ST219."There Is No Such Thing As Objectivity!"
魔法少女ビブリオン・ユウバエは、魔法少女ビブリオンシリーズの20周年記念作品にあたる。シナリオ原作およびコミカライズに、当時メディアミックスに恵まれない新人漫画家「P・A・L☆ザ・コミックマスター」、通称コミマスが起用され、これが大ヒットを飛ばす。ビブリオン自体が当時の魔法少女系譜の作品の中で飛びぬけて人気で、その世界観とキャラクターを利用し独立したシリーズとして成立したのがビブリオンシリーズなのだが、その中でもユウバエはとくに男の子人気も高いシナリオ構成となっている。そのせいもあってか、何年かに1回新作エピソードだったりリニューアルだったり、大人ユウバエ(10年後シナリオ)だったりとが2080年代になってからも繰り出される辺り、その妙な人気ぶりが伺えるだろう。初代はほぼ半世紀前であるにも関わらずだ。
ちなみにユウバエの作風は、具体的に言うと
魔法を覚えるために学校のテスト勉強と同時に魔法書の暗記を頑張るエピソードだったり、親友の魔法少女と男の子をとりあいになって魔法(物理)な
まあそもそも、魔法少女ビブリオン自体「ネギま!」ではフレーバーテキストのレベルでの扱いだったので(適当)、この世界で未だに生き残っていたことの方が初見時一番びっくりした話なのだが。
さてしかし、いざ振り返ってみると、こう、露骨に露骨な話だと改めて思う。
主人公の魔法少女であるユウバエもまた、妙に色々達観した物の見方をしていたり、変身前のキャラデザなどもモブのように特徴が薄い。「私は本当なら主役なんかじゃない」というモノローグが出るような、そんなおさげなキャラクター。色々とボカして作られているが、おでこが見えるキャラデザだったり、スレンダーだったり、身長が低かったり、まあ色々な要素が綾瀬夕映を思わせるものになっている。
親友の魔法少女な女の子(スタイル抜群)の前髪ちゃんも、照れ屋な所や本の虫であるところ、同級生の席が隣の女の子が不良っぽくってビクビクしていたところなど、こちらもまた色々と明確に本屋ちゃんこと宮崎のどかを彷彿とさせる。(※初期の「ネギま!」において、宮崎のどかは隣の席だった桜咲刹那が正体を隠していたためか、振る舞いが不良めいていたせいで常にビクビク怯えていたという微妙な人間関係だったりした)
画風の違いもあるが、なんとなくのレベルでユウバエの話を聞いてから「まさか」と思っていた私ではあった。カアちゃん家にあった古いディスク録画の劇場版ユウバエは、変身シーンの演出もなんとなく「ネギま!」劇場版のそれを思わせるエフェクトだったり(流石に全裸はなし)、嫌に関連を疑う余地があったのだ。
「少なくとも地上に居ないのは確定していますが、一体どこにいると言うのですかパルは……」
……で、ジャック・ラカンを置き去りにして延々と「早乙女ハルナ」本人か関係者と思しきコミマスに対して愚痴る綾瀬夕映本人を前にして、私もまたどんな顔をしたら良いやらだ。
姿かたちはそれこそ「UQ HOLDER!」12巻登場時、戦闘用なパンツルックスに魔法使いの帽子と「ネギま!」最終回の恰好を彷彿とさせられる。
キャラクターについて「ネギま!」の作中で言えば、いわゆる学園祭編以降の裏ヒロイン、ヒロインとしての立ち位置が変わっていった長谷川千雨とはまた違った意味で、作品をけん引するキャラクターの一人でもあった。具体的な話はそのうちにということにするとしても、なにせ最終巻のエピローグおよび背表紙のヒロインに抜擢されるくらいだ。その人気の上昇ぶりも伺えるだろう。私としては全く好みのタイプではないのだが(断言)、それでも恋する乙女として友情と愛に揺れる彼女が愛らしいことは間違いない。
……そして、同時に変な飲み物が好きだったり妙に「おもらし」と縁があるというべきか(風評被害)。大体「漏るです」発言のインパクトが強すぎて、その系統のネタに引っ掛かるというだけなのだが、色々な要素を勘案してサリー、でち公の遺伝子元の一人に違いないだろう。どうやらあっちも紐パンのようだし、ますますと言うか何と言うか。
というかズボンの左右の横、よく見るとジッパー的な何かがついているな……。紐でないにしても、そっちも脱ぎやすいようにしているということだろう。どうやら「全部脱がないとお花をつめない」性質は変わりないようである。
ちゅー、と音を立てて妙な色をした飲み物を太いストローで呑んでいると、ふとでち公の視線に気づいたらしい綾瀬夕映。「いるです?」「いるでち!」とだけやりとりすると、どこからか彼女が持って居る瓶と同じものを取り出し(おそらく仮契約カードの収納機能)「フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ――」と始動キーを唱える。そのまま何かしらの魔法を詠唱し、ぽいっとでち公の方に放り投げた。適当な投げ方にも拘らず、ぽん、とでち公の目の前でふんわりと落下し、着地するように置かれた。
ぱあ! と喜色満面のところ悪いが、私も血装の拘束を緩めるつもりもないので、ぬか喜びである。一瞬ちょっと緩めて片手だけでも出してやろうかと思ったが、どうせあの状態で呑んでも零すだろうし、忘れてるかもしれないがさっきまで尿意を我慢していたようなので、出来た兄貴としては心を鬼にするべきであろう(謎)。
「ど、どうしてそんないぢわるするでちか~!」
「嫌がらせじゃねーんだな。そもそもお前さん敵だから、拘束は当たり前なんだよなぁ……(遠い目)」
「飲み物に我を忘れすぎている……」
ほら、隣の釘宮もなんか微妙な表情になってしまっただろうが。ギャグ描写的には目を真ん丸にして涙ながらに叫んでいるようなデフォルメがされそうなでち公、私もちょっと罪悪感がないではないが、線引きだけはハッキリしておかなければならないのだ。
私に全ての願いをかなえることなど出来ないのだから(適当)。
あと、後方でカトラスが「えぇ……?」とでち公相手にドン引きしている。空気読めよお前、という感情なのだろうが、お前さんも割と最近大概だからな? な?(戒め)(ダーナ「空気読まない筆頭が何か言ってるよ」)
そんな私たちの様子に呆れた風な綾瀬夕映は、私と釘宮を見てため息一つ。
「…………見た目だけで言うと、どちらかと言えば近衛刀太の方がコタローさんの、釘宮大伍の方がネギ先生のお孫さんのようです。妙な皮肉ですね。性格的にはどっちもコタローさんの要素を見いだせないですが」
「っ! 何故、俺の名前を知って――――」
「まー、むしろ時代が悪いっスよ時代が。アンタらの首魁が『そう』じゃなきゃ、今頃宇宙圏で異なる銀河の惑星開拓とかやってたんじゃないっスかね人類」
初手煽りは(以下略)。実際どういう反応を返されるかというのも確認する目的での一言であったが、綾瀬夕映は特に表情を変えず「我々に選択肢はないだけの話です」と返して来た。
原作漫画との描写差分から、現在の自由度と言うか洗脳度合いを観察しようと思ったのだが、これは……。
「そんなもの、今のあの方には関係ないということです。しかし二人だけでは、分が悪いですね。
ここは引くですよ、ラカンさん」
「あ? いや、何でだ嬢ちゃん。俺が時間稼ぎしている間に調べりゃ良かったろ」
「調べる意味がほぼ無くなったです。最低でも『今いる場所がわかれば』
その精神状態にも問題はありますが――――そもそも行き倒れていないか心配されていたですから、カトラスは」
ぴくり、と釘宮の耳が動く。
視線でこちらを見ないのは、なんとなく敵の目的に察しがついたからか。
はるか後方、ビルの影からこちらを伺いつつ隠れてるカトラス……、今は神楽坂絵馬だが、彼女もまた一歩後ずさったらしい。微妙に「第四の目」の射程的には怪しいところだが、動揺してるのだけは間違いない。
なので、とりあえず私は一言。
「…………家出する形で居場所がわからなくなって心配して迎えに来るくらいなら、家出した時点でもっと真面目に探しとけって言うのは野暮っスかね。正直、本当はどうでも良いって思ってんだろ。
せいぜいが、道具扱いだ」
そう、そういうことである。
今回、ジャック・ラカンが負っていた仕事というのが「カトラスの捜索および回収」というものだった。カトラスの仮契約カードおよび電子マネーの通帳などは「母親」を自称するザジ・レイニーデイによって没収されており、そのせいもあって金銭を稼ぐために四苦八苦しているのが現在のカトラスである。おそらくザジ・レイニーデイ的には、居場所や現在の行動の特定を防ぐために、あちらに割れている情報ソースを確保したと言う流れであろう。
そしてその結果、ラスボスに乗っ取られたネギぼーず本人が、カトラスのことを心配したらしい。
……心配と言いつつ、普通に自陣営への回収目的が主ではあるだろうが、そこにある幾ばくかのネギぼーずの正気が心配していたのも、彼女の口ぶりや思考からして間違いではないのだろう。
もっとも、その思考から見るに……「この世界の絶望に対して腑抜けているようであれば、自分がどういった存在であるか、どういった生き方を強制されるべきであるか、救われてはいけないのかを改めて刻み直さねばならぬが、骨が折れるか……」という真っ黒な思念も見え隠れしていたので、割と洒落にはならないのだが。
今すぐ回収するつもりはないにしても、もしあちらに再回収されれば「今度こそ」完全に心を折られ、二度とこっちの陣営には戻って来られないだろう。そう納得できるだけの圧が、その真っ黒な思念……、おそらくはラスボスの思念には込められていた。
そして言い方は悪いが、心配してくるくらいなら最初にザジしゃんに鹵獲された時点でもっと真面目に取り返せと言う話である。お陰で、言い方は悪いが要らぬ苦労を背負ってしまった。
カトラスに対する扱いとして、後悔がある訳ではないが。それでも、果たして今の状態が「世界にとって」良いものなのかというのには、少し疑問が残る。最終決戦には関係していなかったし大したことはないだろうと踏んではいるが、それでも私の行動の影響を受けているらしい彼女の状況が、世界崩壊の引き金に繋がるまいか。バタフライエフェクトは…………、をのれ橘ァ!(責任転嫁)
私の言いぶりに、ジャック・ラカンはバツが悪そうに、綾瀬夕映はため息一つ。
なお全く関係ないが、でち公は特に反応せず涙目のまま謎飲料に視線を注いでいた。
「……境遇にも思う所が、ないわけではないです。しかし大本の、責任の所在はフェイト・アーウェルンクスとエヴァンジェリンさんにあるですよ?」
「あー、多分、俺らが生み出されるに至った経緯についちゃ、そりゃそーなんだろうがさ。
それでも立ち位置上、後ろ盾って言えるだろ? 本当に必要なのが保護者だってわかってて、それ以上踏み込まず、なのに表面上だけでも保護者気取った物言いしてたら、そりゃ嫌味も言いたくなるっスよ」
「…………だから貴方は、せめて彼女の保護者のようにふるまっているですか。所詮は『眠るまで』早いか遅いかの違いでしかないのに」
「そこまで出来たモンでもねーけどな。社会性そんなに高いわけでもねーし」
学生に求められるレベルを超えた案件なので、基本は丸投げに次ぐ丸投げである。
そう自嘲する私に、釘宮も綾瀬夕映の物言いから何かを察したような顔をして、半眼になりながら弓を構える。
そんな私たちを前に、綾瀬夕映はいつの間にか手に持っていた図鑑のような本を開き――――。
「そもそもそんな自由が許される立場に、貴方自身がいないというのが何よりも皮肉なのですよ、近衛刀太。
アマテル・インダストリアルの極秘実験施設にて生まれた『英雄の子供達』計画の産物、73体目の『唯一の』成功例。あなた自身が、どの陣営にとっても『世界変革の鍵』であると同時に、多くの犠牲の上になりたった存在。
現存する15弱の実験体の生き残りを含めて、その全ての業を背負った、私たち全員の孫――――
「知るか、そんなこと」
思いきり威圧を込めて、軽く断言する。この言い回し自体は、それこそ原作12巻の先取りというか時系列崩壊の一種ではあるが、それに対する動揺よりも「綾瀬夕映の口からそれを言わせている」ラスボスたるヨルダ=バオトに腹が立つ。直に
それに、そもそも「喫茶店」どうこうを知っている時点で、その物言いは多分にヨルダ=バオトの影響が見て取れるだろう。現状、それを把握できそうなのは敵陣営的にラスボスくらいなものなのだから。
黒棒を肩に担ぎ、その黒いものへと「殺気を向ける」。
「……らしくないな、近衛」
「そうか? ま、ちょっと話すから黙っててくれよ」
「構わないが、その威圧は少し抑えてもらえると助かる」
「あー、悪ぃ」
少し顔色を悪くした釘宮に断りを入れてから、私は綾瀬夕映に割り込むヨルダ=バオトの思念を視る。
「一応まあ、このご時世は人権っつーものは最低限保証されてんだよ。それに正面からケンカ売るのは、アンタ何様? って話だぜ。スラムもあるし法施行追いついてなかったりするし、全部が全部うまく行ってるわけでもねーけど、それでも一応法律上は、健康で文化的な、最低限度
だから……逆説的にそれを奪い続けた、カアちゃんも、フェイトも、それこそ『お母さんも』、それなりに業は背負ってるはずだぜ。だってのにアンタの言いぶりは、なんか違うだろ。まるで自分が絶対者っつーか、絶対に裁く側に立ち続けてるっつー物言いだぜ?」
「何を言うかと思えば。『決定づける』のは私たちであって、それ以外の道など人類の救済のためには――――」
「自分の立場を選択『し続ける』自由は、ずっと行使してんだろ。だからヘンなんだよ。……あんま説教くせーこと言いたくねーけど、いかにもって外面っての、取り繕うのは止めた方が良いぜ? 誰に向けるべき怒りなのか、憎しみなのか、さっぱり判らなくなっちまうからなぁ、大半の人間っつーのは」
結局色々お題目掲げてるけど、本質的にはアンタだって単なるワガママだろうが、と。人にもの言う前に自分を顧みてから、もう少し言い方を考えろと。
鼻で笑った私に、綾瀬夕映は目を細める。
「…………何をどうしたら、ここまで
「そうか? 『友達と馬鹿やりながら笑える』場所を残したいって、そんなに変か? でもエゴだ何だって言ったって、アンタだって似たようなもんだと思うぜ。
カアちゃんが言ってたような気がするが――――」
……それこそ「私」の内の一つ、
「――――『親にならなきゃ、人は一人前にはなれない』らしい。子供に、次に繋がっていくものを残せず一人で完結してるうちは、いつまでたっても半人前なんだと」
つまりは「次に繋げていく」ということを考えられないのなら、いつまでたってもその相手は一人前になれないのだ、ということだ。異論は色々あるだろうが、アレはカアちゃんが実感したことを、俺に語っていただけの話なのだ。
私的には盛大にブーメランが刺さる話ではあるが……、それでも、その言葉はラスボス個人を殴る一言にもなるだろう。
だが、言葉の真意は届かない。否、届いているのだとしても、あまりにも高次から見下ろすその視点の前には、些事に過ぎない。
「話にならないです。やはり人格はいらぬようですね。…………帰るですよ、ラカンさん」
「あー、お、おう。………………大丈夫かよトータ、そんなメンタルで」
「本当に大丈夫だって思っているのか(白目)」
黒く染め上げられ続ける綾瀬夕映に対して、思考が全く汚染されている気配もないジャック・ラカンの、割と本気で同情を含んだ物言い。思わず素で適当に返してしまったが、一体何に対してそんな哀れんでいるのだアンタ。こっちの返答に「まあ人生、そのうち良い事あんだろ」と軽く返してくるのが、ますます本気で同情されているようで少しモヤモヤする。
警戒しつつも、程なくどろどろと音を立てて「影の中に」吸い込まれるよう姿を消した彼女たち。
その姿が消えるまで見送って「第四の目」をいったん解除し、でち公の方を一瞥する。未だに飲み物以外視線に入っていなさそうなサリーであるが、いやまあ、思念が集中してる方が尿意を紛らわせられるからこれはこれで良いのだろうか。彼女の尊厳的な意味で。
「それはそうと、とりあえずでち公をどうすっかねぇ」
「……そもそも紹介すらされていないが、近衛?」
とりあえずカトラスも遠隔側でこっちに呼び寄せつつ、でち公を見やり、釘宮の方を見て私は肩をすくめ――――。
「――――って、何だその汗!? 服びっしょびしょだぞ、顔色とか完全に土色じゃねぇか!!?」
「君は……! 少しは自分の出す、その物々しい殺気の威圧感を、自覚するべきだッ!」
君と違ってこっちはまだ普通の中学生だから、鉄火場も真っ青な顔などされて持ちこたえられるかッ! と帽子をこちらに投げ捨て叫ぶ釘宮相手に、割と本気で謝り倒した。
いや、そんなに殺気とか言っても強い殺意とか〇王色みたいな