今回独自解釈オンパレードですが、タイトルで何が起こるか察してもらえると凄い助かります汗
ST21.Worldview Jenga
「おおむね判ったわ。つまり九郎丸、貴女の中にある不死身の核の力を、もっとうまく引き出したいという事ね。
だったら最初からそう言えば良かったのです、中途半端に実家の話を途中で経由するからややこしかった」
「す、すみません……」
「そういう素直な所が可愛いんでしょうが。刀太も慣れない反応をしていますし」
「えっ!?」
突然の夏凜先輩の発言はともかく、おおむね僕は自分の経歴と、その力の根幹について話し終えた。流石に刀太君の胸をつらぬいた話についてまでは話していないけれど、結果としてなんだかちょっとからかわれてる様なことになった。ただ夏凜先輩は無表情のままなので感情が読めない……。
ふむ、と顎に手を当てて、彼女は思案した。
「とはいえ問題ですね。確かに早々、不死身を封じられることはないからとは言え、貴女自身の『不死殺し』の力を自由に操れないというのは。何かの拍子で発動しても解除できないというなら、訓練中での事故も十分あり得るでしょうし……」
「その、夏凜先輩の場合だとどうなんでしょう」
「私? 私は…………、すみません、参考にならないわね」
私のこれって、ある意味で外付けなんでしょうしと。無表情ながらどこか自嘲気味な夏凜先輩。
「私の不死の根幹の正体は、正直な話、私自身でも確定はできていません。雪姫様や甚兵衛と推測らしい推測は立てたことがありますが、あくまで仮説段階です」
「それは一体……」
「――――神、というものを貴女はどう思いますか?」
桃源神鳴流であろうと京都神鳴流であろうと、もともとは平安の京を妖魔の手から守るために作られた剣術と聞く。成立経緯から考えて、古い時代の荒ぶる神を鎮めたことも当然あるはずだ。だけれど、それが僕の中における神のイメージに結び付くかどうかは別で……。
僕の中にある神のイメージは、きっと今、僕の内に眠る「ヒナちゃん」のことなんだろう。
「……分かりそうで、分からない、近いようで遠い存在、でしょうか」
「……そうね。『今となっては』私にとっても、そんな感覚が近い。私の不死性というのは、そういう神が常に私を『視ている』からこそ起こり得るような、そんなものなの。
だからこれは引き出そうと思って引き出すというより、そうね…………。この国の言葉に合わせるなら、願い、奉って、降ろしてもらうというのが正しいのかもしれないわ」
「願い、奉る……」
「ごめんなさいね、あまり参考になれそうになくて」
いえ! と。力なく笑う夏凜先輩に、ちょっと僕は慌てた。むしろ参考になったかもしれない。彼女の言う神の捉え方と僕の捉え方は違うかもしれないけど、でも根っこの所にあるものは似ているのかもしれないと。不思議と夏凜先輩に親近感が湧いた。
ただ一つ問題があるとすれば……、「ヒナちゃん」は、僕の内で眠っているというより「もう僕」なのだ。僕らにもはや境目がない、というより「ヒナちゃん」自身が、それを意図していたんじゃないかって思う。
生きるのに飽いた――――あの時、そういって僕に命を譲ってくれたように。
「僕は……、頑張れるのかな、ヒナちゃん」
「――――何だか面白い話をしているなぁ、お前たち」
「えっ?」「雪姫様!?」
上空から聞こえた声に視線を向けると、上から雪姫様が降りてきた……、スーパーヒーローみたいな三点着地をして。姿はあの十歳のもので、服装はこう……、チェーンとかジッパーとかが多くて、なんか、こう、すごかった。
ロックな感じって言ったらいいのかな、すごいカッコい感じだった!
雪姫様……、えっと、そうだ、小さい方はエヴァ様って呼ぼうか。エヴァ様は僕の視線を受けて「なるほど、こういう趣味か……」とニヤニヤと笑っていた。
「いや何、修羅場でも始まるかと思ってちょっと仕事の傍ら『人形』に監視させてたんだが、いつまで経っても何も変わらなかったから詰まらなくなってな。
私闘が始まったら散々からかってやろうと思っていたがそうもならなかったし。
こうして直にどんな話をしてるか、聞きに来た塩梅だ」
「修羅場って何ですか修羅場って!」
「そうです雪姫様、九郎丸と私では求める所が大きく違います!」
「ほう何が違うのか……、ちょっとお
いや真面目な話だったようだから、普通にアドバイスしてやろう。
パワーアップのための作戦会議としては、中々いじらしいしな?」
「い、いえぁお、いじま……?」
「雪姫様、言語回路が崩壊してます」
「そう言いながらお前は私の頭を撫でようとするな、何だそのわきわきとした手の動きは……。
撫でるなら九郎丸にしてやれ、というか慰めてやれ可哀そうに」
「いえあの! 絶対雪姫さんのせいですよね!?」
思わず叫んだ僕に、かかか、と大笑いするエヴァ様。前にも思ったけど長い髪がすごいサラサラで綺麗で、ものすごい可愛らしい。
「で、そうだな。お前の不死殺しだが、察してるとは思うが『お前の兄』の『不死払い』とは根本で違うだろう。自覚はあるようだから、細かくは言わないがな」
「……あの、雪姫様はひょっとして兄のことを……」
「さぁて、な? 細かく言うのは野暮というものだろう。
話を戻すが、熊本からこっちに来る間の訓練を見る限り、お前の不死身を支えるギミックは二つ。どちらも肉体をある一定の状態まで再生することに長けているな。
一つはお前に施された呪術的な超回復。もう一つは、神刀を核とした『健全な状態に』回復させるもの、といったところだろう。
聞いた限り、前者の『呪式不死化実験』自体では、今の状態まで健康体になることは難しかったはずだ。
このあたりは後者の要因が大きいと見える。…‥推測だが、おそらく因果律とかそういう高次元からの干渉になってくるんじゃないだろうか。
例えば…………、『死する運命を常に覆し続けている』とか」
「高次元から……?」「……っ、そんな大掛かりな話なんですか? 九郎丸の力は」
驚きを露わにする夏凜先輩に、エヴァ様は肩をすくめる。
「大なり小なり不死身の『モトネタ』は厄介なものが多いがな。
で、だ。九郎丸、現時点でお前がその力を引き出すとっかかりについて思いつかないというのは、なんとなく判る。こればっかりはおそらく鍵になるものが全く見当たらないというのがあるだろうからな。
そこで、私から提案なんだが――――」
※ ※ ※
「――――ネオ・パクティオー …………、だと…………?」
九郎丸の唐突な、原作にピッケルでもブッ込んでハンマーを打ち下ろすような破壊宣言じみた「(仮契約)やらないか」発言により崩壊した私の自我が回復するまでに数分。途中、九郎丸に揺さぶられたり夏凜に抱きしめられて頭撫でられたり、二人そろって耳元で息を吹きかけられたりと言った謎挙動はあったものの、正気に戻った私が雪姫(というかエヴァちゃん)から聞いたのは、耳を疑う発言だった。
「ああ、ネオパクティオーだ。通常のパクティオーより、九郎丸の目的には合致しているだろう。元来パクティオーの概念について少しふれると、元来古くから魔法使いは、呪文詠唱の際にどうしても隙が大きかった。それを補うために作られた概念が『
「いや、そっちの話を詳しくされたって意味わかんねーって……。えっと、そういう歴史とか概念とか抜きで言うとだ。魔法使いと、その従者の仮契約、だっけ? それで従者の方に魔法使いとかに応じたアイテムを、そういうのを大量に管理している所から貸与するっていう話?」
そしてその仮契約の証明となるアイテムこそ、パクティオーカード。
パクティオーカードと言えば、元祖ネギま! でおなじみのアレである。縦横比16:9、手のひらからはみ出るサイズの魔法具で、それぞれの契約者(契約従者)の決めポーズだったり決めコスだったりの絵が描かれているもの。劇中での活躍は私の言った通り、作中のヒロインたちに自分の足で立ち、時に戦う力を与える道具である。原理原則的に厳密には私は「魔法を受け付けない」ので適応外のはずだが……、いや? 傷痕でずっと起動している「自動回天」のお陰で、こういうのを受けることは出来るのか(私から仕掛けることは難しいだろうが)。
さておき、メディアミックスにおいては様々な形態で販売だったり配布だったり同梱されたり、強烈なファンアイテムの一種でもある。流石にライト層の私はほぼ持っていなかった……、大河内さんだけは例外にして(自爆)。
……そしてネオパクティオー、ひいてはネオパクティオーカードと言えば。夕方放映したアニメに合わせて作成された、公式による狂気の沙汰であった。なにせ基本的な話だけでもパクティオーカードがネギぼーずのクラス31名それぞれに1枚ずつが最低保証されていたところに、ネオパクティオーはカードの性質として3倍、つまり93枚になる訳である。コンプリートした人は正直勇者だと思っているし、それだけ揃えられたのならさぞ圧巻だったろう。
当然ライト層な私は、こちらもほぼ持っていない……、大河内さんを除いて(再爆)。
そんな与太話みたいなことを考えてる私など知る由もなく、雪姫は解説を続けていた。
「貸与だったり召喚だったり、あるいは魔法だったりするかな? 本人の性質やら能力開花は一応魔法のカテゴリーになるだろう」
「いや、それは今聞いたばっかだから知らねーんだけど……。で、ネオパクティオーっていうのは?」
「自動化された仮契約の魔法といったところか? 要するにパクティオーを更に手軽にしたものだ。通常の仮契約と違い『遊び要素』があまりに多すぎるが……」
「「「遊び?」」」
疑問符を浮かべる私たち三人に、雪姫が面倒くさそうに上を見ながら続ける。
「もともと世界パクティオー協会という組織がその関係を管理していたのだが、昨今の社会情勢やら2050年代の火星動乱の影響もあって、規模が縮小されたらしくてな。私の知り合い……、まぁ、アレでも知り合いか、あたりからその話を聞いたのだが、その結果通常のパクティオー業務の規模が縮小されたらしい。
というか管理に関してはほぼ自動化されて、なんだっけ……、ネットとかに依存してるとか言ってたか」
「ネットに依存……」
そういえば原作で、刀太のパクティオーカードの権限を使われて手元から奪われたことが一度あったか。あれも「そこに至る経緯」を考えると、割合納得がいきそうなところである。
「そこで、その隙間を埋めるためにやり始められたのが、ネオパクティオーだ。確かカードが三種類に分かれるんだったか……。これに関しては完全に自動化されてるらしいのと、あとはランダム性が強い」
「あー、縮小したって言っても通常業務はやってはいるんだろ? なんでわざわざその新しい方に?」
「今回に関しては、このランダム性がポイントになるからだ」
指を立てて「良いか?」と胸を張るパンクファッションな十歳児が教師ぶる姿には色々とどんな顔をしていいか分からないが、ここは心を無にして話を聞こう。ちなみに九郎丸はそわそわしていて……何だ、あんな恰好がお前趣味か何か? 夏凜の方は「雪姫様直々にこんな丁寧にお話を……」とか目が涙ぐんでいた。……実物として、夏凜の
「なんだっけか? あまり良い思い出はないのだが……。アーマーカード、コスプレカード、スカカードの三種類。
このうちアーマーカードが通常のパクティオーカード相当の効果に準じる。潜在解放の最大化、アーティファクトの貸与もこれにかかる。
次にコスプレカードだが、コスプレ自体はまちまちだが廉価アーティファクト、ないし部分的な潜在解放が行われる」
「えっと、スカカードは?」
「スカだ」
「「スカ……?」」
「いや、まぁ、スカはスカとしか言いようがないだろうからなぁ……」
顔がギャグマンガ調にでもなってそうな、不思議そうな九郎丸と夏凜であるが。なるほど、どうやら仕様としては、ネギま!? のネオパクティオーを本家ネギま! に寄せて設定を再調整したように見える。……というかこのメタな意味でのバランス調整具合、ひょっとするとひょっとしなくても、未だ見ぬ偉大な美をまとうお師匠が関わっていらっしゃらない? 導入に関しちゃ絶対趣味だろお師匠。(名推理)
どこへか向けての私のツッコミはさておき、なぜネオパクティオーを勧めるのかというのがわかった。
「つまり通常のパクティオーよりも、潜在解放する可能性が高いって話? それを切っ掛けに、九郎丸自身で何かそういう能力的なのをつかむ取っ掛かりにしよう、的な」
「物分かりが良い息子でお
「いや、わざわざ小さい姿のまま頭撫でようとしなくて良いからさ」
どうやら普段通りの感覚で腕を伸ばそうとして失敗したらしい。……いや? 待てよ、アレって別に幻術ベースの術だから実体としての本体サイズとかはたぶん変わっていないわけで、そうなると雪姫自身が動きに違和感を生じさせてるのって普通におかしいのでは……? 原作見てた時は漫画だからで流していたが、実物としてやりとりするときにこの矛盾に気づいてしまった。
いや、まぁ枝葉末節だし、魔法だから本人の認識すらいじってると言われてしまえばそうなんだろうが……。
「本来ならオコジョ妖精とか、そういう類の力を借りるのが定石なんだが、今回は私が行おう。丁度、十二個簡易スクロールを持っている」
す、と両手を胸の前で交差させる雪姫。その指の間には小さな巻物が現れており、さながら手品師がナイフでも投げそうな絵面だ。それを半眼で得意げにニヤリと笑う様はちょっと可愛いものがあるが、こう、何だろう……、義母相手に言う話ではないがすごい微笑ましかった。
と、そんな私の感想でも察したのか「何だその生温かい目は!」と蹴りが顎にッ!
「ぅ゛、え、えーっと……。で、何であんなに九郎丸が落ち着かない様子なんだ?」
私としては詳細を知っているが、あえてここは話を振っておこう。解説が終わりに向かうにつれて段々とさっきのように、顔を赤らめて落ち着きが無くなる九郎丸……。完全に女の子の仕草だと指摘してしまっても良いのでは? いい加減、動きとしてむしろ男を気取られる方に違和感が出始めているレベルなのだが。
そして案の定の解答が雪姫の口から放たれた。
「基本的にパクティオーは、キスだからな。というかキスが最速で終わるから大体がキスで行うようにしている」
わあああああああ! と。顔を真っ赤にして膝を抱えてうずくまって、そのまま転がりだした九郎丸だった。いや生娘か! いや生娘か……。娘でない可能性も含めて生娘だったな(意味不明)。そんなことを考えていて、ふと原作での九郎丸過去周りを思い出してみたが、そういえば本当に本当の箱入り娘的なところがあった。熊本で一月一緒に暮らしてだいぶ馴染んでいたから忘れていた。
こういうのがガバの温床なんだろう……、気をつけねば。
「あー、男同士でか……。雪姫とかじゃダメなのか? 相手」
「――――いくら刀太でもそれは許容できませんよ」
「おー? おー、おー、夏凜先輩が超怖いわ!」
「なんで嬉しそうなの、刀太君……?」
す、と私の首に両手を添えて、当然のように頸動脈に指をあてる夏凜。声が絶対零度で、原作夏凜を思わせて、ちょっとだけガバが解消されたような錯覚が出来て少し嬉しい。まああくまで錯覚なので、実態はもはや原形がほぼ残っていないのだが、少しだけ精神安定である。
もっともパクティオー関係自体は、雪姫本人に否定される。
「仮契約時に考慮されるのは個人同士の相性だったり、お互いへの想念だったり、あとは魔力量とかにも関係するからな。より良いものを引き当てたいなら、お互いの感情を育むべし、だ。その意味では私よりお前の方が付き合いも良いだろうし、年代も近いし、相性は良いはずだ。……まあお前の場合は、私くらい相手でもないと大体の相手をその魔力総量とかから『従者』扱いにしてしまうだろうから、一長一短ではあるだろうが」
「あー、まぁそういう意味じゃ、雪姫か俺かって話になるか……。でも男同士のファーストキスを男同士のファーストキスで奪い合うって、正直どうなん?」
「(刀太に関してはファーストキスではありませんが)」
ちょっと待て、今なにかボソッと私にすら辛うじてしか聞こえない声量で、とんでもない発言が聞こえた気がするぞ!? 思わず首に添えられた手を引きはがして背後を振り向くと、夏凜が全力で私から視線を逸らしていた。……いや、聞き間違いだよな? そうだと誰か言ってくれないかな……、言ってくれない?(懇願)
…………いや、まぁもし仮にそれが錯覚だとして、事実だと認めてしまうのなら。一応最低限は、そういうのをしても良いという体面にはなるのか……? まあそもそも今の九郎丸は女性側にだいぶ振れてる訳で、組み合わせとしてはそこまで問題にはならないだろうが。
それにここまで大量のガバもといバタフライエフェクトにより、原作から色々と軌道が変形している可能性はある。パワーアップできるフラグが私の意図の外からとは言え、用意されてるのなら備えるのが正しい判断だろうか。身構えてる時には何とやらである。
後は本人の気持ち次第だろうに……。とはいえ、原作ですら18巻くらいから怒涛のパクティオーが行われている流れなので、そこまで好感度やら何やらを蓄積していない今の状態でやることに意味があるのか? という疑問はある。
あるのだが九郎丸は腹でも括ったのか、ぺしんと両頬をはたいて立ち上がった。
「…………僕は、強くなりたい。でないときっと、刀太君を守れない」
「お、おう……」
発言にこもった感情が重い……、重くない?(困惑)
「だからその、刀太くん……! ぼ、僕と、その…………」
「いや、そう思いつめて言われると断りようもないし、いいけど……。やっぱお前女だろ」
別に虐めてるわけではないのだが、咄嗟に言ってしまった。もっともこれには「ち、違う……、違うもん……」とか完全に抵抗値が超絶低下した九郎丸の反応が返ってきたので、私もリアクションには困ったのだが。
ともかくこの後、雪姫主導のもとに
(???「アタシを知り合いと言うのに随分不満がありそうじゃないかキティ? それはそうと、衣装が増えるのは良いことじゃないか刀太。女は服でいくらでも化けるものさ?」)