タイトルに忍要素がありませんが、ようやくまともに話せた忍関係がどうなってるか。
あと例によって独自解釈および上位存在注意汗
ST226.Make The Most Of Your Strengths!
『実験と言っても、そんなに大規模なものではないんですよ。言うなれば疑似的にウラシマ効果を発生させるための、魔導式ジェットエンジンの試作ですから!
それで、近衛刀太君にやってもらいたいのはこのエネルギーになる魔力の注入ですかねぇ? 普通に一等生徒とかでも目を回しますし、大学部だってそう大きくは変らない。裏魔法委員会的にも近衛木乃香クラスとまではいわずともそれなりの魔力水準が必要というか、人間レベルの魔力量だと数カ月単位で実験に時間がかかってしまうというか――――』
「木乃香……、人の
『いえその、流石にこの麻帆良の土地一帯の学園結界を一人で切り盛りできるだけの魔力を持っている人を一般人扱いは出来ないと言うか…………。昔の学園長でさえ
そんな話は前に龍宮隊長に聞いたな、と納得しつつも、あらためてとんでもない話であると頬が引きつる。胃が痛い、というといよいよ私のメンタルの釘宮化が激しくなってくるところだが(失礼)、そもそも私自身が人間とはいえ不死身のバケモノの類ではあるので、いまさら何を嘆くのかという話だ。そこだけは逃れようのない事実であり、確かに適材適所といえば適材適所なのだろう。
「それはそうと、どーした忍? なんかぼーっとして」
「ふぇ!? え、えっと、何でもないですよ先輩!! その、久々だから緊張とかしてないです、はい!」
私の指摘に、正気に返った忍は慌てたように頭を左右に振って、ついでに両手もぶんぶん振って何かを言い訳している。さきほどのアレもあってか余裕がない様子で、なんか生来(?)の照れ屋な側面がおおいに出ていて愛らしい。うん何と言うか、こういう朴訥というか純情っぽい反応久々すぎて癒しである。
そしてそんな我々の後方……というか向き的には側方だが、そちらから「久々で緊張しちゃったんだねぇ~」「久々だと緊張するよなぁ」「久々で緊張などするか?」と小声でチャチャが入るので、こらこらとツッコミの姿勢は左手で入れておく。忍本人は慌てているせいで声が聞き取れていないが、こういうのはセオリーだ。そこまで鈍いわけでもないし、なにより色々とうまくさばき切らねばならない。地球やら人類やらの明日を投げ捨てないのである(謎)。
AI葉加瀬からすれば只の事実確認であったろう、既に彼女のオリジナルが死去していると言う事実。
春日美空もそうだったが、葉加瀬聡美もまた亡くなっていると言う情報は、それはそれで私の中に何かずっしりと重さが蓄積された感覚があった。
そんな最中で自意識を取り戻した忍が、赤面して離れること数秒。何やら「コー」だの「ホー」だの擬音で表現できるような深呼吸をし、すぐさま落ち着きを取り戻したことに少し驚かされた。何かしら精神修行でも受けたのだろうか、そういえば帰って来てからエヴァちゃんに何か修行をつけてもらっていた的なことを聞いた覚えがあったが、あれも詳細は聞いていなかったな……。いや今日の今日まで事実を見なかったことにしていたと言うべきか。(超鈴音「現実から逃げちゃ駄目ネ!」ダーナ「やっぱり腹くくらせるにはもっとショック療法めいたものしかないかねぇ?」)
もっともそのまま目を開け私、というか近衛刀太の顔を見るなり、すぐさまぽーっとした様子に戻っていたあたりはいつも通り……より若干色ボケている気もしないではないが(大変失礼)、特に「第四の目」を使わずともわかりやすいのでこのあたりはなあなあで誤魔化すに限る。誠実さの欠片もない対応だが、平に、平にご容赦……! そもそも現状でさえさばき切れていない可能性も高いが、現時点で忍との関係まで切れるのはそれはそれで何か別なフラグが動き出す可能性もあるので、対応は全方位慎重にである。(ダーナ「言い分は間違っちゃいないが、言い訳重ねてるみたいで不潔さぁね」超鈴音「そんなだからサリーチャンに女の敵認定されると思うが、どうかナ?」)
ともかくそのまま空気を換えるために、そして周囲の何とも言えない視線から逃れるためにAI葉加瀬相手に色々と話を聞いたのが現在。
「んで、そのジェットエンジンってどういう用途のものなんスかね? ウラシマ効果自体は割と知ってるっスけど。映画とかで。アレっすよね、めちゃくちゃ簡単に言うと超超速く動く物体は、周囲の物体に比べて時間的な進速度が遅い~、みたいな」
『お? そこをチェックしてるとは中々ポイント高いですよ?』
何のポイントが上がるんでしょうかねぇ……?
『まあ、細かい理解は今回必要ないのでおいておいてもらって構いません。生命エネルギーによる疑似タキオンの話とかしだすのもちょっとアレというか魔法先生な作風じゃなくなっちゃいますし(ボソッ)』
「おいメタ発言!?(動揺)」
『あはは~。さて今回の実験、いえ、次回以降もそうなんですけど、行おうとしている実験としては、所謂ウラシマ効果――亜高速での物体移動における時間と速度のゆがみの関係――を魔術的に再現できないか! というものになります。使用機材は魔法アプリ搭載型のジェットエンジンで、主に座標変更を軸に
将来的には外宇宙での宇宙開発……、2010年代に打ち立てた計画からは軽く70年近く遅れてしまっていますけど、そうした際にも食料品などの安全な長期保存などがメインですかね? 人体実験をするにしてもはるか先になるでしょうし…………、この世界線では間に合わない確度が高いですかねぇ残念ですけど』
世界線やらメタ発言やら、周囲はおおよそ疑問符を浮かべている。そんな中で唯一ニキティスのみは「それもまた人の抗いという物語だ、恥じることはない」と、らしくないくらい暖かな視線をAI葉加瀬へと向けていた。
その後の細かい話はともかく…………、最終的に彼女がどこからともなく、以前坂田と遊んでいた時に絡んで来た量産型茶々丸シリーズの一体が実験装置を運んできた。茶々丸シリーズはくすりと私に何か意味ありげな視線を送ってからその場を後にしたものの、チャイナドレス着てクールを装ってたけど何番だアレ? 髪の色も全員違うとはいえ、初会敵(?)に全員押し寄せられて自己紹介も散漫だったので流石に判別できないのだが……。
それはそうと、実験装置もまた珍妙極まりないものである。ジェットとはいったが、形状だけで言うと何かのカプセルというか、よくSF映画などで遺伝子改造された生物などがプカプカ浮かんでいそうな培養水槽のような円柱である。ただし中に入っているのはデフォルメされたキリンのような2頭身くらいのSDな茶々丸みたいなロボットである。髪の色がこれまた茶々丸と異なりパールオレンジなため別機体なことに違いはあるまいが、何と言うかこう、ものすごく「ネギま!?」臭を感じるデザインであった。
というか、茶々丸の
見た目が言い訳不能なくらい「ネギま!?」な絵面だった。
何故わざわざそのデザインを採用したのだ……? いやデザイン自体は既に私が持つ仮契約カードが超含めネオパクである以上「ネギま!?」世界の影響がゼロということはもはやありえまいが、せっかくそういう形で作るならアスナはんとかこのちゃんとかエヴァちゃんとか、カエルっぽい大河内さん型とか大河内さん型とか大河内さん型とかも作れ(戒め)。(超鈴音「戒める所、絶対おかしいネ!?」ダーナ「愛かねぇ……?」)
『せっかく来てるし、一空君も手伝ってください~』
「は~い」
「ふん。…………僕も組み上げは見学させてもらうぞ?」
そんな中で機材の設置やら何やらを準備する彼女、というより主に一空である。……いや何だ? あのスカカードな茶々丸(以下「ちゃちゃまる」)型のロボットっぽいのも、なんかもう一体どこからか涌いてきた!? いったいどこから出て来た。というかそっちがAI葉加瀬の代理で実験装置をいじったりしているので、実験用の機体と小間使い用の機体を1つずつ用意していたと言う事か? 色々謎は深まる……。
深まるがあちらにツッコミを入れだしても邪魔だろうし「第四の目」を啓いて視れば間違いなくニキティスが再度変貌すること請け合い。手持無沙汰になった私としては、他の残り物二名と少し会話するくらいが今は丁度良いだろう。
「まー、さっきも言ったけど久しぶりな? 忍」
「あっ、はいぃ…………。まさかアルバイトで来るのが、先輩とは思ってませんでした、です」
「口調ちょっとおかしいぞ、落ち着け。あー、俺もこっちに忍いるとは思ってなかったけどな。三太なにか聞いてる?
…………三太?」
「い、いやぁ……、何でもねェ」
私が話を振ると、何故か自分の身体を抱えて周囲をきょろきょろして縮こまる三太。いわゆる乙女っぽい挙動で意味不明であるが、「う、浮気とかしてねぇから、世間話だからッ」などと本人がぼそぼそ証言しているあたり、もしや水無瀬小夜子か? 三太に忍の話題を振ったから、他の女の話をしようとする彼氏にちょっと嫉妬してキレたとでも? キレて念話か何かで三太に圧力をかけて来たと?
いくらなんでも独占欲が強すぎやしませんかねぇ……。
「ちょっとでいいから抑えに回ってくれませんかねぇ、ちくわ大明神」
「ちくわ大明神?」
――――――ち、ちちちくわ大明神!?
こう「えっ何そこ私にその話題ふるわけ!?」みたいな感情の思念が目の前を過る。間違いなく「ぎょえー!?」とかそんな擬音でもあげてそうな、ちょっと情けない感じのリアクションだ。
というかこのレベルで言葉交わせるくらい近距離にいるのかちくわ大明神。一体何なんだ本当、謎は深まるばかりである。……以前聞こえた? 時のCVからしてまさかとは思うが、しかし本人は現状「生かされている」ので春日美空ということもあるまいし…………。
ただ祈りが通じたのか、少しだけ落ち着いた様子で三太が会話してくれる。なおちょっとビクビクしてるので監視の目そのものは無くなっていない模様。
「き、聞いちゃいねェよ。大体オレ、拠点いる時ァ子供達と遊んでるし」
「まぁ馴染んでんなら問題ねーな」
「手品……」
「忍?」
「いや、手品ってアレ絶対、刀太が何か滅茶苦茶なことやってんだろォが……? ハンカチの色変える奴」
よくやってくれって言われるんだとか困ったように言ってくる三太。そういえば真っ白なハンカチに私の血をしみこませ、血装で一気に抜き取り色を抜いた風に見せかける手品をやっていたか。実態はグロ直行であるためあまりお勧めできるものではないが、レベルが上がった今ならもっと手の込んだものを作れそうである。うむ……。今度新作でも考えておこう。
それについては一旦おいておいて。悪い悪いと謝りつつも何かしらネタは持っといたほうが良いと芸人魂的に(?)発破をかけておいて、三太については後日様子を見よう。冗談の類として受け取るか真面目に受け取るか、受け取って悩むかなどその後の動きをこの場だと判別できない。
話題を忍の方に戻せば、彼女は私から視線を逸らしスカ―トの手前で手を重ねてもじもじする。少し恥ずかしそうだが服装と言いリアクションといい前原しのぶ臭が跳ね上がってリアクションに困る。下手な感想はむしろ地雷だろうということで、素直に可愛らしいと思っておくことにしよう。
「その……。先輩達が戦ってるの見て、何か力になれないかって思って、雪姫さんに相談したんです」
「その結果、わざわざ魔法を?」
「あっいえ、そうじゃなくって。魔法はその、時間がものすごーく長くなる場所で教えてもらったんですけど、どっちかというと魔導工学の方を専攻するだろうからってことで、そっちの基礎がわかるようにって一通り」
ええと、と言いながら忍が指先を立てて、手の甲(おそらくマナフォン)を撫で魔法アプリを立ち上げ。
「スチーマ・ジェッタ・エレクトラ――――
何だかものすごく呪われた過去も死亡フラグも全力で振り切ってくれそうな真っ赤な術の始動キーが聞こえた(
しかし意外といえば意外というか。
「その感じ、ちゃんとした発動体もらってんだよな? 今時珍しい……」
「え? あ、言われてみるとマジじゃねェか! かなり本格的っつーか」
私と三太は顔を見合わせて、忍の杖を見る。何が本格的かといえば、要するに現代の魔法アプリ頼りな魔法使いではなく「本来の」魔法使いとしての修行を積んでいるということだ。
さきほどの発言的に
使える術がより多く、扱える魔力がより多く、つまりは「魔法使いとして」きちんと成立していることを前提とした、そういうものを見越した育成をされていたということだ。
なまじ魔法アプリ浸透以前に生きていた水無瀬小夜子という実例と生前に知っていたからこそ、魔法アプリ第一主義のような形式が(少なくとも表向きには)許容されている時代だからこそ、佐々木三太にも不思議に映ったのだろう。
何せ結城忍、メタな話を踏まえなければ完全に一般家庭の出であるし、何か特別に魔法関係の才能があるわけでもない。……この世界線だと細かく深堀すれば主に「ラブひな」関係を軸にその血筋に何か地雷の一つでも埋っていそうな予感もしてはいるが、それからは全力で目を逸らそう。流石にそちらのガバまではカバーしきれない(激うまギャグ)。
私と三太の視線を受けて、少し恥ずかしそうにしながら一歩下がる忍。と同時に、やはりびくっと怯えたように身体を震わせる三太。背筋に寒気でも走ったように、目を見開いて肩に力が入っている。いやいい加減しつこいわ、少しは自制心を持ちなさいヤンデレじゃないんだし…………、いやヤンデレか(白目)。
「もうちょっとお手柔らかにしてくれませんかねぇ、彼女なんだから向ける感情の違いくらいわかるだろーに。今度、墓参り行きますから……」
「――――え~? だけど
「ほう……? いや、過去になにがあったのさ? お姉さんにちょっと話してみ? ん?」
「にゃあっはっは! やっぱりちょっと『持ち上げてくれた』ものとの相性が良すぎる? もうちょっと修行させないといけないにゃ~。ま、生前と今とを考えれば私よりマシにゃんだけど! にゃ~っはっはっは!
そう言う意味じゃ、たつみーを頼ったのは正解だったにゃん? ミソラ」
「いやでも、どうせ大した理由じゃないしなぁ、面倒だったとか『こんな特急呪物なんて零細教会で引き取れるかッ! このババアとココネはウチに帰るッ!』くらいのノリだろうしあっちの私。
ちくわ大明神……」
……? 何か一瞬、猛烈な波のような何かが過ったような…………。
あと気のせいでなければちくわ大明神、けっこう普通に水無瀬小夜子とお話しされてませんかね?
とりあえず三太がまだ落ち着いていないのを心配しながら、忍の方に視線を送る。
忍も忍で急に怖がり出した三太に混乱しているが、とりあえず話は続けてくれるらしかった。
「私、雪姫さんは工学系の才能はあるって。もともと夢が夢だから運転する方を前提で、作る方も好きになったところはあるんですけど、えっと、だからもっとしっかり基礎を教わって、ついでに最新設備とかもしっかり見せてもらって来いって」
「それで大学部?」
「はい。飛び級、とかじゃないんだけど……、単車とか姿勢制御関係だけは、もう在野のエンジニアくらいは名乗れるだろうからって」
カアちゃんから、まさかの高評価である。唸る私に、忍は少しだけ両手を腰に当てて胸を張り。……気のせいでなければ、リボンを押し上げる胸元が以前より一回りほど膨らんでいるように見えて、それにわざわざ気付いたという事実に軽く自己嫌悪を覚えた。
現状、ちょっとだけセンシティブだしセンチメンタルなのである。
(超鈴音「……やはり今度会た時、おっぱい揉ませた方が良いネ?」ダーナ「止めはしないが…………、まあ胃や肺に穴が開くくらいじゃ死にはしないだろうが、確認くらいで留めておいたらどうだい?」)