当然のごとく本作解釈となっておりますので、あしからずです
ST208.The Melody Of Destiny Always Prays The Bad Truth, That's True.
いきなり断言するが、喫茶珈琲の豆に対して病的な拘りはない。飲んだ中で一番ショッキングだったのはコナだし、一番好みはグアテマラであるが、こぞってカアちゃんが良く買っていたのはブラジルだし、店を出したら使うのはブルーマウンテンを中心にしようと決めている。このあたりは個人の趣味趣向より、より多くの人が呑みやすい味わいを前提としてあたろうと考えてる。
さしあたって現在呑んでいる珈琲の味はと言えば、妙に炭っぽい。苦さと酸味の感じからしてブラジルの強い味わいで若干苦手な上に、良く言えば香ばしさを極めたような風味が追加されていて、端的に言ってやかましいくらいに苦い。アイスコーヒーですらこの具合か、ということはおそらく焙煎したてを使ったと見える。味に落ち着きがないお陰で、カアちゃんが淹れるアメリカンなブラジルの方がまだ飲みやすいか。斜め向かいの大人フェイトもまた私のような感想を抱いているらしく「新人さんかな」とつぶやき、しかし表情を変えずブラックのまま呑んでいた。
「刀太君、どうしたの? ちょっと不機嫌そうだけど」
「いやー、まー、反面教師かなっつー感じで」
「?」
「何や、刀太も珈琲には煩いん? フェイト君と趣味合いそうやな~」
「待ちたまえ、僕は別に煩い訳ではないぞ」
「えぇ~~、本気で言っとるん? ウチ、中学生ん頃に『日頃の感謝や!』って準備してたの、えらい怖いオーラ出して『貸してみろ』って言って奪い取って、どえらいキレッキレの注いどったんは誰やろな~」
「…………」
「お疲れ様っス」
「…………あぁ」
「何や、刀太! んな、まるで熊退治でも任された警察官はんにかけるような言葉。そんな遠い目されるほど違う思うわ」
「だったらせめてそのウィンナー・コーヒーのクリームをフェイトのカップに落とそうとするのは止めて差し上げろ(戒め)」
「えっでも……、美味しいやん?」
「その美味しいものと美味しいものを合体させれば何でも美味しくなるみたいな発想についちゃ色々物申したいところっスね。セミプロっぽいのが友達にいる身としちゃ」
「えぇ~? せやなぁ。…………」
「だからと言って俺の方にも持ってくるんじゃねぇ!? というか何だこの距離感!!? 前もそうだったけど!!!?」
「それやったら、あーんしたげようか? 刀太、赤ちゃんの頃ずっと保育器やったから、全然してあげられなかったしな。ほな、あ~ん」
「いらない(震え声)」
「と、刀太君、そういうのだったら僕のところのアイスクリームを――――」
「そっちも、いらない(震え声)」
明らかに揶揄うようニヤニヤ笑うおかあさん、近衛木乃香とうり二つと言わんばかりの近衛野乃香と、うずうずしながら私にあーんでも仕掛けようとしているらしい、完全女性化している女装九郎丸こと九龍。この妙な距離感の近さに帆乃香の抱き着き癖を思い出さなくもないが、年齢を考えれば大人げないこと極まりないお母さんである。
それはそうと九郎丸は落ち着け(戒め)。ほら、フェイトが死んだ魚みてぇな目をしてこっちを見ているじゃないか。釘宮や私ではないが、だいぶ胃がやられていそうである。合掌。
場所は軌道エレベータ―「アマノミハシラ」展望台から二十階は下。標高で言うと旧
所謂レトロ喫茶のようなそれではなく、コンクリ打ちっぱなし系と言えば良いか。カジュアルにインテリアや本などが置かれ、こまめに掃除やら飲み物のお替りを確認しにくるウェイターなどがいたりと、意識高い系と言えなくもない。サラダメニューもオーガニックに拘っていたりするようだし、女性客の多さからもそのテの趣味の良さが伺える。
そんな中で似非デート中な我々と、どうも本人いわくガチなデートをしているらしいフェイトたちという妙な組み合わせで、この喫茶店に来店した。流石にフェイトは有名人らしく半透明のサングラス(ちょっとス〇シカオっぽいやつ)をかけて入店。対照的に野乃香お母さんは鋼鉄の勇気でもって年甲斐もないミニスカセーラー服のまま。九龍は「似合ってるね!」と好意的に見ているようだが、はっきり言って子供(?)としては色々キツいものがある。外見上いくら違和感がなかろうが、そのあたりは仕方ないね救いはないね(絶望)。
……色々動揺していたせいで店名は確認していなかったので、後でみておこう(現実逃避)。
『えっと、支払いは――――』
『そんなん払うわ払うわ、せっかく
とか何とか言ってフェイトのみならず私や九郎丸も妙なバイタリティで引っ張ってきて、気が付けば現在。どうやら振り回されているらしいフェイトは「第四の目」を一瞬ちらりと使ってみれば「ネギ君」の3文字がびっしり踊っており、すぐさま
対照的にお母さんは幸せそうだが、逆にこっちは「第四の目」を使う気にならない。帆乃香の情報管理ガバガバっぷりを鑑みるに、どうにもこのお母さんも色々信用できないのだ。誰が好き好んでこのせつ結婚式の映像とかいう、ファン的には大好物かつ当事者的には恐怖映像のようなものを好き好んで見たいものか好き好んで!?(錯乱) 遊び半分で姉妹揃ってベタベタしながら垂れ流されたアレについて記憶には残っていないが(鋼の意志)、それはともかくとしてメタな意味で信用が置けないのは事実である。完全に個人の事情で申し訳ないが、そう言う訳で会話は細心の注意を払いたかった。
払いたかったのだが…………。
「あんなーフェイト君、ウチいまカフェインレス生活中なんや。緑茶も飲まんし栄養剤にも手ぇ出してへんし、コーラは帆乃香たちに買って帰るくらいかなぁ」
「そうかい? だったらエスコート先を間違えたか――――」
「いや別に構わへんけどな? 単に飲んでへんってだけやもん」
「なら何故話題に上げた……?」
「単にカフェインとっとらんかったなーって思ったんや。まーうち烏龍茶派なんやけど……、って、おおぉ! すっごい、えらいお高いねぇこのステーキ! ペラッペラに見えるけど、何の肉なん?」
「普通にビーフと書いてあるだろう。どこを見ているんだ」
「ふぅん、おいしそうやねぇ……。あっ! 店員さん済みません、このキャラメルミニサンデーお願いしまーす!」
「ステーキはどこに……?」
「美味しそうやけど食べたい気分違うしなー。まあ馬肉大好き毎日でも食べたいくらいやから、あんま牛食べへんけど。牛丼より親子丼や」
「君は京都の実家で好んでカツオの刺身を食べていたような気がするが…………」
「まあ細かいこと気にせんでええやん? 人生、楽しんだもの勝ちえ! 地獄なんて怖ないっ」
「………………」
「えいや、ぷにっ」(※フェイトの頬を指でつついている)
「いや自由かッ」
会話が奔放で噛み合ってなさすぎるどころか明後日の方に飛んでいきそうな勢いである。流石のフェイトとて遠い目をするくらいに、話の内容が感覚的すぎるお母さんといえた。服装に引っ張られでもしているのか、以前会った時よりもテンションが高く言葉がテキトー極まりない。伊達にカアちゃんから「バカ娘」などと呼ばれていないということだろうか。
というか自分で「ぷにっ」とか言うな、ぷにっとか。子供版ならまだしも大人モードのフェイトことフェイタス(適当)はそれ相応に凛々しい容姿をしているので、指でつついてもそんなに柔らかいほっぺはしていなそうに見える。そしてフェイトもフェイトで鬱陶しがっているのは間違いないが、近衛野乃香に対して何故か反抗せず、されるがままになっていた。何だろうか、弱みでも握られているのだろうかというレベルの傍観ぶりである。傍観ぶりではあるが、だからといってその内情を探るために
そしてひとまず、それぞれの頼んだメニューの前に珈琲が届く。お母さんがウィンナー、フェイトはエスプレッソ。私は普通に水出しアイスコーヒーで、九龍だけ何故かクリームソーダ。可愛い(思考停止)。さくらんぼが可愛いくてなお可愛いといえる。
「あー、さくらんぼかわええな~? えっと、お名前、誰ちゃんなん?」
「ぼ、僕はその――――」
「時坂九郎丸。確か半陰陽性だったはずだな。というより以前、顔だけは合わせているだろう、君も」
「えぇ~? せやかて金髪の子なんて雪姫はんくらいしか……、いや普通に染めれば良いわな。専用アプリもあるくらいやし」
「キリヱ大明神ェ……」
「!? な、何故僕の性別のことを……ッ!」
「おおかた、カアちゃんと情報交換でもしてんだろ(適当)」
「正解、だ。ヒントもないだろうにその即答、事前にそのことを予想していたんだろうね。…………」
「おぉ? 何かフェイト君、嬉しそうやな~。ぷにぷにっ」
「ちょっと、話しづらいから」
「は~い♡」
一体何に嬉しくなったんですかね(白目)。いや
……そこに居るはずの無かったお母さんの存在は除いて(ガバ)。
というかお母さんに関しては、ニヤニヤしながらフェイトの頬をつついていたら、流石に手を取られて中断させられ、しかしそれはそれで嬉しそうに笑っている。というか「は~い」の語尾、明らかにハートマークがつくレベルのテンションだったぞ。一体何がどうしてそうなった。正気かこの世界!?
「はんいんよー、って、つまりアレ? 性別が定まってないんかなー。ふぅん、で今は女の子寄りいうことなんね。ふぅん、ふ~~~~ん」
「あ、あうぅ……」
「あんまり見るの止めてさしあげてくださいっスよ(白目)」
「減るもんやないし、別にええやん? こんな可愛い子に可愛いなんて言えないようなジェンダー観なんて崩れて久しいし、愛でるべきものは愛でるべきや!」
「それはそれで容姿贔屓みたいな感じで嫌な感じっスね……」
「でも、どう見ても可愛い子が私可愛くないからとか言い出したら、それこそ同性には嫌味やん? まーどうあがいても嫉妬だってされるし、いじめられもするから、人生諦めが肝心やで?」
言い返せない。刀太君と同じこと言ってる……、と九郎丸。実際「私」としての人生観は大前提がそれではあるので、嫌な所で親子の一致をみている感じだ。とはいえそこで発生したガバに抗う姿勢は
実質的なことを言うと大変デリケートな話題なので、平に、平にご容赦を……(震え声)。
そして、そこから先の発言は完全に私やキティちゃんとは異なるスタンスだった。
「大事なんはな、その時その時になるようになった結果で、どうやって楽しんで生きるかや! どうあがいても悲しいことはいっぱいあるし、私の手の届く範囲ですらどうしようもないことはいっぱいある。
だから、それでもなお前を向こうって、私くらいは笑顔で言っとかんとなー」
「――――――――そう言う所は、君の良い所だと思うよ」
「ん? 何やフェイト君、惚れ直した? ん? ん? ……何で黙るん? 何か文句でもあるん? ん?」
お母さんの物言いは、ある意味で私のこれまでの
あえて回想はここでしないが、私やカトラス、千景やらでち公(最近見ないな)および
嗚呼だから、もしかしてそういうことか? 本人がどう思っているかはともかく、少なからず自分の知るネギぼーずの縁者として、これまでの人生は決して無駄ではないと肯定してくれる存在だから。だからこそ、そういった交友関係を完全には否定したくないから、フェイトも何も言わずにいるということだろうか。
それこそ終始、お母さんのペースに圧され続けて、私たちの間でもたれるべき本当の意味での「世界救済」に関する匂わせすら、一つも出てこないくらいなのだから。
そしてそれは、
「えっと、お二人はすごく仲が宜しいんですね」
我々そっちのけでベタベタとフェイトと遊んでいるお母さんに対する、大人げない大人に対する九郎丸のそのセリフ。若干困惑も含まれているが、それはそうと微笑ましいものを見るような目で見ていた。
うん、ある意味で普通だ。状況のガバガバ具合さえ目を瞑れば、世界かくあるべしという平和な光景だ。だからこそ目を閉じて珈琲を口に含んでいた私。若干やかましくもあるが、これはこれで
しかして、ここから先のお母さん発言こそが、嗚呼この人やっぱり私の血縁上(?)の母である以上に、帆乃香のお母さんなんだなぁと思わされるものであって――――。
「――――そりゃ、なあ? 『新婚』さんってこんなもんやあらへん?」
………………………………………………。
…………!? !!? !!!!!!!!?!?!?!!!!!!!!!!!!?!?!?!?!!!?!?!?!?
ちょっと何言ってるかわからないですね(事実確認拒否)。
「…………何…………、……だと…………?」
気が付けば、私の口から零れていたのは
隣の九郎丸も私同様、それこそ
そしてお母さんは、近衛野乃香はまるで何事もなかったかのように、ごくごく自然に当たり前のように、にこにこと話を続ける。
そして呆然としすぎてしまったせいか、帆乃香の時のように制止をかける暇もなく、次々明かされる与太話の類。誰が何といおうと与太話の類(鋼の意志)。
「新婚さんやで~? まー、内縁とはいわずとも、ウチが小学生くらいの頃からずっとお世話になってたし、中々世間体もあって時間かかったけどな~」
「えっ犯罪?」
「いや九郎丸ちょっと待てよ、待てよ(良心)」
カトラスでもないのにちょっと引きかける九郎丸。フェイトの方を見て顔を青ざめさせるが、別に当時に手出ししたわけでも無いだろうし、本来のフェイトの姿でいうと特に何も問題はないというオチまでついてくるので、色々考えるだけ無駄である(現実逃避)。
「違う違う、そういうんやないで? 好きだったんは私の方で、それも一方的だったんえ?
フェイト君も
「それは関係ないよ。後は、……当時はここまでバカ娘ではなかったのもあったからね」
「あ~~~~、酷いわ『ダーリン』。もうちょっと労わってな? フェイト君のために『3人も産んだ』んやから」
「その話、待てよ(震え声)」
「ウチがフェイト君のこと好きだったから、
「いやちょっとその話、待てよ(震え声)」
「や、やっぱり犯罪……!?」
「九郎丸ちゃん、合法え? まーその後色々あって決別して、紆余曲折あって仲直りして、2年間くらい精神ボロボロのフェイトくんと付き合う形でなー?
帆乃香たちは経緯が経緯やし、お父さんって受け入れてはくれへんのやけど、それはそうとフェイト君が『人間らしさを失わないために』出来ることが何かあるか? って思ったら、そら結婚やな! という感じで…………、ウチがお婿さんに貰ったんやわ」
「「しかも婿入りなのッ!!?」」
衝撃に衝撃を重ね意味不明な文字の羅列に、右耳から入ってくる情報は左に受け流され頭の中の目は滑り通し。心なしか星月ですら『えぇ……?』と困惑している大河内さん声が聞こえるが、えっお前さんすら知らないだと? 何この…………、何? 何だこの状況。
「ちなみに刀太と会った後、すぐ籍入れたんえ?」
「いや、そんな無駄情報はともかく……」
というか
「……公表する話でもないし、今更式を挙げるような付き合いでもない。そもそも彼女は近衛の本家筋ではあるが家を継ぐわけでも無いから、僕の戸籍がフェイト・
「いやフェイト・A・近衛ってお前さんさぁ……、お前さんさぁ…………」
いやだから、お前さんさぁ……!?
謎の悪寒で身体がぞわぞわし、視界の端に「ちくわ大明神!?」と思念が映る。残念ながらこの状況でツッコミを入れる余裕はなく、空回りしていた思考回路が段々と現実に追いついてきた。
「こういうのアレやな? 惚れた弱みって感じやねフェイト君」
「断じて違うとは言っておこう。感謝は、しているがね」
少なからず「戻りかけた」僕がこうしてネギ君と育んだ精神性を取り戻せたきっかけに違いはないのだから、と終始無表情のままのフェイトは、何故か私に向けてどこか申し訳なさそうに眉を寄せて、目を伏せた。
いやその……、だからその、ですね。原作で絶対ありえないレベルの話というか、そもそも「私」の生みの親は描写的に刹那刹那、一瞬出て終わりというのを繰り返すレベルの、バックグラウンドから色々怪しい具合のキャラクターだったはずであってですね。
ははーん? カイン・コーシが雪姫にバレていた件も含めて、さては私ってばまた過去に行く話がこの後出て来るんだな? どうせ過去でまた何かやらかすんだな? そうなんだろ答えてみせろや超鈴音! 仮契約カードなんて捨てて、かかって来いッ!(
(超鈴音「直接乗り込んでかかっていった方が先輩のガバそのものじゃない、かナ……?」ダーナ「知ったところでどうしようもないんだから、せいぜい今を楽しみな。ライブ感だよライブ感、アンタの好きなアレのねぇ」)