光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評ありがとうございますナ!
余裕が一応日に日に戻ってきてはいるので、更新と相成ります・・・。


ST27.揺さぶる

ST27.ROCKIN' ON HEARTS

 

 

 

 

 

 今更ながらだが正直な話、このスラム関係の話はスキップされるものだと思っていた。というのも本編の筋的にもここは夏凜の紹介編としての意味合いも大きく、これ相当の話をやるにしても一日二日程度で終了する形になるのではと思っていたのだった。ところが蓋を開けてみるとこの現状であり、ガバがそんなに発生しないよう出来る限り気は遣っているが、既に発生しつくしているガバについては対処の仕様がない。このあたりは流石に諦める他ないだろうと思うのだが、しかしそれによる影響度については、意外と低いのではと考えなおした。

 夏凜や九郎丸の好感度が多少違っていても、エピソード的に経過するポイント自体にそう大きな変化はあるまい。ならば意外とその場に流される形でもどうにかなるのでは? という希望的な観測だ。

 

 …………思っていて早々に忍襲来とかいう特大イベントのずれが発生していた訳だが。流石にこれを予測しろと言うのはいくら何でも厳しい物が有ると自己弁護したい。

 

「ままならぬ……」

「どうしました? 先輩」

「いや何でも。…………ていうか、お前料理上手いな。味付けも美味い」

「えへへ……、がんばりました!」

 

 スラムの養護院。夕食当番について原作通りというべきか腕相撲勝負となって、これまた原作通り負け続けた私である。何かしら罰ゲームがあった方が張り合いがあるだろうという論調ではあったが、夏凜はこういう場合は妙に手を抜かないし、九郎丸も九郎丸でほぼほぼ条件反射で「瞬動術」を併用し、楽々と私を負かしていた。

 素の腕力についてはともかく、やはり原作よりも「気」の習得が遅れている自覚があるが。このあたりをどうしようか思案している最中で、忍が私の手伝いを買って出た。もともとこのスラムでの仕事が終わったら、一度「UQホルダー」の方で出稼ぎ扱いにするかという話し合いが夏凜ともたれ、雪姫にも携帯端末で顔通ししていたりもする。そんな当の本人は、いまのところ役立てるところが何もないので……という理由から、私たちのサポートに徹しようとしているらしい。

 

 それでもって、伊達に原作で「普通の」カワイイ女の子とか言われていないスペックを発揮する忍であった。洗濯も料理も掃除も普通に出来るし、家事の類で特に不自由はしていないらしいスペックである。私がやると料理以外は割と雑なので「先輩、一緒にやりましょう!」とどこか楽し気にガッツポーズしてくれる。こういう仕草をされると大変に可愛らしいのだが、視界の端で九郎丸が衝撃を受けたような顔をしているのがどうにも頭の片隅に引っ掛かっていた。

 

「どうしたんですか?」

「いや何でもないって。まー考えることが色々多いオトシゴロなんだ」

「お、オトナですね……!」

「お前の中の大人のイメージどういうのだかちょっと気になんな……。っていうか、いや普通に美味いわ、忍の料理。これ卵焼きとか」

「そういう先輩だって、平然とケーキ焼いちゃったりするの、自信無くなっちゃいます……」

「って言ってもなー。これって店で出す用の料理というかが前提だから、全体的に味付けキツいし。毎日食べる料理とかじゃねーんだよなー」

 

 困ったときの必殺・焼きスパゲッティとか、雑に中華っぽい感じで鍋をふったりもするが。あくまでこういう技能は、将来の希望を見越して熊本時代に肉丸から教わったものが大半だ。ある程度は見よう見まねで出来てしまうのは原作主人公の基礎スペック頼りであり、所詮は付け焼刃と言う印象が抜けない。

 

「そ、そんなことないよ刀太君! だってちゃんと、調整はしてるよね!」

「きゃ!」「わー! お前食い気味だな九郎丸」

 

 と、そんな私の忍の間に後ろからぬっと九郎丸が現れた。……その手に持ってるのは一体何なんスかね、エプロン? フリフリなのは夏凜にでも借りたのだろうか。

 

「いやまぁ、多少は塩気とか風味とか調整できるけど、これが一番良いものかと言うと微妙なところはあるからなぁ……」

「でも、やっぱりこうスッと美味しそうに盛り付けて出すのとか。手馴れてると思うよ」

「く、九郎丸さんに同意です」

「忍ちゃんわかってる!」

「は、はい!」

 

 いえい、と何故かハイタッチする二人はおいておいて。時機を見て大体、原作とどれくらい周期がずれて居るのかに思いをはせるのだが。…………忍の襲来タイミングを原作でのタイミングと同一とは断定出来ないが、時期として原作より2か月前後は遅れている状態だろうか。よくその間このスラム持ったな、結構本腰入れて殲滅に来ていた印象があるのだが…………。いや、ひょっとしたらこのあたりはキリヱが頑張ってくれた範疇かもしれない。こういったガバのフォローが出来そうなのが彼女くらいしかいないので、私は内心で彼女のいる方角へ向けて拝み倒した。キリヱ大明神、キリヱ大明神……! 

 だがしかし。

 

「そうすると、ここを襲うメンツにも変更があったりするのか……?」

 

 横で九郎丸が「僕も明日から参戦するよ!」などと言っているのに適当に応じながら、ふと浮かんだ嫌な予感を詰めるのに、私は必死だった。原作で影も形もない連中が襲撃でもしてきたら、たまったものではないのだ。対策は練らねば。

 ……流石にいきなりフェイトはん来るとかありまへんよな?(震え声)

 

 

 

 とか何とか思っていたのが悪かったのかもしれない。

 前触れとかはなく、それは唐突に起こった。

 

 私たちが入っていた教会の屋内に、砲弾一発――――瞬間的に私と九郎丸は避難を優先させる。夏凜は丁度外に出ていたタイミングだったので、忍は私が例によって肩抱き(お米様抱っこ)運搬しながら、他の子供たちやらシスターやらを外部に逃がす。

 

「せ、先輩それこの間の……?」

「すげー! 兄ちゃんやっぱそれめっちゃカッケーって! 後でやり方教えてくれよな!」

「無理!」

「ケチ!」

 

 そんなことをルキやら他の子供たちとやりとりしながら、背中にかばう。九郎丸がシスターたちに声をかけて、他の逃げ遅れた人たちの避難に集中しているが……。どうにも私は、外に出てすぐ発見した夏凜、および彼女が今戦っている相手に注意が行ってしまっていた。

 

「……解せませんね、これほど強くあるのになぜ、貴女はそちら側にいるのです? 貴女だってまだ子供ではないですか!」

「煩せぇんだよ! 大体俺だって、今日こんな場所に来てこんな小さな仕事するつもりだってなかったってのによォ!」

 

 乱暴な口調で巨大な黒い刀を振り回す、頭まですっぽりローブだかで覆った少女。肌はわずかに見える感じで浅黒く、そして時々、背後から魔法陣を展開して黒い槍のようなものを射出していた。

 

「…………テナ・ヴィタだったっけ。本名」

 

 カトラスじゃねーか!? だからお前ら来るの全員早すぎるんだよ! いやどう考えたってお前ここに居るのオカシーとかそんな次元じゃねーだろ、ちょっとは考えろ原作進行具合!

 カトラスことテナ・ヴィタは、早々にネタバレしてしまうのなら私の妹にあたる。私の、というよりは「近衛刀太」の、という意味だが。つまりは私同様にネギ・スプリングフィールドおよび神楽坂明日菜の遺伝子情報をベースに、様々な人物の遺伝子を織り交ぜて作られたクローン体ということになる。容姿の雰囲気からして 桜咲刹那とかザジあたりの素養が強いのではと勝手ににらんでいるが、真相は闇の中だ。

 そんな彼女は、本来なら生みの親たるフェイトどころではなく、いわばラスボスの先兵的な立ち位置にある存在なのだが……。まあ元々フリーの傭兵まがいの仕事もこなしていたはずだし、巡り合わせ次第ではこういう形での遭遇もあり得るという事なのか? ラスボスというかあの人って、絶対まともな稼ぎもっていないし。無給では生きていけない的な事情もあるのだと勝手に同情しておこう、うん。完璧な不死身じゃないし、飲まず食わずって訳にもいかないからな……。

 

 幸いあちらはまだこっちに気づいていない。これは早々に避難誘導に専念して、早期遭遇という特大ガバの回避を――――。

 

「って、おっと! 『血風』!」

 

 こちらに砲弾、否、空気の砲弾が投げ込まれてくるのを、黒棒の先端で描いた血風を投げてぶつけ相殺する。どうやらすぐさま死天化壮(デスクラッド)を解除するわけにもいかないらしい。視線を前方に向ければ、全身にサイボーグ施術を施された長身ムキムキマッチョマン。額にバーコードで表情づけが変態がかった……、名前は忘れたが、そんな傭兵だ。

 確か民間の軍事警備会社からの派遣で、原作だと奴が夏凜と戦っていたはずなのだが…………、いや、これは好都合である。

 

 なにせ原作通りに戦えば、夏凜はこの男に全裸に剥かれる(というより服が消し飛ぶ)のだ。

 

 今の私の色々限界なコンディションでそんな光景に遭遇でもしてみろ、間違いなく色々なナニやらが限界を迎える(断言)。そんな生き恥(逆オサレ)晒してまともな精神でいられる自信もなく、物理で打倒できる相手というならこちらとしては願ったり叶ったりだ。

 

「とはいえ、速度でいえば敵ではないな」

「はぁ!?」

 

 もっとも現在の私の最高速から考えて、一切手こずる相手ですらないのだが。いくら魔法アプリで武装を積んでも、それが高額高性能であったのだとしても、堂々と子供を狙って下卑た笑みを浮かべるような低OSR(ダサい)状況で、本気で勝てるとでも思ってるのかな?(慢心)

 確か原作だと上半身と下半身で、それぞれ兄弟だったか。ならば腕と脚、両方を血風創天で斬り飛ばす。変形した「飴屋」のロゴが真っ二つになり、絶叫と同時にその場に倒れるが。とはいえ目からビームを撃ってきたり、チェンソーめいた仕込みの武器とかを飛ばしてくるので一切の油断はしない。黒棒を向けていつでも叩き伏せられるように。

 

「こ、こんな子供相手に我ら『瓦礫屋』が……!」

「瓦礫屋……、そんな名前だったかアンタら、カッコ悪い」

「「カッコ悪い!?」」

 

 それはもう、言動からその結果、格好から雰囲気、振る舞いにかけてまで完全に低OSRである。

 

「せめて『破壊野郎共(スクラッパーズ)』とかもうちょっとそれっぽいの考えておけよ」

「そんな子供のセンスなど!」「大体何だそのひらひらした邪魔くさいコートは!」

「お、何? デスクラに文句付けるの? これ九郎丸のネーミングだしちょっと俺もキレちゃったりしても良いんだけど?」

 

 言いながら手元に血風を展開すると「「ひぃ」」と二人そろって声を上げる。流石に一発で自分たちの腕やら脚やらを切断したあたりで、威力については察しがついてるらしい。そんな二人に尋問でもするかと思案していると―――――――後頭部に嫌な感覚。

 

 黒棒を構えると、まるで「吸い寄せられるように」、巨大な黒い剣――――「ハマノツルギ・レプリカ」が振り下ろされた。

 ちらりと視線を向けると、そこにはローブ越しではあるけど目を殺意にきらきら輝かせてオリジナル笑顔を浮かべたカトラスが……、嗚呼……、逃げられなかった…………。

 

「お前は、何?」

「………………マジかよ、完全に不意打ちだったのに受け止めるのかッ。いいぜ、そうじゃなくっちゃなア『兄さん』!」

 

 喜色満面、そのまま連撃をしようとするも、夏凜が投げたハンマーを躱すように距離を取る。私も足元でレーザーを照射しかかってる連中に、一発血風をお見舞いしてからその場から一度引いた。

 

 後方、避難誘導を終えて臨戦態勢の九郎丸と合流する私たち。

 

「刀太君、大丈夫?」

「あー、まぁ別に?」

「思ったより強いんですね、刀太…………。気の運用はまだまだのようですが」

「そこは今修行中ってことで。それより――――」

 

 眼前、ふたたび合体して体勢を立て直す瓦礫屋と、私を睨みながらにやりと口元だけで微笑むカトラス。前者だけなら多少慢心しても余裕でお釣りがくるレベルだが、後者に関しては決してそうも言っていられない。

 早々に瓦礫屋兄弟についてだけ情報共有し、夏凜からカトラスの情報を聞いた。

 

「基本的にはあの大きな剣と、召喚する槍の類。後時々、瞬動のようなそれではない違和感が動きにあります」

「違和感ねぇ…………」

 

 確かアーティファクトとして時間停止系の能力を持っていたはずなので、おそらくはその類だろうか。……それを認識しながらも戦えていた辺り、夏凜が強いのかそれとも何か狙いがあって手加減されているのだろうか。

 

「まぁこういう場合、いつまでも攻めずにいるのは逆に危険です。早々に決着をつけましょう。…………『干からびた骨(オゥス・エクシィカッタ)』!」

 

 そう言っていつだったかのように全身に神聖魔法の光を身に纏い、ハンマーと剣を構えて斬りかかりにいく夏凜。とその前方に瓦礫屋が現れて一撃を受けるが、あの状態の夏凜には流石に抵抗できないだろう……、こちらはこちらでカトラスに集中する。

 ……その顔を見るたびに、胸に去来する感想は酷く萎えたものでしかないのだが。

 

「ままならぬ…………、というかギター置き去りか? 弁償しないといけないか俺……、でも私物にするにはスペース全然ないしなぁ……」

「と、刀太君、もしよかったら僕の部屋も――――」

「何だよ、随分つまらなそうじゃねーか兄さん」

「兄さん?」

「俺にキョーダイはいねーよ『妹チャン』」

「妹……?」

「……や、止めろその変な呼び方、嫌になんか生ぬるい感じがする」

「生ぬるい……」

「そりゃ出会いがしら早々、年下の女子から兄だ何だ言われたら、暫定的な呼び方は妹チャンしかねーだろ。ヨロシクなー」

「年下……………………」

 

 応酬にいちいち相槌を打ってくるちょっと可愛い九郎丸は置いておいて。というか年下というフレーズの何にダメージを受けた九郎丸!? 最近年下で思い返せば忍くらいしか引っ掛かり所ないが一体どうしたお前。

 さておき、いい加減こちらの適当な対応に苛立ったらしく、カトラスはハマノツルギを抜いて、私に向け突き付けた。

 

「――――ッ、ああそうだな、アンタは知らないんだな。だからそうやってヘラヘラやる気のなさそうな顔なんてしてられんだ。アンタの人生っていうのがどれだけの犠牲の上に成り立っているのか、そんなことかけらも考えたこともないだろう」

「情報不足だからな」

「この野郎ォ!」

 

 言いながら斬りかかってくるが、いやしかし、私も死天化壮のフードを下ろしてカトラスの背後に回ったりして、先ほどの意趣返しをする。瞬間的なそれに「もう一本の」ハマノツルギを呼び出したカトラスは、驚いたような顔で私の目を見ていた。

 

「……認めない、なんで俺なんかよりのほほんと二年も暮らしてきたアンタが、俺の背後なんて取れるんだ!」

「…………」

「何か言え!」

 

 こういう戦闘時は無言のまま戦った方がそれっぽい(オサレ)BLEAC○(オサレ)にもそう描かれている。なので口を開かず黒棒をぶつけているのだが、しかしこう何だろう……、○護(チャン一)でも何でもないのだが、刀越しに相手の感情がなんとなく伝わってくるこの感覚は。

 見た目からはそれなりに動揺してるのがわかる。実際内心も動揺しているのだが、しかし同時に何か嫌な狙いがあるのもなんとなくわかる。と、チラリとカトラスの視線が夏凜に振られ――――。おっと、これはまずい。

 

 

 

「――――神聖魔法の『私たち』への面倒さってのはさっきわかったんでね、ほら死にな! 兄さん!」

「――――ッ!」

 

 次の瞬間、まるで瞬間移動させられたかのような形で、夏凜が振り下ろした刀と私の死天化壮が接触し――――――視界が消し飛んだ。

 

 

 

 

 

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