今回はまだまだダメージ的にセーフなやつのはず
ST231.Yourself in [2033] ①:Close To The Sacred Timeline.
「何故そんなことになっちまったかな……。何でそんなことを止められなかったか……。何故そんな状況に責任を負えないのか……」
「なぜなぜで分析する時、個人の責任として問うならその辺でやめとけ。5回行く前に自分がこの世で一番のクソッタレだって気付いて、世界とオサラバだ。
結局くたばりもせず嫌悪感が増すだけだ。クソッタレ同士、クソみてぇな世の中にツバ吐いてこうぜ」
軌道エレベーターを囲むような巨大ビル群。その一つの屋上で、餓狼となった私は私を鼻で笑う。言い回しからして実際にフィニッシュしたことや、それでも死ねず更に精神にダメ―ジを負ったことが伺い知れて、ますます私の胃やら何やらは血を吐きだす。
多少言語化してすっきりしたのか、そちらの私はもう私を襲わない。ジャケットを脱ぎ、白いタンクトップの上半身に見られる身体は、傷一つなく筋骨隆々。近衛刀太の身体から派生してそうはなりえまい、何かしらの特殊事例がその身には起こったのだろうが、例えそうであっても疲れた表情を見るだけで辛い。
このセーブデータは、ヨルダに勝って人の尊厳を失った世界であるらしい。
身をもって、目の前の私から「第四の目」経由で様々な情報を視せられ、語られ。その結果が、ビルの屋上から空に見える「巨大な輪のようなコロニー」と、眼下に広がる青白いスモッグに覆われた地上というこの差。
文字通り、この場所が分水嶺。天井へ向かう「人間」と、下層へ向かう「ミュータント」との差。
聞く限り遺伝子操作も激しいだろうし、なるほどそう言う意味ではキリヱにすら逆らわないだろう。彼女の物言いが正しければ、無限に財を成す事が出来るということはイコールで彼女は上流階級、すなわち上空のコロニー側の住人だ。支配階級に逆らわないのは、
眼前の私がどちらに所属するかは定かではないが……、いや、おそらく何も変わりあるまい。俺は俺だと、私はそう主張してただそのまま在り続けていることだろう。
その結果がウ○ヴァリンなのは……、ま、まぁ
餓狼の私は黒い葉巻を咥えて……、煙の解け方からしておそらく影操術の類で生み出された葉巻モドキなのだろうが、ともあれ口から煙なんだか影なんだかを吐き出し、半眼で笑う。
「意外かもしれんが、朝倉の奴は上流階級行きだ」
「朝倉って、朝倉和美?」
「何で『ネギま!』の方に飛んだ。清恵だ清恵、朝倉清恵。実家の話聞いてるだろ、母が作家、祖母はノンフィクションルポライター。最終的に本人は脚本家になってたが、メディア関係っつーことかそっちに吸収されてたな。
……というかアイツ、朝倉和美の孫だぞ?」
「はい?」
きょとんとする私に、餓狼の私はニヤリと笑う。「ネギま!」3ーA、ネギクラスの(デマやら噂やらの)宣伝本部長・朝倉和美が、あれの祖母だと?
……いや、言われてみれば確かに目元とかスタイルとか似ている所もあるにはあるが。いやしかし身長はそんなに高くないぞ、あれは。
「やっぱり気付いてなかったか。テメェからすりゃクソッタレな事実って奴だ。本人も色々言われるから、自分のそういう話は細かくはしてなかったろうしな。どっちかというとテメェが事実を突き詰めて知るのを恐れてただろ。薄々、苗字が一緒だからその可能性自体は自覚していたろうが」
「えぇ……? いや、確かにそう言われてみれば、いじめられてた時のクラス内でのゴシップ力や政治力に面影を感じなくもないが、えぇ…………?」
「原作関係者とだって、相性が悪い時もある。人間生きている以上、環境に左右されることも他も色々あるだろう。経緯が異なれば、必ずしも信念が重なるわけでも無い。距離感はそれ相応にだ。
後大体、テメェがあのクソ女を許せなかったのは――――自分だけじゃなく肉丸達まで侮辱されたからだろうが」
餓狼の私の嫌な指摘は、くしくも私の胸を抉る。
私自身に対してどうこう言われたことやされたことは、気にしていないと言えば気にしていない。度を過ぎた分はそれなりにハンムラビ法典的な対応をとり、両者ともにカアちゃんから折檻を受けたりといったこともあったが。そういった一連の流れの際に、我が友人たる彼等の夢への侮辱も入ったのだ。
それこそ叶わない、という話ではない。
朝倉は、彼等の頑張りから折るような言葉を使った。
「……究極的に言えば、私はどうでも良いのだ。所詮『私としてみれば』部外者なのだから。それは、『私』個人でも、近衛刀太としても。原作でのその後を思えば、そこは変りない」
「嗚呼、そうだな」
「だけどな…………、頑張ってる奴の立場に立たないで、嫌味言って、弱ってる時に立場無くすようなことを言ったのだけは、な」
「嗚呼、…………そうだな」
朝倉本人は、あの事件で私たちが救出した。その前後で彼女自身の認識が大幅に変わったのだろう。そのせいで、私に対して振る舞いが大きく変わったのは、心の機微としては納得がいくが、個人としては理解しがたいところがある。
何度も謝れと促して、彼女も間違いなくそれは理解していたはずなのに。私どころか、彼等へそのことを話したことがない。むしろ都合が悪いとばかりに話題を変え、いつのまにかうやむやになり。酷い時にはそこで会話を打ち切るようになっていた。
肉丸たちはさして気にはしていないようで、それはそれで普段から家族たちにも言われている話であることが察せられて中々悲しい社会情勢ではあるが。生憎近衛刀太としても、「私」個人としても、この世界で最初に自分が自分として立っていると。そう認識させてくれた、認めてくれた彼等だけは、どうしても感情の重みが違う。
そんな私の感傷も「単なるガキの憂鬱だ」と、餓狼は鼻で笑う。
「結局和解はしなかったが、どっちもガキだったってだけだ。今もそう変わらねぇ」
「…………」
「ただ後悔はしねぇ。それこそこの俺が、当時、キリヱと一緒にやり直すべきだったのかもしれねぇが……。キリヱをああしてしまった俺が、結局無力だった俺がやり直したところで、何も変わらないだろ」
「……そうか」
軽く語ってはいるが、その境地に至るまでどれくらいの時間が必要だったのだろう。どのくらいの感情の整理が必要だったのだろう。味わいたくもないそれに胸をはせることしか出来ないが、きっとそれは、言葉にすればほんの軽い事でも、のしかかるものはとうてい触れて良いようなものではないのだ。
「じゃあ、アイツによろしく言っておいてくれ。俺はまたクソッタレな地上で、クソみてぇな世の中這いつくばりながら生きるだけだ」
ぎゅっと葉巻を握りしめ、開けばその手には何もない。
口から煙を吐くと、ジャケットを身にまとい、この高所から当たり前のように落下しようとする餓狼の私。
そんな私に……、それでも、キリヱがお前に助けを求めていると。
その言葉を聞いた私は、こちらに向けてサムズアップし。
「ハッ……、クソくらってろ!」
横から見てよくわかるほどに、いっそ楽しそうな快活な笑みを浮かべ……、髭面には合わない、それこそかつての近衛刀太だろう容姿通りの笑顔を浮かべ。
そのまま左手を回し、親指を地面へと向けた。
※ ※ ※
「今度こそ気を取り直して、がんばるわよー!」
「おー、…………」
「ちょっとあんまり落ち込まないでヨ!? 私、全然なんか大事なこと思い出せないから、言葉かけられないし……」
「いや、お前さんは無理に思い出さなくて良いぞ? うん」
「な、何ヨ…………? 頭なでなでしたって、全然ごまかされないんだからっ」
そう言いつつもこちらに近寄って来て撫でやすい位置に頭を向けて来るキリヱ大明神はキリヱ大明神で、思い出せないなりに精神にダメージを受けていそうであった。私的にも「餓狼」たる私との遭遇は中々ダメージが大きく、現在「第四の目」を啓く気力が失せている。まあ、判らないなりに彼女も罪悪感のようなものが強く想起されていたようなので、私からは何も言わずに甘やかすに任せよう。
さて。場所は再び戻って、キリヱ大明神の時空拠点こと「終わり始まり」の場所。特に今度は休憩する間もなく、すぐさまテレビ画面を操作するキリヱである。
私のダメージが大きすぎたので早い所忘れてしまおうという彼女なりの気遣いなんだろうが、キリヱもキリヱで妙に焦っているので、潜在意識で何かが警告を出しているのかもしれない。
さておき今度のセーブデータは「√2033:2088年7月13日、最後だけ失敗」とのことである。
「いやおいおい、こっちの方が古い方のデータじゃねぇか……?」
「うーん、そうなんだけど、こっちについては正直どうしたものかって所なのよ。良い所までいった記憶は残ってるんだけど、結局何が原因で失敗してたかってのは忘れてるし。
でも残してるってことは、ルートの参考になると思ってセーブしてたってことだと思うのよね」
いやお前さん忘れすぎか(震え声)。5万回以上ループを繰り返した回数からして一切そのことを責める気は湧かないのだが、そんな私を見て「ボケてないわヨ!?」といきなりおキレ遊ばされる。
「人がちょっとアラサー超えてる方だからって年より扱いは許さないわヨ!? って、オバチャンじゃないわヨ! その目止めなさいよ、別に何も言ってないじゃないッ!」
「こっちの方が何も言ってないのだが(震え声)」
そしてどう考えても、年齢関係にコンプレックスがありそうなリアクションばかりとるキリヱ大明神であった。合掌(黙祷)。年齢関係について自爆なさった彼女であるが、いやそもそも5万回のループを全部年齢に加算した場合に一体何が起こるかと言えば…………、いや止めておこう、考えただけでキリヱの目がマジになっている。アレはマジで
かくしてそのセーブデータを起動した先に待っていたのは、色々な意味で私としては予想外と言うか「もうこのルートがあれば良いんじゃね?」というものであったのだが……。いや、あえて詳細を省かずに説明しよう。
餓狼の、世界ディストピア経済ルート(今命名)ではセーブ先が新東京のあたりではあったものの。こちらのセーブデータで出力された場所は――――。
「……何だこれ、仙堺館?」
「そ」
キリヱ大明神が占領するホルダー拠点たる仙堺館スィートルーム、その最上階。1つ下にある雪姫の居室よりもさらに上にきているあたり彼女の経済的な影響力の強さを察するところがあるが、このあたりは原作でも私のいる時間軸でも変わっていない。故にこそ広いオーシャンビューな窓はなんだか久方ぶりに見るような気がするものの、こころなしか人気が少ない。
そして私の視覚的には――――この世界にも薄く「悪意の幕」のようなものを感じる。
咄嗟に黒棒を呼ぶ私に「にゃん!?」と飛び退くキリヱ大明神。その場で軽く血風を回転させ、すぐさま血装し周囲へとうすく魔力を放射する。
これで最低限、私のいる範囲の悪意は除外される……、様な気がする。
もう大丈夫だと勝手に納得していると、キリヱは腕を組みぷりぷり怒っていた。
「い、いきなりびっくりするじゃないのヨ! というかこの世界でそんな恰好はやめなさいよね、絶対その血装? でそんな格好して無かったもの、この世界で」
「いや忘れてんだろ? このセーブデータについちゃ。何でそんなこと言ってんだよ」
「忘れてるけど、それでも覚えてることはあるのよ。というか、何が原因で失敗したかがわからないだけで、あっちと違って最低限覚えてるし」
「最低限ねぇ……」
では何をもってこの世界を失敗ルートと断定したのかと問えば。
「最終的にアンタが死んだからよ。いや、死んではいないんだけど、それこそ四世紀は戻ってこれなさそうというか」
「四世紀……、400年?」
どこか遠い目をして窓の外を見るキリヱ。その視線の先には、新東京から伸びるアマノミハシラこと軌道エレベーターが高く高くそびえ立ち…………。
その軌道エレベーターは、その全域になんとなく「植物のツタが覆っているように見えた」。
――――Route 2033:
Sep 13, AD 2088
NEO-Tokyo: SENKYO-KAN ――――
この世界の私、というよりも近衛刀太だが、それはどこにいるか思い出せないらしい。
ただ何かしらの何かがあって、私は自己犠牲するような形で軌道エレベーター崩壊を止めて今に至る、とのことである。
うん、ちょっと何言ってるか判らない。
「軌道エレベーター崩壊ねぇ……」
それこそ原作終盤の一つ、コミックス24巻以降のいわゆる未来編導入におけるもっとも重要なイベントに、そういったものがあった。未来編自体は原作におけるそれまでの歴史の延長から一つ大きな断絶を描くという、ある意味で不死身系作品としてのセオリーの一つを回収した編である。
詳細について思い返すのはそれが必要になってからにするが、繰り返すがその導入において近衛刀太はその身を犠牲とするのだ。
まあ、誰が悪いかと言えば大体バアルとニキティスの兄弟なのだが。
結果的に刀太が逆転の鍵になったのはニキティスのお陰でこそあるが、二人一組として考えると面倒くさいマッチポンプそのものである。
とはいえ原作軸において、この段階のキリヱ大明神は再起不能になっている可能性が高い。七尾(※まだ遭遇していない)の言及が正しければ意識を取り戻していて不思議ではないものの、今の段階でキリヱがここまで規格外の能力を持ち得てはいない。
そう言う意味では中途半端に原作をなぞっているというある意味で私の未来を予感させられ中々ゲンナリする話なのだが、とはいえワガママは言ってられまい。少なくとも餓狼の私のような特大地雷はもう出てこないだろうと、希望を持っても良いだろう。
そう思っていたからこそ……、ふと当たり前のように遭遇した忍の反応に、身動きが取れなくなる。
とりあえず階段を下りて食事にしようというキリヱの提案に従い、そのまま連なって歩いていく私たちであったが。途中の曲がり角の先から現れた忍に、少しぎょっとする。
いつものように、あるいはいつかのように。馬車道というか和装メイドのような衣服に身を包んだ彼女が、どこか元気なく盆を抱えて歩いていた。キリヱが「おはよっ、危ないわよ? そんなにぼうっとしてちゃ」と声をかけても、どこか気もそぞろな様子で「あ、はい、おはようございます」と返事をし。
そのままの流れで後ろを歩いていた私を見た瞬間、空元気のようだった微笑みが一気に崩れて号泣した。
「う、うわあああああああああああああああああん!?」
「あー、あー、まあこうもなるのか……」
「そりゃこうもなるわヨ」
キリヱの一言も、どこかやる気が感じられない。
そりゃ経緯こそ不明だが、自己犠牲したらしい近衛刀太のお陰で今があるとか、そのせいで近衛刀太ともう二度と会えないかもしれないとか、そんな話になっているところにいきなり近衛刀太(というか私)が放り込まれれば、こうもなろう。
伊達や酔狂でなく、前向きな意味で彼女は刀太が好きなのだ。
愛や恋などまだまだ早いお年頃といえど、それでも幼いながらも抱いた恋慕。いや幼いと言えど本来は刀太と同い年か1つ下くらいなのだが、それでもそこまで情緒が熟成されているかは表面上わからない。
だからいずれ、その悲しみも呑み下して一歩前進する時が必ず来るだろう。原作における彼女がそうであったように、それは「この世界で」今を生きている人間の特権なのだ――――。
『……まあ? そのついでに原作最終回エピローグ前に再会した後、キリヱの後釜に座って生涯は近衛刀太を独占した可能性も高いがなぁ? 相棒。
意外と強かな女だからなぁ、結城忍は』
「せん、ぱい?」
「あー、まぁ、とりあえずどうどうな?」
「あれ…………?」
忍が私の顔を見て、目を泣きはらしながらも何か違和感を感じている。
それはそうだろう、私は私であって、おそらくこの世界の私はこの私ではない。たとえ魂的な何かが共通していたとしても、一歩間違えれば餓狼になることだってある。あそこまでエクストリームな事象が早々あってたまるかという話ではあるが(ないよね? えっ?)、それはそうと彼女の気持ちを私が受ける訳にはいかない。それは、筋違いな話になるだろう。
例えセーブデータとして残っている以上、この先を見るつもりがキリヱにないのだとしてもだ。
ここで、この正解しかないと生き切った私のその努力を、無碍にするような真似をしたくない。
だから忍の頭をなでて離れてやると、とっさに首筋に強烈な殺意と、チョンパされるイメージ――――。
カン的な形で働いた「第四の目」が同時に啓き、背後から迫りくる剣閃を正しく察知する。
背後に背負った黒棒で
「――――神鳴流奥義、浮雲・斬魔閃!」
「はい? あー、あー、……あっ九郎丸かッ!?」
長らくずっと「刀太くん♡ 刀太くん♡」みたいな思念しか受け取っていなかったせいか、敵意をビンビンに向けて来る九郎丸の正体に一瞬気付かなかった。
九郎丸も九郎丸で、血走った目で夕凪を構え突貫してくる。嗚呼なんだろう、最近あっちの方は仮契約カードで神刀ばっかり抜いていたものだから、その仕込み刀的サムシングがいとお懐かしい……。とか色々現実逃避している途中、九郎丸は私の腕を引き、そのままテラスから表の方へと投げ、さらには斬撃を飛ばしてくる。刀身には少し嫌な
チュウベェを使って超加速しても良いのだが、九郎丸からにじみ出ている感情が「怒り」であることからして、もしかして私ってば偽物と疑われてる疑惑がある。対話を試みる暇もなく髪の色オレンジ(嘘)瞳の色ブラウン(嘘)と化しでもしたら、完全に偽物判定を受けて会話するどころではなくなるだろう。
とりあえず黒棒から小血風を「3つ同時生成し」、斬撃へと向けて放つ。
正面からの追突でそれぞれが段階を追って魔法エネルギーをかき乱し、ゆるやかになったその威力は黒棒と接触すると同時に雲散霧消した。
空中に座標固定して浮遊する私を見て、九郎丸は夕凪を構え睨む。
呆然としている忍はともかく、キリヱがそんな九郎丸に絶叫。
「ちょちょちょ!? 九郎丸あなた何考えてるのヨ! あの刀太は――――」
「――――うん、わかってる。皆心に傷を負ってるから、あんな簡単な偽物に騙されちゃうんだよね。
忍ちゃんだって辛いし、僕だって辛いし、きっと夏凜先輩だって……、だからこそあんな見え見えでわかりやすい、どうみても魔人だろう相手が、刀太君の顔をしてこんな場所に立つな!」
「ちょっと話聞きなさいヨ――――! 何でそんなキレたナイフみたいになってるのヨ、というか本当どーしてそんなやる気満々なの」
「話はさっきから聞いてるよ! だけど――刀太君があんな
いやスマン、魔人なのは完全に否定できないので色々許してクレメンス(他力本願)。
九郎丸の言いぶりを聞くに、どうやらこの世界の私はわりとまっとうに近衛刀太していたらしいが。それはそうとしていやちょっ待てヨ(キムタ○)。おどろおどろしいとは何だ、おどろおどろしいとは。
決して血装を使っていることが原因ではあるまいし、視たところ既に「神刀」と真の意味で融合し能力を最大限活用できるようになっているらしい九郎丸が、あえてそう指摘してくるということは。現状の私というのは、一体何だというのだ? 何か、今の私には何かがあるというのか?
ただでさえ人格が支離滅裂な上にマルチバースは少しだけ失敗にしたことにしたいのに、これ以上の情報量はいい加減爆発四散するぞ、アババーッ!?(心の悲鳴)
そんな風に、九郎丸相手に百面相していた私であったが。「何をやっているのですか」と聞き覚えのある声がする。いつも通りというか、そこには制服姿なミニスカの夏凜の姿。九郎丸の後ろから現れた彼女は、明らかに戦闘態勢の彼と、呆然としてる忍と、ついでに「うにゃああああん!」とお唸り遊ばされてるキリヱ大明神をそれぞれ一瞥した後、私を見上げ。
「なるほど……、キリヱの言っていた他のセーブデータとやらの刀太ですか。それにしては少々、その……、ちょっとこっちに来なさい、慰めてあげます」
「夏凜先輩!?」
「ふぇぇ!!?」
「にゃおん!!!? い、い、いきなり何言ってんの! 夏凜ちゃん『ここだと』そんなに刀太とべったりじゃなかったじゃないのヨ!?」
……私を見た時点で彼女に浮かんだ思念が嫌にクールで、若干恋慕なんだか色欲何だか親しみと雪姫へのグチャグチャした何かが乗っていた夏凜であったが。数秒こちらを観察して、その感情が一気に同情に傾いたのは一体何なんですかね(震え声)。
ただ夏凜を基準として。その最初の感情の動きからして、もしかするとこのルートの私はもしかしたら、ある意味
つまりは――――いわゆる、原作沿いというやつに。