光る風を超えて   作:黒兎可

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待ってなかったかもしれないけど お ま た せ (ちゃんさん)
ついに200話突破です…!? ご愛読ご評価ご感想誤字報告もろもろありがとうございます……!


ST200.だから何も変えられない

ST200.Carry Our’s Cross.

 

 

 

 

 

「とりあえずようやく見れるレベルにはなったが、まあ今ぐらいなら表に出ても苦労はしないだろうがねぇ? 少なくとも魔人としての完成度は上がったから、そう簡単には死なないし死なせられないだろうし。当初のアンタの目的には合致しちゃいるかねぇ?」

「つまり、もう卒業よね? 帰って良いのヨね――――」

「嗚呼『第一期』は卒業さ。『第三十期』まであることを思えば全然だが」

「――――って長いッ! 長すぎヨ!?」

「そりゃ、ウチの修行は最低十年だ。アンタらの入団試験だって下手すれば三十年は余裕で時間がかかるだろうに」

 

 三十期とかいう明らかに正気ではない修行のフェーズを出されるのを聞いて少しほっこりする私である。そんな私を見て「兄サン、何ニヤニヤしてんだ?」とカトラスが聞いてくるが、当然答えられるような理由ではないので特に何も言わずにサムズアップする。キモい、の一言でも返ってくるかと思いきや、少し硬直してから顔を逸らし、唇を拗ねたようにとがらせてちびっ子のような妹チャンだが、お前さんそれ一体どういう感情の発露だ。いや別に知りたくはないと言うか、知ったらガバの温床になりそうな予感もしているから知らないことにしておきたいが。

 うんうん、それもまた原作通りだよね。修行が全然初歩の初歩で終わっていることイコール原作とそんなに違わない言い回しであることを思えば、そう全然問題はない。問題はないったらないのだ。

 

 はぁ(クソでかため息)。

 

 全員で超が用意した天心を食べ終わる頃、最後の一つの小籠包に箸を伸ばそうとしたカトラスの手前からぬっと現れ……というか腕だけデラックスな状態で天心の蓋の裏から現れ、そのまま奪い取り蓋の裏側へ。「あっ!」と叫んだカトラスが蓋をひっくり返すも何もなく、そして全員の視線がそっちに集中している間にいつのまにか私の背後に現れていた師匠は、もちゃもちゃと咀嚼していた。

 例によってひっくり返るキリヱ大明神、くやしそうなカトラスはおいておいて。

 

『ちょっと塩味が濃いかねぇ、超』

『アイヤー、ハハハ。小麦を固めるにはどうしても塩必要ネ。学生用にタネの味は薄くしてるヨ。っと、それはそうとして先輩にはこれ返すネ』

『これ? って……いや何やったんだよコイツ』

 

 玉虫色コーティングされたような半透明のモ〇スターボールのようなものの中で丸くなっているチュウベェ。こころなし遠い目をしており、声も上げていない。「第四の目」を使って確認すれば「白……、白……」とよくわからないことを繰り返しており、そしてそういえばこのボールもどき見覚えがあるなと思い至った。

 

『もしかしてコイツ……』

『下着泥棒したから、ちょと余計に絞たネ。回復したら解放されるから、放置しといて大丈夫ヨ』

 

 なるほどあの時間軸の超はお前さんか。メイリンの言い回しが正しければ、私からチュウベェを手渡された後、また研究室なり何なりで時間の進み方はこちらとは異なっているのだろうが。というかひょっとしなくても、未来からこの時間まで戻って来た可能性もあるし。

 そんなやりとりをしている私と超に、ふうんとか言いながらちらりと私の方を一瞥するお師匠は一体何が言いたいのやら。そして「さっきから思ってたけどコイツ誰?」と聞いてくるカトラスに、そういえば紹介していなかったなと気付いたり。もっとも「まま、気にしないで大丈夫ネ! 詳しく知りたかたら、まほらにある『超包子』一号店を訪ねると良いヨ!」とか何とか言って適当な対応をする超に、ちょっと訝し気な視線を向けるカトラス。

 そういやカトラスは超のメイリン時代、今いる面子だと私に次いで一番接触期間が長かったから、もしかしたら気づくか? いかに体格年齢おっぱいおしり等が外見上違えど、基本的な顔の作りは一緒だし、そのせいもあってか常にニコニコと笑顔を絶やさない超もちょっと冷汗をかいていそうだ。

  

 結局お師匠が声をかけて、その疑念は追及されることはなかったのだが。ともあれそんな流れで正式に出所(?)になった我々である。

 

『あの子を頼んだよ。後まぁ…………、いや、まあこれは言うのは野暮かねぇ』

『一体何を隠したんスかね(震え声)』

 

 最後の一言が気になりすぎるが、それに対する回答は無し。城のテラスに設置された扉を開けた先が思いっきりアマノミハシラ学園都市の世界樹手前で何故か爆笑してしまった私である。解放感からか、現世(?)に帰ってきたからこその感慨か。ともあれ全員出たら「じゃ、先輩またネ」と言いながら超が扉を閉め、ど〇でもドアみたいにさっと姿を消したあの白いドア。

 

「どこで〇ドアみたいね……」

「感想同じなんだよなぁ」

「皆考えるよなァ」

「僕、よくわからないや…………」

「そー? って、そんなことよりっ! ようやくあのアホみたいな缶詰から解放されたわ! 清々しいッ!

 とりあえず美味しいモン食べまくるわよー!」

「いやキリヱ大明神、たぶん今授業中で時間的に昼は早ぇぞ……?」

「いや、問題はそこじゃないと思うな刀太く――――」

 

 

 

「――――ほああああっ! お兄さまやんっ! 修行終わるの早いなぁ?」

「ひでぶっ」

 

「刀太君!?」「ちょ!? いきなりすぎじゃない帆乃香ちゃん!!?」「早ッ!」「やべぇ」

 

 

 

 そしてキリヱやら九郎丸やらと話をしていたら、どこからともなく帆乃香が腹に突撃して来た。突撃というか射出というか、猛烈な速度で腹に頭からタックルして抱き着いて来て、その勢いに引き倒される。頭からバターン! と逝ったので一般人なら普通に致命傷であるが、そこは幸か不幸かちゃんと「金星の黒」が働いているので、問題がないといえば問題がない。

 それはそうとして「人間的な痛覚のレベル」だから痛いぞこいつ……、上半身を起こし「どしたん?」とにこにこ不思議そうに首をかしげる帆乃香に軽くアイアンクローをかけた。

 

「危ないからちょっと反省なさいっ」

「ふぇぇ……」

「ちょっ! お兄様、流石にそれは……!?」

 

 ちょっとだけ強めにやったので、解放されても「痛いわー」という程度で済んでる帆乃香だが、それでもにこにこしたまま、まとわりついてくるのが妙に懐かしく感じる。具体的には数カ月レベルで(メタ)。後勇魚は「うらやましい……」とかボソッと言わないで(震え声)。お陰で「第四の目」を使うのが怖すぎて使う気にならないが、とりあえず九郎丸と勇魚に手を引いてもらい立ち上がった。

 

「うにゅ? 何かこう、半年くらい会ってなかった感じですごい久々に感じるんだけど、今って何月何日なのかしら? カレンダーのアプリはーと……」

 

 そういえば外してたわね、とポーチから眼鏡ケースらしきものを取り出して開くと半透明の魔法端末手袋(マナグローブ)が形成され、それを自分の手に這わせるキリヱ。その眼鏡ケース的なやつ、マナフォンのケースだったか。

 そして手元に投影されるホログラフィック的なそれを操作して「抜け目ないわね」と引きつった笑みを浮かべた。

 

「まだ十月の上旬だから、時間としたら2週間とちょっとくらい? あんまり違和感はない感じになってるんじゃないかしら」

「改めて思うけど、時間と空間がねじ曲がってるんだよね、あそこ……」

「むしろ俺たち全員、それぞれの修行の時間とか全然違ェんじゃね? 俺なんて体感、1月くらいだったし」

「僕は…………、8カ月くらい?」

「俺、2、3カ月」

「ちょ、ちょっと? 待ちなさいヨ、カトラスちゃんはどれくらいだったの? ねぇ、言ってみなさいヨ」

「何でそんな慌ててんだよ……。んー、どうだったか? 大体兄サンと一緒だと思うけど」

 

「何でヨ!? 何で私だけ年単位なのヨ!!? ちょっと修行の配分どーかしてるんじゃないの!」

 

 あっ(察し)。そうかまたご加齢なされましたかキリヱ大明神におかれましては、こう何というかまたご苦労なされて何というか色々申し訳ない。直接的に私が悪い訳ではないだろうが色々回り回ってるので大体私というか橘が悪いのだが(当然)、この場で気遣えるのは我々だけなのである。

 

「なんつーか、悪いな。うん……」

「合掌」

「えっ? えっ?」

 

 なので唐突に拝みだした私と、悪乗りして一緒に拝みだした三太、「僕もやった方がいいのかな?」とか言い出した九郎丸の三人に手を合わせられて、キリヱ大明神は「に゛ゃあああああんッ!」とおキレ遊ばされた。

 

「って、どうでも良いんだけど私、コイツら面識ないんだけど…………」

「ふぇ? 肌の色とか、もしかしてテナ(ヽヽ)ちゃんかえ? 全然知らんけど」

「お母様から名前が出てましたけど、お姉様?」

「は? えっ、お母様って…………、まさか野乃香さん?」

 

 それはそうとして私が関知していないところで妹チャンたちの交流が始まっていたりしたが、あー、はいはいいつものガバ的なあれですねわかります(諦観)。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 仙境館。「悠久」と書かれたぼんぼりが「有給」に書き換わってるようなこともなく、相変わらずの我らが拠点である。空を見れば快晴とはいわずとも晴れ、潮風の匂いがかくも懐かしい。

 キリヱが「遊ぶわヨ!」とぶんぶん唸っていたので全員で飲み歩き食べ歩きを少しした後(妹たちよ学校は良いのかお前等)、時刻は午後一時半。そろそろ帰るかーと話題にした時、帆乃香たちの後から何故か当然のように現れた茶々丸さんから「手配済です」と言われ、そのまま流れに従って彼女の運転するボートに乗り込み、到着したのがつい先ほどである。「マスターをよろしくお願いします」と頭を下げる彼女の言葉を背に、帆乃香たちとお別れした私たちは足を進めていた。

 

 忍には出会わなかったが、まあそれも原作的には正しいので(むしろ帆乃香たちが突撃してきたことの方が大問題である)特に感想はない。安心感こそあれど、というところだ。

 ついでに館内に入ると、相変わらずの白衣姿な飴屋一空が軽く手を振ってにこにこと応じるのとか、全体的に原作を思い出す流れで安心感が増す。

 

 その後のやり取りは全く安心感がないのだが(白目)。

 

「おっ刀太君じゃん。って、皆も? 修行、終わるの早かったね」

「そのあたりは、まぁ…………うん」

 

 微妙なリアクションの私に続き、後ろの四人も似たような顔をしているだろう、ダレた声が聞こえる。色々大変だったんだね、と苦笑いで流してくれるあたりはありがたいことこの上ない。

 とりあえず代表で報告してくるから、と言って九郎丸達と一旦別れ……、たはずなのだが、なんとなく「第四の目」を啓いてみると「雪姫さんと二人で……」「ヘンなことしないでしょーね!」「えっ? マジで尾行するのか」「わ、私は会いたくねえんだけど! 引っ張んなって!」という思考が視えるので、うん、まあ原作通りと言えば原作通りっスね。

 もっとも、私が私で在る以上は原作通りに進めることは出来ないのだが。……合わせる顔がないと言っても、逃げることはできない。

 

 

 

「ただいまー、エヴァちゃん――――」

「――――なっ!?

 お、お前、何いつも通りみたいな風に戻って来て……、ってエヴァちゃ……? あ、ああそうか…………」

 

 

 

 とりあえずノックして普通に開けて挨拶をする私に、むしろ雪姫の方がテンションがおかしくなっていた。色々と書類を調整しながらコーヒーを入れている最中、ギリギリ落としそうになったのを見て「わざわざ背負って持ってきていた」黒棒から血装し、地面から何本も血の腕を生やして、落下途中のマグカップの角度を調整しながら支えた。

 流石にそこまで人外じみたことをしてくるとは思わなかったのか、若干表情が引きつるカアちゃんである。

 

「い、いや、戻ったならそれはそれで良いが。

 いや、良くはないな、いつ戻ったんだお前。

 戻すときは学園の方だと聞いていたから事前に手配しておいたんだが、その茶々丸から連絡はなかったが、一体いつの間に……」

「はい? いや、普通に茶々丸さんに送ってもらったんだけど――――」

「――――なぁるほどなぁ、あのポンコツがッ!

 ぼーやに付けてからさらに良い性格になってるようじゃないか……ククク、次会った時にどうしてくれようか」

 

 どうやらサプライズ的な何かだったらしい。脳裏で「ネギま!」時代よりも表情豊かになった茶々丸が「フフフ」とスマイルを浮かべている絵面が想起される。

 そして不意打ちにイライラしたのか黒い笑みを浮かべた雪姫は、血装の手からカップを奪うとそのまま一口飲んだ。

 

「それで……、何だ?

 あー報告か。だったら後で書類を渡すが」

 

「いや、カア(ヽヽ)ちゃん(ヽヽヽ)さ。ちょっと聞いてくれよ」

 

「――――」

 

 私の、あえて「戻した」その呼び方に、一瞬目を見開き、頬が赤くなる雪姫。

 悪いがこれは無理だ。少なくとも「今の私では」原作の刀太のようには振舞えない。だからこそ、今できるだけの、私が私として彼女と作って来た関係性に基づいて、できることを。

 

 黒棒の血装を解除して刃に戻しつつ、私は雪姫の目を見て言う。

 

「とりあえず、そう簡単には死なないくらいにはなったーって、師匠基準でそれっぽいことは言われたんだよ」

「あ、ああ……」

「だから、あー、アレだアレ、上手く言葉が出てこないな…………」

「言いたいことはまとめてから出直してこい。

 私だって忙しいんだぞ? これでも」

「いや、ちょっと待って。あー、………………小っ恥ずかしいから一回しか言わないからな?」

 

 何をだ、と、半眼ながらちょっと上気してる雪姫は、カップを置いて両手を背中に回し、トントンと右足を何度か踏む。何かを期待しているような風で、そこだけ見た目以上に幼く見えて可愛らしくも思うが、それがより私の発言の恥ずかしさを加速させる。

 正直に言って百回近く原形残さず木っ端みじんにされるよりははるかに簡単なことであるし、原作のようにプロポーズかますよりもはるかに気楽なことなのだが、こと心の問題だからか今までの関係性が前提にあるからか、喉から中々声が出ない。

 

『頑張れ、刀太君!』

 

 そんな私の脳裏に大河内アキラの声が……、間違いなく星月だろうが、それでもそれは最後の一押しとして機能したらしく。ばくばくと高鳴り続けていた心臓が、少しだけ落ち着いた。

 

 

 

「…………俺はまた、エヴァちゃんのことを。カアちゃんって呼んでも、いいのかな?」

 

 

 

 形だけとはいえ、彼女の本心は知らずとも、一度は親子の縁を切られた関係なのだ。だからこそケジメはしっかりしておかなければならないだろう。それは私の側としても、エヴァちゃんの側としても。

 だというのに妙な恥ずかしさが全身を襲っていた訳で、言い終わった後にまーたバクバクと胸が高鳴り妙な汗をかきはじめる私だ。

 

 そんな私の様子を見て、雪姫はそれはたいそう面白そうに、上気したまま大笑いした。げらげらと、それはもう煽る勢いで。後方から「良く言ったわ、ちゅーにのくせに!」「雪姫さん、楽しそうだな……」とかキリヱと九郎丸の声がぼそぼそ聞こえる気がするが、声に出さないが文句を言いたい。うるせぇ黙れ!(思春期)

 果たして雪姫は。

 

「ハハハ、ハハ……。そんなことで照れるな、小学生かお前は。

 ……だが、くだらないとは言えないな。

 もとはと言えば私の意地だったのだから」

「雪姫…………」

「そうクヨクヨするな。……『デキの良いカアちゃん』としては、そういう息子の思春期のあれそれも、受け入れるのに吝かじゃないがな?」

 

 ぽん、と頭を撫でられ。わずかに気のせいでなければ、普段よりも近い位置にある雪姫の顔が、少しだけ泣きそうに、微笑んでいた。

 

「…………」 

「問題はないよ。嗚呼、問題はない。何もな。

 どこにも行かないから、そんな顔をするな。男の子なんだから――――」

 

 

 

「――――なぁ夏凜」

「ええ、雪姫様」

 

 

 

 ハッ!? 意外、それは罠ッ!(違う)

 後方から聞こえた声に振り返れば、九郎丸やキリヱを押して部屋の中に入れ、扉を開いた旅館の給仕服な夏凜の姿。久々に見る生の夏凜ちゃんに、こっちもこっちでちょっと感動を覚えそうだが、クールなお顔が雪姫ではなく私をロックオンしていることに恐怖、恐怖、恐怖の類である。

 

「ちょっと夏凜ちゃん!? せっかく良い雰囲気になりそうだったのに、何やっちゃってんのヨ!」

「ぼ、僕ら親子水入らずなところに入っちゃって良かったのかな……? 三太君とかあっちで耳塞いで悶えて拒んでたし……」

「三太ェ…………(思春期)」

「さて、しばらくぶりですが刀太――――おや?」

 

 すたすたすた、と衝撃で身動きがとれないでいる私に近寄って来た夏凜は、そのまま私の顔を覗き込む……、ん? 覗き込む?

 

「夏凜、ちゃん、さん……?」

「これは、また身長が伸びましたね。もうヨシヨシできる身長差ではなくなってしまいましたか」

「あの、さも普通に確認するくらいのノリで平然とハグするのちょっとご容赦いただけませんかね(震え声)」

 

 だから本当この人さぁ……! いや、確かに言われてみると夏凜と身長が揃ってしまったと言うか、普通に抱きしめられた時に胸が顔にこないくらいの位置になってしまっているのだが、そんなことお構いなしとばかりに当たり前のように抱きしめなさるのはこう、安定しているというべきか自らの業を突き付けられていると言うべきか。と言うか身長いつ伸びた? アレか? 傷を失い、金星の黒の発動を大きく封じられていた間とか。大体大河内さんとプールしたり何だりで、言われてみれば確かに成長してそうな気もしないではないが。

 やわらかな感触を堪能する暇もなく「ちょっとーっ!?」と大声を上げるキリヱと、目を真ん丸にする九郎丸。カアちゃんはそれこそ自分の子供が戯れているのを見守っているように、何が楽しいのかわからないくらい大笑いである。

 

「雪姫様も、ようやく自然に笑われましたね」

「はい?」

「あなたと親子でなくなってから、それはそれは落ち込んでいらっしゃいましたから」

「それは、まあ、そうなのか…………」

「忍の魔術の勉強を見ている時も、悪の魔法使いを自称していた時の尊大な表情のままでしたし」

「いやちょっと待て、忍の魔術の勉強って何?(震え声)」

 

 知らない間に何かまた知らない展開が発生してるバグどうにかなりませんかねこの世界。

 例によって戦々恐々としている私を、そのままハグしたまま「少々失礼」と雪姫に断りを入れると、部屋の窓を開けてそのまま空にダイブ!?

 途中、前に使った羽の生える神聖魔法で飛行を始める夏凜ちゃんさんは、相変わらず自由でなによりではない(震え声)。

 

「あの、何でいきなり無限の彼方へレッツゴーしてるんスかね」

「少し話した方が良いかと思いまして」

 

 何を? と問い返す前に、彼女は当たり前のように続ける。

 

「――――どうやら思い出したようだもの。プロポーズ」

 

 ………………。

 ハッ!?

 

「な、何でわかるんスかね……?」

「以前より身体の強張りが強くないもの。後、ハグした時の感じと言うべきでしょうか」

 

 こと恋愛関係のみにおいて無能を置き去りにする我らが夏凜先輩の、恋愛以外に関しては完璧な無能ムーブである。だからどうして察してくるんですかね。というか、それを気づかれたとなると、あー、えーっと……。

 

「夏凜ちゃんさん、あの……」

「正気での回答なら、すぐには求めません」

 

 私は重い女だもの、と言いつつ、夏凜は耳元から顔をはなし、間近の距離でこちらの目を見て。

 

「どちらにせよ、私たちは永い永い付き合いになるのですから。でも……、これは少しだけ、私の我儘です」

 

 そう言いながら空中に浮かびつつ。夏凜は私の唇を奪った。

 舌は入れてこなかったが、それはしっとりと、長い長いキスであって。

 

 太陽のように微笑み、らしくないくらい照れて楽しそうな彼女に、私はもう何も言うことが出来なかった。

 

『強く生きてください……』

 

 そして追い打ちとばかりに星月が、若い頃の春日美空の声でそんなことを言ってくるので、私としてはそっとしておいてほしかった。

 

 

 

 もう……、肌寒くて、秋やなぁ(現実逃避)。

 

 

 

(ダーナ「それ以前に時系列に原作よりかなり余裕がある方に気を回すべきじゃないかねぇ? まあ、こっちもカトラスのことがあるから、アンタのオーダーに沿ったまでだがねぇ?」)

 

 

 

 

 

 

 

 




※気象が狂ってるので10月でも本当はまだ暑い
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