光る風を超えて   作:黒兎可

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本当はカトラス編? にすぐ行く予定だったんですが、その前に「出番を作りなさい」と夏凜ちゃんが夢枕に立ったので、中間編です

夏凜の過去分の設定周りは独自解釈なのであしからず…


ST211.心の鍵の破片

ST211.Hint To The Cruel Truth

 

 

 

 

 

「ちょっと、どーゆーことよ九郎丸!? 進展しなかったの? いえまあ意外とあのちゅーに、そういうの卒なくこなすイメージあるけど……」

「それどころじゃなくなっちゃったっていうのが大きいかな。結構参考には、なったんだけど……」

 

 時刻は昼時。配膳後のお盆の回収を終えてひと段落した私が、廊下を歩いていると、声が聞こえる。

 おや? と、私は廊下の物陰に隠れます。そろりと覗いて見えるのは、九郎丸とキリヱの二名。テラスで向かい合っているようです。

 今日は休日ということで、私や刀太も含めて仙境館(こちら)で仕事をしています。私や九郎丸は給仕、刀太は佐々木三太と共に子供たちの相手。キリヱは……、いえ、服はちゃんと給仕のものなのですが、一応は事務仕事だったような? どういった心境での恰好なのかしら。

 忍はまだアマノミハシラの生活に馴染んでいない(主に物価面)とのことで、雪姫様が直々にサポートにいっている関係で非番。……う、羨ましく等ありませんとも? ええ、一応は雪姫様の弟子となったのですから、、ええ。それも含めて羨ましく等? 全然ありませんとも。あの子の姉貴分として、胸を張るべきでしょう。ええ。決して血の涙など流していません。

 

 私の葛藤はさておき……、いえ、あまりさておけないですが、一旦保留しておくとして。どうやら九郎丸とキリヱは、刀太について話しているようです。

 

「参考って何ヨ。えっと、近衛野乃香、アイツの『お母さん』にまた会ったのよね? 結婚の挨拶みたいに」

「し、してないから! というか、そこまで全然進んでないし……」

「フェイトも一緒にいたのよね。…………んー? 何か引っかかるような、うーん?」

「(そ、そこはスルーしちゃうんだ……)って、キリヱちゃん大丈夫? いきなり頭を抱えだして」

「なーんかこう、ず~~~~~っと頭の底の底のどっかに何かすんごい大事な話があったような気がするんだけど、思い出せなくてモドカシイ……。

 ま、まあ良いわ。今思い出せないってことは『今必要ない』ことなんでしょうし。で、何を聞いてきたのヨ。何が参考になるってわけ?」

「うん。……男の人の操縦方法とか」

「いや、どういうことなのヨ……?」

 

 ふむ、それは興味がありますね。コノエノノカ……、産みの母親たる、あの妙に帆乃香ちゃんと似た女性。雪姫様への態度がかなり気安く色々思う所はありますが、何かしら参考にはなりそうだと直感で判断しました。

 気持ち良く語ってる九郎丸に水を差すのも悪いですし、このまま隠れてコソコソ聞いていることにします。……なんだか自分の正体だと認識している素性からして非常に「らしい」姑息な振る舞いですが、まあ、許容範囲でしょう。ことはあの子の精神に関わる事なのですから、慎重にもなります。

 

 刀太は……、どういったものかしら。雪姫様の師匠(せんせい)たる魔女ダーナ、彼女の拠点で修業して帰って来て、そのまま学園に復学した刀太ですが、多少雰囲気が変わったように思います。身長が私を追い越したこともありますが、どこか以前より諦観してる部分が増えたといいますか。「素」の部分として余程に落ち込んでいるわけでも無く、悩んでいるようなので、スキンシップよりは「傍にいる」安心感の方が大事かと思い、その方向で距離を詰めています。

 とはいえ先日は何故か妙にぼうっと、まるで「自分が捨て子だということを親から知らされた」ようなショックを受けた子供のような表情をしていたので、しばらく何も言わず抱きしめて、その後手を握って傍にいてあげましたが。一応は元気になってくれたので、あの対応でも正解ではあったのでしょう。

 

 そして、やはり私が知らない情報がぽつぽつと出て来る二人の会話。いえ、女子会的に集まったりしていないからという面もあるのですが、こうしてあの子の隙を見て情報を集められるので問題は今の所ないのでしょう。ええ。お互いに嫌い合っているわけでも無いですし。

 

「そもそも、フェイトと結婚してるとか言ってたわよね? いや意味不明なんだけど。それ自体どういうことなのヨ」

「小さい頃から面倒見てもらってたって言ってたけど、えっと、その時は小さい子供の姿だったみたい。というよりも、見せられた」

「なるほど、そこはディーヴァ・アーウェルンクスと同じノリなのね……」

「あの女性(ヒト)も、本来の姿は小さかったって言ってたっけ。多分、年齢詐称薬か何かなのかな?」

「グルーミング? 刷り込み? 犯罪じゃない」

「僕もそう言ってたけど、詳しく聞くともうちょっと違うみたい……」

 

 その時のやりとりを簡単に再現する九郎丸ですが、何故かちょっと演技に熱が入ってるのか、急にモノマネのように表情を作り始めます。……あまり似ていないのですが、ちょっとポンコツのようで可愛らしいわね。

 

「こほん。……『フェイト君のどこに惚れたか? うーん、顔。小さい頃からずっと、顔』」

「直球じゃないのヨ!?」

 

 そのまま演技する九郎丸。…………聞く限りにおいて、おおよそ顔以外の評価点をもっていなかったようね。現在は性格含めて受け入れる形になり、それなりに良い面と悪い面とを見定められるようにはなったけど、大体高校生くらいまでは容姿端麗である故にずっと好きになっていたと。どうやら、彼女の年齢に合わせて世話をしている時の外見も変えていたのが、一緒に成長しているように感じられてより恋愛対象として意識するような形になったと。

 

「『いくら面倒見良くても、顔悪かったら性格めっちゃ悪くてお話にならへんわ、も~。今でこそこうやけど、フェイト君って興味の振れ幅がゼロか百かしかあらへんところあるしな? ネギ君と直接関係してへんことについてな~』。ちなみに刀太君、表情が死んでた」

「ちゅーに、こう『ただしイケメンに限る』みたいなの好きじゃなさそーよね。坂田のアホとつるんでるくらいだし。……いや、言うほど坂田も、刀太だって悪くないわよね? 普通に格好良い方よね? 表情の作り方が悪いだけで」

「戦ってる時は、むしろあの表情が様になってると思うんだけど、あんまり自信がないみたいだ。……ちょっと心当たりはあるけど、それは、そのうち刀太君に許可とってからってことで」

「何ヨ、気になる事言うじゃないの……。んー、何か私も私でちょっと心当たりは、あるような、ないような? やっぱり思い出せないんだけど、引っ掛かってるわね」

 

 …………その情報、私は全く関知していないので、そのうち本人から聞きだしましょう。

 容姿については私から見れば可愛いのですが、こういったものは惚れた側の弱みみたいなものもあるかもしれないので、客観的な判断は下しません。ただ全体的には帆乃香ちゃんと似通ってるので、パーツ自体は悪くないとは思います。

 

「ただ、とにかく色々相手のしぐさとか、感情表現とか知ってるっていうか。何も言わなくてもすごい気安い感じで相手と接して、緊張も全然してないし。不満は不満で言うし、甘えたい部分は甘えたい部分で言うし、かといって何でもかんでも自由という訳でもなくって、お互いに同じくらいの思いやってる関係があるような気がしたんだ。

 そういう意味だと、刀太君もこう、遺伝子的に? は似通ってるみたいだし、異性との関係もそういうのが欲しいのかなって。……二人を見て、寂しそうにしていたから」

「色々お互い知ってわかりあってる、対等な関係ってこと? いや、実際見ていないから全然わからないんだけど……」

「僕、なんだかんだ刀太君と一緒にいるけれど、それでも刀太君との関係はどこか一線があるって思うんだ。……その、こんな半陰陽(中途半端な身体)だったから、それはそれで有難かったところはあるんだけれど。ただそうだと、いつまでも刀太君の恋愛対象の射程には入っていないんじゃないかなって。僕が一方的に思ってるだけになっちゃうんじゃないかなって」

「恋愛なんてそーんなものじゃないの? 一方通行にぶつけあって、失敗して、喧嘩して、で仲直りして」

 

 キリヱのその物言いには実感があるようですが、そう言われると私はどうだったのでしょう。結局、古の夫とは「私の事情」から夜を共にすることもなく死別。先生(ヽヽ)には「お前面倒だからそういうことしない」(※意訳)と言われて流され、欧羅巴(ヨーロッパ)を転々としていた頃は「まるで愛と美の神の化身だ!」と言われプロポーズされたこともあったけど、背中に浮かんだ罪の証であるXIII(13)の刻印を見られてそれで終わり。

 雪姫様と別れて以降、一時期、獅子巳十蔵とそうなりかけたこともあったけれど、あっちもあっちで価値観の相違についていけず実を結ぶことは無く…………。

 

 そう考えると、ロクに男性と関係を深められた試しがないわね。い、いえ、刀太とは今の所、それなりに段階を追って進んでいる自覚はありますから、ええ。幸か不幸か生娘のままですから心配はしなくて良いはずです。何を心配しなくて良いかはわかりませんが、大丈夫ですからキクチヨ君。

 謎の釈明が脳裏に浮かびますが、火照ってくる顔を手で仰ぎながら話を聞きます。

 

「キリヱちゃんも、何度もその、やり直してた時の刀太君ってどうだったの?」

「んー? あんまり今と変わらないわヨ。ちゅーに、ちゅーに。厨二(びょーき)だし、色々悪態つくし、すぐよくわかんないことにキレるし。……勝手に庇って、死のうとするし」

「それは…………」

「だから、ちゅーになのっ。普段はフツーに他人に頼るくせに、何かあった途端いきなり全部自分だけで対処しようとして、文句言ってケンカでもすれば良かったのに。そしたら、私だってもっと早く覚悟決めて………。

 いや、そーゆー話はどーでもいいの。で、九郎丸の話の続きよ。もしかしてそれで? ちゅーにがカトラスちゃんの所に行くのに、ついていくようになったの」

 

 うん、と頷く九郎丸。それは、なるほどそういうことでしたか。

 おおよそ2、3日に1回くらいの頻度で、刀太はあのカトラスちゃんの元へと遊びに行っているようです。授業が終わってすぐ行くのですが、大体クラスメイトなどと一緒に顔を合わせて、色々やってから言って、毎回不機嫌そうだと九郎丸が苦笑いしていましたね。

 カトラスちゃんは、まほら武道会出場のために行動中。その際の賭け試合、ファイトマネー目的で。

 そもそも九郎丸や私たちも、チームとして「まほら武道会」に出場する関係でポイントを集めていたのですが、最近そんな風に九郎丸がいないこともあって、ちょっと試合回数やら何やらが少なくなり、集まりが悪かったりします。まだ半年以上余裕があるので問題はないでしょうが、そのあたりは気がかりだったので、少し対策を考えるべきでしょうか。

 いえ、雪姫様もしくは龍宮学園長代理と交渉すれば良いのでしょうが。

 

「つまり、まだその……、僕の側からどうこうとか、そういう立場にはないのかなって。いや、告白まがいのことは言ってるんだけど、それはそうとして、さ。恋愛対象に入ってないんだったら、恋愛的な意味でとらえてもらえないかもしれないかなって。

 だったら距離を保ったまま、もっともっと色々知って、刀太君の射程に入らないと」

「何か結構したたかなこと言い始めた……!?

 でもちゅーに、そこまで鈍くはないと思うから、どーなのかしらね。……ん? あれ? ちょっと待って、そう言う意味だと、私もアイツのこと全然わかんないんだけど? えっもしかして私も対象外!!? ひょっとして夏凜ちゃんくらいじゃないの!!?」

 

 突然情緒不安定になってキレ散らかすのとか本当に何って感じだし、とキリヱ。安心しなさい、私もそれはよくわかってないわ。面倒なので谷間に(うず)めて落ち着けていますが。

 突然情緒不安定になるのだけは、おそらく「素」に関わってることなのだろうと目星はつけていますが、断定できるだけの情報も内容もありませんし。それこそ判る相手はかなり確度が高いのでしょうが。(ダーナ「だ、そうだよ」超鈴音「あ、いや、えと、あ、アハハ…………。でもそこまで節操無しじゃないネ。あと、妹は射程圏外のはずじゃない、かナ?」)

 

 しかし、そうですか。…………、いえ、あの子の周囲があの子をより気にかけてくれるというのなら、それはそれで良い事です。少なくとも「素」について誰にも話すつもりがないのだとしても、それでもあの子の心を知ろうとするのなら、歓迎するべきなのでしょう。

 だからといって、ちょっと嫉妬しない訳でもないですが。……九郎丸の初々しさというか、年齢相応に恋愛感情を育めている様は、本人には言いませんが羨ましいものです。キリヱもそれは感じているのか、九郎丸を揶揄ってる時に少し意地が悪いニヤニヤとした表情だったりしますね。

 初々しいというとそういえば、九郎丸も黙っているからあの子に言ってないけど。不死身化してからの色々な話を総合すると、もしかして刀太より2、3歳ほど年上なのではという疑念があるのですが……?

 ふむ、後でもうちょっと刀太をハグしてきますか。

 

 さて…………。

 

「僕はまあ、そんな訳で。もうちょっと色々考えようかなって思って」

「関係は進展してないけど、恋愛的には進展したってことね。うん、良いじゃない! 私も全然そういう経験ないから、あんまりアドバイス出来ないけど、良いと思うわ!」

 

 

 

「では、そういうキリヱはどうなのですか?」

 

 

 

 に゛ゃん!? と猫が尻尾を踏まれたような声を上げるキリヱ。九郎丸が「あっ夏凜先輩」と私を呼びます。ここで隠れていた身を出して、会話に参入しましょう。何か良い感じにまとめて、キリヱがお茶を濁そうとしていた気がしましたので、そうは行きません。逃がしません。

 とりあえず九郎丸にサムズアップを送っておきます。困惑されましたが、こちらのリスペクトさえ届いていれば問題はない。

 

 問題なのは、どっちかといえばこのキリヱの方。

 

「何を他人事のように九郎丸のことを喜んでいるのですか? いいことキリヱ。そう難しく考えるような話でもないでしょう――――あなたが一番アプローチが足りないのだから、もっとガンガンに攻めなさい」

「ちょちょちょちょちょ、いきなり出て来て何言ってるのヨ!? というか夏凜ちゃん、一体いつからそこに!!?」

「そんなことはどうでも良いのです。基本的に貴女は不死身衆(ナンバーズ)どころかUQホルダーの一員としても、そもそも周りと一線を引きすぎています。組織創設の頃から資金提供をしていたのに、顔を合わせたのはこの間の事件までで数度程度。刀太との接触回数も学校に通う形になってるとはいえ、まだまだガンガンに攻めるべきでしょう。

 具体的には、帆乃香ちゃん程度には」

「で、でも別にアイツ、今そんなに恋愛どーのこーのって感じじゃないし……? 後、私も色々と思う所とか、考えないといけない心のほにゃらららがあるというか…………、大体、おっぱい星人のちゅーにに戦力過多な夏凜ちゃんが何言ってるのヨ!?」

「大丈夫、あの子はちゃんと『好きになった相手』と『好みのタイプ』は分けて考えられる子です」

「に゛ゃ!?」

 

「か、夏凜先輩、押しが強い……」

 

 何やらキリヱが誤魔化しにかかっていますが、そういう自分でとらえきれない微細な心の動きなんてものは、大体外から見て適当に俯瞰したものと結論が一致すると相場は決まっています。むしろ考えれば考える程迷宮入りするのですから、ここはビシッと言ってあげましょう。

 

 

 

「――そもそも貴女が刀太に惚れてるのなんて誰がどう見ても丸わかりなのだから、細かい感情は置いておいてストレートにアプローチしないと進展も何もあったものではないもの」

「うな゛ぁあああああああああああんッ!!?!?!!?!????!!?!? そんなこと前に言われたからわかってんのよぉおおおおお――――――ッ!!?」

 

 

 

 頭を抱えて大絶叫を上げて逃げていくキリヱ。勝ったわ。謎の勝利の余韻に浸る私に、九郎丸が苦笑いを浮かべる。

 

「伝え聞いた例の(ヽヽ)経年数から考えて、あそこまで少女らしいというのもまた妙な話ですが……。あれもあれで少し妬ましい」

「妬ましいんですか……、どっちかというと、僕らは夏凜先輩のスタイルが妬ましいですけど」

「あら? 九郎丸は年齢詐称薬を使えば、もっとスタイルが良くなるのでは」

「それでも生身の状態でっていうのは、また違うかなって」

「ふむ。…………これは、分けてあげるわけにもいきませんから、悩みは人それぞれね」

 

 あの子の性格的には、むしろキリヱくらいの距離の取り方が一番付き合いやすいのでしょうが、私も今の性分がそう簡単に変わる訳でもありませんし。そもそも「素」の面から心が揺らいでいる時のあの子は、下手をすればまた「人格がおかしくなる」かもしれない以上、そうなる前に落ち着けてあげるのが優先なのですから、私がどう思われるかはこの際抜きでうごいているもの。

 おそらくそれが、キクチヨ君としてのあの子にとって一番嫌なことでしょうし。

 

 ただでさえその手のことでは失敗続きの私なのだから、私の印象など投げうってでも、そこは死守してあげなければ。

 

 と、おや? 九郎丸がじっと私を見つめてきています。視線は少し鋭く、真面目な風ですね。いえ普段から真面目ではありますが、こう、ちょっとキリっとしていると言いましょうか。キリヱの後を追わず、立ち上がりこちらと目を合わせてきます。

 

「どうしましたか? 九郎丸」

「…………こういうことを、刀太君本人に聞かないのは、ちょっとダメなのかもしれないですけど。それでも、僕はもっと刀太君のことを知ろうと思ったから、だから聞きます」

 

 何かしら、と腕を組む私に、九郎丸は。

 

 

 

「前は、カトラスちゃんと一緒にいた時ははぐらかされましたけど…………、夏凜先輩は、刀太君の何を知っているって言うんですか?」

 

 

 

 その話は……、嗚呼、一度したことがあったわね。

 いえまあ、話す訳にはいかないから、私ははぐらかすことしか出来なかったのだけれど。しかし心が進展したからこそ、あの子の「素」について知りたがるようになりましたか。

 

 いえ、そもそも付き合いは一番長いのだし、気付いても不思議ではないですか。

 

 だけれど、そう言われたのなら私からの返答は一つ。

 

「…………それは、あの子から話す事よ。私は事故みたいなもので知ってしまったけれど、きっとそれを徒に知られることを、あの子は悲しむはずだもの」

 

「…………ずるいです」

「ごめんなさい。だけど、それを知ってるから私は独占なんて出来ないし……、それこそあの子に色々、みんな囲うくらいの覚悟を持ってもらわないと」

「えっ?」

 

 目を真ん丸にして困惑する九郎丸に、とりあえず微笑んでおく私。

 刀太……、キクチヨ君のその何かというものは、あの時の異様な様子もふまえて朧気ながら推測をしている。だけどきっと、それも絶対的を外しているし…………、どう考えても私一人の手に負えるような話でもなさそうだもの。

 

 

 

 自覚はしていないのかもしれないけれど――――初めて会った時からあの子が時折、雪姫様を見る目が。妙に申し訳なさそうな罪悪感に満ち溢れて、自分が傍にいる資格なんてないっていう程に寂しそうなものになっている理由なんて。

 

 

 

 

 

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