光る風を超えて   作:黒兎可

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釘宮周りの描写をちゃんとやったら、また1話伸びてしまった感じです
スマヌ・・・、カトラス次回出すから、スマヌ・・・


ST217.世界あるいは皆が笑顔であるために

ST217.I'm Standing On The Edge Of A Cliff.

 

 

 

 

 

 詳しい事情はさっぱり分からない。祖父も俺に色々教えていた時、よくわかっていなかった感じで、物言いはふわふわとしていた。そんなこともあって、祖父の現役時代の最強だろう存在の語る言葉は、嫌でも耳に残る。

 ジャック・ラカンは近衛に笑いかける。……恰好が色々と場違いなこともあって、いまいち締まりはないのだが、それでも威圧感だけは強い。それだけ相手の「物理的な」強度と、それに加え「魔法的な」強度どちらもが高いと言うことだ。

 

 そんな彼を前に、近衛は変らず黒コートのような装備で半眼のまま。……いや相変わらずじゃないな、時折、一瞬だけ白目を剥いてすぐ元に戻っていたりするから、限界は近いのかもしれない。

 一瞬だけ気絶するとか、一体どんな芸だ。……見ているだけで胃が痛くなってくる。

 

「…………正直、アンタがどこの陣営の誰の味方なのかっつー話が、アンタの振る舞い自体を問う際にあんまり意味ねぇことは理解した。まあ、本当に洗脳されて行動の制限もあるっつーのはわかるんだが。

 多分、裏切ったりまでは出来ねーんだな。でもその中で多少の裁量は利かせられると。……それこそ木乃香さん、つーか、祖母ちゃん達みてーに」

「あ? なるほど、カマかけっつー訳でもねぇけど、自信はなかったってコトか」

「その上で、まー、アンタがこっちに来たニュアンスもわからないではない。伝え聞くアンタの性格からして、なんとなく予想はできなくもないっつーか、アレだろ? ファンタジーゲーとかで、主人公がラスボスになっちまって自分を倒すために新作主人公には手加減して鍛えたりとかそーゆー」

「鍛えたりはしねーがな。……いや、何か本当に察しが良いな」

「カアちゃんの育て方が良かったっつーことで、そこは一つ」

 

 何故か胸を張って不敵に笑う近衛。……なるほど、さっきキレてたのは母親をどうこう言われたからか。以前に家庭環境は複雑だと聞いていたし、挙がる名前と祖父母の話とを総合するに頭痛がするレベルのしっちゃかめっちゃかさなことも想像がつく。

 それはそうと、ジャック・ラカンの後方で「ケッ」という顔をしている、あっちの子は放置で良いのだろうか。……足元、微妙に届かないところに転がってる布らしきものを見てイライラしているようだが一体。

 

「気絶してたからわからねーかもだが、ありゃでち公のパンツだ。ラカンさんに脱がされて、まーテキトーに遊ばれてんだわ」

「えっ……? い、いや、確かに『そういう』性格だと聞いていたが、正気かジャック・ラカン!?」

「何で教えたでち、兄弟!? そこのメガネのイケメン、意識朦朧としてたから、知らなかったのに何故!!?」

 

 嗚呼なるほど、それで足元が悶えているのか。ロングスカートだから、脚を閉じれば上手い事中は見えないので、防御力の高さは正しいだろうが……。というか近衛もあっさり何を言っているのか。

 ん? 兄弟? 兄弟といったか、あの少女は。

 学園の近衛姉妹ともまた違う顔立ちで、近衛に似ていないのに兄弟と……、犬上の家の方に来たあの子も兄サンとかお兄ちゃんとか呼んでいたし、つまり、ん? 何がどうなっているんだ?

 

 何も口には出していないが、余程こちらの困惑が顔に出ていたんだろう。「詳しくはそのうちな~」と近衛が軽く手をひらひらして言ってきた。ちらりと見えたが一瞬白目を剥いていたので、おそらく近衛も本意の関係とかではないのだろう。

 液体系の胃薬の持ち合わせがあって良かった。

 

「まあでち公のことは置いておいて。別件の目的ってのは結局、何なんだよ?」

「言えば、もっと真面目にやる気になって俺と戦うってか?」

「周辺被害がねーことと、後は内容次第だな」

「被害なんざ捨て置け捨て置け、こんなに背の高ェ建物が山ほどある方が悪い」

「魔法世界住人的価値観だけで物を言われてもなぁ……」

 

 言いながら近衛は笑いつつ、すっと手を後ろに向けていた。あの妹らしき少女とジャック・ラカンからは見えないような確度で、左手を背にし。

 ……そこには、声を殺してあの雷獣の妖魔が「みゅー」とこちらに「しーっ」と押し黙るように言うジェスチャーを俺にしていた。

 

 あっちは気付いていないのか、先ほどまでの調子で笑い話を続けるジャック・ラカン。

 そして……、近衛はあまりにも汚い手段に出た。

 

「まあ、大した話じゃねぇよ。ウチからの家出娘を一人、探しに来たってだけだ。

 お前も知ってるだろ? カトラ――――」

 

 会話中に妖魔を手で掌握し、その術式を体内に取り込み。再び髪色を輝かせ「視認できない速度で」動き出す。

 近衛の動きから5秒くらい遅れて脳が認識できた光景は、当たり前のように無表情でジャック・ラカンに斬りかかり、指で白刃取りされ防がれる近衛の姿。

 近衛の姿は……、何故か2つ。

 2つ!? いや、あっちはウチみたいに狗神の分身や、宇宙忍術の分身は体得していないはずだが、分身!!?

 もう一体の分身は、斬りかかった近衛の後ろにぴったり背中合わせで隠れていて、不良じみた姿になり超加速した近衛の背後から状況を伺っている。

 

「――――スっていう、ってオイオイオイ!? この会話の流れでいきなり斬りかかるかフツー ……? フェイトでも、もうちょっと手段選ぶぞお前よォ……」

 

 そっくりそのままジャック・ラカンに返したい。どうしてその様な汚い不意打ちめいた動き、人間が認識できる速度を超越した斬撃を当たり前のように受け止めているのか。

 

 そしてジャック・ラカンの気が一瞬緩んだと同時に、斬りかかった方の背後にいた近衛が空中で回転し、振りかぶり。

 

「何をやろうとしてンのかは分か――――いや拙いだろそれッ!?」

「――――血風尸天」

 

 その動きに気をられたジャック・ラカンだったが、同時に後方へと跳ねる。接触したままの状態で、近衛の刀から、いつか見た「おどろおどろしい」斬撃のようなものを放つ。……この匂い、あの剣もだが血だな。そうか、血を使って色々とやっているのか近衛は。まるで吸血鬼か何かだな……。

 そして、当たり前のようにそれを蹴り飛ばすジャック・ラカン。まるでガラス細工のように物理的に砕け散った(?)斬撃は、周囲に飛散した後に液化し、1つたりとも返り血(?)を浴びていない。

 

 そして、背後の方の近衛の抜き手が…………、手前の近衛の胸部を「貫通した」。

 いきなり何をやっているんだ馬鹿かッ!? あの男ッ! 

 

魔天化壮(デモンクラッド)

『――――――――ォォオオオオオオオオオオオッ!!』

 

「何やってるでち兄弟ッ!? また我が貞操をいじめるつもりでちかッ!!?」

 

 貫通された方の近衛は、突然頭部に真っ黒な、髑髏と言うか悪魔じみたというか、そんなものを装着し。

 胸には風穴があいたまま。そしてコートやらブーツやらのシルエットが急にトゲトゲとして、なんなら手に持って居た剣すら形がより攻撃的な角度に変わる。

 

 その変貌、1秒にも満たない一瞬の変化に、あの妹らしき少女は涙目で叫ぶ。貞操って……、一体何をやったんだ君は。

 そんな視線を後方の近衛に向けるよりも先に、手前の近衛の姿が一瞬で消失。

 

 かと思えば、ジャック・ラカンも一瞬で姿勢を変えて、組み合ってお互いがお互いを抑え込むような状態になっている。力が拮抗しているのか、近衛の剣を両手で受けているジャック・ラカンは、マスク越しだが冷汗をかいているような匂いがした。

 変化した方の近衛の腕が「突如膨れ上がり」、腕力で相手を押して切り倒そうとする。

 それを見た瞬間に「おらッ!」と変貌した方の近衛の掌を上からつかみ取り、握りつぶして剣を奪い取ろうとするジャックラカン。

 

 握りつぶされた瞬間の近衛の手は、その勢いで飛散しかけた大量出血「ごと」大きな手に変化し、ジャック・ラカンをアイアンクローしようとして。

 頭を掴まれた瞬間「ラカン喝破、破ァ!!」と、それだけ叫んで肺活量だけで巨大な血の掌を吹き飛ばし。

 

 怪獣大決戦か何かか?

 

「怪獣大決戦か何かかよ……。サリーもドン引きしてんじゃねーか、カトラスでもあるまいに」

 

 くしくも当事者の一人である近衛(背後から心臓を貫いた方)と感想が似通ってしまった。なんとなく、この状況で感想が被るのは少し嫌だった。胃が痛い。

 

「……引いてるのは、あっちで暴れてる方の君についてじゃないのかい? さっきの言いぶりだと」

「否定はできんな。……立てるか? 釘宮」

「今、胃薬を飲むから少し待ってくれ」

「ほいほい」

 

 いきなり謎の蛮行をした近衛であるが、特にいつもと変わらず近衛は近衛だった。むしろさっき俺と、あの妖魔について話していた時より落ち着いてすらいるかもしれない。

 ただそれはそうと、異形と化した方の近衛とジャック・ラカンの「目に見えない」戦闘を見て、ものすごく嫌そうな顔になる。

 どしんどしん、と100回くらい地面に叩きつけたとしか思えない動きをしてる近衛が見えたかと思えば、まばたきするよりも早くジャイアントスイングで変貌した近衛を投げ飛ばすジャック・ラカンとか。正直、素早すぎるのと意味不明すぎてこっちの頭がおかしくなりそうだ。

 

 後、あの涙目で呆然としてる妹らしき少女の下着はいつの間にか粉々になっているし……。とことん救いがない。

 キャップを開けて薄緑色の液体を飲み干す俺を見て、近衛は肩をすくめた。

 

「やっぱり人間技じゃねーよあのオッサン……、何ナチュラルに『疾風迅雷(サンダーボルト)』と『魔天化壮(デモンクラッド)』の合わせ技に対応してむしろ押してんだ。疾風迅雷でさえ、でち公どころかディーヴァですら、チュウベェのあれは対応しきれねぇってのに」

「あれは一体、何なんだ近衛……?」

「一応、奥の手? でち公も前に見て、アレ相手にちびらされたのがトラウマになってるらしい」

「どんな趣味だ君は……」

「いや、ありゃでち公がほぼ100%悪いから、俺関係ねーし………、って、いやオイオイちょっと待てや!? 『ハマノツルギ』は流石に大人げねーだろッ!」

 

 言いながら近衛が掌を向けると、次の瞬間には変貌した近衛が持ったままだった刀が飛んできて。

 化け物のような姿となった近衛はといえば、首、胴体、下半身それぞれを分割されていた。……ジャック・ラカンの持っている、独特な形状の剣によって。

 見ればジャック・ラカンのマスクも右側を残してほぼ崩壊し、ローブも消し飛びスーツも上半身が露出している。とはいえ切り傷らしい切り傷が見当たらない辺りは、本当に意味不明だった。

 

「手加減はどこ行ったんですかねぇマスク・ド・ラカンさんよォ!」

「悪ィなぁ! 瞬間的にだが戦闘力『6万』とか叩きだすようなバケモノ、どう考えたって古代竜相手にするような感覚で挑まねぇと、こっちが殺されるからな!」

「えっ魔天化壮そんな強い……、強いの?(困惑)」

「むしろぼーず、何だこの技? 本能に任せて暴走してるよーで技にフェイント織り交ぜたり隙をあえて作って誘導して叩き潰してきやがるし、あっちの娘っこ庇ったりパンツ死守しようとしたりするし」

「でちッ!? わ、我が下着はどこへ……?」

「あー、悪いな…………、ソイツの手と一緒にバラバラにした」

「裁判するでち~~~~!?」

「この大地におわします八百万(やおよろず)全てのキリヱ大明神よ、あまねく全ての我らを救いたまえ……(謎祈祷)」

 

 何やら騒いでいるが(近衛は何故合掌しているのか)、そんなことは無視して薬を飲み干し、胃をさする。

 ……視界の端に入る、バラバラにされた方の近衛はそのまま、カラカラカタカタと音を立てて「風化していく」。…………いくら何でも、あからさまに吸血鬼映画の退治されたシーンみたいな光景過ぎやしないか? しかも古典映画の。今時もっと「それっぽい」解釈の映像を流すぞ。

 

「君、もしかして本当に吸血鬼なのか? 近衛。裏魔法委員会の通達も含めてだが、以前愚痴を話してた時は『似たようなもの』と濁されていたが」

「あー、どうなんだろうな。最近は悪魔とかの方が近いって言われてんだが……」

「どっちにしろロクでもない話だね。よっと……、ありがとう」

「ゆあぅえるかむ」

 

 ぐらつくこちらに手を差し伸べ、引き上げてくれる彼に礼を言う。適当な表情で、気軽に答える近衛は、特に何か変わったようでも無い。

 思えば最初から、近衛はこんな風だった。俺が八つ当たりを仕掛けた時も、手加減しようと思ってこそいたが、当たり前のように受けてきた時も。

 

 特別、親しい関係ではない。ちづを始めとする親類を除外するにしても、彼よりは美化委員の他の面々とか、春夜(ヽヽ)とかの方が親しいくらいだ。

 だけれど…………、生まれも育ちも違う割に、微妙なシンパシーと言うか、同病相憐れむと言うか。

 

 なんとなくだが、この距離感は嫌いじゃ無かった。

 例え近衛が本当のところ、何であるにしても。

 

 そもそも俺だって妖魔混じりかつ先祖返りだ。

 

「…………」

「どうした? 近衛」

「………………何でもねーぜ」

 

 まぁ悪くはねぇな、と。そう肩をすくめる近衛は、いまいち何を考えているかわからなかった。

 ……そしていきなり何も言わずに、刀を振るって血のブーメランのようなものを投げるのを止めろ!? 一体何を考えてるんだ君は、あっちには誰もいないだろうがッ!

 

 思わず抗議する俺と、適当に笑う近衛。そんなこっちの様子を待っていたらしいジャック・ラカンは、俺の頭を見て「お?」と言う……、と、おや? さっきの化け物の近衛とジャック・ラカンの大乱闘の余波か何かだろうか。上部分が何割か消し飛んでるな。

 片方だけだが、赤茶けた色の髪から狼の耳が出ている。

 

「その犬耳……、もしかしなくてもアレか? コタローの孫か何か?」

「……犬上小太郎は俺の祖父ですよ、ジャック・ラカン」

「オイオイマジかよ。揃いも揃って、妙な巡り合わせを感じるなぁ……。闘技大会にゃカゲ(ヽヽ)ちゃん(ヽヽヽ)が足りねぇが」

「カゲ……?」

「よくわからねーけど、じーさんと小太郎さんがアンタ相手に戦ったっつー感じの話?」

「ま、そんな感じだな。…………名実ともに、ネギ・スプリングフィールドが『本当の強さ』って奴に目覚め始めた時のことだ」

 

 聞きたいか? と言ってくるジャック・ラカンに、そんなに興味はない、と返す近衛。

 

「そのうちフェイトが何か準備してくれんだろうし、カアちゃんがビビってんのかまだ全然話してもらっちゃいねーから、野暮っスよ」

「野暮ってお前……、本当に興味は無ぇのか? ネギが一番その実力を上げたころを知ってる俺の、直に見て来た証言だぜ? お前みたいに下手な不意打ちもしねぇし」

「根に持ってるんスかね……? いや、もうやらないっスよどうせ通じないし」

「いや、魔法具縛りだったからちょっとヤバかったからな。そう言う意味じゃ、意外と良いセン行ってるって言っても良い。そうだなぁ……、5千を8千くらいに上方修正しても良いぜ」

「(リョウメンスクナノカミ!?)」

「どうした、近衛?」

「い、いや、何でもねーけど……。

 まあそれは一旦置いておいて、祖父(じー)さんの一番強くなっていた時期の話、ねぇ」

「お? 何だ、含みがある物言いじゃねぇか」

 

 ニヤニヤとするジャックラカンに、近衛は真顔で返し。

 

「…………その結果、じーさんを大事に思ってる、じーさんの周りにいた人たち全員置き去りにしたんじゃねぇのかっていうのが、ちょっと引っ掛かってるだけっスよ。

 傲慢とは言わないっスよ? それだけ物理的にも精神的にも、存在的にも強くなってたんだろうし。だからこそ……、メーテルリンクじゃないっスけど、足元にあった在るがままに、大事だったもののことなんて気が回らなくなっちまったんじゃないかって、まーンなことを思う訳っスよ。

 色々と『後始末』押し付けられてる身としちゃ」

 

「………………お、おう」

 

 ジャック・ラカンは苦い顔で微妙な返答になった。

 

 なんとなく、俺も脳裏に祖父との修行をしていた頃の映像がフラッシュバックしていた。

 あれはいつ頃だったか……、当然のように骨を砕かれ続け、「白狗神」を憑かせて無理やり骨の代わりとして、道場の掃除をしていた時だったっけ。なお祖父は、祖母に「来月、小学校の始業式なのに何考えてるの!? 娘夫婦に合わす顔ないとか、コタくんのおバカッ! くぎみーとか、ちづ姉の墓前に言いつけちゃうんだからッ!」と泣き叫ばれてボコボコにされていたが、いや、あの二人の仲良しさ(?)についてはどうでもいいか。

 顔を腫らしながら(祖母相手には絶対手を上げない祖父である)、ちょっと情けない風ではあったが、身体を痛めながらモップをかける俺に、祖父はどこか寂しそうに語っていた。

 

『ネギはなぁ……。俺はライバルやし親友って思っとったんやけど、もしかすると、只のクラスメイトくらいの感じに思ってたんやないかって、考える時があんねん』

『…………』(※激痛でしゃべることが出来ない)

大伍(だいご)はまだまだチビやけど、頭良いからな。あえてこういうことも話しとくで?

 俺もネギもまだまだ年、1桁くらいん頃やな、お互い会ったのは。そこから色々あってバトってバトって、気が付けばちょっとした世界の危機とかも救って……。んで、ネギの親父のこと調べる関係やったか? 裏金星の方に行ったんやけどな。

 思えばあのあたりからやなぁ……。ネギが、一段飛ばしで強くなってったんは。それに従って、段々、俺のこと遠ざけるようになったんや』

『…………』(※激痛でしゃべ(以下略))

『ハブるとか、嫌がらせって意味やないで? 一番大事な、決定的な時にな。夏美姉ちゃ、いや、夏美んことを「あえて」連れて来て、俺んこと夏美を守るって名目で、その場に縛り付けるような? そーゆーまだるっこしいこと、アホみたいにするようになったんや』

『…………』(※激痛(略))

『そりゃ、俺かていかに楓姉ちゃんに師事したところで、楓姉ちゃんも「宇宙の悟りを(ひら)いたでござる」とか言うたところで、ネギみたいなバケモンじみた強さは持ちあわせとらんかった。そりゃ、わかっとるからあんま強くは言えへんかったわ。

 ただ、な? ……ネギの親父の救出に失敗した時、ネギの周りにいた奴ら全員、どうしようもなくなった後な。ネギがその時点でボロッボロだったんにも気付いてへんかったし、雪姫はんから「ネギに任せてやれ」言われても、納得いかへんかったわ。

 だから夏美つれずに武者修行しに魔法世界行って…………、それでも、隣には「立たせてもらえなかった」んやなぁ』

 

 あれは心折られたわなぁ、と語る祖父は、普段よりもどこか小さく見えて。

 

『……お前がネギの孫の誰かとどうこうなるかどうか、ンなことは知らんがな? それでも、そうなった時に力不足ってなったら遅いんや。フェイトの奴がアホやってたいう話は、雪姫はんから聞いたけどな。時期的にも才能的にも、お前が一番「当たる」可能性が高い。

 その時、もう俺みたいな気持ちにはさせたないんや』

 

 悪いな、と。そう俺に語る祖父の目は優し気で。ただ当時の俺は激痛のあまり、まともな返答も感想も返すことはなかったが。

 

 

 

 そうか、祖父もまた「置き去りにされた」側だったのか、と。

 近衛のその物言いを聞いて……、俺も、なんとなくだがもやもやとしてきたのだった。

 

 

 

 

 

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