光る風を超えて   作:黒兎可

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ラブコメを失ったな……(語録)


ST222.原作がひび割れる音

ST222.We Are All Travelers With A Tragic Fate.

 

 

 

 

 

 カトラスの機嫌をとってから数日後。仙境館の子供たちに「自分たちもケバブ食べたい!」とせがまれた結果、再びのケバブパーティと相成ったりといったこともあった週末。何故か筋肉痛で身動きがとれなくなったキリヱ大明神や、シスターの手伝いにとスラムに向かった夏凜はさておき、私、九郎丸、三太くわえて一空の四人でケバブ「もどき」を焼いて配膳する流れとなっていた。

 

 食材については流石に1日で仕込むのも厳しく、ホルダー拠点のまだ使える材料を源五郎パイセンやバサゴに問い合わせ、手に入ったのは豚肉のブロックが大量。天然素材である。それらを用いて、ケバブ風にチャーシューを作る運びとなった私だった。

 まあ手に入った経緯としては、…………。

 食材がないか問い合わせに行った私に、バサゴは「借金も全く返し終わる気配もないと言うのに、勝手にやっておいてそれがものを頼む態度ですか? 手続きはしていたとしても、話は通していなかったでしょうが。ハンッ!」と小ばかにされ、紆余曲折あり土下座したりもした。思いきりスライディングして頭を下げる私を見たバサゴは愉悦を感じさせる笑みをもらし、源五郎パイセンは呻いていた。

 なおこの場合は源五郎パイセンのリアクションが正しい。土下座する私と土下座させたバサゴ。この構図を見た時点で、後から来た九郎丸が物凄い形相でバサゴに斬りかかったりとちょっとひと悶着あり、最終的に全員カアちゃんに叱られる運びとなった。

 

『そんな阿呆みたいな理由で拠点を半壊させかけるな、ギャグ漫画の住人か何かかお前たち!!?

 罰として、全員仲良くするために刀太は焼け。肉ならお前、なんとか味付けできるだろうが上手い事』

 

 返す言葉も無ぇっすわ(白目)。

 そんな訳で種族問わず拠点にいた子供達全員だけでなく、男衆をはじめとして甚兵衛さんやらパイセンやらバサゴ含めて、拠点の人員ほぼ全員に対して焼くこととなった。

 朝方からの準備開始。あくまで日中なのでお酒は無し。色々と設置している途中の私や九郎丸たちに向け、甚兵衛さんが相変わらずフェイマ(ファ〇マ的なコンビニ)の店員な恰好をして「そりゃねぇぞ雪姫~」と肩をすくめてニヤニヤしていた。

 

『俺含めてほぼ全員、こーゆーのは前時代の遺物だぜ? 飲みニケーションってやつがなきゃ本音なんて零せねぇってか。源五郎ですらこのナリで五十いってるし、バサゴに至っちゃ3、4百年モノだろ? お前よりちょっと下くらいじゃねぇか』

『甚兵衛さん、一応、まだ四十代です』

『あ? あー、誤差じゃね?』

『少々デリケートなので。それから僕は、飲みニケーション反対派です』

『そりゃそうっスね(※源五郎の正体的に)』

『刀太君、何か知ってるの……?』

『オレとかそもそもアルコールが全く効果ねェンだよな……』

『あっはは、僕も飲めなくはないけど、好き好んではいないかな? 身体がこれだしね』

『ジーサンバーサンは肩身が狭いぜ、なぁ雪姫』

『煩いぞ、私の倍以上生きている貴様が何を言うかッ!

 あと私も酒を飲む相手は…………』

 

 ごにょごにょと言いぶりがしりすぼみになるエヴァちゃん(ロリっ子の姿)。久々に見るそのゴスゴスしたフリフリのドレス姿が大変可愛らしいところであるが、なんとなく私の脳裏に過ったのはネギぼーずを弄んだ(語弊)「ネギま!」学園祭編での暴挙の数々なので、出来た息子としては生暖かい目で見守っていた。色々と悩んでいるネギぼーずとディナーとしゃれこんだり、お風呂で弄んだり(語弊)、お口を弄んだり(語弊)と割と少年誌的にやりたい放題だったカアちゃんであるが、身持ちのことを考えればアレって要するに単なる耳年増の類なんだよなぁ……(失礼)。

 なお何も言ってなかったが、直後にキレられて凍結させられたりした。解せぬ……。

 

 そんな訳でいざ、わざわざブロックを崩して積んでケバブ風にして焼いている焼き豚だが…………。晴れ晴れとした空の下、海辺でジュージューと蒸し暑さを我慢しながら焼いている私に、異様な言い回し(語録)が届く。

 

「我が胃袋級精進ホルダーをこうもあっさりと…………、この味……間違いない。超包子の一等包丁にして雪広あやか流三代目。

 希望のホルダーを纏い、迅雷の女たらしと呼び称される小僧……」

「だから意味わからないんで、少しまともに話してくれませんかね(白目)」

「むふぅ、怖がらずとも良い。拙僧、わけあって子供には優しくありたいのだ。

 どれ拙僧も協力して切り分けた肉の世界より……、肉をお渡ししよう」

「「「刀太兄ちゃん、和尚、ありがとう!!!」」」

 

 和尚である。圧倒的和尚である。恰好は甚兵衛で頭には何も被っておらず、そのせいもありより体格の妙な威圧感と顔の大きさ濃さが浮き彫りになる。濃すぎるヒゲやら焦点の合ってない両目を含めてどう見ても悪人面であり、ホルダーに来た当初は子供達に怖がられていたのも今や昔。わずか数週間という期間で「一 石 二 鳥」「続いてしまったアヴェ〇ジャーズ・エンドゲーム」などなど前後の文脈が崩壊しかかった物言いを繰り広げ、いつの間にか馴染んでいるのが現在である。

 普段は占い的なことをやりながら男衆に混じって色々仕事をしているらしいが、もはや完全にフェイトとの連絡要員としては機能していない。一応敵キャラとして出て来たのに? 意味ないよ、と言ってしまいたいのがこの和尚こと牛冷娑婆であった。

 

 なお、肉の調理自体は私とチュウベェで行っている。死天化壮していないものの、やや疾風迅雷の応用だ。具体的に言えば、いわゆるケバブ用の回転オーブン……にしては大きいサイズの装置を血装で作成(※串は鉄串を使用)。加熱調理に関してはチュウベェ本人が電力を調整して熱エネルギーを血装経由で発生させ、じっくりこんがりと焼いているような形である。無駄に手の込んだ無駄のない無駄な技術の結晶であるが、出来上がりは実際美味しいのでまあ良いだろう。どれくらい美味いかと言えば、試しにと焼いたチュウベェもそのまま味で買収し、連日ケバブ焼き機ごっこしても文句を返さない程度には、だ。

 おかげでこちらも取り分をいくらか残しておかないといけないが、それはさておき。この和尚、ちょっと気になることを言っていたな。あまり期待はしないが問い詰めてみるか。

 

「雪広あやか流って何の関係があるんスかね?(白目)」

「どうせ近々遭遇するのに? 意味ないぞ」

 

 知ってた(意味不明な問答)。

 一瞬だけ人間性(?)を取り戻して会話をしたと思ったら、すぐコレである。お師匠いわく転生者でもないというに、どうしてこう謎の打ち切り漫画(サ〇8)語録を放ってくるのやら。

 できればツッコミとして九郎丸に居て欲しい所だが、現在たまたまお花を摘みに行っているのでそうもいかない。不死者といえど人体として人間の尺度を逸脱はしていないので、生理現象を無視して死ぬことは無いとはいえ、それはそうと当然その類の欲求からは逃れられないのだ。

 なのでもうしばらく、彼女の代理として「拙僧も調理、手伝ってみていースか? 小僧」と手を上げてくれた和尚の力を借りつつ、チベットスナギツネ的な顔になりかけながらじっくり肉を焼いている私だった。

 ちなみに肉自体は、それこそ一度煮豚のようにしてから再度表面を焼いているので、食中毒の類の心配はない。

 

「へ~~~~、でっかいぞ! この肉、いただくぜ!」「この肉って何だ?」「いや…肉じゃねーよ、このでっかい肉のホルダーだ」

 

「肉のホルダーって何だよ(震え声)」

「むふぅ、やっとらしくなってきたな」

 

 ただそれはそうと、和尚に語録汚染されはじめている男の子女の子の仲良しグループ4人組の先行きがちょっと心配である。何がらしくなってきたんですかねぇ(震え声)。そういうミームはせめて意味の通じるタイミングで文章に乗せないとコミュニケーション不全どころの騒ぎではないので、つまりは和尚は教育に悪い可能性が微レ存……? いやこの言い回しも古い上に教育には良くないのだろうが。

 もしかしてこの和尚、今いる世界を「ネギま!」時空から「サム8」時空にでもしようとしているのでは……、流石に被害妄想が過ぎるか?

 

 そんな子供たちから現実逃避しつつ、甚兵衛の横で「くっ」と悔しそうなバサゴを見やる。雰囲気だけで言えば大人フェイトのようなイメージもあるが、どちらかというとニキティスに近くまた目つきの鋭さや威圧感は裏稼業「らしさ」がしっかりにじみ出ている。いまいち原作でその正体がよくわかっていない彼は、男衆の取りまとめをしている時は滅多にしないような苦虫をかみつぶしたような目を、紙皿に乗せられた肉に向けていた。

 

「そんな顔してると、美味い肉も不味くなるぜ~」

「くっ……、だ、だから怨念を注いでいるのですッ」

「いや普通に食ってやれって。豚肉自体はアレだろ? メガロ・メセンブリアからの団体客が来るのが延期になったから、丁度良かった訳だし」

「それでもです! 大体雪姫様も雪姫様です、一体どうして無料で使わせてなんて……!」

「金額は他の要因とトントンだと計算した上で渡しただろう。

 やれやれ。一体、刀太の何がバサゴをそこまでイラつかせているのか。これだと仲良く談笑なんてとてもじゃないが…………、ッ! 美味しい」

 

 源五郎パイセンが普通にニコニコ微笑みながら食べてるのを見て、とりあえず和尚の方を向いてサムズアップ。和尚も特に調理を手伝ったわけでもないがサムズアップを返してきて、なんとなくノリが良い事だけはよくわかる。

 

「何だァ……? アレ」

「……、小僧たちの面倒を見ている…………子らだ……」

 

「はいッ!? って、三太か。なんでいきなり横にぬっと現れた」

 

 そして当たり前のような顔をして突然和尚と反対側に出現し、「もう……、散体だ!」とか「間に合ったな」「待たせたか、間に合ったか、どう感じるかだ」「まだまだ物の見方が足りぬ」など微妙に語録を扱い切れていない物言いをし続け遊ぶ子供達に困惑している三太だった。

 そして当たり前のようにその三太の出現にも動じず、語録をかます和尚イズ何? 教えてお師匠様ァ!(ダーナ「悪いがアタシも試合放棄させてもらうよ」)

 

「いや、別に理由とかねェけど、なんか子供たちがいきなりあんなになって、怖ェっていうか……」

「そりゃまあ、否定はせんよ(震え声)」

 

 誰だっていきなりジェネリック世界の破壊者されれば、衝撃にしろ恐怖にしろ何かしら湧くものである。なんならあっちの方で一空とかも八○的格好に刀を腰に下げて遊んだりとやりたい放題なので、もはや何が何やらというところだ。

 そうやって三太と怖がりながら話しているうちに、ふと思い出した。そうだ、週明けだ。月曜日に、釘宮に頼み込んで1週間弱延長してもらった呼び出しがあるのだった……。チュウベェの蛮行(断言)に対するペナルティ。

 情報の外部流出にはなってなかったので、軽い奉仕活動くらいだろうと言われてはいるが。それはそうと、伊達マコトを始めとした自警団の方にしょっ引かれてお説教コースかと思えば、こちらの何とも言えない心境は察してもらえるかもしれない。

 

 そもそも私のせいではないからこその億劫さだ。

 いっそサボってしまおうか……(遠い目)。

 

「――――お、お待たせしました!」

「むふぅ……、本当に一番になりたいなら(男として)『死ぬ覚悟』が必要だ。小娘のハラの中に『勇』はあるのか?」

「えっと、すみません和尚さん? いきなり何を……。あっ、包丁かわりますっ」

「達人は心眼でものを見定める。本質は『どこにでも』隠れている――――近衛刀太のようにな」

 

 それでもってトイレから帰って来た九郎丸に、相も変わらずよくわからない和尚のフレーズが、周囲の人間をことごとく混乱の渦に叩き込んだ。

 まあ、とりあえずバサゴにからみに行かねば話になるまいと、その場で血装により分身(三太が目を真ん丸にしてびっくりしていた)。距離が近いので、お互い「第四の目」で情報の疎通も問題なく行える状態にし、片方は九郎丸と一緒に肉担当、片方は食べる担当として甚兵衛さんたちの方に向かった。

 

 なお分身して寄ってくるのを見て、バサゴは露骨に嫌な顔をした。

 

「いやいや、何でそんな圧が強いんスか。目つき目つき……」

「……笑えと言うのか? この私に。どれ――――ハァ」

「今にも狼男にでも変身しそうな獰猛な顔っスね。……というか本当に何か耳とか狼っぽいの生えて来てるんスけど!?」

「おっと! これは失礼。慣れないことはするものではないですね」

「どうしてそこまで仲良くしたくないんスかね(白目)」

 

 こちらを見て「やはり気に入らない」とか「外面を補強しようとして、つい食い殺そうとしてしまった」とか「料理が上手いからこそ腹立たしさが倍増する」とか思っているのが視えてしまうため、こちらも返答に窮する。現在「第四の目」を啓いているため、どう足掻いても彼の思考が筒抜けなのが悪い。

 そして私の言葉に「嗚呼、忌々しい程にネギ様を思わせるその表情……」と、これまた解釈が難解な思考が飛んで来る。口では何も言わずに顔をしかめているのもあり、お互い微妙なまま沈黙が続く。

 

 そんな状況を打開したのは、頼りになるリーダーこと宍戸甚兵衛であった。

 

「そりゃ、バサゴからすれば色々思う所はあるだろーぜ? 雪姫とネギの奴に調伏された吸血鬼としちゃあな」

 

「また昔のことを……、甚兵衛さん」

「ちょうぶく………、って、ん!?」

 

 どうした、とこちらに言ってくる甚兵衛と、特に何もいわずにこちらをクールに見ている源五郎。そういえばこの二人を「第四の目」で見るのは初めてだったなと思ったのだが、実際のところそれどころではなかった。

 具体的に言うと、源五郎の背後に「テレビ画面が視えている」。そのテレビ画面越しに、中学生くらいの眼鏡の男の子が、こちらの源五郎同様のクールな表情でじっとこちらの動向を伺っており、一切の思念らしきものが視えない。もっと言えば彼はゲームのコントローラーを手に持っており、それで微妙に向きを変えたりとかしているように見えた。

 対して甚兵衛はといえば、こちらはまだ辛うじて思念は見えるが、しかし「遠い」。宍戸甚兵衛の肉体そのものはここにあるというのに、そこにまとわりつく思念の流れが、はるか上空目掛けて昇っていき、あるいは下っていっている。

 

 どちらも共に初めて見るケースで、おまけに想定外の光景だ。いや「それぞれの出自」やら何やらを原作基準で鑑みれば決しておかしなものではないのだがそれにしたって、それにしたってである。

 別な意味での驚きで二の句が継げない私に、甚兵衛は「ま、知らないのも無理はないなぁ」と笑う。

 

「元360万ドラクマの賞金首、『恋盲の嘲笑(カーマアジテート)』ヴァサゴ・ヴァイヤって言や、雪姫が賞金首として名をはせる前までは有名だったんだぜ? そういや夏凜の奴と三人で色々やってるとき、バアルの奴とは別枠で絡まれてたなぁ昔」

「いやどれくらい前の話なのだそれは(素)」

「甚兵衛さん、ここ数百年の話にまとめて頂ければ」

 

 いきなり知らない情報をブッ込んでくる甚兵衛だが、まあバサゴはそもそも原作での活躍度からいってガバになりえる相手ではないし、適当に聞いておこう(慢心)。

 それもそうか? と肩をすくめる甚兵衛さんに、バサゴは顔を押さえて「あの、その辺で」と押し殺したような声。少し顔が赤いので、ひょっとしたら照れているのか? この男。

 

「そっち含めないと、まー語る事もあんまりないんだがなぁ……。撃退したり封印したり、魔法世界でも襲撃にあったりと色々まーやらかしまくって、まあ何やかんやあって刀太、お前の祖父さん、ネギと雪姫のやつにもつっかかって、見事返り討ち。

 その後、コイツが取りまとめていた()のコミュニティを引き受けちゃもらえないかってネギの奴が直談判しに来て、何か色々あったらしい」

「雑ゥ!(素直)」

 

 思わずそう口走ってしまったが、バサゴからは反論がない。よほど羞恥が極まった経緯だったのだろうかとちらりと彼の思念を視れば、どうやら当時のことを思い出しているのか、写真のように映像が数カット。ちらりとしか見ていないが……、完全にネギぼーずに説得されるようなかたちで、心酔した表情のバサゴだった。

 なるほど、この映像の感じからして、私というより近衛刀太は信奉者たる相手の血縁ということになるのか。……やり辛いとかならわかるがそういう訳でもなさそうだし、ひょっとしてカアちゃんってばこの男に私の素性とか全然明かしていないのか? いや知ったら知ったで面倒くさそうではあるので(なんとなく雪姫に対する夏凜と似たような匂いを感じる)、特に私も追及はしないが。

 

 ただそのバサゴの記憶の中にあるネギぼーずの背後にちらりとザジしゃんがいたのは、何なんだろうか……。

 

 ……って、はいッ!? 今、記憶の中の映像越しだというのに「私」を見て手を振って来たぞ、あのザジ・レイニーデイ!!? どういうことだってばよ(恐怖)。たまたまそういうカットになっているわけではなく、全てのシーンカットが明確にカメラ目線してきているのだ。ちょいちょい恐怖映像放つの止めてもらって良いっスかね(震え声)。

 

「って、吸血鬼? ってことは俺とかカアちゃんとかと一緒なのかアンタ――――」

 

 

 

「――――いや、ソイツは『地球産』の吸血鬼だ。

 魔界の悪魔に連なる純正吸血鬼ではなく、幻想種としての吸血鬼だな。

 カテゴリー的には、妖魔の方が近いだろう」

 

 

 

 あっ、とこちらがリアクションを取る前に、私が箸で掴んでいたケバブ焼肉もどきの肉片に「ぱくっ」とくらいついたのは、我らがカアちゃんこと雪姫……、というよりエヴァちゃんだ。わざわざ私の右腕を引っ張ってから喰らったのは、こちらの身長が伸びたせいでもあるだろう(届かない)。ただバサゴの方に集中してたせいで、彼女の思念の流れを見逃したらしい。

 本日の御召し物は…………、水着か? なんとなく「ネギま!?」のグッズ展開か何かで見覚えがありそうな、ちょっとゴスロリっぽいワンピースタイプなそれである。サンダルやカチューシャに花の意匠がこらされており、全体的に良い所のお嬢様っぽく見えなくもない。

 なお、表情がダレておりどう見ても暑がっていそうなのはご愛敬。全く表情を変えない甚兵衛や源五郎の方が、ちょっと同化しているようにも見える。

 

 もむもむと何だか弱々な咀嚼音を立てつつ、こちらの持っていた肉を味わっているエヴァちゃん。なんとなく飲み込むまで見終えてから、とりあえずツッコミを入れた。

 

「わざわざ俺の持ってる奴食わなくても、あっちの俺とかいくらでも焼いてるぜ? 肉の在庫、全然大丈夫だろカアちゃん」

「いや、今行くと何か世界観が崩壊しそうな何かに巻き込まれそうな直感がしてな。近くで食べられるならそれにこしたことはないさ。

 虫の知らせ、サムライの導きというやつか……」

「どういうことだってばよ(メタ)」

 

 いやまあ、あちらは未だに和尚が子供達に「拙僧に勝てればくれてやる、その数……、500億……!」とか訳の分からないことを言いながらトングとか振り回して、子供たちの皿に焼けた肉をガンガン盛り付けていたりするし、三太は三太で何故かちょっとずつこっちに寄ってきている。

 一方の九郎丸と焼いている方の私はといえば、九郎丸がアシスタントに戻ったことでちょっとだけテンションの上がったチュウベェによる焼き加減の変化についていけず四苦八苦しているなぁ……。どうでも良いが和尚の配膳速度に対抗心燃やしている九郎丸は、張り合う所ちょっと間違えていてから回っていて可愛らしくも見える。

 

 そんな別件多数に意識を取られて半眼になっている私に、エヴァちゃんは「ははぁ~ん」とニヤニヤ半眼となって揶揄ってくる。その際に流れ出る思念の妙なピンク具合やら何やらを前に…………。

 

「ひょっとして間接キスでも気にしてるのか? 今更だろうに」

「――――神よ、もはや…………、散体しろ!(号泣)」

「いやいきなりどうした刀太、お前ッ!!? ちょっ…………、つ、疲れてるのか?」

 

 別に「私」として意識しているわけでも無かったが、それでも何かしら動揺は走ったのだろう、気が付けば遠距離とはいえ和尚のミーム汚染の影響を受けたような言い回しを口走っていた。エヴァちゃんすらかなり動揺し、うずくまるこちらの背中をさすってきて……、あっそうか、あちらの分身経由でミーム汚染の被害を受けたということか。まだまだ理解が足りぬ(語録)。

 なお遠方で和尚が「末広がりで縁起が良い」とかうずくまる私を見て頷いているのが、状況の意味不明さに拍車をかけていた。

 

 なおその間、甚兵衛や源五郎は適当に談笑しており…………、バサゴはバサゴで、やはりこちらに「良く判らないがどうしても認めたくない」という感情を向けて来ていた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 そして憂鬱を抱えたままの、登校日早朝。

 呼び出しはおそらく昼前後、帆乃香たちが襲い掛かってくる(?)だろうと考えて、特に生徒会によるまでもなくの登校だ。九郎丸との鍛錬もメンタル的にちょっと億劫なこともあり、今日はちょっと休ませてもらい、一足先の登校である。

 深い深いため息と共に歩き出すのは何となく「私」というより「()」のようでもあるが、単にこれはデジャビュというだけだ。状況はあまりにも違う。

 

 少なからず、自らの失態で母親を助けられなかったようなことなど、ありはしないのだから。

 ただ少しだけテンションがそちらに寄っているのも事実と言えば事実。黒棒との仮契約カードもどきから、なんとなく眼帯を取り出して、右目につけてみる。……んー、これはこれでしっくりくるが、赤いマフラーと組み合わせるのはちょっと属性過多か? OSR(それっぽさ)の度合いで言うと、コスプレ感が強くなっていると言うか。何かしら考えるべきか、などと世迷言で現実逃避しつつ、脚だけは進んでいく。

 

 そんな途中で、人とぶつかった。

 

 流石に「第四の目」を啓いている訳でもなく、敵意や害意があったわけでもなかったせいだろう。考え事をしていたこちらも不注意だったのは認めよう。だが相手は相手でこんな早朝だというのに全力疾走でもしていたのか、思いっきり激突し、撥ね飛ばされていた。

 ……実際問題、吸血鬼ないし魔人としてのこの肉体性能は、どう考えても人間の尺度を超えているので、単純な筋力勝負などをしてもとうてい一般人は歯が立たない。つまりはたとえ走って来た分の運動エネルギーが乗っている「少女」相手であっても、死天化壮すらつかわずにこちらの体幹の安定が勝ってしまい、押し返して倒してしまうのだ。

 

 このまま立ち去るのも轢き逃げ(轢かれ逃げ?)のようで後味が悪い。「大丈夫か~」と近衛刀太らしい適度に適当な声音で声をかけて、走り、手を差し伸べた。

 差し伸べたその相手は…………。

 

「痛っ……、ま、全く何なんですのっ? この私が久々に学園に出向こうと言う、こんな日に限って人がいるなんて。

 ごめんあそばせ? (わたくし)ちょっと急いでおりまして――――えっ?」

「――――はいっ?」

 

 毛先の微妙にカールした金髪ツインテール。前髪の感じなどは違うものの、少しばかり高飛車そうな雰囲気に、アマノミハシラのまほら本校舎生徒たるブレザー制服にフリフリをつけてスカートを改造している。体格からいって年齢は13か14か。同い年かわずかに下くらいだが、纏う雰囲気には覚えがあり、ついでに顔立ちも見覚えがある気がする。

 ただ顔立ち以上に、その服装の趣味というか、雰囲気に覚えがあり…………。原作的な意味ではない。いや、原作的な意味もあることに違いはないのだが、もっと根本的な何かが、私に警鐘を鳴らす。

 動揺してこちらに何かを確認してくる彼女に、私は――――。

 

 

 

「きく、ちよ……? 菊千代(きくちよ)、ですの――――?」

「――――まさか、あやか(ヽヽヽ)だとでも言うのではあるまいな」

 

 

 

 近衛刀太ではない「私」としての誰か(ヽヽ)の記憶、その一片。いつかの霞みゆく一かけらに浮かぶ、かつて破局した婚約者だった誰かの名前を口走り。ほぼ同時に呼ばれた菊千代という名前に、頭の中が真っ白になった。目の前に「ちくわ大明神?」とか変化形の思念が流れて来たが、それにも反応する余裕がない。

 

 うむ…………、ベタなラブコメか何かで?(現実逃避)(ダーナ「さぁ、そろそろ覚悟決めな?」)

 

 

 

 

 

 




※なお少女後方で、茶々丸が「おや?」という顔をしながら二人を見守っているものとする
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