ST197.As I Sows, So Shall I Reap.
「って、じ、時空の波に飲み込まれた!? それってフツー帰ってこれないやつじゃないのっ! 世界線の座標が混乱しちゃってえらいことになっちゃうじゃない! ちゅーにアンタ大丈夫なの!!?」
キリヱが出した
要するに、時空の狭間に落とされる→その場で帰ってくるまでに色々あって戦闘になったり何だったりして技を覚えたりしつつ、最終的に超に助けられたりして現在に至る、みたいな話だ。下手にメイリンの名前を出すとそれはそれでややこしいし、現在の超には「あの」メイリンも統合されていることだろうから、これに関しては超の名前を出した方が的確だろう。
なお超本人は、追及されど追及されどのらりくらりと回答を躱していたりするので、流石にタイムパラドックス回避のために頑張っていた年季が違うと思わされる。
「でも、そーゆーことね。だったらまあ多少納得がいくんだけど。ああやって分身したりっていうのもそうだけど、私のあのカメラでアンタの死体がいーっぱい撮影できたのって、そういうことでしょ?」
「…………」
「ちゅーに?」
「刀太君?」
何それ知らない、とツッコミを入れたいところだが、まあ心当たりがないと振舞っても問題はない範疇だろう。「実際、分身もけっこう使ったしなぁ」とこの場は誤魔化すことにして、そういった一通りをまとめての先の発言である。思いっきり心配されてしまった。流石に九郎丸共々いたわってこられてどういう顔をしたら良いのかさっぱりだし、ぬーっとこっちに寄って来た三太も三太で軽く事情を話されたりして、困惑していた。
いや、どっちかというと三太が困惑していたのはキリヱの物言いだったのだが。
「つまりはアドレスなのよ。縦軸と横軸って枠で考えたところで、時間の矢印がそうべきレールっていうのはどこかしら外部で人間がわかるように区切ってみれば、つまりはアドレスなのよ。ただ当然、そんなもの時間軸っていう世界線に存在はしないの。だから『なんかテキトーに飲み込まれる』ってなると、自分がどこにいたかっていうのと、自分がどこに飛ばされたかって言うのがわからなくなって、そのまま二度と帰ってこれないってこともあるらしいわ。『意図的に』虚数の座標を設定するとここに迷い込むこともあるらしいけど、ちゅーにってそれどころの話じゃなかったもの」
「わっかんねぇッス」
呆けた三太の感想には激しく同意である。いや、ニュアンスはわかるがそれにしたってかみ砕いてそんな話をしてるあたり、キリヱもキリヱでお師匠の修行の成果が出ていると考えるべきか。九郎丸も九郎丸で「ぼ、僕も頑張らないと……」と焦ったように奮起してる。ふんす、と鼻息を荒げているが、おどおどしている感じからしてこちらの修行の成果はどうも芳しくないらしい。
「そういや三太、水無瀬小夜子ってどこ行ったんだ? たまに見かけるけど、あんまり話せてないっつーか。……いや、別に話すこともそんなにねーけど、せっかくいるんなら、な?」
「小夜子は、あー、時々先輩? とかに引っ張られてるっぽい。『一番新しい福の神』とか言ってたっけ? 新人指導がテキトーで大変だって嘆いてる」
「他にも今の時代から神様になる人なんているの!?」
「い、いやキリヱちゃん、人間だけとは限らないし……」
福の神、福の神……、なんとなく脳裏に椎名桜子の「にぱー」とした笑顔が思い浮かんだが、いや、まさかな。今の「第四の目」に覚醒した状況から考えると、たとえ「ネギま!」繋がりとはいえイメージに浮かんで来ると言うのは、それなりに何かのフラグな気がしないでもない。というか転生してから大体こういう場合ににおわされたものって何かのフラグでしかないので(暴論)、警戒しておくに越したことは無いだろう。
「無駄な努力だねぇ」
「声だけ飛ばしてくるの止めてくれませんかねお師匠(震え声)」
そして私の耳元だけに、お師匠のツッコミの台詞が飛んで来る。例によって空間やら何やらを超越した音声メッセージゆえにか、他の面々には聞こえていないようで私の独り言のように見えていることだろう。
「って、ここまで揃っててカトラスがいねーけど、どうしたんだ?」
「カトラスちゃんは……、あれ? そうだね。どうしたんだろう」
「夜更かししてたから、普通に寝坊じゃないの?」
「女子のことは分からねェ……」
「いやそれで良いのか彼女持ちッ」
私の一言で顔を赤くして、しかし否定もせずあうあう言ってる三太のなんと初々しい事か。キリヱのみならず、九郎丸もちょっとニヤニヤしてからかう姿勢を見せているのが印象的である。
……そして視界の端に「ポイント高いわ! 近衛刀太♪」って思考が過る。「
「ま、そうだな。ちょっと様子見てくるか」
「あれ? メイリンさんも居ないね」
九郎丸のその一言に、ちょっとびくりとなる私である。一瞬「さっきまで居たじゃねーか」とか言いそうになったあたり、なるほどまだまだ超とメイリンとの区分や言い回しの区別は慣れていないと見えた。
「メイリンはメイリンで、ぶっちゃけ何か研究か何かやってんだろうって予想が立つからな。まだカトラスの方が心配っちゃ心配だ」
「心配…………」
「何かあった? あの子」
「いや、手足とか内臓が
「いや、手足とか内臓が生えてって、ウィルス系のゾンビとかじゃねェんだからよ…………」
そういう意図はなかったが、実際言い回しだけをとれば
なお当然のようにネタが通じてるキリヱ大明神は「タイラ〇トとかにならなかったけど、水無瀬小夜子も大概だったじゃないのヨ」とツッコミを入れた。
そんな流れでカトラスのところまで行こうと一歩踏み出した私だったが――――ぬっと、視界一面が真っ黒に染まり、その場に関節を極められて引き倒された。
「って、いきなり何してんスかお師匠!?」
「んー? むしろアタシは今、アンタを救ってやったところなんだがねぇ。『女の子の日』で苦戦してる妹の姿なんざ見るものじゃないだろう、今のアンタは」
「あざーッス!!!(素直)」
「「「なんで感謝したのッ!!?」」」
首だけ「180度」回転させて確保した視界、私の上に座るお師匠は普段のデラックスサイズではなく美女モード、ただしドレッド頭のままなので「背教」時代のそれではないらしい。そしてその物言い、ひょっとしなくてもラッキースケベ的な何かが発生する状況だったというのは容易に察せられるので、私的には感謝一択なのだった。
ハン、とそんな私を鼻で笑うと、お師匠はキリヱ大明神を中心に三者を見回す。
「しかし、何か面白い話をしていたねぇ。時空の波に飲み込まれたとか。それならまだマシだったろうが、桜雨キリヱ、アンタが読んだのは『当事者』側の理屈さ。『観測者』側の理屈を重ね合わせると、時間と空間の捩じれに取り残されて『正常化と同時に』『いなかった状態で再構築され』存在が意味消滅するところさ」
「もっと酷いじゃないのヨッ!? えっ、本当に大丈夫なんでしょうねそこのトータ!」
大丈夫じゃなかったらこうやってアホ面晒しちゃいないさ、とお師匠。
「不幸なことに、そこのトータは色々無茶が重なって『世界線一つで』『存在が意味消失するくらいじゃ』大した影響はないようになっちまってるからね。歴史的な特異点というには運命力が弱いが、どうしたもんかねぇ。……まぁ大体
「その情報今いります?(震え声)」
気のせいでなければ、原作の近衛刀太ですら死にかねない現象でも死なないと断言された気がするのですが(震え声)。
「アタシとしちゃ、命の運行、栄枯盛衰、盛者必衰の理とも言えば良いか、そういった当然あるべき流れから言ってあまり褒められた傾向じゃないんだがねぇ? 生き物なんて同じ種族のイキモノが滅んだ後もずっと生き続けるなんて、狂ってしかるべきさ。
とはいえそれも一つの美学ではあるが、個人的にはオススメしやしないよ。ひとりぼっちっていうのは、大概寂しいものだからねぇ」
「専門用語あんまり使ってない割に、言ってることが壮大すぎるじゃないのヨ! ちゅーにだけじゃなくって九郎丸も三太もみーんなポカーンとしてるじゃないっ」
キリヱ大明神……! キリヱ大明神……!(崇拝)
この状況でお師匠に食ってかからっしゃるメンタルのお強さは彼女らしくもあり、実質仔犬がキャンキャン吠えているようなそれの裏返しである真実はなおのこと彼女らしくもあり、頼りがいがあってどこかヘナヘナしていらっしゃるところは流石のキリヱ大明神だ。そして手を合わせて拝みだす私に「だから御神仏扱いはやめなさいヨっ!」とげしげしと軽く蹴ってくるところまで含めてうん、安定のキリヱである。
いやまぁ、蹴られるたびに首がぐるんぐるん回ってだいぶグロいことになっているので、九郎丸が「そ、その辺で……」と止めにかかったが。
「まぁ、人並み以上に『時空を追い越して』永く生きるというのならば、それなりに生き方ってものは考える必要があるってことさ。一時期の宍戸甚兵衛が終活と称して身体をいじめぬいていたようなお遊びではないが、迷惑をかけない程度の末期というのもねぇ?」
そう言って立ち上がったお師匠は「じゃあこっちに来た時のアンタたちを迎えに行くからねぇ」とか言って姿を消した。うーん、何と言うか当然のようにこの時間にも複数人存在していそうだし、その全員がバラバラの時系列から現れ出でてそうなお師匠である。
※ ※ ※
「私だってそこまでの不死性は今もっちゃいないけどよ。正直『死ねない側の悩み』って言われたって同情はできないって。ゼータクだぜ、ゼータク」
「先輩達がそれくらい不死身だっていうのは、まあ、特に先輩は何度か殺しかけてるからわかるんだけど、ね。それでもそんなに凄いレベルだと言われても、現実感が薄い、かな」
じゃらじゃら、じゃらじゃら、と雀卓で牌が踊る。
「そりゃ、全員由来は違うもの。カトラス、あなたとトータは大本が一緒なんでしょ? なんなら雪姫だって。けど発現の仕方だっておおいに違うじゃない。
それが能力の大本から全然違うメンツが十何人も集まったら、それなりにカオスにもなるわヨ」
「キリヱちゃんが一番特殊だと思うけどね、僕。気のせいじゃなければダーナ師匠から特に目をかけてもらってるみたいだし、本質とか近かったりするのかも?」
「ぞっとしない話ね……。『ひとりぼっちは寂しい』とか、洒落にならないじゃない」
「私も宇宙空間で等速直線運動のまま地球から延々離れて、酸素ボンベの続く限り宇宙に一人ぼっちだったことがあった、けど、あれは確かに辛い、よね……。あー、いや、最終的には保護者が助けに来てくれたんだけど、ね」
「わー!? 何やってンだよ佐々木三太ッ! 牌、飛び散ってるじゃねーか」
「下手ねー」
「ほ、本物は初めてなンだよッ! 大体ネット対戦だったしっ」
「それでも役は覚えてるんだね」
「さ、小夜子に仕込まれた……」
じゃらじゃら、じゃらじゃら、と雀卓で牌が踊る上で、ニヤニヤとした視線が三つ、三太に突き刺さる。ちなみにルールがわからないらしいメイリンは三太の後ろで覗き込みつつ、遊び方を教わっているらしい。いやそもそも何で麻雀やてるんだこいつら……。原作的に言えばおそらく提案者だったろうアフロもいないし。イベントだけはかろうじてこなしているあたり多少の修正力のようなものを感じるが、中身が全然違うのでまーうんガバやな(思考放棄)。
「なァ……ある日さ? 地球が爆発するか、宇宙人が攻めて来て、地球がぶッ壊れたとするじゃンか。その場合、俺達ってみんな無酸素無重力状態のまま宇宙をさまようことになンのかな?」
「話のスケール大きいネ……」
「こわっ! い、いやでも私はセーブポイントがあるし、別な時間軸の方に逃げるわヨ‥‥‥」
「あっ、それチー」
「えっ!? あ、そ、そう? カトラスちゃん」
「よーしよし。……考えてみたら、兄サンたちケッコー大変だよな。そう考えると、あのダイダラボッチの時もそうだったけど週刊世界の危機?」
「『幻燈のサーカス』とかも、そのまま人類全員眠りの世界にいざなわれたりしたらなぁ……」
「あーいやー、そうでなくても五十億年後には太陽の赤色巨星化で呑み込まれるし、そうでなくても月が地球から毎年3cmくらい離れていってるはず、だから、どこかのタイミングで地球の自転が今の状態を維持できなくなって――――」
「ぎゃー! SF止めなさいヨ! アフターヒューマンにすら期待できないじゃないっ」
「その前に自滅してなきゃなァ……」
「まあ暗い話は置いておいて、だ。とりあえず目の前のことに手を付けつつだな。人類存続も大事だけど、今日明日の飯の種だって重要っつーことで」
あっ刀太君! とウキウキしたように笑顔の九郎丸が可愛らしい。カトラスは半眼を向けて来るが、そんな彼女たちにペットボトルのアイスコーヒーを手渡す。「あっこれ……」とメイリンが喜色ばむが、この拠点でもたまーに練習がてらコーヒーを入れてるので、その余りである。
人数分行きわたったところで「好きに飲めよー」と
『…………刀太君は、その』
「どうした? 九郎丸」
『いや、うん。……違うようでいて、やっぱり刀太君なんだなって』
そして、ぼそぼそと寂しそうにそう言う大人な九龍天狗のその物言いに。何かしらのガバの気配を感じて、ゆるく起動しかけていた
そう、そんなことより飯の種なのである。まずもって明日明後日のこと考えなければ人は滅びるのかもしれないが、それだって今を生きる必要はあるわけで。とはいえそうやって個人の最大幸福ばかり追求すれば全体の幸福にはつながらないともいえるし、だからこそUQホルダーはその調整役を買って出て動いている節はある。単純な正義の味方というわけではなく、文明の安全弁のように。
それもやはりネギぼーずが為せなかったことへの深い後悔から続いているものなのだろうと思うと……、やっぱり私は、カアちゃんに合わせる顔が無くなりそうだった。
――――287年後、約束の日。
『神鳴流我流奥義・
『無駄だ、東洋の』
吸血鬼バサゴの城にて、逃げおおせた奴を追おうとした私に斬りかかってくる女剣士。古城の建築に似つかわしくない恰好だなぁと内心苦笑いしつつ、私はその動きを視線だけで追う。
振るわれた、その一撃でもげた首。面倒だがそれを拾い直し、接合し、今散っていった小娘の姿を見る。
見た目の年だけで言えば私より一回りは上だろうに、延々と戦いに巻き込まれた奴の兄を私が討ったと「勘違いした」末に、逆恨みからの一刀。時坂といったか、彼女が恨むべき誰かもまた私が討ち果たしたのだから、その咎も、恨みも引き受けてやるのが人の情というやつだろう。
情? はは、笑わせる。摩耗してきている私が、自動で発動した氷結により砕けた小娘に感慨すら抱けない私が、いまさら何を言っているのかという話だ。
『十年の毒だ、苦しめ…………、兄上、仇は、とり――――』
『十年、か。確かに……、若い。
復讐にその命を使ったか、兄も本意ではあるまいに。
…………せめて次の生くらいは、幸福なもので。平穏かどうかは知らんが、想い人と善く過ごせる時代であれ』
氷結し砕ける彼女を見て、私はそう呟かざるを得ない。
嗚呼、カリン=オーテはあの真祖の手で封じられ、甚兵衛とも既に別れている。あの男はあの男で、人の世というものに関しての達観具合でいえば私よりはるかに上等な不死者のそれで、なるほどダーナが手放しでほめるのもうなずける。
だが、それが出来る程に器用でないからこそ、未だにこうして魔王だの何だの呼ばれながらも戦い続けている訳で。
我ながら阿呆の極みだと、自虐するまでもなく
それこそついさっき「時空のゆがみから現れた」トータ相手に、かつての何も背負っていなかっただけの小娘らしい振る舞いをした、この私の弱さ。
修復された地面、消え去ったアイツ。それに一抹の寂しさと、一緒にいて欲しいという強い欲求が胸をかきむしるようで。
「果たしてどれくらい経てば、私はお前に会えるのだろうな。
…………クク、らしくもないか。
やれやれゼロがいなくて良かったな――――」
「――――まあ、とはいえ拙者が目撃している訳でござるがな」
なにっ!?
全く気配のなかったところに現れた異物。咄嗟に詠唱破棄のまま
当たり前のようにその男は、見覚えのある錫杖のような何かでガキガキと無造作に叩き落とし。
「やれやれ、お嬢ちゃんは相変わらずでござるなぁ。先ほどの恋する乙女の顔が凍てつく感情で台無しにござる――――」
「貴様ァー! カイン・コーシ!
狭間の魔女の小間使いが、ここで会ったが百年目っ!!
ギッタンギッタンにしてひき肉にして撒いてくれるわッ!!!」
「違うのでござる、あれは拙者も騙されていたのでござる。話を、話を聞いて……、いやまぁそうなる事情はわかるが少しは落ち着けお前さんや(戒め)」
相変わらず妙な編み笠(名前は甚兵衛に聞いた)を着用した僧侶か法師のような恰好のその男は、それこそトータと最後に会った頃に出会った怪し気なこの男は。呆れたように言いつつも、小癪なことに私の放つ吹雪を「光る錫杖」を振り回して、全くダメージを受けている節が無かった。
無効化でもしてるのか? あれは。ええい、一体本当何なのだこの男はッ!!!!
※こちらの話はまたそのうち・・・そのうc・・・(話数が勘定できてない)