今回ちょっとおまけあります!
ST221.Hint To The Cruel Truth -Revenge-
「うおォン……! うおォン……! 今日、俺はまるで人間ケバブ生産工場だ……!(ゴローちゃん)」
「どういうことなの、刀太君…………?」
「いつもの
「只のおふざけかと思いますが……、ふむ。
今ならきっと、ほっぺにキスしても気付かれませんよキリヱ。ファイトです」
「だから夏凜ちゃんは私をどーしたいワケッ!?」
「そうですか? では行かないのでしたら私が――――」
「ぼ、僕も行きますからッ!」
「トータェ……」
いきなりだが、兄サンが壊れた。兄サンの周りもなんかあの夏凜サンとかいうヤベェ聖女とかもぶっ壊れてるし、なんかそれに触発されてどんどんぶっ壊れていってる。見ているだけでちょっとモヤっとするし、なんかこう、ヒく感じだった。
迫ってくる女たちをひらりと躱しながら、張り付けた笑顔で黙々とケバブ焼いてる兄サンの姿は、はっきり言ってちょっと気持ち悪い。なんかこう、ポップコーンとか売ってるロボットみたいな感じで変な感じだ。
いや、ケバブは美味しいけど。
廃墟とかガラクタの山が続く臨海の一角。教会近くのスラムの広場(広場?)で、兄サンは「仕込んで来た」って言ってた大きな肉の塊を焼いている。焼くのには時坂九郎丸とか、あとあのヤベェ聖女とか手伝ってて、配膳はキリヱサンとかやってた。あと兄サンの腰ぎんちゃくみたいに後ろにいて「お、俺何やったら良いんだ!?」とか言ってる佐々木三太とかもいるけど、大して興味はない。
いや、まー、なんか夏凜サンが麦わら帽子被ってるのがよくわからねーけど、それ言い出したらこんなクソ暑いのにずっと赤いマフラー巻いてるお兄ちゃん野郎の方がよくわからねーしな。
お兄ちゃん野郎、兄サンは子供に大人気だった。バケツ被ってる奴だったり、まー兄サンと妙に馴れ馴れしいガキだとか、どいつもこいつもちょっと「懐かしい」顔ぶれが兄サンにまとわりついてる。調理中だって言ってキレかかってるのに、わーきゃー蜘蛛の子散らしていく感じでバラバラになっていって、それにため息ついてる兄サンは良い気味だ。……調理開始してから私が話しかけてもずっと無視してるし、少しくらい困ったってバチは当たらないはずだ。うん。
あと、私も神楽坂絵馬? の変装は解いた上で野球帽とか被って色々誤魔化してるから、時々こっちにも群がって話しかけられたり、あとケバブのサンドとられそうになったりもする。ま、所詮はガキ共だし……、スカートめくろうとする奴はケバブ放り投げてぐりぐりしてからキャッチして食べてって感じで対応してるけど、まー大したことはない。
「おわあああああ!? ガキンチョ共、俺のアフロをいぢめるなァ――――ッ!」
「ま、人生諦めが肝心ってやつだよ。ラズロ」
むしろ私よりもアフロ野郎の方が人気者だったから、本当に大したことは無い。
弟野郎も女のガキ共が群がってるし。顔は良いからわからなくもねーけど、ソイツ絶対お兄ちゃん野郎みたいに性格悪いぜ? 男見る目はないな。ハッ!
もぐもぐと、とりあえずパンみたいな薄いやつ、二つに割いた片方に入れる? 感じで挟んだそれをもそもそ食べてる私に、なんかひょこひょこ背の小さいのが近づいてくる。まあ小さいって言っても、私よりちょっとってくらいだし、大人から見たら実際見た感じは差はないはずだ。
そのうちの片方……、私的にちょっと苦手な、近衛帆乃香は「ぽややん」とした感じで、ニコニコ笑いながら肉を食ってた。相変わらず近衛木乃香とか、野乃香さんみてぇな顔で、似たような感じにぽややんしてる。
「はぁ~、美味しいわぁ。お兄さまのお料理、普通に美味しいんね。というよりこういう感じのやつも作れるんやね~、初めて知ったわ。ん、『テナちゃん』は知っとったん?」
「ま、まあ、うん」
「ほぇ? 何や緊張しとるん? 別にそんな、ならんでも関係ないで~? 前もいったけど、みんなお兄さまの妹なんやし。ねぇ勇魚」
「…………」
「勇魚?」
「どーしたんだよ」
ぶつぶつと何か言ってるのは、近衛勇魚。刹那さん……、桜咲刹那みたいな容姿をしている帆乃香の妹。
何つーか、スゲー顔が絶望してるし。あと呟きをよく聞くと「私ぜんぜん出来へん……」とか「お弁当つくれへん……」とか言ってるし、何がどうしたんだコイツ。
帆乃香は勇魚の様子に「あ~」とか何か納得した感じだ。
「アレやね~。お兄さまにお弁当作りたかったんやけど、自信なくしたんやな~。うちら家やと、お母さまか師匠がおらんと火、使っちゃアカンもん」
「ちょ……!? お、お姉様!? べべ、別にお弁当作るとか、そんなこと考えてないですしッ!!?」
「嘘やん、絶対勇魚ってばお兄さまにあ~んして間接キス狙っとるやろ。わかるえ、そういうん。お兄さま大好きやからなぁ勇魚」
「ちょ――――ッ!!?」
「えぇ……(引)」
帆乃香の言葉に勇魚は動揺しまくりで、誰がどう見ても図星だった。
というか兄サンと間接キスとか…………、い、いや、私とかでち公とかならともかく、お前は顔立ち的にアウトじゃねぇのか? どう見ても兄サンと同じ血筋だろ。血筋というか、遺伝子関係っつぅか。
流石に近親相〇とかは見てて引く。思わず数歩下がった私に「べべ、別にそんなことあらへんもん!」とか叫ぶ勇魚は、顔真っ赤にしてて説得力が全然無かった。
「野乃香さん、子育て間違えたんじゃねーか…………?」
「間違えてません! 私もお姉様もきちんと育てられておりますっ!」
「まー子育て言うても、うちらちゃんとお母様に育てられたん4年くらいやしなー。師匠に扱かれとるんは2年くらいやけど……、おぉ、怖ッ!」
「4年?」
「ん、せやでー? うちら、『製造されてから』まだ6年目やもん。最初二年で『ほぼ』ここまで一気に育てられてなー? ……あ、これお兄さまには内緒な?
そしたら、なんかむちゃくちゃ落ち込みそうやん?」
「そりゃぁ…………」
帆乃香の言うことをもとにした情景がそのまま脳裏に描かれて……、兄サンが「そっか」とか言って、暗い目で困ったように微笑みながら帆乃香たちの頭を撫でてるような映像が流れて、私は何とも言えなくなる。私もあんまり人の事言えないくらい寿命が長いわけもねーけど、それでも「私より」老化速度を速められてたっていうのは、ちょっと思う所がある。
……ただそれはそうと、勇魚はなんかまーだ顔赤くして「ノーマルやん、だってお兄様格好えぇもんっ」とか言い訳してるのが聞こえて、二人してそっちを向いた。「アカンえ? お母さまにお尻叩いてもらおか」とか勇魚にニコニコ言ってる帆乃香は、なんだかんだ兄サンみたいな振る舞いでお姉ちゃんしてる感じがした。ちょっともやもやする。
後生やん、じゃねぇんだよ近衛勇魚……。というか私含めて、妹に手を出すつもりはないって断言してるぞあのお兄ちゃん野郎。
…………ま、まあ、号泣した時に抱きしめて頭撫でてもらったのは、ちょっと気持ち良かったけど。いや私は良いんだよ私は、そんな話はともかくだ。
「まー、勇魚は『金星の黒』やしうちも『火星の白』の扉とか魔術的に取り除かれとるし? そのせいで二人とも、お母さまみたいに病気とか弱いかもしれへんから、なおのことやん。
せやかて、あんまクヨクヨしとうないし。お兄さまとは楽しい思い出、いっぱい作らな! 行くで、勇魚!」
「…………は、はい」
「だから何でお前は顔真っ赤なんだよ……(引)」
コイツ大丈夫か? という目を向ける私に、勇魚は「問題ありません、全く問題なんてありません!」って何度も何度も言ってくるし。帆乃香が何か良い感じのこと言ってるのが全部台無しだった。
いやでも、帆乃香も帆乃香で野乃香さんにめちゃくちゃ似てるから、性格も似てるだろうし……。
ツッコミが足りねぇと走っていく二人の背中を追いながら、その先のお兄ちゃん野郎の方を見る。お兄ちゃん野郎はお兄ちゃん野郎で、あのヤベェ聖女が「追加です」って持って来た肉を焼いていた。ガキ共がテンション上げてるし、んー、なんかモヤモヤする。
だってもともと、私にだけ作ってくれるって話だったし……。私を泣かせたお詫びとか言って、犬上小太郎の孫に「奉仕活動も事情聴取も来週に回してくれね?」とか頼み込んで。その上で兄サンから提案されたのが、何故かケバブだった。
理由? なんか私が好きそうだって言ってた。見た目が思いっきり「肉!」「肉!」「肉!」って感じでインパクトもボリュームもあるしとか言って。
いや別に、私そんなに食いしん坊じゃねぇからテンション上がるわけじゃないんだけど……。
ただ、仕込みを作りすぎたとか言って、せっかくだから週末にケバブパーティにして良いか? とか言ってたから、そのせいで今日はスラムに顔出ししに来る感じになった。
まあそれはそれとして。どうでも良いけど、あの左右にある専用機械みたいなよくわからねーやつ、色が赤黒くて鉄臭いんだけど……。ま、まさかな?
いや匂い移ってないし、食材には直に触れてないから、仮にそうだとしても大丈夫だとは思うんだけど、それでもなんとなく嫌な感じはする。嫌な感じはするんだけど、それはそうとしてケバブは美味しいから釈然としなかった。
とりあえず追加で貰いに行くと「僕、切るの変わるよ。焼くのはこのまま自動で大丈夫?」とか九郎丸サンが代理を買って出てくれた。兄サンにウインクしてるのがちょっとモヤモヤするし、後ろでなんかニマニマしてるキリヱサンがうんうん頷いてるのもモヤモヤした。その後ろでキリヱサンの耳元に囁いて顔真っ赤にさせてる聖女はドン引きなんだけど、とりあえず兄サンは私と一緒に、少しここから離れた。
教会の方……、まだ色々と「戦った爪痕」が残ってる。……兄サンがでち公相手に色々やった、あの戦場も見えた。
「なんつーか、半年も経ってねーんだよなぁ。お前さんと遭遇してから」
「いやもっと経ってるだろ……って、アレはダーナ師匠のところでか」
「そうだよ(便乗)。ま、たまに忘れそうになるけどな」
あそこはどう考えても時空が歪みまくってるからなぁと兄サンは乾いた笑いを一つ。んでもって、私に「それはそうと悪かったな」と頭を下げて来た。
「悪かったって、何……?」
「釘宮もそうだったけど、何か怖がらせちまったみたいで」
「あれは……、まあ、ちょっと動揺しただけだしっ。そんなことより私としちゃ、試合途中で当たり前のように抜け出してたことの方が気になるんだけど――――」
「流石にでち公とか相手だとなぁ……。本気で戦ったら『殺す』ことは出来ても、こっちもタダじゃ済まないかもしれない感じがすんだよなぁ。だから慎重にやったっつーのもあるんだが、どっちにしても晴れ舞台なわけだしな?
負けたけど(直球)」
「ケンカ売ってンなら買うぜ?」
右手首から先を変化させて構えて満面の笑みを浮かべると、すぐさま一歩下がって90度の確度で腰を曲げて「サーセンシタッ」とか言ってくるこのお兄ちゃん野郎はさぁ……。下っ端か何かかよ? その割にはちゃんとケバブ食ってるし、真面目なんだか不真面目なんだかハッキリしろって。
全く、と言いながら私もケバブを一口。……さっきより薄く切れてるせいか柔らかい。ソースはヨーグルトみたいな感じで甘目だけど、隠し味みたいな刻みオリーブの触感が時々見え隠れして、割とお店で食べてるような感じがする味だった。上手くは言えないけど、芸が凝ってるっつーか。
「家庭向きの味じゃねぇんだよな…………(諦観)」
「何もいってねぇってのっ。……まあ、アレだ。忘れろよ泣いたのとか」
流石にアレは我ながらちょっと情けなかったと思う。兄サンが当たり前のように上半身と下半身を分割したままこっちを向いて、適当に振舞っているのが……、私同様に戦場導入されてた、他のロットナンバーの全員のことを思い出した。私とあと一人を除いて皆バラバラになって化学兵器でバラバラにされて、私も細菌兵器のせいで足は切除しないといけなくなって…………。
でも、普段はそんなの思い出しもしない。そんなもの、もうどうしようもない事だからだ。あの時、いくら泣いたって誰も救っちゃくれなくて。当たり前のように改造されて、人体を作り替えられて。剣の生成用アプリを頭割って挿入されたりしたときよりも、こっちの人体の破片も「ジュースみたいになるまで」徹底的に解剖して分解して研究されつくされたことも、もう、終わってしまったことなんだ。
だからどちらかといえば、アレは兄サンの怒ったやつに引っ張られたって感じだ。
そのことを言おうとして……、ちょっと鳩尾あたりがバクンって嫌な音を立てて、ちょっと胸が苦しくなる。大丈夫か? と声をかけて来る兄サンに適当に返すけど、一体どれくらい思い出したくないんだろうか。私は。
私がそんなだったものだから、兄サンの後ろからやってきたシスター・ミカンに会話の流れを奪われた。……「よぅよぅ~お二人さぁん?」とか、相変わらずなんかテキトーな感じだ。ざっくばらんっつーのか、死語かこれ? 後、兄サンはなんか半眼で空中に「だから自重しとけッ」とか言って裏拳で意味不明なツッコミ入れた。何がやりたいのかさっぱりわからねぇ……。
「おぅどうした、思春期? イマジナリーなお嫁さんでもそこにいたかー?」
「違うけど、まあ
「全然大丈夫だよっと! イヤー実際助かるんだよね? こうやって差し入れっていうか、子供たちの気を引いてくれるやつやってくれるの。ケバブも事前に、大人用のは配ってくれたしね。
なんか急に離れてたけど、お邪魔だった?」
「そんなことは。……あー、多分焼いた奴残ると思うんで、そっちは後で切り分けるからお皿とか準備あればお願いします。冷めれば冷蔵できますし」
「あざーッス! わっはっは!」
そして、なんだかんだ色々気を回しているのがお兄ちゃん野郎。生で焼いているところは子供たちに見せたいってことで、あんまり大人が群がらないよう(身長差で見えにくくなるとか言ってた)、事前に作って置いたケバブ自体は既にあらかた大人に配り終えている。おまけに後始末の話までしていて、変なところで隙が無い。
あと、かくいうシスターも作り置きの方を食ったのか「美味しかったよー」と適当に笑っていて、兄サンは肩をすくめた。
「ふむふむ、ふぅむ…………、うむ! これなら良いおムコさんになれるねッ! 後はイチモッ――――」
「おセンシティブな話題は全力でスルーするぜ!」
「えぇー? 何でそんな青春! 真只中! って感じのくせにコイバナとかで盛り上がらないかなぁ」
「シモの話題は二極化すると思うっスよ。ほら、妹チャンだってこの通り真っ赤に……」
「あら可愛い。……むっつり?」
「違ぇ! 絶対違ぇ!」
「ま、それはそうとおヨメさんは早いうちに見繕っときな? じゃないと私みたいに相手いなくて親戚中からせっつかれるし。
刀太君でいえば、例えば…………、夏凜ちゃんとか夏凜ちゃんとか夏凜ちゃんとか? 性格クソ生真面目で空回りして暴走して面倒くさいけどおっぱい大きいしスタイルは良いし、安産型で年下には妙に優しいしオススメだよん? 処女らしいから面倒くさいだろうけど」
「面倒なのは知ってる(白目)」
この女、敵か――!?
い、いや、別に敵じゃねーけど。
というか今一瞬、何考えたんだ私っ!!? あとお兄ちゃんも何言ってやがるッ!!?
「カトラスも落ち着け(震え声)。いやまぁ、夏凜ちゃんは、うん、はい、えーっと…………、まあそのあたりはちょっと置いといて。
最近どうっスか? 夏凜ちゃんがたまにこっち見に来てるってのは聞いてるっスけど」
「地上げの方? あー、あっちも太陽系オリンピックの準備期間というかで、土地奪って色々作り直すよりオリンピック経済効果狙って諸々の再整備した方が良いみたいな話になってるみたいで、最近は襲撃減って来てるかな? 黒服さんたちだけでどうにか出来るのは、ケッコー安心」
「そりゃよかったっス」
「でも五輪経済効果も、こっちに良い影響出てくれればねぇ~。ここ出身で学校行きたいって子がいても、なかなか学費とか出してあげることが出来ないし。アマテルの湾岸研究所? とか、そっちの方も2年前に事故があるまではお仕事とかあったんだけど、今じゃねぇ……」
「二年前……、スか」
「兄サン?」
「ま、それでも子供達のために何かやろう! ってのは私のエゴなんだけど、それでも自分がいかに恵まれてたかってのを思い知らされるような経験があると、ちょっとねぇ~。何かやれるだけの素地は自分にあるし、今は婚期とか考えらんないにゃ~」
結婚はしたいけど人生いろいろだぁ~、とか言ってるシスターを見る兄サンの目が、なんか、すごい真っ暗な感じだ。なんか嫌な威圧感があるというか……。ただそれもほんの一瞬で、すぐいつもの兄サンの顔に戻って、「でも救われる人が多いんなら、良いんじゃないっスか?」とか返した。
「そういやシスター、学園都市の方でシスターのお祖母ちゃんに会ったんスけど、こっちの孤児院ってシスター・ミソラがもともとやってたんでしたっけ。夏凜ちゃんさんも、元々その時に世話になったって」
「ヴぇ、まだ『生かされてる』ワケねぇあのババァ……」
「「生かされてる?」」
「あー、うん、こっちの話。ん-でもババァ、相変わらずテキトーじゃなかった? 生徒同士のきゃっきゃウフフと甘酸っぱい青春の一ページに、魔法使って姿くらましてコソコソとココネさんと一緒に観察してニヤニヤしてるとか、懺悔室のお悩み相談を誘導して教師同士を結婚させたりとか、超包子の限定メニューが出たら『邪魔だどけぃ! ナンバーワンはこのババアじゃあッ!』とか言って
「えぇ……(引)」
「ちょっと何言ってるかわからないですね(震え声)。というか呼び方なんでババアなんスか……」
「いやだっていやだって、聞いてよ聞いてよ聞いてよ刀太君。あのお祖母ちゃんってば、自分からババア呼び定着させようとしてたんだよ? ずーっと。こう、ババアだから何やっても老い先短い年寄りだから大体許されるっ! 的な事をよく言ってたし」
「どういうことだってばよ(震え声)」
「孤児院やってたのだって、直接聞いたことはなかったけど多分あの感じだと、シスターとして仕事ない時期に世間体を鑑みて始めたとかじゃないのかねぇ……。ぶっちゃけミッション系というか、宗教的なことなんてのも、ここで何も教えちゃいないし。教えろって言われても断固拒否して、夏凜ちゃんと喧嘩してた時もあったし。
えーっと、何だっけ? 『下手に教えて何か後々トラブル発生したら責任取れないから! ダメージ吸収するだけの余裕、こっちの方にないからダメダメェ!』とか凄い勢いで言ってきたし。ま、人生もババアも色々だぁ、わっははははは!」
「――――――――(白目)」
兄サンがなんかよくわからねーテンションで混乱してる……。こういうの見てると、あの時の怖さがまるで嘘のようだ。
あの時――――綾瀬夕映を介して、ある意味でヨルダ様が兄サンに話しかけた、あの時。
『現存する15弱の実験体の生き残りを含めて、その全ての業を背負った、私たち全員の孫――――
『知るか、そんなこと。「言わせられてる」アンタに言う事でもねーけど――――。
――――殺すぞ』
あの時。明確にお兄ちゃんは「殺す」なんて言葉を口走った。普段は絶対に言わないような言葉を、本当に殺意を乗せて。声音も明らかに普段と違って、犬上小太郎の孫も「ぅぐ……」とか、うめくみたいな声を上げてた。
その後に続いてた言葉も、ずっとずっと、ちょっと笑ったような息遣いをしていても絶対に「目が据わってる」のが感じられたくらい、声が全然違った。
『「親にならなきゃ、人は一人前にはなれない」らしい。子供に、次に繋がっていくものを残せず一人で完結してるうちは、いつまでたっても半人前なんだと。
アンタ……、
『話にならないです。やはり人格はいらぬようですね』
『…………チッ』
というか、舌打ちまでしてて行儀悪いし。本当に普段のお兄ちゃんじゃなくって、立ち振る舞いのガラが悪くて。それでいて、感じる威圧感は――――。
ごう、と海の方から風が吹く。「びゃー!?」とか言って修道服の帽子を押さえようとするシスターだったけど、失敗したのかそのままあらぬ方向に飛んで行って。
その下から現れたおかっぱ頭の…………「ネギ様を思わせる」クセのついた赤毛のおかっぱを見て、お兄ちゃん野郎は「やはり神は死んだのでは?」とか言って、怒られてた。
だから意味わからねーよ、と呆れて私はケバブを一口。うん……、こういうお兄ちゃんの方が、近くに居て安心するや。だからって手を出されたりするような覚悟とかは全然ねーけど……、いや絶対手は出さないとか言ってたし、大丈夫、大丈夫。
こういうお兄ちゃんの方が良いに決まってるんだ。
まるで――――静かに怒りをまとった時の
【ちょっとだけ刀太視点? のおまけ】
その①…………
美柑「よぅよぅ~お二人さぁん?」
??(――――ちくわ大明神!)
刀太「だから自重しとけッ! というかここで出る意味がわからんぞ……」
美柑「おぅどうした、思春期? イマジナリーな彼女でもそこにいたかー?」
??『おぅ年下の子を揶揄ってる暇があったら早く結婚してあっちの私の身体にひ孫、抱かせろやァ! 孫ォ! ちくわ大明神ッ!』
その②…………
美柑「ま、人生もババアも色々だぁ、わっははははは!」
刀太「――――(白目)」
カトラス「……(そわそわモグモグ)」
美柑「はっはっは! って風ェ! あっ待って! そのウィンプル意外と高いやつなんだからァ! アマノミハシラ学生時代の貯金使って買ったやつなんだから! カムバーック!」
刀太「あー、取ってきましょうか? 後で。方角から言えば血装すりゃなん…………と……、か……」
刀太「(髪質のこの微妙に跳ねそうになってるのとか、額の見え具合とか、何よりこの赤っぽい色味というか……、はい? えっ、春日美空って茶髪だったし、『ネギま!?』まで含めてああいう赤系統になる要素ないはずだし、えっ?)」
美柑「むむぅ? どうした、お姉さんに惚れたかァ? お姉さんおっぱいあんまりないけどな! ま、なんかお祖父ちゃん? から魔法の才能も引き継げなかったらしいし、いかんこのままだとあのババアと同類扱いされて婚期逃す……」
??『そうだよん! 私の時みたいにネギ君とフェイト君に土下座するとかそういう手段とれないんだから、ちゃんと相手見つけろやァ! まほら帰れば見合い写真くらい用意してるわあっちも! ちくわ大明神ッ!』
刀太「――――――――」(※脳裏をかけめぐる、このせつ結婚式の映像とほのいさの顔)
美柑「刀太君?」
刀太「やはり神は死んだのでは(震え声)」
美柑「ちょッ!!? 流石にそれはどういう意味だー! この思春期めーッ!」
カトラス「だから意味、わかんねーよ……」モグモグ