今回久々にキクチヨのテンションが中二らしい意味で高い……!
ST191.Kick Back A Peaceful Days.
「く、くそぅ、何なのだあの精霊はッ!
詠唱破棄で突破できないではないか、リク・ラク・ラ・ラック・ライラック――――」
『――――言っておくが、我は四大守護精霊の中でも三番手。まだまだ上がいるぞ』
「をのれっ!?」
一瞬で間合いを詰めてこちらに攻撃してくる火の上位精霊。
長い尾に人ならざるシルエット、巨漢たるその頭部には悪魔のような角二つ。
確かあの魔女の所で見た記憶がある、名はアギトゥ・シャマッシュだったか……、この上位精霊相手に私は小癪なことに苦戦していた。
この陸地に落とされてからすぐさま、簡易に作った箒もどきに魔力制御をかけ連日飲み食いも忘れて飛行。
1日かからずに城自体は発見できたが、早々に四体の精霊に捕捉され、連続攻撃を受けた。
あまりに速攻を駆けられたため、すぐさま一度消し炭になった私だった。
くさっても上位精霊、あの魔女の配下となっているとはいえその強さは今の私のレベルを超えている。
少し距離を置いてから再生し、対策を練った私だった。
やるのなら各個撃破……、全員に襲い掛かられればまた元の木阿弥だ。
作戦としては、手始めに属性が優位な相手から潰す。
私は主に氷系統の魔法を使うが、その延長で水系統にも多少素養がある。
それ故にあえて、あの火の精霊、魔人のような姿をした奴を発見し次第、すぐさま挑発とばかりに氷の魔法矢を連射。
こちらに気づいたのをみてから城から離し、遠距離に誘導。
多少なりとも挑発したのが功を奏したのか、あの火の上位精霊は「なんじゃワレェ!」とブチギレながら私を追いかけた。
水場まで飛行して逃走した甲斐もあり、海辺にてあの精霊を迎え撃つ流れ。
これならば多少なりとも何とかなるだろうと考えていたが、見通しが甘かったらしい。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック――――。
――――
『獄炎!』
わざわざ詠唱して安定性と威力を上げたと言うに、降り注ぐ氷の雨の刃を腕の一振りで溶かし蒸発させる。
見れば奴の足場となっている海面すら、やつが足を置いている場所を中心に沸騰し今にも蒸発しそうである。
ぬかった、観察が足りなかった…………!
あの魔女に言わせれば「後二百年くらいは経験がないと、大体の敵に余裕で対応するの何て無理があるんじゃないかねぇ?」 などと馬鹿にされたことがあったが、否応にでも実力不足を痛感させられる。
このレベル相手に人形など鎧袖一触だろうと考えていたが、その見立ては外れていなかった。
問題は、私すら鎧袖一触であるという事実のみ。
「
『ほう?』
とはいえただで死んではなるものかと、私は簡易に魔法陣を展開する。
いつか見たトータの、あの魔法陣…………、周囲に飛び散った私の焦げた血肉を発動体がわりとし、東洋にある陰陽をもったあの陣を形成。
いまだにあの時のトータのように成功はしていない。
だが大前提となる膨大な魔力…………、「
この場で使うのはつっぶけ本番だが、今度こそ成功しろと念を送りつつ、私は右手を前に差し向け――――――――。
『――――大獄炎!』
「…………っ、やっぱり駄目だったかーッ!?
ぎゃふんっ」
あえなく、奴の拳から放たれる炎を制御・吸収しきれず、そのまま投げ捨てられたヌイグルミのごとく情けない軌道で撥ね飛ばされた。
我ながらなんと情けない…………!
否! そもそも全てはあの魔女が悪いのだろうに!
なんか知らないが突然ヘンな東洋かぶれの
トータのように黒髪ならまだしも、何がしたいのかさっぱりわからぬ。
そんな誰へとも言い難い色々な怒りがうずまいている私の腹の
転がった先で身動きできない私を見下ろし、アギトゥ・シャマッシュは少し悩んだ。
『う~ん…………、このまま殺すのも弱い者いじめのようであるな。いかに吸血鬼相手とはいえ、全火星精霊人気ランキングの投票数的に、幼児を嬲り殺すような絵面はよろしくないのだが』
「だだ、誰が幼児かッ!?
と言うか何だそれ、ランキング!!? 貴様ら一体何だその軟派な催しはッ」
『いや、中々重要であるぞ? 自然霊から派生した精霊に限らず、妖魔の中にも準精霊クラスの存在もいるのだから、それにプラスして「人間の信仰」こそが、我らのパワーアップ要素なのだから』
「知らぬわっ!」
知らぬ知らぬ、何を言っているのかコイツはっ。
だがその「人気」というか「人間の信仰」によってパワーアップするというその話自体は、納得がいくところがあるが。
…………ん? つまりさっきの口ぶりからして、このアギトゥ・シャマッシュは人気上位の精霊の一体なのか?
『妖魔部門では、意外と
そうだな。ならば絵面として格好良く締めるため、一瞬で塵とするにしよう――――ではまたの挑戦を待っている』
そう言うと奴は両腕をかかげ。その手に先ほどの獄炎といった炎を集め。
それを私ではなく地面めがけて叩きつけ――――。
気が付くと、私の目の前にあのカイン・コーシなる悪魔が立っていた。
特に何も変わらず、あの趣味の悪い東洋かぶれの恰好のまま。
「……何?」
「中々悪くないタイミングでござらぬか?」
『――――奈落獄炎!』
そんな奴などおかまいなく、アギトゥ・シャマッシュは圧縮された炎の球を地面めがけて放ち。
そんな奴に、あの妙な杖のようなものを構えたカイン・コーシ。
次の瞬間、アギトゥ・シャマッシュの放った炎が全て奴の杖に「吸い込まれる」。
これには奴も『何、だと!?』と驚いているが、事態はそれだけではない。
傘の下からわずかに覗くオレンジに光っていた髪が一気に水色に変化、それと同時に奴の全身の装束が炎のごとく輝き燃える。
さながら太陽のように、さながら不死鳥のように、なびく
編み笠だけは何故か変わらず…………、そして小脇に血の球を抱えながら。
焼け焦げたような杖を見て、奴はぼそりと呟いた。
「…………
は? 今何と言った、あの悪魔?
よく聞き取れなかったが、まあ大したことは言ってないだろうと言う謎の確信があった。
※ ※ ※
名づけるならそうと呼ぶのが妥当だろうこの装束は、何と言うか見る人が見ればどう見ても
いや、むしろこれは私自身、火属性の方が相性が良いと言うことなのかもしれないが。明らかに
『ごめん、これ突貫で用意したから…………、ちょっと休憩する……』
………………アッハイ、今回も事前の打ち合わせなく急造で術式兵装したからね、そりゃ準備はできていないかマジすいません(全面降伏)。
毎度毎度迷惑をかけ通しなところであるが、このあたりは何と言うかこう、うん…………、報いる部分も何もよくわからないし、正直どうしたらいいかについては後日本人と話し合うことにしよう。
『後、字を宛てるなら
ホントこう、何から何までありがとう…………!(素直)
さて、
とりあえずそんなチュウベェを懐に入れ、血装で作った編み笠越しに目の前の相手を見る。
このビジュアル……、姿形はルイン・イシュクルだったか雷の上位精霊のそれに似ているが、まとっている魔力や色、後この熱量と私の変化からして、火の方の上位精霊だろう。原作において刀太たちに立ちはだかった四大精霊その一つ。……なのだが、実力の程については正直よくわからない。
なにせ原作ではルイン・イシュクル戦がメインであり、その戦闘で術式兵装を刀太がモノにするというのがシナリオの流れ。しかも四大精霊最強が雷のソイツであったせいで、残りの三体はギャグ的に流されてしまったのだ。そこのところは推して知るべしである。
と言う訳で名前すら知らない相手なのだが、そんな火の上位精霊は変化した私の姿を見て一歩後退した。
『面妖な…………、いや、我が炎を身にまとい無力化したか!』
「仕様については初めて故、不明でしかないでござるなぁ」
言いながらとりあえず、焦げたようになっている錫杖な黒棒を構える。絵面としては剣の柄の部分だけそのまま、刀身が錫杖のような形に血装されているのだが、私の趣味の影響だろうかこの黒焦げた色合いは…………。繰り返すが完全に
とりあえず錫杖黒棒を振るってみると、それだけで相手の放っていた熱風熱気と魔力とが「えぐれ」「削り取られ」、真空が生まれたのではと思わせる不気味な静寂が一瞬訪れる。それから程なく轟音が響き、火の上位精霊は彼方までぶっ飛ばされた。
…………
というより何だこのぶっ壊れ性能。攻撃力のみで言えば現状最強形態なのでは? 鎧袖一触どころの騒ぎですらない。
「(血風使ったら多分これ
「……………………」
キティちゃんは、感情を失った能面のような顔で私の姿を見ていた。
あー、うん、「
生憎だが異なる時系列に差しはさまれた「未来」の私と融合し、星月のバックアップもありチュウベェの協力もある以上、現時点の私はキティちゃんよりは完成度の高い不死身の化け物である。これくらいは出来ないと逆に師匠にバラバラにして殺される(直喩)ので、今の状態については特に何も言うまい。
……というより
つとめて夏凜の顔を思い描かないようにしながら、軽い調子でエヴァちゃんに話しかける。……一応炎の出力調整はできるらしく、灼熱だった色合いがガスバーナーのごとく青く完全燃焼した状態になると、物質的な熱量は消え去った。そのまま手を差し伸べ、再生が終わった彼女を立ち上がらせる。
「………………」
「放心しているところ悪いが、逃げるでござるよ?」
「……な、何?
む? 何をする貴様!」
そりゃ逃走でござるよ、とキティちゃんを持ち上げ(お米様だっこ)、脚部に魔力を集中させて内血装を併用した
「ええい離せ!
何をプルプル震えているこの東洋かぶれっ」
「個人的な事情なので、そこはお気になさらず…………」
「訳がわからんっ」
ここに来ていきなりのOSRフィーバーに内心のテンションが荒ぶっている私であった。
「というよりも、貴様のその姿のパワーは何だ!?
何でそのパワーであの場から逃げ出すのだ貴様、そのまま他の精霊たちも倒せば良いではないかッ」
「そうは言うでござるが、流石に雷の上位精霊に勝てる自信はござらぬよ。拙者、雷属性とは相性が悪いでござるからなぁ」
「好き嫌いを聞いている訳ではないわ!」
「真面目な話をするなら、雷速で動かれると目に見えないというのが問題でござるし――――例えばこうやって振ったところで、避けられるでござるよ」
そして会話しながら逃げ去っている私の背後に、音もなく、漫画のコマ送りのような気持ちの悪い出現の仕方で追尾してきている雷の上位精霊めがけて、血風創天を放つ。
錫杖状態なので威力は本来のそれより抑えられてはいるはずだが…………、結果は予想通りとなった。
「は?」
「はい?」
『――――――――む、人間の土俵にござらぬなぁこの威力。オオゥ……』
当たり前のように避けた雷の上位精霊、ルイン・イシュクルであるが。その後方にあった森やら何やらが一瞬で更地になり、なんなら地面すら抉れ、さらに後方の城を裂き、海を割り、地面の底は暗黒で見えずな状態まで深く深くえぐり灰と刻まれた。
あっそうか、血風創天で放って威力が無駄に分散しなかったせいで、
そして試し撃ちにしては環境破壊どころの騒ぎですらない。何やってんだ私!?(震え声) 見ろ、抱えてるエヴァちゃんも思考言動全てが完全に真っ白になってぽかーんとしているぞ。ギャグ調で言えば目を真ん丸にして全身真っ白になってる、原作スカカードめいたおマヌケ(直球)なビジュアルに近い。あっちのルイン・イシュクルもドン引きしている。
ま、まぁ本人はちゃんと予想通り避けたから、結果オーライ(震え声)。
そのままキティちゃんを運搬している間、速度はともかくパワーでは勝ち目がないと見たのか、雷の上位精霊は空中で胡坐をかいて私たちが立ち去るのを見送っていた。
……そして仮拠点として見つけた山小屋の中で。虎のような魔物から作った原始人めいた衣装になっているメイリンが、
「し、心配したよ、キミ! 何か知らないけど、いきなり
上位精霊との戦闘、そんなにひどいのかって……、もう心配で心配で、うぅ…………」
「あぁ…………」
泣いている所申し訳ないのだが、九分九厘私のせいですハイ。
とはいえあそこまでパワーが出るとは思ってなかったのもあり、俺は悪くねェ!? の精神で黙ったままメイリンの好きなようにしばらくさせていた。
ちなみにだがあの破壊された自然環境および城は、翌日には何事もなかったかのように元の状態のままに戻っていた。おそらく師匠が直したのだろうが、やっぱりお師匠しか勝たんね!(信仰)(ダーナ「止めな!? アタシの運気が下がるッ!」)
※易経から火天大有があったので丁度良かったから変更