござる口調なこともあり、かなり訝し気なエヴァちゃんだ。
なお「ござる」が通じる理由としては、彼女が既に日本語をマスターしていることに由来する。……どうやら「近衛刀太」と正しく会話をしたいがために、ちゃんと外国語のはずの日本語まで師匠から教わるようにしているらしい。そう「第四の目」で視えた。う~ん、伊達に原作ヒロインではない健気さである(他人事)。
「で、お嬢ちゃんはどうしてあれほど私に怒りを燃やしたでござるか? あの程度の煽り、女子トークなら普通でござろう、普通で。実際問題彼氏ではないと?」
「そんな暇もないわたわけッ! 告白まがいのことを言われはしたが、事情があるのだ……。
大体、女子トークとか言うが貴様、男だろう。
女でもない相手からあんな煽りをかまされて怒りに燃えない女子はいないぞ」
「女子ねぇ……」
「…………何か言いたいことがありそうな顔だな? ほほう。
言ってみろ、私は寛容な吸血鬼だからな。
貴様のような得体の知れない相手の軽口一つで激昂することなど――――」
「実年齢換算だと充分ババアでは?(直球)」
「貴様ァー!?」
初手煽りは基(以下略)。
別に敵対している訳ではないが、冷静な判断力で私を観察されると、私自身気づいていない近衛刀太との類似点を見出されて、「やっぱりお前トータだろ」と言われかねない気がする。故にこうしてキャラクターの類似性をとことん遠ざけることで、彼女の私に対する認識をもっとフワフワ苛立たせて、イメージを重ねさせないようにしているのだ。
今までのガバ具合から考えれば、このくらいの警戒は当然といえた。……まあこれはこれで、事情のおおよそ以上を知る当事者としては、ちょっと心が痛まないではないが、お互いにとってこれは大事なことだ。
私と彼女は出会わなかった――――誰が何と言おうと、これが全てなのだ。そうでないと「原作」にも多大な影響を与えそうだし当然だよ(便乗)。
まあそれはそうと、年齢いじりにかんしてはお師匠にも引っ掛かるのでそのあたりは彼女が今の所この場に居なくて良かったと言うべきなのだが――――――――。
「――――アンタくらいに言われても大したことはないし、そもそも年齢で言えばババアとかそういう次元ですらないからねェ」
「はい? な、何とォ!?」
「ぎょええっ!」
そして噂をすれば影ではないが、当然のような顔をして生えて来た師匠である。私とキティちゃんそれぞれの背後にぬっとあらわれた師匠は、私には肩を、キティちゃんは頭を掴んでわしわしと力を入れてこの場に拘束しているので、逃げるに逃げられない。いや、本気になればなんだかんだと私は逃げられそうだが、そこまでして逃げたところで結局「遠近法や錯視を応用して」色々なんやかんやとやられそうなので(適当)、抵抗にあまり意味を感じられないと言うべきか。
はてさて。私を一目見た師匠は「嗚呼そういう風に誤魔化したか」とぼそっと呟いているので、もちろん正体は一発で看破されているのだろうが。それはそうとキティちゃんの喚き声は「ぎょええええ」で良いのだろうか。ギャグ描写的にはアリだがヒロインとしてはキリヱ並みに汚ぇ……(率直)。
「まあそこの
「何故なまった貴様……?
いやそんなことはどうでも良い、今日もどうせトータには会えないのだから再確認するのは性格が悪いだろう、貴様」
「そうかいそうかい」
呆れたように顔をそらして「ハッ」と鼻で笑う師匠に「何だそのリアクションは!」とキレるキティちゃんは
「まぁアンタについちゃおおむね、あっちのアタシが対応しているからねぇ。あんまり言うことはないんだが……」
「頭の中をナチュラルに読まないでほしいものでござるな…………」
「貴様もそれをやられるのか……」
キティちゃんから同情の視線が送られてくるが、それについては軽く流すとして。
「まあどっちかといえば、果心居士よりもアンタだよキティ。トータのやったアレを自力で再現しようとして色々手をこまねいているみたいだが、結局発動原理についちゃまだ全然わかっていないだろうに。百歳より若い吸血鬼にしちゃ頑張っているが」
「それについては私の問題というよりも、貴様が延々と邪魔するからだろうがっ」
「あのくらい邪魔の範疇には入らないよ。というより『殺されながら』術の研究をするくらいの余裕がなければまだまだ吸血鬼として完成度が低いと言わざるを得ないさ」
あの技、というあたりで予想は付いていたが「第四の目」越しにキティちゃんの思考を見て確信した。原作8巻における近衛刀太がキティちゃんを庇った際、師匠の空間制御魔術を太陰道で吸収し跳ね返した、あの一連の流れの映像……、間違いなくこのエヴァちゃんは、あそこから自らの
ついでにお師匠の邪魔というのは、影操術を使ってのアイアンメイデン処刑めいた所業に数日間さらすようなものだったりするようだ。こうしてみると彼女が師匠を毛嫌いする理由は妥当な気もするし、エヴァちゃんが大分お師匠よりも優しい修行をつけてくれているものだと、熊本時代のことを思い出して意識が遠のきそうだ。
「まあキティ、アンタもいいかげんストレスが溜まっているころだと思ってねぇ。そこで修行も、数段階ステップアップしようと考えたのさ」
「ステップアップだと?
冗談も休み休み言え貴様、普段から私の修行は3ステップ飛ばしと言っているだろうがっ!
これ以上何をすっ飛ばせば気が済むと言うのだ、いい加減グレるぞ!」
「元々グレているのではござらぬか?(煽)」
「初対面のくせに馴れ馴れしいぞ貴様ーッ!」
キレながら氷の矢を無詠唱で放ってくるエヴァちゃんのキレ芸(煽)については、例によって自動迎撃を使う。今回は黒棒を使うとそれこそ普段通りになってしまいそうなので、血装した手先から軽くムチのようなものを伸ばして、雑に切って捨てておく。
こっちが余裕そうに対応したのを見て「ぐぬぬ……!」と頬を赤くしてイライラしているが、こちらは素知らぬ顔でお師匠の方を見ることにした。相手にしていないというこちらへのヘイトはお師匠へ擦り付けよう、どうせこの後ロクな目に遭わないのだろうし。
『いや、そういうのが相棒って命取りになるんだからさ……。変なところで開き直るのを少し止めた方がいいんじゃないだろうか』
そして私の内側から、大河内さんボイスでツッコミを入れてくる星月の一言に、内心で膝をついて絶望が背中にのしかかった。い、いや、だってこれ私のミッションでいえば原作刀太に観測されなければ問題はないわけで、だったらばせいぜいキティちゃんからは微妙な印象で忘れ去られるのが一番簡単な対処になる訳で。
「そんなインパクト残して忘れ去られると思っている方がどうかしているが……。
まあそれは置いておくとして。そんな健気で一途で色々足りないキティには、これの出番さ」
胸の谷間(から思いっきり真っ暗な闇が覗いていた)に手を突っ込んで色々まさぐったお師匠であるが、そこから取り出したものはひもで縛られた紙束。「ヱヴァンジェリン・アナスタシア・キテヰ・マクダウェル 闇の魔法 構造解説書」と書かれたそれは、あー、うーん、私の脳裏に原作9巻のエピソード群がわんさかわんさか出てくるので、まあそう違いはない展開になるのだろう。というか、割と最近読み直した直後なので、いかに比率が7:3で
何なのだそれは、という当然のキティちゃんの一言。半眼で胡散臭そうなものを見る目であるが、師匠は特にテンションも変わらず解説する。
「文字通り、これを読めば闇の魔法の構造や原理を理解できるっていう代物さ。徹夜で書いたんだから感謝しな」
「なん、だと!? そんなお手軽な……。
というか、明らかにテキトーに書きなぐってるだろダーナ貴様、そんな雑な紙を読むだけで理解などできる訳が――――」
「いやぁ、実際できるはずでござるよ」
「カイン・コーシ!?」
原作ではこのあたり濁されていたが、お師匠の持つそのアイテムは実際問題「数多くの並行次元を観測する」狭間の魔女ダーナが一筆したためた書類である。つまりは、最低限表題に書かれたことは達成できる代物に違いはあるまい。原作でも三太が「水無瀬小夜子からの霊界メッセージ」と題されたそれを読み、その後特に師匠に突っかかっていなかったことからもそれは明らかだ。文句を言う必要もない……、つまり、書類は本物であるということだろう。
そんな私の擁護に機嫌を良くしたのか、ニヤリと笑った師匠はもう一冊、書物を取り出す。
「そうそう、アンタにはこういうのを用意した」
「…………『星月のヒ・ミ・ツ♡』、だと?」
『ちょっとダーナさ――――――――――――――――んッ!?』
カイン・コーシではなく果心居士と書かれていたが、私の方の書類は「果心居士 乙女星月のヒ・ミ・ツ♡」とか題された何やら如何わしそうなタイトルである。キティちゃんが「誰だそれ」みたいな目でこちらを見てくるが、そんなことはどうでも良いと言っていいレベルだ。
明らかにその、おそらく今後のイベントぶっ壊し確定の書類な気がするんですがそれは…………。星月が完全にアキラさんのテンションで、私の中でのたうち回っているのが聞こえるし、おそらく本当に彼女の秘密が色々書かれているやつなのだろう。
うむ……、メタ読みすると、さては逆説的に読ませる気ないな師匠?
こちらの内心に肩をすくめた師匠は、そのまま原作のノリで書類を箱詰めして封をすると、城の外へとオーバースローで投げる。投げた箱は途中から明らかに急加速してあっという間にこの領域よりもはるか彼方へと送り出され、そのまま急降下していった。
うおおおおおおおおおぃ!? とキティちゃんが目を真ん丸にして絶叫し、放物線を高速で描く箱の軌跡を目で追って跪いてる。可愛い。
「この下には巨大な廃城が広がっていて、凶悪な魔物が徘徊している。ここからさっきの箱のありかを探し出すのが、アンタたちの課題だ。
これをクリアすれば、一段階上のバケモノとして胸を張れるようになるだろうさ」
「なるだろうさ、ではないわっ!
というよりもアンタたちだと? この男と一緒に探すということか……?」
えぇ、みたいな嫌そうな目をしてくるキティちゃんである。うむ……、現状、もしかすると「不死身の化け物」としての完成度は並んでいる疑惑もあるので、ちょっとからかい甲斐があって面白いのだが、その分色々と苦手意識を持たれているのか、嫌われているのか。いや、最低限話を聞くくらいの好感度はあるはずなので、ここは気楽に構えておこう。
「つまり、一緒に飛び降りて仲良く捜索しろと言う事でござるか」
「一体いつ、アタシが協力しろなんて言ったかい。早いもの勝ちだよ」
ルールについては原作の修行編通りらしいというのを確認して、いざ頭の中でそのあたりのエピソードを振り返ろうと思った矢先である。
キティちゃんがこちらに斬りかかろうとしているのを瞬間的に把握したので、間合いの問題から黒棒を抜いて自動迎撃。そのまま鍔迫り合いとなった私とキティちゃんだが、そのまま押し切られたり魔法を追加されたりすることもなく、ぐぬぬ、と言う顔で押し込み切れていない。……よく見ると「処刑者の剣」ではなく爪を鋭く伸ばした剣のようなものになっているので、このあたりはまだ修得している魔法の数が少ないということか。なんだかこう、吸血鬼「らしい」様子で、カアちゃんの子供としては新鮮な気分である。
「血気盛んでござるなぁ……。理由を聞くでござるが?」
「ハッ! 知れたことだ。
貴様など顔見知りでも何でもない相手に、私がいざ強くなる術を奪われることなどたまったものではない。
協力するルールでないということは、少しでも足止めした方が有利になると言うことだ」
「だから
「貴様本当に殺すぞ!?
今にみてろ貴様ァ!」
初手煽りは基本(以下略)。
相対的に見て死ぬことだけはないので、そのあたりは安心して煽れる。というより、煽り続けることで私と刀太とを同一存在と見ないように調整するのに必死というのが事実なのだが、それはそうとキティちゃんとこうして気兼ねなく触れ合えるという経験は、実際に出来るとは思っていなかったので少しだけ楽しんでいる部分がないとは言い切れなかった。
まあ、それにしては接し方がだいぶ拗れてはいるのだが…………。なんとなく脳裏で夏凜が「女の子をいぢめて遊ぶのが好きなのですか。ふうん……」とか言いつつどこからかバニーガールなスーツを取り出す映像が過ったので、そろそろ止めにしておこう。多分実際の夏凜はそういう振る舞いはしないはずだが、そもそも何故バニーガールだ。アキラさんと接した時間がそこそこ長かったせいだろうか。学園祭編で無理やり着せられててこう、大分色々ぐっと来るものがあった。それはそうと、そろそろ夏凜の意外と愛らしい声が恋しくなる気がしないでもない。
……指輪、責任、うっ頭が…………ッ!?
「ど、どうした貴様、急に頭を抱えて……?」
「いちいち気にしていたら身が持たないよ、そこの女たらしについては。
さて……、じゃあお前たちは、地道に歩いてこの広大な大地からあの古城を目指してもらうとしよう」
そう言うとお師匠はすぐさま私たちの腹部を殴り飛ばす。それと同時に全身の摩擦やら慣性やら色々な力学系が崩壊し、猛烈な速度でそれぞれ後方へ打ち出された。
うーむ、直近でこれに近いことはされているので今回は「背部から腕を出して」投げられるオチかと思ったのだが……。痛みはそんなになく身体損壊もないのが救いと言えば救いだが、あまり隙を見せるとキティちゃんに避けられるというのがこの方法で射出した理由の一つだろうか。
「――――物分かりが良すぎてむしろ面倒だねぇトータ。まぁ良い。アンタも理解しているだろうが、500キロメートルの目的地まで約十分。以前アンタがキティに九州から打ち出された時のアレよりはマシな空の旅のはずさ」
「遠方でも普通に会話成立させるのは流石師匠っスね……」
「いや、キティの方は念話を送ってるからねぇ。両方とも念話したら混線して、ガバを引き起こしかねないから、これくらいの手間はとるさ。アンタと違ってアタシもそれくらいは気を配るんだよ。もうちょっと慎重になりな」
「アッハイ……(白旗)」
そして、特に何かをしているわけでもなく周囲に誰の気配も感じないのに、声だけ届けてこちらと会話を試みる辺りは流石師匠だ。テレパシーのような方法も取らず「物理的に」師匠の声が聞こえるので、割と意味不明な現象である。
これに近いことはスラムの時、甚兵衛がやっていた記憶があるが、おそらくそれよりも高度というか超長距離での使用なので、深く考えると正気がどうにかなりそうな話だった。
※ ※ ※
改めて振り返るならば、「UQ HOLDER!」の7、8巻というのは、ひとえに刀太とエヴァンジェリンの関係性の巻でもある。刀太→エヴァンジェリンの形を確定させるために描かれたのが該当巻であり、ある種の二次創作にありがちな過去干渉と言う形を利用して、両者の関係を決定づけるというのがここに該当するのだ。元々「ネギま!」を始めそれ以前の作風からオタク的価値観を前提としているストーリー作りが根底にあるのだが、ある意味でそれを逆手に取った流れで、エヴァンジェリンを「ネギま!」のエヴァンジェリンから「UQ HOLDER!」のキティちゃんへと移行させる意味合いも大きかったのだろう。
さて。そこにおけるイベントとしては、以前も振り返った気がするがおおよそ二つ。刀太の修行と、エヴァンジェリンとの関係とになる。今回師匠がキティちゃんと私に課したことになっている、この「~の書」を探せ! 的な課題は、その両方の大詰め的なイベントに他ならない。
キティちゃんが私に襲い掛かった流れについてもそうだが、「過去の」キティちゃんと「未来の」刀太との時間的な距離は、交わる周期がどんどん離れていく。以前エヴァちゃんが言った通り、おおよそそういった周期で期間が引き離されており、私が降り立ったのが以前、直に目撃してしまったあれの40年後だろう。
そんな彼女が書置きしたメッセージ。40年後のタイミングで刀太が出会う事の出来なかったエヴァンジェリンについて、次は287年後=4日後に会って欲しいだけメッセージを残していたのだ。
原作においては、そのまま師匠から今我々が受けているような課題を出され、約2週間程度のその期間を無理やり4日に短縮して達成しろというものとなっていた。
こちらにおいては事情が違うので、九郎丸達は果たして受けているのかいないのか……。いやしかし、原作で出会えなかったという事情を鑑みて。もうこの時点でキティちゃんは城を出て下界に降り立っているのかと思ったのだが。どうやらそれについては予想が外れたらしい。というよりも、普通にその気にならないフリして待ち望んでいたのは視えてしまっているので、色々いたたまれない気もない訳ではないのだが。
叩き落された砂浜にて原作を脳裏に描いて振り返っている私に、師匠は告げる。……例によって声だけで。
「キティはこのままいけば、2週間目標なこの課題を3日で解いちまうだろう。アンタにしてみればカンニングしてるようなものっていうのも差し引いて、1日か1日半くらいかねぇ?」
「正直その、上位精霊とか出て来ても
「それだけ人外としての完成度が極まってるってことだが、今回ばかりはむしろちょっと頂けやしない。今の、つまりトータとの再会を
「あの……、精神はともかく肉体は当人なんですがそれは……?(震え声)」
いや近衛刀太たるこの神楽坂菊千代の手で、つまり少なくとも肉体的にはキティちゃんが再会を望んでいるだろう人間である私に、自らキティちゃんの希望たるそれを打ち砕けと。人間じゃねぇ!? と言ってしまいたいが、実際人間ではないのであまり意味のない罵倒だ。
というよりも、腰に差し直した黒棒はともかく、血装が解けた時に出て来たチュウベェが「ふみゅー!」とか言いながら師匠の声に警戒しているのは、一体何をやらかしたんですかねお師匠コイツにさぁ。しつけか何かしたって感じじゃなくて、完全に天敵と言うか、捕食者を見るような目してるんだよなぁ……。なお思考は「恐怖」の二文字で塗りつぶされている。
「吸血鬼としての完成度を上げるのに、今のあの子には下手な希望と、それがすぐ終わってしまう絶望なんてもので、精神を揺さぶられる方がはっきり言って迷惑なんだよ。抑うつとはいわないが、ある程度のところで安定したまま地力を上げなければ、最後に待ち受けるのは『裏切られ続けた末の絶望による自殺』だけさ。そろそろここを出す以上、そっちのフォローにアタシが回る必要もあるからねぇ。
それくらい本来、キティが人恋しい性格なのはアンタも察しがついているだろう?」
「…………」
「だから、最低でも日数を
この時間に来ているついでって訳でもないが。それを達成したならアタシが出来る範囲で何でも一つ、アンタの願いをかなえてやろうじゃないか。キクチヨ」
そしてどうやら、私に与えられたミッションというのは……。私自身の手で原作通りに進行させるために、この時空におけるキティちゃんに対するラスボスになれというようなことらしかった。
……あのーお師匠、文句を言う訳ではないんですが、人の心無さすぎなのでは?(困惑)
というか何と言うか、巡り合わせ的に本当、キティちゃんとの相性が悪すぎるのはどうにかなりませんかねぇ。