投稿遅れ言い訳じゃないんですが、甚兵衛をぎっくり腰にしたせいか、私もぎっくり腰になるという・・・(でも書きはする)
割と黒棒周りとか、原作で言及されない箇所は個人解釈となります汗
ST19.Hobbyist Foederatio
「そうか、速度特化にしたのか。
まぁ再生は疲れるし、面倒と言えば面倒だからな。半自動とはいえ。
しかし、何もそういう所の感性まで似なくても良いと思うんだが……」
「あー、で話題変わるんだけどさ。ちょっと相談あって」
「どうした? お
コーヒー片手に紙資料をめくりながら、雪姫は半眼でニヤリと私に微笑んだ。
早朝、朝食も適当にして。試験の結果がどうなったかを聞きに行くのと、後別件もあり、夏凜に案内されて雪姫のもとに向かった。幅の広い特別客室棟、その上階に雪姫の私室はある。ちなみに最上階ではない。最上階在住がキリヱなのは原作で知ってるのだが、そこのところも気になって、おはよう早々に理由を聞いてみた。相手の名前については言及しなかったものの、『甚兵衛が居ない間の一部業務の指揮やら、金銭面で負担をしてもらっていたようだしな。それに、そんなに狭量ではない』とのこと。
まあ試験結果については当然のような口ぶりで合格だぞと笑われた。期間内でクリアできたのもそうだったが、あの甚兵衛をぎっくり腰にしたというのが意外と周囲から評価されたらしい。どういう方法をとったのかと言われたので、
「――――雪姫様、九郎丸を連れてきました」
「し、失礼します!」
遅れて、夏凜に案内されて九郎丸が来ていた。…………いやちょっと待て。服装を思わず二度見してしまった私のリアクションに決しておかしなところはあるまい。雪姫も同様らしく、九郎丸の恰好を見て大笑いしていた。状況が呑み込めていない九郎丸、おそらく仕立て人だろう無言首肯の夏凜。流石に言わないとはアレかと思い、私が九郎丸に指摘した。
「お前、たぶん寝ぼけたまま来たんだろうから一応な? 服装」
「へ? …………あっな、何で!?」
思わず自分の身体を抱きしめるしぐさが完全に女の子のそれだが、しかし見た目上の違和感は普段以上にない。夏凜同様、和装風な使用人の恰好で、要するに和風メイドじみた服装をしているのだ。つまり当然女物。似合っているし可愛らしいし、そういえば原作ではついぞ見なかった恰好だ。
何故着込むまで気づかなかったというのは野暮だろうか。後、無言で何度も首肯を繰り返し納得している夏凜が怪しいどころではなく真犯人確定だった。
「いや夏凜ちゃんさんも、何遊んでるんスか」
「似合うかと思いましたので。それにしても、ぼんやりしていたとはいえ手渡してからここに来るまで本人が違和感を覚えなかったことは、逆に違和感があります」
「九郎丸、割と勢いと押しに弱い所あるからなぁ……」
とはいえ真実は、もはやそこに疑問を抱けないような本人の気質が根底にあるということなんだろうが……? いや、何か見落としているような感じがするが、深掘りするための情報が足りていない。これは、私が気絶している間に何かあったのだろうか。
ちなみに九郎丸が来た理由は、正式に組織に所属した初日だからという事でのあいさつだった。律義な……。
「律義な……」
あ、雪姫と感想が被った。
会話を一度切ると、雪姫が私の相談事に話を戻した。夏凜、九郎丸の視線が私に向くが、そう大したことではない……、はずである。背負っていた黒棒を
「これ何とかなんね? 錆びてるのか知らねーけど、全然斬れねーんだわ」
「これは…………、嗚呼、タカミチとかが使っていた奴だな。そうか、甚兵衛がお前に渡したのか……」
タカミチ? と首をかしげる私たちに、昔の話だと雪姫は肩をすくめた。いやまぁ、私個人のみで言えば誰かわかっているが、むしろ困惑より驚愕が勝る。
タカミチ・T・高畑。ネギま! 時代の麻帆良学園教師であり、ネギぼーずの先輩、先達。その立場は色々な側面もあるのでスルーするが、咸卦法――高度の「気」と「魔力」の運用による技術――を極めた武術の達人であり、エヴァやクウネルたちとは旧知の仲でもある。
そんなタカミチが使っていたとか、その情報、原作で出てたものではないのだから私としてはコメントに困る他ない。……いや、確かに黒棒が作られた経緯から考えてタカミチが使っても何ら不思議はないのだが、彼はそもそも無手での戦闘に相当特化していたはずだ。黒棒を手に戦う絵面というのがどうにも想像できないのだが……。
私の手から黒棒を渡されると、ふむ、と雪姫がハンカチで血塊を払い、少し振り回した。
「あー、なるほど、こういう構造をしてたのか。
……斬れなくて問題はないぞ? 刀太。もともと、コイツはこういう武器だ」
「へ?」
「つまり切れ味で物を切断するのではなく、質量で物を叩き切る武器ということだ。
もっと言ってしまえば、重い木刀を高速で動かして物を切断するイメージが近いか……。
外見は東洋の刀のくせに、設計理念としては西洋の剣みたいな作りになってる訳だ。……このひねくれ具合、明らかにヤツのせいだな。お前も色々大変だろう」
『痛み入る』
ぼそ、とつぶやかれた黒棒の声に、一瞬驚いた顔をする夏凜と、いい加減「もしかして……」という目を向ける九郎丸。私は苦笑いする他ないが、絶対こいつそのうち臆面もなくよくしゃべる奴になるだろ……。
しかし納得だ、黒棒は棒だった訳だ(暴論)。そういえば原作でも鞘らしい鞘もなく
「とは言え、別に切断能力自体も問題にならんだろう。そもそもコイツ本来の使い方は重力操作じゃなく、………………ん? うん? まだ言わない方が良いか。そうだな、ステップアップしていった方が無難か」
オイ待て、原作でも言及されてないような話をいきなりブッ込んでくるな、ただでさえガバガバな速度極振りチャートなのにこれ以上何を累積させようとする気だお前ら! 原作が牙をむいてくるこの人生よ、一体どうしたらいいんスかね師匠。(声なき声) (???「せいぜい今のうちだけ気楽に踊っておきな」)
「錆が問題ないとは言え、実際久々に娑婆の空気に晒したんだから、メンテナンスくらいしてやれ。意味は、わかるな?」
「と、刀太君、刀の整備方法なら僕、教えられるよ! 僕の『夕凪』だって――」
「いや、そうは言ってもコイツ、分解しようにもそういうの出来る構造になってないし。正直どうしたら良いかわかんねーんだけど…………」
「じゃあ一空にでも相談しておけ。奴自身、自分用の研ぎ機くらいは用意してあるだろ」
後半の言いぶりも、私に投げて渡したところもそうだが、急に黒棒の扱いが投げやりになった。……いや、どうも小声で雪姫とやりとりしていた時に顔を少ししかめさせていたから、からかいでもしたのか。全く、そういうムーブを発揮するからお前は
その後、部屋を出てからずっと夏凜に案内されるまま、全体の施設を紹介されている私たちである。道中で一空と遭遇するだろうと、ついでとばかりにオリエンテーリングといった塩梅だ。なお朝食は甚兵衛が働いているコンビニで軽く購入と言う流れだった。「よ!」と相変わらず気さくに手を挙げてくるものの、未だに杖をついてる彼の姿に変な哀愁があった。
「ありがとうございます、夏凜先輩」
「先輩……? あー、じゃあ、俺も夏凜ちゃん先輩って呼んで良いッスか?」
「どうしてもちゃんは外したくない拘りでもあるのかしら貴方……。いえ、そういうのはもうちょっと、職場に馴染んできてからにしなさい」
「了解ッス、夏凜先輩」
一瞬九郎丸が「ちゃん付け……?」と味のある顔を浮かべた気がするが、きっと気のせいだ。……いや、羞恥の視線に耐えられなかったのか早々に長ランに着替え直していたのだが、それならそれでその変なリアクション止めとけお前。(戒め)
ちなみに夏凜の話を聞く限りしばらく私と九郎丸は、旅館では彼女の小間使いのような仕事を任されるらしい。この感じだと原作初期通りに、単純な雑用による下積み時代になるのだろうか。不死身衆としての私や九郎丸の立場は、幹部級用心棒、と言いはしたが幹部とは言っていないのがミソである。要するに、幹部がこなすような大仕事をこなせないのなら中々心もとない扱いなのだ。
せめて時給は200円は切らないで欲しいところである。
「娯楽施設は営業時間外に定額まで使いたい放題ですが、何かやりたいことでも?」
「いや、単にモノ買いたいっていうか、練習したいというか。珈琲自分でちゃんとそれっぽく淹れられるように拘りてーだけっスよ」
「刀太くん、淹れるの上手いよね結構」
「なるほど……。なら早いうちに待遇上昇できるよう相談をしましょう」
言いながら私の頭を撫でる夏凜。……いや、もうこの距離感についてはコメントの仕様がないのだが、隣でやきもきした顔してる九郎丸は何なのだ。その、嫉妬してる内心があるような、でも僕は男だからそんな想いを抱くのはおかしいし、みたいな葛藤をしているような雰囲気は。どう見ても乙女のそれだと指摘するのは簡単だが、私も真綿で自分の首を絞める趣味は無いので、苦笑い一つである。
そんなこんなで庭先と言ったらいいか、日中は子供たちが遊んでいる外の広場で、何やら話し込んでいる二人の姿が見えた。一人はシルエット的に源五郎パイセンだが、もう一人は……。
「あれが、
「はぁ…………」
「……何を驚いているのですか? 刀太」
「いや、何でもないッスけど」
その正体を知る身としては、にこにこ微笑みながら源五郎パイセンと談笑してる白衣の青年に、驚きを禁じ得ない。なにせあの肉体は原作通りなら全身ロボット、その精神は広大なネットを中継して本体である肉体から動かしている状況にある。
つまり外見上そこらに居てもおかしくないイケメン兄ちゃんと言わんばかりの容貌は、すべて人工物なのだ。にもかかわらず表情の取り方、動き一つにおいて違和感、いわゆる「不気味の谷」が発生していない。
中身が本物の人間であることも大きな理由だが、現代技術の進歩具合に改めて驚かされる。本当、知らない場所に生まれ直してしまったのだと少しだけ気が滅入った。……それを察してか夏凜がまた頭撫でてくるが、今はされるがままにさせてもらおう。
「ん? あー、刀太君だっけ。君、起きたんだ! 合格おめでと!」
「おはよう三人とも……、ふむ、また何かフラグでも立てたのかい?」
フラグ? とよくわかってない九郎丸と夏凜はともかく。明らかに両者の顔を見比べた上で私の顔を見て肩をすくめている源五郎パイセン。……いや、流石に転生者というか憑依者というかまではバレてないだろうが、少なくとも「そのテの話が通じる」相手だとは認識されているらしい。苦笑いを浮かべる私に、「ご愁傷様だね」と皮肉なんだか労わられてるんだかわからない一言が投げられた。
一空と初対面な私だが、九郎丸は昨日の内に出会っているらしい。どうも話を聞く限り、気絶こそしていたがほぼ原作通りなやりとりがあったらしく、私の顔通し自体も既に終わっているとか何とか。つまりあの場に一空もいたのだろう。
展開上そう差異がないなら、特大のガバとかはなさそうだし一安心である。 (???「そうだね、その後誰がお前を運ぶかで女二人で取り合いになって、キティが結局運んだやりとりさえなけりゃあね」)
「刀剣とか刃物系のメンテナンスか……、ちょっと間が悪かったね。今丁度、その関係の機械をメンテナンスに出しているところでさ。銃火器ならいくつか用意があったけど、そういう訳じゃないんでしょ?」
「銃火器か……、興味はあるッスけど、戦闘スタイル的に無理があるッスね。マジで興味はあるんスけど」
「カッコイイからかい?」
秒置かず反射での首肯。
「カッコイイからッスね」
「なら仕方ない」
「うん、大事なことだね」
私、一空、源五郎パイセンの間に
一瞬、二丁拳銃で死天化壮をした私が
と、「か、刀だって恰好良いよ刀太君!」とか私の肩を押さえて身を乗り出してくる九郎丸。お前も大概距離感おかしいが、そういえばこっちもそのうち雪姫に相談しないといけないか……。
「そうだ、その話だったら刀太君。少し時間をもらえると嬉しいんだが」
「時間? って何を……」
「――――甚兵衛さんは僕にとって師匠みたいな人でね。だから、彼が痛手を負うまで戦い続けられた君のファイトスタイルに、ちょっと興味がわいた」
一試合してくれないかな、と。非常に楽し気に、どこからか取り出した日本刀を構えた。メンバー間での私闘は、確か原作だと禁止されていたような……? いや、練習試合、というより訓練程度なら大丈夫という判断か。
大体原作の場合は
一瞬「何か?」と含みのある視線を私によこしてくる夏凜の勘の良さはともかく、私もさっきの連帯感から、練習試合をすること自体に異論はなかった。
※ ※ ※
「では、私は九郎丸の方を見ましょう。考えてみれば、変な因縁が付いたままでしたし、親睦を深める意味でも……」
「あ、その、夏凜先輩。僕もその、相談みたいなのがあって……」
「……ん? そうですか。では一度場を外しますか」
夏凜先輩はそう言いながら、刀太君たちに少し移動する旨の話を伝えた。そのまま本館の裏庭側と言ったらいいのか、表よりも狭い庭の方に案内された。
「さて、ここなら誰も居ませんから。思う存分に話しましょうか。女同士」
思わずズっこけた。
「お、女同士!? い、いえ違います、僕は男だから!」
「今更隠さなくても良いでしょう。何、肩の幅から腰の括れ方や初対面から今日その日まで完全に同性であるのは察しております。本当ならタコ部屋みたいに貴女と刀太が同室になるところを、乙女的に厳しいだろうと気を利かせて部屋を分けた程度には。
とはいえ隣の部屋になってしまったのはあきらめてください。生活音がお互いに聞こえてしまうのは―――」
「あれ、夏凜さんがそう言ったんだ……、って、そ、そういう話じゃなくて! いや別に生活音程度で何も気になりませんて!」
「本当に? 神に誓って?」
「なんでそんな無表情で迫ってくるんですか!?」
「あら? いえ、私もよくわからないのだけれど……」
なんでか妙に疲れさせられて、思わずぜいぜいと肩で息をする。夏凜さんは無表情ながらにやっと口元が動いていた。揶揄われてるんだろうか、まったく……。変な汗が出て来るのと、意味が解らないけど顔が熱くなるんで、本当、止めて欲しい。
「まあそれはともかく。女同士の話でないのだとすると、一体何を聞きたいので? てっきり私が刀太とべたべたしてるのに不満でもあるのかと思ったんですが」
自覚あったんだ……って、そういう話じゃなく。いや、それも気になってはいるけど、そっちよりも!
「その、僕の不死身に関係することなんですけど…………、甚兵衛さんからアドバイスがあって、それをどうしたものかなって」
「そういう話ですか。……良いでしょう。とはいえどこまで力になれるかわかりませんが」
腕を組みながら優し気に微笑む夏凜先輩に、僕は自分の不死身の根幹―――― 一族の秘奥について、かみ砕いて説明を始めた。