ST201.Humpty Dumpty Falls Twice.
「おう、お帰り刀太。
……だ、大丈夫か?」
「やっぱり神様なんていなかったんだねカアちゃん(白目)」
「重症だな、ちょっと待っていろ」
おおよそ原作8巻に近いノリで帰還したが最後、夏凜に連れ去られて上空でちゅっちゅちゅっちゅされ続け。精神的にはそれで安心感を感じてしまっている自分自身に腹が立ち、原作が徐々にハワイ旅行へと出かけていそうな気配を醸し出している昨今いかがお過ごしでしょうか(誰向挨拶)。まあそもそも告白云々していない上に最後の最後で夏凜から襲撃(?)にあった、という流れ自体は文字にすると原作から逸れてはいないように見えるが、内容的にはもはや修正不能なまでの状況に今後を思えば頭痛が痛いし胃痛が痛いし、もうなんか何もかもが痛々しいのである。
血の涙でも流れてないよね、と思わなくもないくらい追い詰められた私は、とりあえずの避難先として自室ではなく雪姫の執務室を選んだ。何故か? あっちはあっちでいつもの面々に襲撃されそうだし……。いや、三太は空気を読んでくれそうだが、九郎丸は気遣いから、キリヱ大明神は嫉妬(?)から話しかけてきそうなもので、それはそれで「第四の目」を啓いた場合のしっちゃかめっちゃかさからの現実逃避というだけである。
というか戻ってくる直前に夏凜に対して「第四の目」を啓いてしまい、そっちもそっちで色々と酷かったのだが……。いや今思い出せるメンタル的な余裕が無いのでスルーしておこう。
夕焼け差し込むこの部屋にて、最上階にキリヱの気配もない。九郎丸もいないことを確認した上でこちらに来てるので、何というか久々に親子水入らずといった形であった。
ソファにぐでーっと、久々? に和装に赤マフラーのまま倒れ込む私に、苦笑いしながら雪姫はコーヒーを入れて、目の前の応接机に置く。いやコーヒーじゃないな。色が思いっきり白っぽくなってるし。設備的にインスタントなんだろうがカフェラテなのだろう。
「……粉っぽい」
「う、うるさい。
文句を言うなよ、せっかく気を遣ってやってるのだから」
「それについては感謝っすわ。ラテなのも、一応こっちの胃に気を遣ってって感じか?」
「わかれば良い。……犬上の所の孫にも最近牛乳が手放せないと、愚痴られてるからな」
その愚痴って来た相手はひょっとしなくても夏美姉ちゃん!? と脳裏に駆け巡るは、釘宮というより犬上の家にちょっとだけ厄介になった記憶であるが、意外とあっちとも親交があるのだろうか。犬上小太郎の物言いから、そっちとは少なからず険悪とはいわずとも隔意はありそうな気はするのだが、果たして……。いやどちらにせよ、私がそれを知った上で確認するのは少々不自然な気もするので、ちょっと躊躇してしまうが。
いやしかし? 釘宮の祖母であることを考えるとそこまで不思議でもないのだろうか。……祖母、祖母、祖母というとおそらくもう一人の方の祖母であるところの釘宮円もどうなってるのか、興味があるような、ないような。彼女もまた「ネギま!」においてネギクラスの一員であったことを踏まえれば、何かしらありそうな気もするが、しかし夏美姉ちゃん……、呼び方がややこしくなるのでこのまま通すが(鋼の意志)、夏美姉ちゃんのように魔法関係者との本契約でもない限り、魔力=生命力が足りなくなっていくだろうことと。ついでに言えば春日美空が「本来なら」既にお亡くなりになっているご高齢であったことを思えば、知らなくても良いのかもしれないが。
そしてそのことを思った瞬間、視界の端に「ちくわ大明神!」という思念が走る。いや「第四の目」が完全に閉じ切ってはいないのだろうから、時折こうやって思念が見えることもなくはないと最近気づいたが、それはそうとして誰だお前……、誰だお前!? 気のせいでなければ間違いなくアマノミハシラ学園都市での例の事件の収束の際、隙を見はからっては私に絡んで来た幽霊か何かの類の思念ではあるのだろうが、何故ここにいるお前さんや。タイミング的に、まさか春日美空の幽霊と言う訳でもないだろうに。本人が死亡していようとも、その精神はココネの
突然表情が引きつり始めた私に「どうした?」と不思議そうにする雪姫だが、なんでもないと軽く手を振ってため息。いや「ヴああああ……」とゾンビめいたうめき声になってるあたり、精神的な疲労度が我ながら高すぎる。
何をやっているのか、と呆れたように肩をすくめる雪姫だが「余裕があるなら軽く経過を聞いておこうか?」と言ってきた。
「費用はほぼかからなかったし、
報告書もそこまで真面目に書かなくとも良いが、最低限内容と成果くらいは残せ。
早いうちに出した方がポイント高いぞ?」
「意外とそこはキッチリしてんのな……」
「縁故採用で贔屓されているみたいなのはダサいから嫌、と言っていたからな」
「懐かしいなぁ、あのやりとり」
あれは入団試験の後の話だったか。雪姫が手を出さなければ、そのまま私と九郎丸は夏凜の小間使いとしてしばらく研修という形になったんだろうが、もしそうであればバサゴからああも険悪な対応をされることもなかったような気が、なんとなく今した。けっこう上下関係とかに厳しそうだし、ほぼワンオペで旅館経営やらホルダー 一般構成員を仕切ってるような節もあるから、ストレスフルだし、だからこそ明らかに贔屓されて縁故採用されたような私は特にイライラされるのだろうと思うので、直接危害を加えられない限りはどうもしないのだが。
というか、何でバサゴはああいう扱いをされるのか……。本人は雪姫を慕っていそうなものだが。
「報告っつーか、その前になんだけど。そういや、カトラスの扱いってどーなんだ? とりあえず『出しても大丈夫』だってお師匠からOK出はしたし、もうそー簡単にどうこうってなりはしねーと思うんだけど」
「
……まあ、あの魔女が解放したと言うなら、あの魔女の視点から見て、お前がどうこうされる可能性は低いと言う事だろう。だから、内容を踏まえた上で対策を考えるよ。
それ以上完璧を求めたところで、所詮は私が限界まで警戒したそれとそう違いはあるまい。
全く、人の家庭のことに首を突っ込んできて……」
その家庭をぶち壊しかけたのって最終的にはエヴァちゃんでは、と一瞬条件反射で煽りかけたが、苦笑いを浮かべる彼女の目の色を見てそれは止めた。「第四の目」を使わずとも、なんとなくだが「ネギま!」の頃のクラスメイトたちのことでも回想してそうな、優しそうな表情だったから、そうするのも
というか、さっきから「カアちゃん」呼びをするたびに視線がどんどん柔らかくなっていってるので、近衛刀太の立場としては嬉しい限りで有り、「私」としての立場としては荷が重い。二律背反しているため中々胃に負担がかかってきそうだが、声高に言えば何かを察したか聞きつけたかして夏凜がまたぬっと現れそうなので、この場では呑み込んでおくからヨシ!(ヒヤリハット)
そして再度、何を修行したのか聞いてくる雪姫である。まあ修行の話といっても、そう多く話せる部分はないのだが。大概が「私」が私で有るが故にそれに依存するタイプの修行も多く、ストレートに時系列で語ると何か大きなミスを犯しそうなので、大枠だけ教えることにする。
……ガバのおさらい以外についてはなァ!(血涙)
「やったこととしちゃ、精神的な責め苦とか(※好感度ガバおさらい)『金星の黒』に繋がってない状態での身体の鍛え直しとか(※大河内アキラおよびメイリンとの訓練)、あとカン? みたいなのの先鋭化というか(※
「順当といえば順当に聞こえるが……。
お前、何か隠していないか?」
「詳細は話したくないんでほぼほぼ割愛してまっス(震え声)」
実際問題追及されて大丈夫なところなど、黒棒のところくらいなものである。
と、それで思い出したが、雪姫もまた黒棒本来の使い方については知ってる様な匂わせがあったか。そのことについて聞いてみると、「当然だ」と返された。
「元々『
けっきょく本人が性に合わないということで嫌がったから、使っていたのはタカミチになっていたが……、と、これは以前に話したか?」
「ちょっと覚えちゃいねー」
「まあ、タカミチ……、お前の祖父の友人だった男だが、そいつが
まー、アイツもネギのやつが裏金星から発掘してきた古文書を解読して、晩年はラーメン屋を開業したりと中々カオスなことになっていたが」
「かんかほうとか裏金星とか全然わかんないっスけど、えっ? あー、ラーメンたかみち?」
「ああ。あそこの豚骨スープのルーツは、まあ、端的に言えば魔族由来だ」
マジかー、と、「ネギま!」なんだか「ネギま!?」なんだかわからない情報が混濁していてもはや意味不明である。混乱する私に、しかしギャグのようなその話すら無視して彼女は真面目に、どこか懐かしそうに微笑みながら続ける。
「もとは食糧問題解決の糸口として何か使えないかというのが発端だったんだがな。
人類より進んだ魔族の文明の発展経路のどこかに、同様の問題があったのではないかと私からあの『狭間の魔女』に相談の手紙を書いたのが切っ掛けだ。
そして遺跡を指定されたから、その場所まで色々知り合いの悪魔をボコボコにして仲介させ、私とネギとでちょっとした地獄旅行だった。
そのサルベージ結果だが、結局、他にもいくつか解析した情報も含めて、何故かラーメンが出来上がる始末でな。無駄にするのももったいないからと、前線を退いたアイツがレシピを引き受けて、今日に至る訳だ」
「話のスケールが壮大なんだか何なんだか……」
「国内だけだが地味に全国区になったから、まあまあスケールは大きいんじゃないか?
熊本にもあったろ、ラーメンたかみち。
まあ今じゃ買収されて超包子グループの傘下なんだが」
「それ初耳なんだけど!?」
チェーン店としてのノウハウなど、あいつにはなかったからなぁ、とけらけら楽しそうに言う雪姫。そのカアちゃんの顔は、なんというか、故人を忍んでというわけでもなく、ただただ懐かしい話を語っているようで。なんとなく聞いている分には楽しそうであり、同時にどこか辛いものがあった。
「しかしまあ、何だ? アレには会わなかったか、
「果心居士?」
「ん? ……あー、正しくはカイン・コーシだったか。いや会ってなければ良い。メイリンとか言ってたあの女がどうなったか聞きたかったところだが、面識がなくともそのうち探せはするだろう」
なんかもう色々お止めくださいませカアちゃん阿修羅観音様(震え声)。
咄嗟にそんな内心で手を合わせ拝みだした私に「ど、どうした!?」とちょっと引いてるカアちゃんであるが、まあこのあたりキリヱ大明神に対する奉ってるアレのノリが咄嗟に出ただけなので気にしないでほしい。
というかなるほど、あっちはあっちでちゃんと「この」エヴァちゃんの歴史には組み込まれた形として成立しているのか。何というか、ギリギリ原作破壊を回避できているようで回避できていないような、何とも言えない嫌な汗が流れる。
それを誤魔化しつつ、仮契約カード的なもので黒棒を呼び出したり血装したりと、色々と誤魔化しにかかる私だ。流石に雪姫も「まさかそんな方法で血装を成立させるとは……」と、現状の黒棒と私との関係やら何やらを説明すれば唖然としていたが、それと同時に何か痛々しいものを見るような目で見てくる。何だその感情。色々怖くて「第四の目」を使う気にはなれないが、そんなまるで死にに行く兵士を見守るような目をされましてもですね。
「いや、まあ、あまり言いたくはないが……、黒棒に封じられている方のお前の魂の一部が可哀想なことになっていると思ってな」
「可哀想? ……そういや黒棒も言っていたか」
「その辺どうなんだ? アトラクター」
『……………………まあ、色々、問題はあるな。少年誌的に』
少年誌的に問題があるとは(すっとぼけ)。
即答して来た黒棒に「やはりか」と苦笑いする雪姫。いや、あまり考えないようにはしていたが血装であれほど大量の血を生成するのだから、金星の黒の力を放出する装置のような役割に徹しているその分身については考えないようにはしていたが、えっ? 何、そんなにグロいことになってるん?(京都弁風)
『気にしたところで無駄だし、もはや問題にするだけ無駄な話だ。既に契約は為されており、今の私とお前とは一蓮托生なのだからな、相棒』
「そりゃ、そーなんだろうけどさ。相棒」
「仲も良くなって何より、というべきか? まあ即死リスクが減ったことについては、素直によくやったと言ってやろう」
そう言ってわしわしと私の頭をなでた雪姫は、こう、特に何かあるわけでもなく、いつも通りのカアちゃんに見えた。
その後の話し合いも、特にとりとめもなく。雑に空中にテレビのホログラフィックを映し出して、ニュースを見ながら適当に仕事する雪姫と、これまた適当に報告を口頭であげる私と。なんとなく、色々気にしないで済むような「家族」の距離感が酷く懐かしく感じる。考えてみれば、それこそ熊本以降はそれどころではなかったし、こっちに来てから二人きりでどうこうって話があったのも、直近の師匠に連れ去られる前のアレくらいなのだ。
まあ、若干特訓のあたりで大河内アキラ遭遇についてはギリギリバレそうになりかけたりといったのはあったが、ギリギリ誤魔化せた気がするので良しとしておこう(良くない)。ラーメンたかみちの話題から、彼女の在学中の話題に跳んだりしたのが大体の原因だが、まあ、「ネギま!」中学生編の話はそれはそれで本人から聞くと楽しくもあった。
…………体育祭後、神楽坂明日菜のいなくなった3ーA(ネタバレ)にアンナ・ユーリエウナ・ココロウァが転入してきていなければなァ!(白目)
何それ、ネギま!? ネギま!? の方なの? 色々世界線おかしいんじゃないっスかね、どうなんですかお師匠!!?(ダーナ「アンタの好きな時系列とイベントの玉突き事故ってやつだよ」)
「誰、オブ、誰。この写真の子、見覚えないっすけど」
「誰と言われても、熊本で写真を見た時とかに見てなかったか? ……って、そうか、神楽坂アスナのいる頃の集合写真にアイツは映ってなかったか。
まあ、ぼーや、お前の祖父の幼馴染だよ。とはいえあのバカレッドの代わりは、あの女には荷が重かったようだがな。
中々良いリアクションで怖がってくれるガキだったが、いわゆる運命力といったら良いか、そういうものは足りなかったらしい」
まだしも長谷川千雨の方がぼーやに食いついていたしな、とどこか懐かしむような表情のカアちゃんは、しかしそれらを過去形で語っていた。
やはり、遠い。親子の距離感としてでは、それ以上に踏み込むことが出来ない。これはこれで今後のことを思えば拙い問題があるのだが、その対処方法をいまだに私は考えられていない。本能的には……、考えたくない、のかもしれないが。
ともあれ一通り話して、そろそろ夕食でも食べてこいと背中を押され、執務室を後にする私。なんとなく名残惜しく、扉の向こうへ去り行く雪姫の背中を見続けてしまう。単なるドアと、部屋と、彼女と私だが。なんだかそれが、とても遠いものに感じられてしまうのは、これも含めて、私の不手際なのだ。
だから受け入れなければいけないと。……自分が今、どんな顔をしているか、さっぱりわからないままに、音を立てないようマナーに気を付け乍ら扉を閉めようとして――――。
「――――嗚呼、それから言っておくが。
後に日本に行った際、流石に違和感があったからな。
下手な洋画の勘違い日本描写じゃないのだし」
はい?
思わずその場で硬直した私。扉は半ドアのまま、引く前に思考が真っ白に染まり。
仕方ないとばかりにこちらに歩いてきた雪姫は、呆然としてる私の顔をニヤリと見て、軽く扉を閉めた。
……えーっと、もしかしてさっきのアレってばカマかけだったりしますかね(震え声)。
いや、それがもし仮にバレたのだとして、一体それが何のガバに繋がるかとか全然わからないので、要は、私は悪くねェ!?(現実逃避)(ダーナ「悪いとしたらもっと後の時系列のアンタだよ。ねぇ、超」超「あ、いやー、あはは…………」)
あっそうだ(唐突)、メイリンの弁当は夜に開封した。一応中華風の料理の取り揃えであったが、味についてはまだまだ普通に味わえるほどでもなく、塩と酢のバランスが雑であった。超包子の域への道は遠い……。「ネギま!」においては、何気にそのあたりも熱心に頑張って上達したのやもしれない。
次回よりラブコメ編・・・の前に何かやるかも(未定)
追:メイリンの弁当を処理した話を完全に記入忘れてたので記載。