何でこんなに書きあげるのに時間かかったんやろ...
ST235.Yourself in [Current] :She is a girl in a complicated situation.
チーズナンである。
いや、いきなりこの一文だと何を言ってるか分からないと思うが、現在私の目の前にはチーズナンが山のように盛り付けられていた。ナンって何だよと言えば(激うまギャグ)カレーと付け合せるインド的な小麦粉を固めて焼いたナンなのだが、中にチーズを練り込みあまつさえチーズをのせ挟んで焼いている圧倒的に味わいがシンプルかつソフトなピザ極まりないナンが目の前に山のように盛り付けられ、皿に置かれていた。
思わずそのナン・マウンテン越しに見上げれば、キッチンの方でちゃっちゃか手際よく鍋を使い器用に追加のナンを焼いている人影が一つ。黒い姫カットを適当に束ねた彼女は「背中から血装の腕を生成し」、まな板の上では腕だけで生地を捏ねたりしている。いや、私もやろうと思えばできる話なのだが、それでも血で出来た腕の一部から目玉のようなものがぎょろりとして、ご丁寧に何度も何度も練っては鍋に張り付けている様は見ていて色々と妙な気分にさせられる。
とりあえず、アマノミハシラの学生寮にて。三太が根城にしていたままの例の部屋はその奥にて。九郎丸が珍しくまだ寝ており、室内には私を含め三名といったところ。つまりは、私と、九郎丸と…………。
「……何で、ナン?」
「激うまギャグ、ですか……?」
「いや他に言いようがないだろうが。というかそもそもカレーは無いのか?」
「朝からカレーは重いかと」
こんな大量の小麦と動物性脂肪の山も胸やけ必至な気がするのだが、彼女はのほほんと微笑みながら延々とチーズナン製造マシーンと化していた。
そう、つまり……、別なセーブデータより連れてきた、近衛
一体どういう状況だ、これ。というか
隣で私は私でトマトで野菜と鯖缶を煮ているので、状況はまあ何とも言えないところではあるが。
なお朝食はもっとあっさりしたいところだが、体感的にも睡眠時間的にも現在夕食なので別段、ナン自体に文句はつけない。
九郎丸もまだ寝静まっている朝方のこの時間帯。キリヱ大明神のセーブタイミングの関係で昨晩(というか深夜)にこのセーブデータに帰還した私だったが、まあそのあたりは一旦置いておくとして。
ことの経緯について、簡略化して説明すると次のようなものになる。
『なるほど、
『『花○院……』』
『あら? フフフ……。せっかくですもの、そちらでは苗字は○京院を名乗っても良いでしょうかね。おそらく誰も元ネタを特定できませんし』
真面目な話なのかメタな話なのかさっぱりわからないが、こちらのルート
というか本当に話が早く決着しすぎたため、むしろ何かの罠を疑ってしまうレベルである。
疑念の視線を向ける私に、燈子を名乗る彼女は私同様に頼んだ黒糖ラテのストローを噛みつぶしながら飲んでいる。クリームが引っ付いて若干液体の方を呑みにくいので、単純な気圧を上げようという作戦なのだろうが、そういう所作まで見事に私そのものであって気分は何とも言えない。
そしてそのタイミングにおいてずっとキリヱ大明神が私と彼女との間で視線をさまよわせてやきもきしているのは、まあ、うん、どういう感情からなのかは突っ込むのは野暮だろう。
どうにも私と彼女、近衛刀太(男)と近衛
私の方の夏凜の前に出してはいけない(震え声)。
そんなこんなで二人そろって料理を配膳していくが、仲良く(?)並んで運んでいると「な、ななな!?」という九郎丸の声。動揺するのは当然のことであるが、
『希望的観測過ぎるだろうが、ネギのぼーやでももっとまともだろうに』
絶賛エヴァちゃんモードの星月が悪態をついてくる。うん、そう、かな(震え声)? いやだって時期的にそろそろというか女装(女装ではない)九郎丸とのデートイベント的な何かをこなして関係性的に進歩したとしてもフラグ的にはおかしくないだろうが、そういうのはあくまでメタな情報分析においてであって、私個人の体感としてはどうなのだろう? という感覚も強い。
『罪悪感から出る関係も良しとせず、かといって一方に寄りかかる関係も不健全と見て、そのくせ相手側の感情の度合いを斟酌する気も薄く、結局は不誠実と言いながらも不誠実な結論を回避する覚悟はない。お前は何様のつもりだ相棒?』
何様とか言われてもなあ……。
というより今日はちょっと辛辣な星月である。どうしたお前さん。目の前で九郎丸が燈子にくってかかって、彼女がひらりひらりと軽く口で躱してるのを流し見している現状に、何か不満でもあるのだろうか? 私介入したら藪蛇どころの騒ぎではないだろうに。
燈子の方が最初に「お任せなさい」とウインクして九郎丸のデコイ(?)を買って出たので、そっちに任せきりと言うのはあるが。あちらがどこまでガバる(確信)か次第でこちらの応対の仕方を考えないといけないので、立場で言えばある意味最底辺なのだが……。
『大人しく原作の奴隷をやる気も無いくせによく言う……。
あと今更なんだがキリヱはどうした、桜雨キリヱは。一緒に戻ってきたのなら、全員あの女の部屋で
キリヱ大明神はキリヱ大明神で、精神的にだいぶお疲れになられているので、まあ…………。彼女の部屋の入口に、例のセーブ空間から脱出して出現して早々、その場で倒れて泥のように眠り始めてしまったキリヱを相手に、そっとしておこうと決断を下した私と燈子の判断は間違っていないはずだ。流石に色々可哀想だったので燈子の方が布団を敷いたりしてあっちはあっちでフォローしてから退室したが(※オートロックなので退出後は特に気にしていない)。
「まあ、端的に言えば妹のような、従妹のような……、そんな形になりますねぇ。花京院燈子と申します」
「…………刀太君?」
そして九郎丸は、その「また新しい女でも引っ掛けてきたの?」みたいな視線と「妹増え過ぎじゃない?」という思念を止めろ(震え声)。「第四の目」オフにしててそれだけ漏れてくるとか情念一体どうなっているのだ。後彼女個人に関しては冤罪だが、妹に関しては増えない保証がないので本当止めろ(震え声)。止めてクレメンス(白目)。止めろって言ってンだよ世界ィ!?(懇願)
あっちなみに。チーズナンだが、不思議とお腹にはたまらない仕上がりになっていた。意味不明である。味のこってりさと濃厚さに反してその仕上がり、どうやら空気を含めて作るのがポイントだとか何だとかいっていたが、果たしてそれで成立するものなのだろうか……。
そんな訳で九郎丸にも好評だったため、レシピやら何やらをを二人で聞くことになった。
朝食終了後、というか昨日の時点で既に三太やら釘宮やらに話を通してあるので、彼等と合流するまではフリータイムと相成った我々であるが。ここでふと、燈子から確認が入った。「第四の目」には目覚めていないのか、血装術でイヤホンを作り出して突っ込んできているあたりでツッコミどころ満載なのだが、隣で九郎丸が「えっと、こうかな……?」と四苦八苦しながらナン生地を練っていたりするので、仕方ない所だろう。
イヤホン越しに通してくる燈子の確認事項は、比較的シンプルだった。
『聞く限り、当初聞いていた四人に加えてキリヱ大明神を巻き込むつもりのようですが、果たしてそれで勝てるとお思いですか? 他のセーブデータの私に断られて、それで本気でどうにかなると』
「そこ難しい問題なんだよなあ……」
『というか、個人的に釘宮大伍という人物に全く心当たりがなくて困惑なのですが……。名前的にコタローくんのお孫だというのは察するにあまりありますが』
「まあ色々あったんだよ(白目)」
釘宮はなあ……。本人の性格的に、原作世界線で仮に存在したとしても積極的には関わってこなかったろうからな。おそらく燈子のいたセーブデータでも、干渉はされなかっただろう。釘宮本人は存在しているのは間違いないが、それはそれとして。
というか「孫」とは聞いていても「孫娘」になっているとは思ってなかったろうし、なんとなく(ラブコメ的経験値からして)従妹の方から妨害にあってそうなイメージがあった。結構嫉妬深そうだからなあ、あの成瀬川妹もどき(適当)。
と、そんな横道はおいておいて実際どう対処したものだろうか。失敗した事実からみて、相手の弱体化の割合を過信して挑むのは危険極まりない。かといって大人数を巻き込んでどうにかなると言う訳でもあるまいし、そもそも龍宮隊長が「それほど危険なのか……?」と思ったらすぐさま接触が難しいかもしれない。
総合戦闘力はともかく、でち公が先行してダイダラボッチに接触するのならばその危険性ははるかに跳ね上がることになるだろうし……。アイデアについては、正直手詰まりであった。
カトラス? アイツはこういうのは苦手そうというか、彼女は彼女で過去が色々あるのでそのまま「取り込まれてしまいそう」というか、そんな直感があった。妹ちゃん(本物)はあんまり危険に巻き込むべきではないのである。
夏凜に頼る? 出来なくはないだろうが、私と燈子を見た瞬間に何かまたヘンな感じでナニカを察して急接近してきそうな謎の恐怖感が強いので、まあ、お察しください……(白目)。
『一度見て見たくもありますけれどもね、その、色々キャラ崩壊している結城夏凜というのも』
「止めろ(真顔)」
『そんな女体化が発覚してから数週間の私のような顔をされましても……』
それくらい精神に負担がかかっているのか、そうか……。
我がことながら客観視されて初めてわかる事実もあると言う事だろうか。
いや、貞操の心配をしなくてはいけない状況が色々アレなのは事実だろう。うむ。
「ん……、ん! これで良いかな燈子ちゃん?」
「ええ、問題はないかと。後は練習次第だと思いますけど、筋は良いですね」
「そうかな? う、うん……(刀太君がけっこう美味しそうに食べてたしもっと好みの味にしてあげられたら良いなあ)」
「はて? 何をどきどきされているのでしょうか」
「え!? いや、何さそのどきどきとか、全然してないよ!!」
九郎丸の挙動不審さはおいておいて、なんだかんだとナンの作り方を教えている間に少しは警戒心がほぐれたらしい。ゆるめの表情も見せるようになった九郎丸に、にこにこと満面の笑みの燈子である。
彼女のいた場合の九郎丸は男の子バージョン、しかもかなり思い詰めていた様子だったので、彼女からすれば「原作に近い」九郎丸というのを相手にするのは、さぞストレス解消になるだろう。
ガバによる原作チャートの崩壊は、ひいてはそれに端を発する世界崩壊の引き金の可能性と、自分の罪を見せつけられ続けるようなダメージが脳に来るからなあ……。
思わず同情的な目を向けてしまったこっちを察したのか、燈子はこちらをちらりと見て、少し照れたように微笑んだ。…………分岐上の私の一人であるにもかかわらずちょっとぐっとくる物があったが、悪霊退散悪霊退散、「ネギま!」のソシャゲで大河内さんを当てるまで延々と祈祷するような勢いで頭をシェイク!
九郎丸ともども「大丈夫!?」とか聞かれたが、たぶん……、だいじょばない(白目)。
「いったん料理はここまでにするとして、少し寄りたいところがあるのですが宜しいでしょうか?」
「何だ何だ何でも言ってくれ……」
「刀太くん、何で泣いて……って血だよそれ!? 血、血涙!!? 本当にどうしたのさ!!?」
何かわからないが情緒がぶっ壊れている私に、九郎丸がひたすら動揺していて大変申し訳ないが、たぶんしばらく続くので諦めていただきたい……こちらの言うべき台詞ではないのだが。
さておき、九郎丸から目元を拭かれつつお世話され死んだ目をする私にドン引きしながら(引かないでくれ……)彼女が行きたいと言った先は、教会だった。春日美空やらシスター・ココネが現在
「かつて水無瀬小夜子の遺体が安置されていた場所があるとすれば、そこになるのでしょう? だったら何かしら、彼女の遺体に関連する情報があったのではないでしょうか。
多少なりとも彼女のそういう情報を知ることが、ダイダラボッチなるものの核とされた彼女の遺体についてのヒントになるのではないかと」
「遺体についてのヒント……?」
「…………そういうこと、か。そうかもしれないね、燈子ちゃん」
私はいまいち理解できなかったのだが、九郎丸の方は何かを察したらしい。どこか神妙な顔をして燈子の名を呼んだ彼女の、その声音はとても哀しみに満ちていた。
「聖遺物ってわかるかな、刀太君」
「ん? 宗教的な偉人とかの遺体に
「スーパーパワー……、そ、そういう見方もあるかな? うん」
その小さい子供見守るみたいな微笑ましい目と微笑みは何なんでしょうかね九郎丸ちゃんや? ん?
いや、あくまで原作刀太風の物言いをして語彙を調整している私も私なのだろうが。
「
「お前さんいつ水無瀬小夜子をちゃん付けする位仲良くなったんだ……?」
「え? あ、いや、だってほら、三太くんの
「何やってんだアイツ……」
まあ、師匠の拠点である狭間の城で修業中に「居た」にはいたのだが、私の知らないところであっちもあっちでテンションがおかしかったと見るべきか。初彼氏、しかもラブラブ(?)なことで女子的な何かが満たされてひゃっはーしてしまったのだろう(比喩)。
そしてそんな我々のやり取りに「ぽかーん」としている燈子は燈子でその気持ちは察するにあまりある。まあ、原作を前提とするとどうあがいても水無瀬小夜子生存ルートはありえないというか、こっちでも本当に生存と言い切って良いかどうかわからないところはあるので、そのキャラが原作よりはっちゃけてる事実はそれなりに驚きだろう。事前にゾンビ事件がダイダラボッチ事件と言う方向に収束したと聞いた時もかなり驚いてはいたので、まあ、うん、そういうことである(思考放棄)。
「だからその、聖遺物みたいになっている水無瀬小夜子について、何かしら打開策になるヒントがあるかもしれないって……?」
「まあ、あくまで思いつきですけれど」
「僕は賛成かな。そこまでの脅威なのかはわからないけど、刀太君が安全ならそれは大事だよ」
ニコニコしながらそう言う九郎丸ちゃんだが、一瞬その目が据わっていたのに「ひえっ」と声を出してしまいそうになった。ハイライトがなかったんだよなあ……。漫画的には。完全にヤンデレの目で、久々に見た気がするそれに背筋が凍った。
そして燈子の方は九郎丸のそんな姿に「あは……」と遠い目をしていたので、多分そっちの方の九郎丸くんも大差ないんだろうね。
どうしてこうなった(白目)。
そんな経緯もあり、まず最初に麻帆良の例の教会へと足を運んだ私たちだった。
「あれ、くぎみー?」
「…………その呼び方は止めてくれと言わなかったかい? 近衛。
というか……、えっと、君、その隣の女性は…………?」
「はて?」
女性? いや、彼女とかじゃなくて、女性?
道中、当たり前のようにニット帽に眼鏡姿の釘宮大伍と遭遇し。
その視線が、何故か燈子の方にくぎ付けになっていたのを私は見逃さなかった。
…………いやお前さん、何ちょっとほっぺた赤くしてるんですかね(震え声)。曲がりなりにもパラレルな私である燈子相手に、いや、え? そのあまりに漫画的にベタっぽい反応はちょっとさあ……。
ニット帽の下の獣耳も少しさわさわ動いてるっぽいし、燈子と目が合ったらさっと視線をそらすリアクションとかどう見ても一目惚れっぽいサムシングです、本当にありがとうございました。
これ以上話をややこしくしてくれるな…………。