光る風を超えて   作:黒兎可

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原作後半部の一部ネタバレ注意


ST232.あなたを守るあなたを探して:2033②

ST232.Yourself in [2033] ②:A Man Who Disturbs Many Hearts.

 

 

 

 

 

 もう何というか猛烈にネタバレをかましてしまうのだとすれば、「UQ HOLDER!」最終決戦の直前に、いわば未来編という話が挿入される。単話ではなくその後にまで大きく影響を与える編でもあり、ある意味でこれこそがこの作品におけるラブコメ編や組織の精鋭編成という基本構造そのものに対する無理を強引に回収する手法の一つでもあったと、言い換えられるかもしれない。しかしそれを差し置いても、これを「当初からの予定だった」と言い切るのであるならば、正しくそのテーマは「定命の者と不死者たちとの断絶」であると言い換えることが出来る。

 断絶すれど残るものはあり、自分以外の大きな力に振り回されど守らなきゃならないものはあったのだと、それを作中において「45年の時間的断絶」をはさむことで発生させたということだ。

 

 この時系列というかルート2033においては、時期的には既にその編に入っていると言える。厳密に言えば「近衛刀太は経験していない」時間の話になるのだが、ともあれその導入に置いて近衛刀太はその身を犠牲としている。

 ニキティスの兄であるところのバアル率いる裏金星陣営……バアルが協力をとりつけた、あるいは言いぶり的に支配下においていた「業魔大陸十二諸侯」というらしい連中との闘い。いまだ私が遭遇していない面々を含めたホルダーほぼ全員総出動での大戦の果てに、こちら側が勝利する形で決着。しかしその後、悪あがきをしたバアルにより、ラスボスが使う予定だった最終魔法の劣化版を仕込まれた軌道エレベーターおよびその安定のために低軌道リングが崩落させられかけた。

 魔法そのものには詳しく触れないが、ともかくアマノミハシラ、軌道エレベーターを崩壊させないために、その場でとれた手が近衛刀太を犠牲とすること。

 

 ニキティスが刀太へと仕込んだ、その魂魄に組み込んだ世界樹の種によって。

 

 世界樹自体の説明はよくあるファンタジーな物品なので省くが(適当)、もとはフェイトに刀太を手出しさせないために使う予定だった、いわば保険の類ではあったらしい。刀太をフェイトが彼の計画に使おうとした瞬間、世界樹により刀太が呑まれて利用できなくされるような、そんなイメージだ。そこにはニキティスらしいというか、吸血鬼の真祖らしいというか、裏金星人としての上位者としての独占欲がかなり含まれた考えのもとに行われていた所業であったのだが。

 ともあれその世界樹の種を発芽させることで、刀太の「金星の黒」から無尽蔵に魔力を栄養として補給させ続けることで、軌道エレベーターなどを添え木として呑み込む形で、全体を覆いつくすという荒業である。

 かつてバアルの手で、エヴァちゃんを孤独に追い込むために世界樹へと呑み込まれた夏凜に対し、ニキティスもまた別解釈ではあるが似たようなことをやっていると思うと、何やら業が深い話ではあるが……。

 

 とにもかくにも、そういった経緯で近衛刀太が死んだような状態になったのが「2088年の夏」、つまり今の時期。

 

 そして九郎丸達のやりとりからして……、ほぼ直後というか、それほど間を置かない時期が今なのだろう。

 

 

 

「いや本当、ごめんね? 刀太君……、ちょっと最近そういう襲撃があったものだから、てっきりそうかなって」

「別に気に病まなくて良いぜ? つーかアレだな。こっちの俺はだいぶ慕われてんのな。……仮契約とかもしてんのか?」

「うん! ほら、この通り……って、何か照れるね」

「おぉ……!(本当に原作通りのカードだな……、いや枠がないしカードとしては死んだ扱いだな。この世界の私がそうであるということなのだろうが)」

 

 

 

 そんな訳で現在、仙堺館の大部屋。現在は食事スペースのような形で色々と配膳されている。普段は大人数用に使われており、宴会などで使うことが多いあたり一般的な旅館のそれだ。私も掃除やら何やらで入ったことがあるくらいなのだが、本日は客として着席させてもらっている。

 そんな私の対面に、男用の給仕服で正座している九郎丸。夏凜から「少し話した方が良いのではなくて? 私やキリヱよりも貴方の落ち込み方が一番激しかったのだから」と、仕事は免除状態。とはいえ九郎丸本人は、多少事情を察したこともあって、反省の意味を込めて正座をしている。 

 律義だなーお前、と苦笑いすれば、そんな私の表情やら何やらに近衛刀太の面影を見たのかいっきに涙目になる九郎丸は……、うん、まあ、その、コメントは差し控えさせてもらおう。「第四の目」を啓いていなくとも、漏れ出る思念の感情が重いったらありゃしない。

 

 そして色々と話を聞いている限り、もはや確信に近い状態な私である。

 すなわちこのルート2033とやら、どうやらほぼ原作沿いに成功した私のルートであるらしかった。

 

 他者から聞くこのセーブデータでの私の言動は近衛刀太そのもの。起こった事件やラブコメ的イベント、戦闘パターンなどなど聞いても聞いても「死天化壮」のしの字すら出てこないし、釘宮という名前に心当たりもないらしい。強いて言えば夏凜がぴくりと眉を動かしたくらいだろうが、まあちらっと視た限りこの夏凜は夏凜ちゃんさんではなくCPL(クレイジーサイコレズ)こじらせていた原作夏凜の方に寄っているので(大変失礼)、雪姫の学友の名前に心当たりがあるといったところだろう。

 九郎丸に限って言えば、出会いがそもそも熊本を出た私と雪姫との遭遇やら襲撃、戦闘から始まっているし、そういったところを含めて…………、どうやら橘がサボらなかったらしい(責任転嫁)。

 

 より正確には、私が「痛いのは嫌だ」とも何とも言わず、諦めて近衛刀太をやりきったということでもあるだろう。雪姫、エヴァちゃんへの感情すら呑み込んで、押し殺して。

 まとめるならここは、ほぼ原作「UQ HOLDER!」。原作の24巻中頃から、26巻回想まで含めた過去の時系列。進行速度に合わせるなら、ここが現在でもある。

 つまりラブコメ関係の話は大概終わっているので、もはやヒロインに関しては堕ちきってる状態であるともいえる。何だこれは、思念を視ればこちらも影響を受けちょっとその気になったところで手出しできないという拷問。地獄か何かで?(震え声)

 

 私個人として、この世界について思う所はない。いや、ガバがないという意味では羨ましい限りであるが、だからといって「現在の心境」でそれを完全に肯定できるかというと、中々難しい心境でもあったりする。ある意味では「自分の感情を全て押し殺して」振る舞いを強制されていた私という存在に、同情はすれど感想を抱けない。それは一つの諦めだったのかもしれず、そして何よりこの方法では「私の友達」たちを救うことが出来ないのだから――――。

 

 そんな訳で、九郎丸から漏れるかなりムッツリ目な思念からひたすら目を逸らしつつ……、いや啓いてないのに視える時点でどれだけ感情が濃いのだという話だが、少し真面目にさせないとちょっと危ないかもしれない。ガバに繋がりかねない意味不明な言葉が聞こえた以上は「私」の世界に関係しないのだから、聞き出せるだけ聞いておかなくては。

 

「つーか、さっきのアレって何だったんだ? おどろおどろしい云々って」

「………………」

「何で鎖骨ばっか見てんだ?」

「…………っ、わ! ご、ごめん。ちょっと、久々の刀太君だったから……、1週間ぶりくらいの」

「まだ久しぶりじゃねぇだろそれ(白目)」

 

 どうやら本当に直近の時期であるらしい。そしてその程度の時間でもこのレベルの反応をしているというのは、まだ本人が「刀太が居ない状態」に慣れていないというのもあるのだろうが、色々と想いが極まって「決戦したら後は幸せなキスをしてハッピーエンド」くらいの気の高ぶりを一気に叩き折られたというのも関係しているのだろう。内心はかなりグチャグチャで、視ていられるものではなかったのだから。

 逆にちょっと性欲に身を任せて、和装な私の首筋あたりを見ている方が落ち着いていられるのかもしれない。うむ、重症である。

 

 そしてたどたどしく九郎丸が話す内容については……、ちょっとよくわからない。

 

「俺の中に何か、渦巻いてる?」

「うん。こう、ゲリラ豪雨の雲が急に生み出された時みたいな、真っ黒な何かが蠢いていて……、あまり良いものではないと思ったって言うか。

 魔人たちのそれとも違う、もっともっと『根本的な部分から』違った何かというか。あれじゃまるで……」

「まるで?」

「…………ううん、止めておく。例え僕がこれを言ったところで、僕が刀太君を好きなことに変わりはないけど。それを聞いた君が、君の世界の僕をどう思うかとか、ちょっとわからないし責任が持てないから」

「ストレートに好きとか言われてもなぁ……」

 

 困惑する私に「言うもん、僕、刀太君がだい好きなんだから」と、それだけは胸を張り断言する九郎丸であった。だからそう言うことをされるとなぁ……、色々溜まっているところにストレートな好意は中々劇薬なのだと何度言ったらわかるのか(※言ってない)。

 とりあえず顔を逸らすしかない私に、照れたのだと思ったらしい九郎丸がくすくすと微笑んだ。

 

「話してる時の反応から思ったけど、刀太君、僕の性別の事も知ってるし、告白はされてないけど好意には気付いてるよね?」

「あー、…………」

「いいよ? 言わなくても。ただ僕としては、ほんの少しでいいからそっちの僕にも構ってあげて欲しいなって。僕の世界の刀太君みたいなことになっちゃったら、もう、どうしようもないから」

「そっか」

「うん。……ごめんね? こんなこと、君に話してもどうしようもないっていうのに」

 

 そうだな、と。続けようにも続けられないのが、私の立場である。

 少なからず九郎丸がそう言うのは、彼女の知る近衛刀太と私との間に乖離があるからに違いない。

 だからこそ、今の自分と刀太の関係と、別なものが私と「私の九郎丸」にはあるのだと理解した上での言葉なのだ。

 

 今のこの九郎丸に、それこそ近衛刀太として振る舞い声をかけるのは、筋違いだろう。原作を前提に人心の在りようを踏み越えている普段の私以上に、失礼にあたる。

 

「も、持ってきました……」

「あら? キリヱはどこに行ったのかしら」

 

 そうこう話していると、忍と夏凜とが、両手に盆を持ってくる。小皿がいくつか、いずれもチャーシューの切れ端のようなものだったり、不揃いな大きさの豆の煮物だったりと、見るからにまかないの類だ。とはいえなんだか前回の経済的ディストピアを経験した今となっては、妙に腹が減っている。

 そっと丁寧に配膳する忍と、割と乱雑に置いてくる夏凜。盆の小鉢は一人3っつでちょうど6人分となっており、配膳すれど人がいない状態だ。

 すっと九郎丸の隣に座る夏凜と、私の隣に腰掛ける忍。ちょっとドキドキしていそうな身の振るわせ方が可愛らしいが、なんとなくニコニコ見つめるのも「彼女の刀太でない」立場として申し訳ないので、視線を逸らす。

 

 そしてそれを見た夏凜が。

 

「…………何っスかね? いきなり」

「何となく。……『私たちの刀太』を見た時にも思ったことはありますが、今の貴方は嫌に先生を思わせるから。私の感傷だから、好きにさせなさい?」

 

 私の頭を撫でる夏凜は、どこか寂し気な笑顔。忍は「あわわ……!」と何故か照れて、九郎丸は遠い目をしてこちらを見ていた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 キリヱが戻って来た時、ある意味予想してしかるべきだったのだろうが……。ただ登場は、私自身思考の外側に追いやっていたという他なく、むしろ勝手に除外していたのは無警戒という他ない。そして未だ健在だった姿で現れたことに、言い知れぬ胸の痛みを感じることとなった。

 

 

 

「はぁ……、何故和服なのだ貴様? 喪服か? そこまで黒い恰好は。

 というかその赤いマフラー、ちょっと趣味が過ぎるんじゃないか? ん?

 ぼーや(ネギ)も『この世界の』刀太も、そこまで変なこだわりはしていなかったが……、いやTシャツは変なのばかり集めてたな、刀太。訂正しよう」

 

「いや、人の趣味を変なのとか言うなってのッ!」

 

 

 

 おそらく「しょうゆ」とか「塩味」など書かれたTシャツに合わせた原作ネタ的発言なのだろうが、それはそうとして必死に原作寄せを頑張った私の努力へのフォローをせざるを得ない私であった。

 そんな私に、彼女は――――「このセーブデータの」エヴァちゃんは、ニヤニヤと少し意地悪く笑っていた。

 

 座席配置としては、左にエヴァちゃん、中央に私、右に忍。

 対面する位置として、左に夏凜、中央に九郎丸、右にキリヱ。

 

 どうやら「食事をとりましょう」ということになった後、雪姫のところに顔を出しに行ったらしいキリヱ。その際のやりとりから「私」が来ていることがバレ、どれどんなものかと顔合わせして見たくなったというのが経緯らしい。

 

「だって……、ずっと表情が死んでたのに、アンタがいるって聞いたら明らかに元気になってるのよ? 断れるわけないじゃない」

 

 大変ごもっともであった。

 時刻としては3時前後らしく、時間をずらしていた九郎丸たちとは異なり、エヴァちゃんはおやつ感覚で降りてきているらしい。そして何故か、服装は麻帆良学園時代のミニスカ制服姿。何故か不明だが、まあそこは気分ということで流しておこう。

 わざわざ彼女の思念を「第四の目」で視る勇気が、残念ながら私にはない。

 

 ともかく、小鉢の肉豆腐をつまむ私を見て、何が楽しいのか「カアちゃんではない」エヴァちゃんは先ほどからニヤニヤが止まらない。

 

「雪姫様…………、はい、あーん」

「いや止めておけ夏凜、お前ちょっと怖いぞ……? 表情が」

「怖い!?」

 

 そしてそんなエヴァちゃん相手に、ほうれん草とゴマの和え物を箸でとって口元にもっていこうとする夏凜の姿よ。おおこれぞ夏凜! といわんばかりな姿勢であり、エヴァちゃんからちょっと引かれてショックを受けているところまで含めて原作夏凜的な感情のあれこれである。

 がーん! と書き文字が出てきそうなものだが、私に見られていると気付くとハッとした顔をして取り繕い、半眼で睨み返してくる。そうそう、これだよこれ! 夏凜といえばこういう塩対応あってこその夏凜だよ! と私個人は勝手にテンションが上がっている。言い方悪いが、わざわざあーんするためにエヴァちゃんの対面の席に座ったのは最初から察しているので、どう取り繕ったところで無意味なんだよなぁ……。

 そして睨んでくるその頬が若干赤らんでいる初期夏凜では絶対に見られない要素まで含めて、百点満点の原作夏凜的なムーブである。こういうの、実はちょっと癒しになっていたりした。

 

 なにせ九郎丸もキリヱも忍もひたすらに憂鬱な中でも「雪姫様ラヴ」を絶対にぐらつかせないその姿勢である。マイペース極まりないと言えばそうなのだが、ここはひとえに愛は負けないと言っておこう。もっとも向ける対象が受け入れてくれるかは別とする。

 

「全く、そういうのは刀太にやれば良いだろうに……。

 前よりは()()()()したし、少しは腹が決まったのだろう? お前」

「と……!? い、いえ失礼、貴方ではないわよ? 近衛刀太。今、雪姫様は私たちの知る刀太のことを言っているのだから。

 その上で――――いえ全然何がどうしてそんなことを雪姫様が私におっしゃられるのですかッ!!!」

 

 立ち上がり、私に丁寧に説明をした上で、改めてエヴァちゃんへと向き直った上で膝を折った夏凜である。とりあえずキリヱ大明神に祈りながら合掌しておくと、「にゃん!」と前方右側からありがたい(抗議の)お言葉が飛んできた。察されてるあたりはいつも通りではあるが、この世界でのやりとりでは初めて見るのか九郎丸が不思議そうにしているのが印象的だ。

 忍? 生憎夏凜たちの方見てると、背中側になるから見えなくてなぁ……。思念も「一般人のそれを逸脱しない」ので、通常時は思念が見えないのだ。

 

 さておき。色々と雪姫本人から近衛刀太とのことを揶揄われ軽く脳が破壊された夏凜であるが、そんな彼女に追い打ちをかけるエヴァちゃんは、ちょっとだけ「UQ HOLDER!」の雪姫というよりも「魔法先生ネギま!」のエヴァンジェリンのようであった。

 

「というか聞いたぞ~? お前、あれだけ毛嫌いしていたくせに九郎丸達に色々相談して、三人で後々のために協定を――――」

「わー! わー! いかに雪姫様とて許せませんっ!

 刀太は耳を塞いでなさいっ! 少し決着をつけます!」

 

 アイマム、と苦笑いしつつ「黒棒から生やした血装の腕で」耳栓をしながら、特に何の動揺もなく黙々とチャーシューを使った肉豆腐もどき食べる。……少し出汁の味より塩味が濃いから、これは夏凜作か? 旨味の感じ方が若干弱いので、こういう微妙な味付けとかで、少し違いが出て来るのである。ちなみに九郎丸は割と卒なくこなすので、やはり実家では本来妹扱いで育てられたのではと思わなくもない。

 

 閑話休題。やはりというべきか、エヴァちゃん相手に舌戦をしかけたものの完敗したらしく、顔を真っ赤にし仰向けになってぴくぴく震える姿が哀愁をさそう夏凜。聖女の姿か? これが……。若干エロいような刺繍の施されてるパンツ丸見えな彼女であるが、ちょっとだけちらっと見てから左耳を塞いでいた血装の腕で裾を直しておいた。

 ちなみに九郎丸は「あはは……」とこちらも顔を赤くしながら苦笑い、キリヱは「えっ? そんなことになってるの? えっ?」と困惑しており、忍は忍で「はううううううう!?」と顔を真っ赤にして目を回していた。一体何を話したし。

 

「全く、やれやれ……。

 当の本人は色気より食い気か。らしいと言えばらしいが、なんか『手馴れてる』ように見えて()()()()は心配だぞ?

 そっちの私の教育が悪いのか、手当たり次第に女の子を泣かせているなら……」

「カアちゃ……、あー、いや、雪姫にそう言われても困るっつーか、あんまそういう恋愛事情揶揄うなら『自分に素直になってから』にしとけ? 夏凜ちゃんさんてかキリヱをフォローする訳じゃねーけど」

「む? 素直とは何だ素直とは。

 貴様、私の何を知っているというのだ? 同じ刀太だろうが、時系列も異なるだろうに――――」

 

 あえてその勘違い……、辿った歴史的経緯はほぼ同じだという彼女の勘違いは訂正せず、私はニヤリと笑う。

 

「――――自分押し殺して、自分が好きだったかもしれない相手の背中を適当な方向に押すってどう考えても辛いだろ。祖父さんの時みてーな自虐するような状況になれば、まだ素直になれるかもしれねーけどさ」

「……は?」

「まあ、外の(ヽヽ)俺だから客観的に物言えるっつー話でもあるけど…………、()()()()()()()()()()()()()()()()なんだから、折り合い付けたつもりで蓋するのなんて下策じゃねーの?」

 

 暗にヨルダ=バオトとの戦いで起こりうることを示唆するような私の言葉に、エヴァちゃんは訝しみ、そして言葉を失う。

 九郎丸が何とも言えない目でエヴァちゃんを見て、キリヱはキリヱで何故か目を大きく見開いて固まっている。……ん? 直接ヨルダという名前も出さなかったし、現時点で共有されていないラスボス個人の能力についても直接言及していないのだから、私の振る舞いとしてガバはないはずなのだが、はて?

 

 そんな風に疑問に思っていると、右の袖が引っ張られる。そちらを見れば、忍が顔を真っ赤にしたまま私のことを上目遣いに見上げてきて……、いや可愛いな本当。この場で唯一思念垂れ流しで無いのもあって、じっと見つめても頭が痛くならないのも含めて。

 まあ私の感想はさておき。そんな忍は、私の目をちらちらと見ながら。

 

「…………今の先輩は、みんなに刺激が強すぎると思います」

「はい?」

 

 何の事やら、と、私はリアクションに困るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

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