光る風を超えて   作:黒兎可

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リハビリがてら今日も更新です・・・!
毎度ご好評ありがとうございます。コンディションが現在最悪な中、感想など大変はげみになっております・・・!


ST28.空気を読む闇の魔法

ST28. SHADE BLADE

 

 

 

 

 

 

 ――――聞こえるか、相棒。

 

 

 

 目を開けると、どことも知らぬ場所……、いや、知ってるかもしれないが。様々な機械のスクラップが散らかったその場所からは、軌道エレベータの姿が見える。遠い、遠い、いつか忘れ去ってしまった過去にでもあったような光景であり、おそらく私は見覚えがないはずの光景だ。

 

「臨死体験か何かで? それにしては三途の河原とかでもないし……」

『――――こっちだぜ?』

 

 声のする方を振り返る、というよりも見上げる。頭上、スクラップの山の上に、その影はあった。白と黒のローブを身に纏い、表情は快活で笑っているような顔をしているのだけはわかるが……、生憎と私はその実態を捉えることが出来ない。

 

「誰だお前……、誰だお前!?」

「何言ってんだよ『相棒』。俺だ、■■■■■■■だ」

 

 この瞬間に私の直感というより、脳裏によぎった全BLE〇CH(オサレ)が警鐘を鳴らす。馬鹿な、ここは精神世界で頭上のあの少年だか少女だかは私の潜在能力の塊だとでも言うつもりか!? いやあり得ん、あり得ないと今までの私の人生経験から即座に否定する。

 

「いや赤松世界はそんなにご都合主義に出来てねーし。というより斬〇刀ないから。代役黒棒だし。お前ホント誰だよ」

『ツレネーなぁマジで。いや、それがお前なんだろうし、そんなの全然知ってるんだけどよ』

 

 思わずセルフツッコミを入れる私に、頭上の彼ははははと大声で笑った。……なんとなくそれが私の、というより原作主人公らしい声でなんとなく嫌な感覚を覚える。

 

『まぁお前の趣味に合わせてやったってのは全然間違っちゃいねーんだけどな。好きだろ? こういうの』

「好きだけどここまでモロパクリされるのはちょっとなぁ……」

『何だ? ワガママな相棒だなぁ』

「というか相棒枠は黒棒もいるし、九郎丸が一応原作から地続きで相棒だから。そういう意味じゃお前ほんと誰だって話なんだが……」

 

 んなこと言われても困んだけど、と向こうの少年は飛び降り、私と目を合わせるようしゃがみ込む。上体を起こした私と同じ目線にあるその顔は…………嫌でも毎日見ている私の、原作主人公の顔で。しかしその目は、私よりもかなり生気に満ち溢れた――――そう、まさに「原作主人公のような」目をしていた。

 

「本当にお前、誰だ?」

『お前なら推測、つくんじゃね? この顔とか、この態度とか』

「いや、だってお前絶対原作の近衛刀太とか『じゃない』だろ? 見てくれはそれっぽく見えるし、それっぽい振る舞いはしてるけど」

『――――へぇ、根拠は?』

「何度も言うが赤松世界は、そこまでご都合主義じゃないからな」

 

 エンディングについては尺(現実)の都合なのか色々無理やりまとめる傾向がある気がしないでもないが、それでも途中経過に関しては割と容赦ない設定を放り込んできたりすることも多い赤松世界。特にUQホルダーの世界というのは「ネギま!」のイフということを念頭においているので、徹頭徹尾救われない者は救われないように作られている。原作のカトラスなんてその最たるものだし、雪姫だってある意味においては――――。 

 

『何だよ命の恩人に対してその言い草は』

「恩人?」

『おう、そうだぜ相棒! お前の代わりにお前の中で「火星の白」と「金星の黒」を上手いこと分離してるのって俺の仕業なんだぜ?』

「いや本格的にお前は〇月(名前以外は嘘ついてなかったオッサン)かよ。名前すら名乗らないし、それ以外も嘘まみれな気もするが」

『酷ぇ相棒だなマジで……。いやこうなっちまったのも「俺のせい」でもあるんだろうけど。でも一応、名乗りはしたんだぜ? 聞こえないのはお前の側の都合だろ』

「じゃあせめて呼び名を寄越せ。話はそれからだ」

 

 マジで態度でけーなとか笑う目の前の相手だが、どうにも私は彼に対して警戒が抜けない。まるで何か、一番大事な前提条件から騙されているような、騙られているような、そんな感覚を覚えてしまうのだ。

 膝をついて、少年は言う。

 

『…………、星月(せいげつ)、とかでどうだ? それっぽいだろう』

「何? 月〇(オサレ)で隕石でも降らす? 恐竜でも滅亡させるか」

『それだと劇場版の手〇ゾーンっぽいな。なんでそんなポンポンマニアックなの出すんだよ……。こっちに生まれ直してから二年経ってるだろ?』

「さぁ。思いつくものは仕方ないというか…………というか、何でこんな、精神世界的なサムシングに私は落ちて来てるんだ? いや、そもそもここが本当に精神世界なのかも怪しいと思ってるが」

『マジで疑り深いなお前……。いつもみたいにテンション上げとけよ、黒棒手に入れた時なんてそりゃーもう普段以上にガバ生産しまくるくらい小学生メンタルになってたじゃねーか』

「それはそれ、これはこれ」

『そんなんだからガバ大量生産すんじゃね?』

「知るかっ! って、あー、で結局何で?」

 

 私の言葉に、星月を名乗った彼は指を空に向ける。

 

『だってお前、死にかけてるし』

 

 そこに映るのは…………、夏凜の神聖魔法によって、外装ごと蒸発しかかっている私の姿だった。いやエグい!? 体内から電子レンジされるようなものだと噂には聞いていたが、テレビ放送とかモザイク不可避だろこの有様!? あーあーカトラスですら「ちょっと私、聞いてないんだけど……」って感じで動揺しちゃってるし、夏凜なんかめっちゃ泣いてるし。

 

「死にかけて体を守るっていうなら、ここに居るべきはむしろ〇月(虚であり刀である双子の兄ちゃん)っぽい感じだろ。そんな全力でYH〇H(1000年前の知らないオッサン)ムーブされてもなぁ」

『ホントに我儘だなお前!? そんなにストレスたまってるか』

「溜まってる」

『即答したぞこの男!?』

 

 ストレスは溜まる、そもそももっと痛くない人生を送りたいというのが一番大きなストレスだし、最近は主に夏凜がだが性的に攻めて来るので色々と限界なのだ。この状況で下手に暴走して手を出してしまったら後が怖いし、だからといって夏凜以外なら誰でも良いかといっても全く事情は違うし…………。というか忍とかも可愛いくて癒されるが、もうちょっと大きくなってからじゃないとそういう対象ではないし。

 

『九郎丸は良いのかよ』

「本人が迷ってるうちに迫るのも変だし、大体アイツ、俺の事好きか?」

『オイオイ…………、あれだけ好意寄せられてるのに、その切り捨て方は酷くね?』

 

「愛とか恋とかそういうのって、義務感でやるものじゃないだろ」

 

 ロマンチストだねぇ、と肩をすくめる星月だが。だってそうだろう、織〇(井上ちゃん)〇護(チャン一)にあれだけロマンチックな恋を貫き通してゴールインまでして第一子を儲けてるのだ。BLEAC〇(オサレ)を原点としている今の私だって、それに準じたって別に何も間違ってないだろうし、そっちの方が尊いと思うのだ。偏にその距離感というのは、無理に相手を追い立てず、自然体のまま。しかし内に秘める想いだけは強くという、魂の在り方(オサレ)を体現してると思ってる。

 

「九郎丸は明らかに私を殺したことが切っ掛けだし、雪姫は母親だし」

『そうなると消去法で夏凜ちゃんが射程に入ってるって扱いなのか…………。あー、そういうとこにもガバがあるわけだ。知りたいことは曖昧過ぎてわからねぇやつ』

「ガバとは何だガバとは。オサレと言えオサレと」

『つまりOSR(ガバ)だな』

 

 なんて悪魔合体をしやがるこの謎の少年!?

 

『…………まぁいいか。今はどうあがいても信用がないみたいだし、ファーストコンタクトとしちゃこんなものだろう』

「そりゃ信用されるような動きしてないしお前」

 

 そうじゃなくってだなぁ、とため息をつき、立ち上がる星月。すっとこちらに向けた右手には、鈍く青白い光が灯ってる。

 

『これ、なーんだ』

「…………〇牙(始解のアレ)?」

『いや少しそれから離れろって。……今お前の体内を焼いてる神聖魔法だ、神聖魔法』

 

 これをどうにかしてやる、と左手に移し、ぐ、と握る。背後に一瞬、陰陽道とかでおなじみな「太陰太極図」が浮かび、まるでそこに吸い込まれるよう消失した。

 ……太陰道? お前それ「闇の魔法(マギア・エレベア)」正規の使い方じゃねーか!? 正しく攻撃された魔法を内側に掌握して、自らの糧とするそれじゃねえか! 原作刀太が今後使えるようになることを踏まえると、コイツまさか本当に私の潜在能力が具現化したものだとでも言うつもりか……!!?

 

『おーおー、良いリアクション、サンキューな。で、コイツもまーたお前の趣味に合わせてやるから。使い方は戻ったらなんとなく「判る」ようにしておくから。とりあえずこれはあいさつ代わりってことで』

「はい? って、お、おわあああああ!」

『ははは! 絶叫ったー余裕じゃねぇか。その調子であの妹チャンに、一発かましてきな!』

 

 そう言って「じゃあなー」と適当に手を振る星月に「見上げられながら」、私の意識は急速で浮上していった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「――――ハッ!?」

 

 あの聖職者っぽい学生服の女の一撃を受けて一瞬体内から焼け落ちた兄サンは、でも重力剣を左手に持ち替えて私の斬りかかる剣を払った。

 

 煙を上げながらフードの下はとんでもないことになっているだろうに、徐々に、徐々に回復して声を出す。あの女は兄サンを抱きしめ「大丈夫ですか? 大丈夫ですか?」とか心底心配そうに声をかけてて……、忌々しい、気に入らない。

 

 瓦礫屋の目から撃たれたレーザービームがそんな女の身体を焼き、服がボロボロになった。表情は痛みに歪んでいるが、全くもって体に傷はない……、コイツも兄サンと一緒で、不死身連中の一人か。背中には天使の羽根みたいなやつと「XIII」の入れ墨。

 

 忌々しい……、嗚呼、忌々しい!

 

「神鳴流・雷鳴剣!――――」

 

 そんなイライラしてる私に斬りかかってくる女も気に入らない。兄サンに散々媚びた顔してたあの女もまた、兄サンの全く痛みのないだろう人生を彩る花のようなものだ。いら立ちが募り、ハマノツルギで斬り払う。

 雷が消えたのに驚いたソイツ目掛けて、召喚した槍を投擲し心臓を一突き。

 

「く……、夏凜先輩!」

「九郎丸、無理はいけません!」

 

 おいおい、どいつもこいつも不死身のバケモノぞろいじゃねーか。内心辟易してると再生が終わったのか、兄サンが女を引きはがして……、へぇ、照れてやがる。そっか、兄サンあーゆーのが好みか。今後どうしてくれようか。

 

「どうしました刀太?」

「いや、ちょっと直視できないッスから……。恰好気を遣って……」

「優先順位を考えなさい!」

「って言ったってさぁ……、ヘイヘイ……」

 

 はは、怒られてら。ザマーミロ。

 そんな私の思いを察してか、まるでテストの低い点が見つかった子供みたいな顔をこっちに向ける兄サン……、やめろ、わたしまでその適当であいまいで温かで今にも崩れ去りそうな時空に引き込もうとすんじゃねぇ。

 そしてそんな顔のまま、兄サンは女に言う。

 

「…………あっち、俺に任せてもらって良いッスかね。そっちのサイボーグは純粋に物理系なんで、九郎丸と二人がかりでお願いします」

「純粋に物理系……、なら貴方はどうするのです?」

「どーもなんかアイツの刀って『表出する』魔法は無効化してくるけど、黒棒みたいなタイプは無効化できないみたいなんで。まぁ色々試してみますよ。

 お前もそれで良いよな、妹チャン!」

 

 ……その、まるで本当に自分の妹でも見てるような、変ななれ合いの目を止めろ!

 

「私の名は、カトラスだ!」

 

 言いながら斬りかかろうとすると、兄サンは私のローブの首根っこを掴んで一気に場所を変えた。……さっきもそうだ、なんでこの平和ボケまっしぐらみたいなこの男が、あれだけの修羅場をくぐってきた私に対してこんな適当な風に後ろをとれる。

 それとも今まで、この男も地獄をくぐってきたとでも言うのか?

 

 認められない、認めてたまるものか……!

 

 後ろに向けて振りかぶったハマノツルギを、兄サンはまるで何も違和感がないように黒い剣で受けて――――。

 

「――――血風創天」

 

 そんなことをつぶやいた瞬間、受け止めた箇所から巨大な剣の軌跡みたいなのが撃たれた――――馬鹿な、なんだこれ!? 猛烈な鉄臭さに一瞬思考が止まるが、ハマノツルギで無効化すると表面に赤黒い色が残る。

 

 これは…………、血?

 

「あー、そっか。ウォーターカッターみたいな原理で風魔法を撃ってるみたいな感じだから、無効化されると血だけ残るわけだ」

「……い、いくら吸血鬼属性だからって、何でそんな、頭おかしいものを武器にしようとか考えてんだアンタ!? 狂ってるのか!!!?」

「いや、だってそれっぽい(オサレ)だろ」

 

 自らの不死性がそれに寄ってるからとは言え、まさか本当に自分の血を武器に使う阿呆がいてたまるものか!? お前頭の中ぶっ壊れてるんじゃねえか! それとも平和ボケした結果がこれなのか? 平和ボケしたから血を見るのに忌避感がないのか? 私だってこんなに血を流したら……、背筋が震える。押し込めていた殺す恐怖と殺される恐怖が、逆転したような錯覚を覚える。

 コイツ絶対頭おかしい……!

 

 ちょっと恐怖感を抱いてしまったが、頭を左右に振って兄サンの腕を斬ろうとし……、いや硬い! 何だこのコートみたいなの、移動速度上げてるし強度すごいし。そして少しハマノツルギで解けた感じを見るに、やっぱりこれも血じゃねーか!?

 

「おーおー、なんで泣いてるんだ? お前、えーっと……、カトラス?」

「う、うる、しゃい、この狂人! あほんだら!」

「ひでぶっ」

 

 思わず蹴り上げた足が兄サンの頬にヒットして、ぎりぎり私は距離を取ることに成功した。

 空間に対して「時の回廊(ホーラリア・ポルティクス)」を展開し、空中の座標に自分の位置を固定する。対する兄サンは、まるで当然のように浮いていた。

 …………両足の下に血で足場を形成して。

 

 ひえっ。

 

「…………あー、何か俺、お前そんな怖がらせるようなことしたっけ? ちょっとお兄さんとお話しないか? 今後の参考にするから」

「気持ち悪いこと言ってるんじゃねー! アンタは、アンタなんか、アンタなんか……!」

 

 槍を召喚して、感情の乱れのまま大量に投擲するも。兄さんは左手をポケットに突っ込んで、右手の剣先でまるで円でも描くように、高速に動かして全て叩き落した。

 血を身に纏うとか発想が頭おかしいというか、人間のそれじゃ絶対ない……! 絶対ないけど、あの速度は絶対その頭おかしい方法で作られてるものだってわかって、私は顔から血の気が引いた。

 

「じゃ、今度はこっちから行くぜ、妹チャン。……えーっと、確か」

 

 言いながら兄サンは、右手の剣を上に構える。と、その刀の鍔の部分に卍型の……たぶんまた血が出て来て、鈍く回転し、どんどん速度が上がるにつれて、刀の部分が白く輝きだす。あれは……? 神聖魔法……?

 あれじゃまるで――――。

 

 

 

「――――血風(けっぷう)(せい)(てん)!」

「まるでネギ(ヽヽ)()の――――」

 

 振り下ろされたそれは間違いなく「神聖魔法」を帯びた、さっきの血の斬撃で。

 私は無理に防御して―――同時に意識が消し飛んだ。

 

 

 

 

 

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