毎度ご好評ありがとうございます!
※前話と今話、ちょっと手を加えたので見比べてみると何かわかるような、わからないような・・・
ST23.Heart Sword Kinds You
何なのだコレは……!
こんなのどうやって対処すれば良いんだ!
U Q HOLDER! 自体の原作が多次元宇宙理論、要するにパラレルワールドの理屈を採用していることは知っている。UQホルダーとネギま! とがパラレル続編であるのはここに起因しており、すなわち「ある要因が欠けたことによって」「他の歴史でまた違った影響が発生した」という流れだ。それが片方では完全無欠のハッピーエンドであれば、もう片方はビターで痛みを抱えながら今を生きる話になっているかもしれない。
私たちのこの世界は、何方かと言えば後者の側だ。
だからこそ、そこから更に酷い結末……、ラスボスに負ける歴史とか、あるいは例えば「九郎丸が」「神刀に改造されて」「そこから自らの意志の力で元の姿に戻る」「ことが出来なかった」、本編のバッドエンド的イフの歴史が、あるのかもしれない。
未だ見ぬ師匠の収集癖は、当該する歴史に影響のない範囲で「本来なら失われるもの」を手元に置いておくというものである。であるならば、九郎丸、否、神刀が師匠の手元にあるというのは、すなわちそういう事情があるのだろう。
「マジかー ……」『(刀太君、何で分かったんだろう……?)』
バッドエンドの歴史が存外近くにあることに、私は軽く精神的ダメージを負っていた。……いや、こういう時は前向きに考えよう。前向きに考える要因が例えなくてもその前提を横に置いておけば前向きに考えられるので(人生再走は)ないです。(と言うか出来ない)
「人の姿には戻れないのか? いや詳細とか全然知らねーけど」『(それは……、ごめん、無理なんだ。ダーナさんとの約束だから)』
そんなことを聞くと、神刀は煙を上げるのを止めて沈黙した。おそらく不可能か、何かしら師匠により制限がかけられてるとかなのだろう。タイムパラドックスものとかパラレルワールドもので、異なる歴史の同位体というか同一人物が顔を合わせた時にトラブルが発生するという事案もあるし。そういった問題を回避するには、本人に自分自身であると認識させないのが一番のはずだ。
「しかしまさか、お前そのまま召喚されるとか……、
私の言葉に、刃からつぅっと水滴が滴る。これは……、泣いているのか? 今の台詞程度でこのリアクションということはこの九郎丸、元々いた歴史は原作本編よりはるかに酷いことになっている世界線なのかもしれない。
ともあれ、刀を鞘に戻して、こちらの様子をうかがっていた夏凜に手渡す。…… 一応聞こえない程度の声量には気を遣っていたが、特に彼女のリアクションに変化がないので大丈夫だよな……? 形状記憶合金じみた鉄面皮なのでいまいち判断がつかないが。
「重いですね。流石神刀というべきでしょうか」
「ん、そうか? 黒棒の通常ウェイトよりは確かに重いかもしれないけど」
「いえそうではなく。何かこう……、歴史と言うか、編み込まれている想念といいますか。上手くは言えないのですが」『(……こっちの夏凜先輩、なんだか刀太君と仲良さそう? しかも凄い……)』
何やらじっと神刀を鞘越しに見つめる夏凜だが、しばらく持っていてくれと言ってから九郎丸のもとに向かった。原作だとバーベキューパーティーやら何やらがよく開かれている砂浜である。そこには大人の姿になった雪姫と、普段の刀を片手にやる気満々といった風な九郎丸の姿が……。どうでも良いがあの格好で大人になった雪姫の服装は、中々アヴァンギャルドな感じになっていた。念のためということなのか雪姫から「訓練だから許可を出す」ということを再度言及される。二人そろって了解と言い、私は「
……そしてそれを見て一瞬、顔が曇る「こっちの」九郎丸は、一体何なのだ。お前別にこの装備に関しては何もそんな顔する要素はなかったはずでは?
「いくよ、刀太君。大丈夫だよね」
「おう特に問題ねーけど……、どうした?」
「…………ううん、何でもない」
「やけに変な感じで匂わすなぁ……、まぁ別にいいけど。友達だし、よっぽどじゃなければ隠し事の一つや二つ」
「ッ!」
ちょっと待て、今の発言で何か被ダメージする要素あったか? 一瞬悲しそうな顔をして視線を伏せる九郎丸に、私もどう対応して良いか分からない。
わからないなりに気にするなと声をかけて、黒棒を構えると向こうもそれに応じた。
――――刹那、剣閃。
私が認識するよりも早く、瞬間移動じみた速度で移動してきた九郎丸。動き自体は識別できなかった訳ではないものの、上手く言えないのだが「捕捉することが出来なかった」。は? いやお前、それ
ぎりぎり黒棒で受けることが出来たが、それにしたって次の瞬間にまた九郎丸が距離を取っている。速い訳ではなく、しいて言えば「上手い」のだろうか。完全に私の感覚を把握されでもしているのか、上手いこと意識の死角を突かれている感じがする。
もしこれが神刀の力ないしネオパクティオー効果だというのなら、確かにランダム要素のデメリットを甘んじて受けるだけのメリットがあるかもしれない。その技法(技法だよな)を修行なりで身に付ければ、わざわざアデアットしないでも使うことが出来るのだ。思っていた以上に効果絶大である。
なお当の九郎丸本人は突然赤面して「すごい、視えるしわかる……、わかっちゃうよ僕!」などと
その後何度切り結んでも、速度は私の方が速いのだが九郎丸の方がこう、一手先を行くような読まれ方でもしてるのか、一撃をしれっと入れてくる。
「何か毎回、意表を突かれてるみたいな感じがするな……。どうしたんだ九郎丸?」
「う、うん! なんか僕もわからないんだけど……、刀太君の動き『だけ』は手に取るよう予測がつくというか、視えるって言ったらいいのかな。そんな感じで、その通りに動いてみたら……」
「あっハイ……」
…………それひょっとしなくても神刀というか「あっちの」九郎丸さんからの経験値フィードバックか何かでいらっしゃられて? 私自身が
ついでとばかりに夏凜からにこりと目と目が合った瞬間に微笑まれてしまってどんな顔したら良いか分からなくなってしまったが、それはともかく。
「頑張ってね刀太君! 僕、もっと強く出来るから! いっぱいケガさせちゃわないようにね!」
「…………」
発言に原作でも見られないような慢心というかが見え隠れしてるのは、テンションが上がってるせいかそれとも何か別な要因なのか。
なんとなく嫌な予感を覚えつつ、私は再び黒棒を構えた。
※ ※ ※
「あれは……、酔ってるな」
「酔ってるといいますと?」『(我ながら情けない……、あの時もこうだったのかな?)』
夏凜の疑問に対して、私はどう説明するか逡巡する。
……こう言うと偏見になるかもしれないが、最近の夏凜はよく周りを見ている気がする。
九郎丸しかり刀太しかり。もっと言えば他のメンバーにも目を向けている余裕があるというか。
刀太が切っ掛けでそうなったとしたら、誰かの生き方に安心や反省を促せた息子に少しだけ嬉しいものがあるが……。いまいちコイツの内心は、表面から読み取れない。鉄面皮というやつだな。
まぁそれは置いておくとして。
「お前の場合は完全に『不死性』が外付けみたいな部分があるから経験自体ないかもしれないが……。
いわゆる暴走状態といったらわかるか?」
「暴走? 理性はあるように見えますが」
「だからこそなお厄介と言うか……。精神のタガが外れた状態が近いか」
ばさぁ、ばさぁ、と砂浜が煙を上げ、地面を削りながら地面や空中で切り結ぶ二人。
デスクラッドだったかを身に纏った刀太と、超高速戦闘を繰り返し続けるアーマー九郎丸。
戦い続ける中、刀太以上に九郎丸が嬉しそうだ。
あの顔は……、拉致監禁でもして部屋の隅で男を飼い続ける女のような顔というか。ちょっと、ほんの少し共感するところがあるので判るのだが、外から見る分にはそれなりに恐ろしい物が有る。
「手にはしていないが、お前が今持っている神刀から、おそらく何かしら力を引き出して身に纏っている状態なのだろう。
形質から何から何まで違うが、ある意味刀太のデスクラッドのようなものか。
そしてその熱に浮かされて、普段は理性で抑えている精神的な部分が表出しているんだ」
「つまり…………、映像を撮っておけば後でからかう材料になると」
「いきなりカメラの準備するのは止めてやれ。
そもそもの前提としてだな。九郎丸は反抗期に入るよりも前から、それなりに抑圧された環境で育っていたらしい。
その中で自分に『仕方ない』とか『あきらめろ』とか、言い聞かせて過ごしてきた期間が長かったことだろう。
つまりそんな地雷原に、遠方から火炎瓶でも投擲したら何が起こるか……」
「止めます。お互いのためになりません」『(か、カッコイイ……!)』
特に何ら疑問符を持たず、神刀をその場に突き刺して夏凜が乱戦に突入していった。
どうした夏凜、お前、その、何と言うか……、判断が早いぞ!?
やっぱりお前、刀太と何かあったんじゃないか? アレか、ヘンなことか? ヘンなことでもあったのか!?
母親としてのまっとうな疑問を口にする暇もなく、三者入り乱れた状況は混沌と化した……、おそらく刀太の顔を見るに。
※ ※ ※
「強いでしょ? 強いよね僕! これなら刀太君だってもっと頼ってくれるよね!」
「いやいっつも頼りにしてるだろお前!?」
「うそ。だって刀太君、気が付くとふっと夏凜先輩のことばっかり見てる! やっぱりおっきいおっぱいが良いの!? おっぱいが良いの!!?」
「お前ちょっと自分が何言ってるか一度振り返ってみやがれ、ええぃ!」
しかし夏凜ばっか見てる? なん…………、だと…………? いやそんな馬鹿な、きっと九郎丸の気のせいだ。それだとアレじゃないか、まるでちょっとスキンシップされただけでコロッと堕ちてしまったみたいな妙なチョロさじゃないか。実際なんか旅館寝起きの時の彼女の照れた様子からしてもっと凄いことがあったかもしれないが、そんな私が認識していない事実は認めぬ、認めぬぞ! 夏凜による私の攻略チャートが始まっていたみたいな仮説を提唱するんじゃない! 堕ちてェないから!?(戦々恐々)
内心で色々わめきながらも、九郎丸の剣閃に向けて剣先から「血風」を盾のように展開―――と同時に移動。背後に回って「置き血風」に合わせるように、もう一つ「血風」を放つ。
「はい? ――――きゃっ!」
これは流石に意外だったのか、前方はともかく背後の方の一撃を受けて空中から地面に叩きつけられ、砂浜に膝をつく九郎丸。……色々見た結果、どうも
このあたり私の頭の中の
「…………こんなのじゃダメだ、もっと、もっと頑張らないと。もっと使いこなさないと。刀太君の胸の……だって治せないし、全然、力不足だ!
刀太君が誰よりも頼ってくれるような僕にならないと!
刀太君が誰よりも見てくれるような僕にならないと!」
えぇ……(困惑)、お前さん一体何があってそこまで病んだんですかね? というよりも心なしかさっきから髪が全体的に淡く山吹色に光り出してるし、ひょっとしなくても原作における『姫名杜』から人型に戻ったときの、お兄様曰くの「反抗期」か何かで? それまで抑圧されていた感情が全部暴力を伴って放出されてる的な……。
その感情ベクトルが全部私に向けられているのにはひたすらに納得がいかないのだが。私別にお前落としちゃいないだろォ! 病む理由に他人を使うな!(無茶)
「ままならぬ…………、はっ!?」
当惑している私なんて放っておいて、九郎丸の背後に剣やらハンマーやらと完全装備な夏凜が現れる(多分瞬動で)。そしてそのモーションは明らかに九郎丸の首を狙ったもので。
思わず間に入り、黒棒でその一撃を受ける――――重いな!? いくら荷重3倍程度状態とはいえ、後ろを向いていた九郎丸ともども巻き込まれて跳ね飛ばされた。
少しだけびっくりしたような顔をした夏凜は、目を閉じてから例の無表情に戻る。
「と、刀太君……?」
「あー、一体何があっていきなり乱入した感じッスかね? 夏凜ちゃん先輩」
「ちゃん先輩は『まだ』止めなさいと言っています。……いえ、むしろ刀太。あなたが九郎丸を庇ったことの方が疑問なのですが」
それはまたどうしてかと尋ねると、右手のハンマーで九郎丸の方を指し。
「今の九郎丸は明らかに普段の九郎丸ではありません。そんな暴走状態で戦っていたら、今はまだ理性が利いていますがいずれもっと酷いことになるかもしれません。それこそ今、雪姫様のところに置いてある神刀本体を手に取ったりして」
「いや、流石にそこまでは行かないんじゃ…………。だよな? 九郎丸」
「へ? う、うん……、刀太君がそれを嫌がるなら」
「ってうォいッ!?」
そこの判断基準すら私に依存するか、そうか……。見た感じ「あっちの」九郎丸と記憶までは共有していないにしても、原作後半並みかそれ以上の重さを感じるコイツ、何なんだろうね。(目そらし)
ほら見なさいと、促す夏凜に否定する要素のない私であった。というか否定できない私であった。
「とりあえず九郎丸は、早い所解除しなさい。能力の使い方については、後で雪姫様も交えて――――」
「――――いや、です」
つぅ、と。夏凜の目が細められた。ほうとか言っちゃって、ハンマーと剣を独特な形で構える夏凜。対する背後の九郎丸は、普段の刀を腰に据えて抜刀術のような構えを……。いや、あの、これ私もう帰っていいかな?(現実逃避)
「これは、刀太君と一緒に得た力だから……、刀太君が『くれた』力ですから。夏凜先輩に言われて止めたくないです! っていうか先輩はずるいです! 刀太君と二人っきりで一週間も旅行なんてして!」
「ほぅ…………、仕方ありませんね。思えば貴女とはまだゆっくり話す時間を持ったことはありませんでした。それがそのような齟齬を引き起こすというのなら、先輩としてしっかり『教育』する必要があることは、認識しています」
なんか段々と変な空気が漂い始めているんですが、これって一体どうしたら良いのか誰か最適解持っていないですかね……。発言も何か色々うかつというか危険域かなっていう。ここまで割とガバガバチャート人生だった気もするが、そんな私の本能が全力で「ヤベェ」とアラートをかけているわけで……。
結局この後、アーマーカードの効果時間が切れるまで。夏凜と九郎丸はそれはそれは凄惨な斬り合いをしていた。…………その場に居合わせた私を巻き込みながら。お互いがお互いに私を奪ったり奪われたりを繰り返していやキツイっす。
お手玉とかバスケットのボールって、こんな気持ちなんだね?(直喩)