光る風を超えて   作:黒兎可

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ちょっと今回文字多めです……


ST198.映せぬはずの冥夜(前)

ST198.From Behind The Persona.(1/2)

 

 

 

 

 

 ………… 一体いつから、キティちゃん関係の諸々の問題が解決すると錯覚していた?(ヨ〇様構文)

 

 特に問いかけて来る平〇(ハゲ)もいないのだが(風評被害)思わずそう考えてしまうだけの何かはここにあった。具体的に言えば私、九郎丸、キリヱ、三太、カトラスの5人と対峙するお師匠が一瞬でスリムな姿に変貌したかと思いきや、いつぞやに見た原作的に見覚えのないおどろおどろしい装飾の施された西洋剣を片手に、一瞬で私を粉微塵に切り裂いたあたりで、既に半分くらいは正気ではない。

 刀太君!? という九郎丸の絶叫もむなしく、そこは既に血痕と骨片だけが散らばる惨状だ。カトラスが「ひっ」と目を見開いて私の血を頭からかぶり、三太は驚きつつもしれっと透化してすり抜ける。キリヱはキリヱで不思議と慣れた様子のまま、スーツの左肩についたダイヤルのようなものを回して師匠の動きを観察している。

 

 全員、完全に臨戦態勢であった。私は死天化壮はもちろん「第四の目」を(ひら)いた状態で、九郎丸は久々? にまともな形でアーマーカードにより神刀・姫名杜を呼び出しており、キリヱはキリヱでカメラは省略したままあの未来的謎スーツを身にまとっている。三太もまた学ランだか応援団長だかといった帽子やら上着やらにwAMIGA(ワミーガ)(※旧式PC)をもっていたりして、カトラスは両手も既にシファー・ライト、アザー・メタトロニオスと黒と白の腕となっている。それぞれにそれぞれが、多少なりとも修行の成果があるが故に、さてここから! という状態で構えて早々の私の斬殺ときているので、その衝撃はいかほどのものか。

 

 そのままお師匠は、ちょっとしたロックスターめいた九郎丸めがけて「ムチのようにしなって」変形した剣でその腰を凪ぎ、斬り飛ばす。動揺していたとはいえ神刀を構えるのが決して遅かったわけではないが、その構えた腕力「ごと」無理やり薙ぎ払い叩き斬ったという表現が正しいだろう。

 

「一体どういう絡繰りだッ」

 

 左手を構え「火星の白(マルス・アルバム)」を走らせるカトラス。発光とともに形成される全体バリアのような領域に、斬り飛ばされてこっちに落ちて来た九郎丸の上半身を含め、三太、キリヱと私以外全員を覆うようにバリア状の何かを形成するが。

 

「カラクリも何も物理(ヽヽ)だよ。悪いがレベルが違うからねぇ」

 

 そう言いつつ振り上げた剣の刃は、既に剣の形状ではない。恐竜の尻尾というには妙に焼けただれたような形質となっており、気のせいでなければ先端に顎のような器官が「生まれようとしている」。シン・ゴ〇ラ(究極生命体鮫)かな? とか考える私だが、黒棒を起点に再生をしようにも追いつかない、というか明らかに師匠側から放たれている魔力がこちらの再生を妨害している。最終的には無理やり呑み込んで復活はできるが、既に幽体離脱というか幽霊的視点となっている私としてはもどかしいところだ。

 なにせその巨大な怪獣の尻尾のような刃を振り下ろすことで、当たり前のようにカトラスのバリアを破壊。師匠の言葉が正しければ物理らしいので、「火星の白」の魔法無効化(マジックキャンセル)効果は完全に無駄になっていることだろう。一撃で脳天を()されたカトラスは白目を剥いてその場に倒れる。

 そしてその余波を当たり前のように受けない三太と、これまた何故かその衝撃に微塵も身体を動かしていないキリヱ大明神だ。

 

 ほう、とお師匠はキリヱに肩をすくめる。

 

「面倒だから後回しにするが、そのスーツの性能頼りだとアタシには勝てないよ」

「そもそもダウングレードした私の能力だって勝てっこないじゃないの!? というかアタッカー筆頭の刀太を最初に潰しといてその言い草ないでしょーがッ! 大問題ヨ!」

「そりゃ戦闘においては一番面倒な相手から片づけるのが定石だからねぇ。

 とはいえこれでも手加減してるんだ。もっと張り合いを出してもらいたいところだが――――おや?」

 

「物理だってンなら、物理的な干渉には弱ェはずだよな――――オラッ!」

 

 ほう、三太がPCを弾いてエンターキーを「ターン!」と強く叩き、直後に拳を握る。うん、中学生らしい勢いにあふれててちょっと可愛いな。そしてその動きは、何か魔法アプリでも作ったのか。あの魔法具(アーティファクト)については色々と良い思い出が無いのだが(お嫁さん大会的な意味で)、場合によっては長谷川千雨にあてがわれる可能性もあった魔法具なのだ(「ネギま!?」的な意味で)。その性能もある意味で折り紙付きというところか。

 巨大だったお師匠の剣は、その生物的外観の刀身の部分のみが瞬間的に砕け散った。いや、より正確には「一瞬凍り付いて」「一瞬燃えて」粉砕されたというのが正しいだろうか。フリッカー現象ではないが、急激な温度変化で急速に劣化させた上で、彼本人の念力で砕いたと言う所だろう。

 

「やるじゃないかい、刀太を除いて四人の中じゃ一番修行の成果らしい成果が出てるよ。一時的に運動エネルギーを保存して凍結、次の瞬間には上乗せして炎上させるとか、オリジナルで発想したにしちゃありきたりだが、急ごしらえでそこまで思いついたのは褒めてあげるよ」

「そりゃ、どうもッ! 幽波拳(スタンドフィスト)ォ!」

「だがアタシに単純な物理が通用すると思うのは、ちょっと浅はかだねぇ」

 

 お師匠の目の前に展開された念力の壁越しに拳を一発、それが百倍に増幅された打撃としてお師匠に襲い掛かるが、お師匠はそれを、まるでコバエでも追い払うように「肥大化した」片手で雑に弾くと、その手のまま三太をデコピンして弾き飛ばした。いやアイツ絶対、幽鬼(レブナント)的能力で霊体化して実体ない状態なのに、当たり前みたいに物理で干渉するの止めてあげてくださいよぅ!? お慈悲、お慈悲を……!(震え声)

 

「じゃあ『座標も特定できた』し、アンタも一発殴ってお終いにしようかねぇ?」

 

 そう言いながら「いつの間にか復活していた」西洋剣を片手にキリヱへと襲い掛かるお師匠だったが。キリヱはキリヱで両手を合わせ。

 

(タイム・)(アルター・)(スペクタクル)――――頑張りなさいヨ、私!」

 

 あのぉ、キリヱ大明神なんか全然知らない能力使うの止めてもらって良いですかね(震え声)。

 そのままキリヱの頭上に火の玉のようなものが出来上がり、めらめらと燃えると同時に、師匠の攻撃に関して「キリヱらしくない程に」洗練された動きで回避していく。いきなり何かレベルアップでもしたのか!? と思いきや、もっともキリヱ自身がおっかなびっくりといった表情で「あわわ」とか「に゛ゃあっ!」とか言いながら躱している有様である。というか動き自体は無駄がないのに「痛いじゃないのヨ!」とか自分で自分に文句を言っているし、あれはあれでどんな能力だ……。

 お師匠も剣を振るいながらもどこか呆れた表情で「アンタはまず身体を鍛えた方が良いかねぇ、そういう能力を作ったんなら」とか言ってるし。そして剣の先端から「ゾンビみたいな」「悪魔みたいな」何かが這い出る様に形成され、薙ぎ払う動きに合わせてキリヱ本人をぶっ飛ばそうとするも、悲鳴を上げながら空中を舞いバク宙しつつ、私の斬殺現場たる黒棒のもとまで。そのまま黒棒を手に取り「いい加減戻りなさいヨ!」とキレ気味だ。

 

 いやあの、復活したいんスけど、そのですね……。なまじ「金星の黒」との接続を完全に断ち切っているわけでもないあたり、お師匠のちょっとした意地悪なのだろう。本来は再生が出来ないわけでも無いが、中途半端に妨害されているせいでうずまく魔力も身動きがとれないような状態と言うべきか。

 ただ、そんなキリヱ大明神に斬りかかるお師匠のそれと同時に、とりあえず右腕だけは気合で戻した。……キリヱが「に゛ゃあああああんッ!」と悲鳴を上げているが、平に、平にご容赦くださいませキリヱ大明神。鎮まりたまえ(祈祷)。

 

「腕だけでアタシの相手をしようとは、中々剛毅じゃないかいトータ」

 

 そのまま分身を操作する要領で、肩の切断面から血装。無理やり人型のシルエット的な何かを形成。どうやら意識が戻ったらしいカトラスが「きゃーッ!!!?」と涙声で悲鳴を上げたが、フォローする余裕はないので、その歪な状態のまま師匠と切り結ぶ。

 

 いや本当その…………、原作よりも本気で戦うにしても、もうちょっと手加減とかできませんかねお師匠(震え声)。

 

「そんなことしたら『卒業試験』にならないだろう? チーム戦ってことにしといてやってるんだから、せいぜい粘るんだね」

 

 さようですか……。魂の状態のままの私は、快晴のこの狭間の城の空を見上げて、あるいは見下ろして、どこか遠くを眺める他なかった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 前日の夜。

 

「――――オォオオオオアッ! ィアッッ! ィアッ! アァアッ!」

「うん……、まあまあ」

 

 ぼちぼち、という私の適当な評価に、読本の型通りの動きをキビキビと仕上げてみせて来たメイリンは汗をかきながら「どういう意味、かな」と私に苦笑いをしてくる。どういう意味もこういう意味も大概私も不死者基準での戦闘慣れしてきているせいもあり、特に何ら能力も装置も使わず、純粋な身体技能のみの少林寺拳法など見せられても、コメントが上手くできないのだ。良い身体してるね、など言おうものならたとえこちらの意図が鍛えている的なものでもセクハラになりかねないし、セクハラ的な意味でも胸の大きさに注目したって中学生の超の頃から一回り程度くらいしか差が無いので、まあ藪蛇というやつだ。

 

 時間は深夜。私の部屋に訪ねて来たメイリンに「逆夜這い!?」とかツッコミを入れつつ、当然「違うからネ!?」と赤面されながらツッコミを入れられたりしつつ、彼女に誘われるままにテラスに出て、そしたら雑談をしつつ「ちょっと上達したんだ、よね」と言いながら色々と殴る、蹴るの動きを見せられた形だ。

 明日はお師匠いわく卒業試験、とのこと。原作8巻終盤で、いよいよ修行編もラストスパートといったところだ。……キティちゃん関係についてはもはやどうしようもなく「私」と彼女との歴史がすれ違っている事実を突きつけられただけになっているが、これもある意味で私の招いた事態なのだろうし、今後の事を考えればメンタル的にもメタ的にも頭痛しかしない。 

 をのれ橘!?(責任転嫁) 熊本に帰ったら覚悟しろよ、と勝手な私怨を燃やしているが、それはそうとして現実問題、この後色々とどうするべきかと言う話なのである。

 まあ、ひとまずそれを置いておいて、卒業試験とやらだ。ルールは単純で、お師匠相手に我々UQホルダープラスアルファの面々(メイリン除く)で戦いを挑んで、勝利できれば合格というもの。ちなみに不合格でも私に関しては既に鍛えようがないらしく(後は自分で伸びしろを探せとのこと)、どちらにせよ退場が決定している。

 そんな訳もあり最後になるかもしれないということで、メイリンはメイリンで私と話をしたかったらしい。

 まあ料理についても多少教えたくらいで全然上達を見られるところはないので、そのあたりは後でお師匠に面倒を見るように頼んでおくべきか。……どうでも良いが、あー、この(メイリン)に関しては中華鍋どころかフライパンすら使ったことのないところから面倒を見ているので、まさか超包子発生の切っ掛けとかになっていたりしないだろうな。今そんなフラグめいたものを感じ取ったが、流石にそこはもうどうしようもないか。

 なるようになる、というよりも、お師匠の言葉を借りれば「統合されて何もかもがどうでも良くなっている」存在、それが将来の彼女なのだ。今更私のガバ一つでそこまで大きく影響はしないだろうと、タカをくくっても良いだろう。

 

 ふう、と汗をぬぐうメイリン。服装はブルース・リーみたいな黄色のジャージ姿で、チャックを少し大きくひらいて手で仰いで胸元を冷やしている。……しかしこうして見ると、なるほど確かに顔立ちに若干、桜咲刹那的な要素をみてとれる。「ネギま!」における超の顔立ちは、普段の能天気な振る舞いの時はともかく、いったんシリアスな状態に突入するとほぼせっちゃんのそれに近い顔立ちになるのだ。なんなら髪を下ろせばちょうど良い具合にセミロングだし、見分けはさらに難しくなるだろう。

 そういう意味ではメタ的に「まさかのせっちゃんエンド!?」と思ったり何だりもしたが、お師匠の言葉が正しければ素材の一人ではあるけれど、といったところで。いや、まさかそんな扱いを受ける形になっているとはこの私の目をしても見抜くに見抜けなかった。なんとなく携帯端末の中のチュウベェがため息をついたような気がしたし、星月が「リ〇クよりガバガバだぁ……」とか思っていそうな気がしたが、流石にアレなので被害妄想の類ということにしておこう、ウン(現実逃避)。

 

「思えば先輩との付き合いも、アキラさんの時からだった、かな? うん。そこまで何度も顔を合わせてたけど、食事もらったりしてたし、うん。

 思えば、あれから先輩に料理を教わって、ちゃんと『美味しい』っていう配分はわかったつもり、だよ?」

「――――――――」

「どどど、どうしていきなり膝をついて泣きだしたの、かな!? 大丈夫、先輩!!?」

 

 嗚呼脳裏にさんざめき心躍る大河内アキラとの生邂逅の日々よ。お師匠からストップをかけられて微妙なタイミングでお別れとなったが、あれだけは間違いなくこの世界に転生できてよかった出来事の一つだろう。数少ない、とはいわない。良いことも悪いことも多くあり、その果てに今があるのだから、他を卑下するような話ではない。だがそれはそうとして、間違いなく我が「神楽坂菊千代」と自己認識してからの人生において、最も幸せだった日々と言えるかもしれない……、性癖的に(爆)。

 最後にハグしてもらった時の記憶が高速でかけめぐり、あの時のことやら何やらが猛烈に脳裏で走馬灯みたいに投影されたのだ、流石にそりゃダメージが入る。情けなくもおんおんとスリップダメージを受ける私に、動揺したメイリンは背中を撫でて来るが、ちょっと吐きそうになるので止めてくれませんかねぇ。

 

 とりあえず無理やり拭って立ち、気遣ってくるメイリンにサムズアップだけを返しておく。

 

「本当に大丈夫? 先輩、けっこう情緒不安定だ、よネ……」

「どうしょーもないことはどうしょーもないというか、生まれで言えば恵まれてる方と不幸な方が同時に襲って来てる様な身の上だけど、まあ今生きてるから良いじゃんっつーことで割り切ってるから、そこは大丈夫。

 うん、大丈夫、私は割り切ってるから大丈夫。うん、割り切れてる、割り切れてるはず―――――」

「せ、自己洗脳(セルフマインドコントロール)してるネ!?」

 

 動揺してるのか口調が崩れかかってるメイリン。うーん、この感じだとカタコトなのは完全に演技って訳でもなさそうだが、だからといって標準語を使えないと言う訳でもないらしいというべきか。おそらく今くらいのバランスが本来の彼女のそれなのだろうとか、またまあまあどうでも良いことに気づいてしまった。

 そんな私に、メイリンは「えーっと……」と言いながら、すっと何かを差し出す。包みにくるまれたそれは、柄から大きさからいってこう、女子高生が昼食のときに摘まんでいそうなお弁当箱くらいのサイズのそれで。なんとなくラードの匂いがしたので、間違いなく中はお弁当だろう。

 

「……食べろと?」

「えっと、すぐじゃなくて良いんだけど、ね。うん。1日くらいは持つし、できれば先輩が、先輩の拠点? に帰ってから開けて欲しい、かな?」

「いや、何で今渡して来たし……」

 

 渡された理由も意味不明だし、この時間帯に渡してきたのも含めて色々と意味不明なのだが、そんな私にメイリンは肩をすくめる。

 

「渡したのはお礼だって、素直に思って欲しい、かな。練習の成果を診てもらいたいっていうのもあるし。それに…………、先輩、気付いていないかもしれないけどさ。私ってダーナさんから研究室用に部屋を貸してもらってる関係で、先輩達と時間が大きくずれてるんだ、よね。今だって、本当なら日中に先輩達と顔合わせするつもりだったのに、研究室を出た瞬間に夜中になってるし、先輩の部屋に尋ねるまでに太陽が一周してるし」

「なん……、だと?」

「アイヤー、ダーナさんが寝てる時はしっちゃかめっちゃかだと思う、かな?」

 

 つまり、次に研究室にこもったら出てくる時に私たちと会える可能性が低いから、いまのうちに準備をしておきたかった、ということか。いやそこは研究室に入る時間を遅らせても良いのではないかお前さん? と思ったが、「事はそう簡単じゃないから」と寂しそうに肩をすくめる。

 

「チャンスは一度きりで、そのタイミングももう決まってる。今の私にできるのは、そのタイムリミットまでにこの拠点から目指した時間軸の狙った場所とタイミングにタイムジャンプする、そのためにタイムマシンを改良すること、ただその一つ。それが出来なければ、私がここにいる意味なんてないからね。

 私がやろうとしていることは、タロ……、ア、イヤ、ダーナさんに言わせれば『成功のない袋小路』らしい。万に一つも、私が私である限り掴めるはずの可能性すらつかめないって、そう教わってるんだ」

「それでも諦めるつもりはないって?」

「うん。そうでもしないと、私が生まれた歴史の意味なんてない。私の育ての親が、友達が、兄妹(きょうだい)たちが、私がここに送られるためのリソースを稼いでくれている、その意味すら無に帰しちゃう。

 九郎丸さんやキリヱさんとか、先輩たちみんなと居るのは楽しいけれど……、それでも、その最初の最初だけは揺らいだらいけないんだ」

 

 そう語る彼女の目には強い意志の光が宿っており。しかし同時に、やはり寂しそうな女性の姿にしかみえない。二十代であるにもかかわらず、その「一人」佇む姿は少女のようにも見えた。

 メイリン……、超のその寂しさは、やはりどうあがいても「この場所」で「我々には」埋められないものであるのだろう。それこそほんのわずかに聞いた今の事情からして、たとえ距離を置いていたとしても家族のような友達が大勢出来る、そんな中学三年間こそが、彼女が「ネギま!」の超鈴音になるのには必要なのであって。

 

 なるほど。そういう意味では確かに彼女は、まだ、超鈴音ではないということなのか。少なくとも私が一読者として知る彼女であり、劇場版FINALで雑に未来から登場した彼女でもない。まだこの段階の彼女は、「ネギま!」の超鈴音に合流した存在ではないのだから当然といえて。

 

「そう、だな。…………うーん、じゃあ、スーパーってことで」

「えっ?」

「今日からお前はかつてのメイリンを超えたすごいメイリン……、スーパーメイリンだッ!」

「だ、ダサい!?」

 

 だからこそ、何かしら彼女に残すことが出来ないのかもしれなくとも。それでも最後くらいは笑って別れられるよう、出来る限りおどけることにしたのだった。

 なお暗に「お前が超だと判ってるぞ」という匂わせでもあるのだが、表面上は特にそこに気づいた様子はない。……割と思っていたが、将来のことや素の知能はともかく、結構この人はポンコツなのかもしれない。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 などと余裕をこいていた私をぶん殴ってやりたいところだ。

 試験とて原作と差が無いだろうと斜に構えていれば「刀太もそうだが魔法具のこともあるし、アタシもちょっとばかり本気を出させてもらうかねぇ」などと言い出したあたりで、嫌な予感を抱く。そして抱いたと同時に木っ端微塵、爆発四散という有様にされた私だったので、もはや諸行無常。ナムサン! とネタでも叫ぶ余裕すらなく、なんなら「第四の目」が起動してるのに、全員に指示を出す余裕さえない。一瞬で粉微塵にされているせいで痛みは少ないが(麻痺)、再生時にぶり返すようにくるので良いやら悪いやらである。

 

「俺が囮になるから、キリヱがリーダー的な感じで指示出せ! 多分『一番知ってる』だろ、全員!」

「ちょ!? あんなの無理でしょーが、勝てっこないわよ、死ぬしかないじゃないのヨ! そんなに無茶して――――」

  

 私に制止をかけるキリヱ大明神。本来ならありがたいものであるが、流石に今は余裕がない。すぐさま「5人に分裂」した私を見て言葉を失うキリヱ大明神を背後に、私は師匠に斬りかかる。

 

血風(けっぷう)燃天(ねんてん)――――!」

血風(けっぷう)流天(るてん)――――!」

血風(けっぷう)塊天(かいてん)――――!」

血風(けっぷう)雷天(らいてん)――――!」

 

「おぉ、四大属性揃い踏みとは豪勢だねぇ」

 

 燃え盛る火の柱たる血風。流れ落ちる滝のごとき血風。例によって泥のような色をした血風。血風らしからぬバチバチとした雷特有の音と光を伴った血風。

 それぞれを前にお師匠は、観光名所で適当な感想でも述べるような修学旅行中の学生じみた風に、完全に他人事のようにぼーっと見ていた。

 

 ……カイン・コーシとしてキティちゃんの修行を見た後、その戦闘ぶりを背後から観察していた際、その余波で飛んできていた術を取り込んでいたのが功を奏したのだろうか何なのだろうか。気が付けば星月から「使えるよ!」と教えられたこの四大属性版の血風である。

 塊天についてはフェイトのそれのままなので土属性のまま何も変わりはないが、火、水、土、風(雷)それぞれに対応する血風をなしくずしで覚えてしまった感じがして、これはこれで低OSRなイメージだ。

 低OSR(らしくない)。つまりこれは決定打にはなりえないだろうとメタ的な読みをしている私であるが、果たしてそれは正しかった。

 

 はいよ、と言った瞬間にお師匠の手元に真っ黒な球が形成される。それを術式掌握でもするように握ると、同時に放たれた血風がそれぞれ、分身の私たちへと跳ね返る。いや、跳ね返ると言うか、ゲームでいうエフェクトやオブジェクトがそのまま反転したというか、とにかく明らかに時間と空間がねじ曲がった所業そのものである。

 

 あっという間に倒された分身を前に、後方で作戦を考えていた私の目前に「ぬ」っと縮地するかのように現れたお師匠。

 

「何なのだこれは……、どうすれば良いのだ!?」

「こうすれば良いのさ」

 

 単純だろ、と言いながらお師匠は私めがけて先ほどの黒い球をぶち当ててきて。

 次の瞬間には、私の身体は「内側から」「渦を巻いて」破裂した。

 

 ……いや、あの、せめて囮を買って出たにもかかわらず1分持ってないんでその、もうちょっと格好つけさせていただけるとありがたいと言いますかね、えぇ(震え声)。

 

「汚い花火だねぇ」

 

 絶対聞こえているだろうにお師匠、あなた。というか今の粉砕を見てカトラスが気絶してるんですがそれは。もうちょっと妹チャンのメンタルを慮っていただきたいところである。

 

 

 

 

 

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