光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評ありがとうございます!
ちょっとカトラス系でアイデア?振ってきた関係で調整入りました・・・


ST32.名が体を表す

ST32.The Name Represents The Body

 

 

 

 

『いいか? 男も女も関係ない、まずは勇気! 勇気があれば大体は何でもできる! 勇気をもって踏み込むことが大事なんだ! 男女の問題もな!』

 

 そんなことを灰斗に言われて蹴り飛ばされた覚えがあるが、その結果例の内面世界もどきに叩き落とされているのだから一切合切笑えない物が有った。あの程度で死にはしないだろうし外見上も胴体が消し飛んだりした感覚はなかったのだが、しかし意識自体は確実に刈り取られたことに違いはないらしかった。

 倒れる私を見下ろす影。白と黒のローブ姿は、やはりと言うべきか星月(せいげつ)を名乗った彼なのだろう。

 

『おーい、生きてるかー?』

「死んでたら色々と問題があるから、まぁ大丈夫じゃないだろうか? 一応、外見相応に手は抜いてくれてる気配はあるし」

『ならジョージョーだな、ジョージョー。正体バレてぶっ殺されないだけまだマシって奴だ』

 

 差し伸べる彼の手を払い、自ら立ち上がる。……しかし見れば見るほど妙な空間だ。散らばっているスクラップ群は何かしら家電とかだろうつるっとした造形をしているのだが、それが一体どんなものなのか一切判別がつかない。このあたり、私の中にある「スクラップ置き場」というイメージだけを無理に抽出しているようないびつさがあって、何故だか妙にげんなりとする。

 

『で、どうよ修行は。順調か?』

「わからぬ」

『いや、わからぬてさぁ』

「実際問題わからぬものはわからない。大体においてだ、私はロクに『気』というものが使えている気がしない」

『まあ魔力とかほどわかりやすくエネルギー化してるモンじゃないからなぁ』

 

 苦笑いする星月だが、実際たまったものではない。いかにガバがなくなるからとはいえ、灰斗の教え方でうまくいきそうなのは瞬動術のみ。他に関しては原作九郎丸からしてレベルを上げて物理で殴る要領(語弊)を用いて鍛えさせていた「気」であり、それは灰斗においても変わらない。むしろ血装術なしで彼相手に殴り合いをさせられているため、その戦力低下はだいぶ酷いものになっていた。

 

「正直逃げ出したい」

『おー、おー、酷ぇ顔しちまってまぁ……。夏凜ちゃんのおっぱいにでもパフって抱きしめてもらえばいいんじゃね? 少しは包容力につつまれてストレス解消になるだろ』

「うん」

『うんとか言ったぞコイツ!? どんだけストレス溜まってるんだよ! というか普段気にしまくってるガバじゃねーかそれ!』

 

 正直、いっぱいいっぱいである。というより原作主人公がいかにめげない精神性をしていたかを思い知らされていた。こういうのはのど元過ぎればというのもあるかもしれないが、私に限って言えば毎度毎度精神的にも死ぬ思いである。

 もういい加減色々と限界で、いっそ夏凜に全部委ねてしまうのが一番楽かな? と思い始めている自分がいた。大河内さんとはまた全然違う気質ではあるが、そう悪いようにはしないでくれるのではないだろうかという期待がほんのわずかに出て来て……。

 

『落ち着けー! そっちは沼だぞ! 全員ドロドロの復帰不能なやつ!?』

「うん」

『うん、じゃねーんだよ! オイ相棒、持て余してるならもうちょっと待て、な? アレだろ、キリヱ出てからなら多少は欲出しても大丈夫だから、な?』

「持て余してる以上に、癒しが欲しい」

『重症だな…………。アレか、どういう方向で能力を創るというか調整するというか、どうしたら良いかって新しく見当がつかないのが悪いわけか。俺に対しての警戒も完全に消し飛んじまってるし……(()がどうこう出来る話でもないし……)』

 

 スクラップ山に寄りかかって悟りの境地に至りかけている私に、星月は冷汗を垂らしながらぶつぶつと何かを検討している。彼の言っている「どういう方向」にしたら良いか、という点は中々的を射ていて、実際それがないからストレスが溜まっていく一方というのは事実だ。なにせかつての修行ですら、天鎖○月(オサレ)があるさ月牙天○(オサレ)ある、の精神で乗り切っていたところがある。血装術での再現という形は予想の中では悪い方だったが、九郎丸の傷のお陰で実運用上問題がないフェーズに来たと思っていたのだ。

 それが早々に「死に易いからダメ」というこの扱いである。お手上げであるし、どうしようもないという意味では限界値そのものだった。

 

「ままならぬ」

『そりゃこっちの台詞なんだが…………。あー、じゃあアレだ。BLEAC○(オサレ)原作で、相棒が使えそうな奴をピックアップでもするか?』

「ピックアップしたところで、一番痛くないのが死天化壮(デスクラッド)と血風の運用なのだから限界があるだろう」

『だから次点を探すって話じゃねーか、やっぱワガママだなぁお前……。夏凜ちゃんにどうこう言えないくらい面倒くさいぞ』

「うん」

『重症じゃねーか……』

 

 仕方ねーなと言いながらも、星月は○LEACH(オサレ原液)らしきコミックスのようなものを取り出しながらパラパラとめくり(何処から出した私に読ませろ)、いくつか案を提示していく。提示した案は地面に足で書いていくのだが、いやしかし妙に早い早い。

 

・遠近両用な刀の形をした弓術剣術入り交じり主人公○護(チャン一)スタイル ←今コレ

・左右の腕で攻撃と防御とを分離して意志を通すチ○ド(初代OPでも最初に消えてる)スタイル

・力自体を完全に体外に分離して攻防応用する織○(ピーチ姫)スタイル

・完全に遠距離特化として力を放出して使う雨○(許されざる)スタイル

 

『バリエーションでいったらこんな所か? 何だ、意外と揃ってるじゃねーか』

「揃ってると言われてもな…………。何で主人公のパーティ系なのだ?」

『そりゃ俺側の実装難易度だよ。で、俺のオススメはチャ○スタイルかな? って思うんだけど』

「○ャドには悪いが縁起が悪いんだよなぁ……。すぐ負けそうというか、この世界だと死にそうだし。というかそんなに実装簡単なら、妹チャンにしてやれって話だし」

『妹チャンって言うと、あー、カトラスか。とは言ってもなぁ、あっちって相棒ほど「扉」の強度が強くねぇんだよな。そもそも万能「鍵」がないとどうしようもねーし』

「……万能、鍵?」

 

 あっヤベ……、とか言う原作主人公らしき姿をした星月。明らかにごまかす様に笑いだしているが、それってちょっと待て。お前それ、この世界で鍵で万能ってお前……、いわゆる「ネギま!」終盤のチートアイテム筆頭こと「造物主の掟(コード・オブ・ライフメイカー)」とかいう奴なのではないか? 大概の不可能を可能にしかねない作劇崩壊必須の劇物、現在そのグランドマスターキーは火星においてある人物が安定/封印のために使用しているがさておき。

 原作でも雪姫自身の精神やら肉体やらの封印にそれっぽいものを使っていたようないなかったような気がしないでもなかったが(うろ覚え)、ちょっと待て、それが金星の黒と火星の白を使いこなすのに必要だと……? カトラスたち兄妹たちのデータ必要ないじゃねーか!? それ以前にそれが私の中にあるだと? どの種類だ、どの鍵だお前、ちょっと待てそんな話原作であったかお前!?

 

「…………というか、本当にお前、私の潜在能力的なサムシングなんだよな」

『あ、当たり前じゃねーか。そう怖ぇ顔すんなって……(やはり()模倣(ロール)では限界があるか)』

 

 何かボソボソと言っていた気もしたが、現状これ以上の情報引き出しは厳しそうだと判断できる。ため息をついて追及をやめると、あからさまにホッとした顔の星月。お前、せめて○月(1000年前の知らない過保護なオッサン)的な振る舞いをするならもっと謎めかし方上手にしておけ。風情ある振る舞い(オサレ)初心者か? まぁ初心者なのだろうが。

 しかし全くもってそれは想定外すぎた。……ひょっとするとこの自動回天とかもそのせいで発生していたりするのか? だとすると黒棒の言っていた違和感みたいなものにも色々と符合するのだが。つまりは私の意を汲んで「それっぽい」能力の実装に貢献しているということか。実際細部の調整はこの正体不明の星月がしてるにしてもだ。

 しかし私の内に元々それがあるとなると、ひょっとしなくても原作主人公にも……、いや考えすぎか? そもそも私が入ってる時点で世界線が違うから、多少の変化はあると見るべきか。流石に私のガバではないとは思いたいのだが、そこのところどうでしょうかね師匠? とはいえ意識的に使えてるわけではないので、そうそう簡単な代物ではないのだろうが……。

 

「そうなると今後は…………、アスタリスクの意匠もどこかに取り入れる必要があるのだろうか」

『いやまず最初に検討するのがそれって何なんだヨ!』

 

 星月のツッコミに真顔で「いやこれ重要」と答える。○LEACH(オサレ)原作においてアスタリスクとはアニメ第一期OPを示すだけの単語ではなく、それこそ「神」というか「全能」を示す意匠に等しい、はずだ。神の領域を侵す織○(井上ちゃん)盾○六花(オサレ)は元になったヘアピンの意匠自体がアスタリスク。死神(オサレ)○却師(オサレ)(オサレ)ときて完○術(オサレ)に目覚めた○護(チャン一)月○(オサレ)もどきはアスタリスクの状態こそが最強。Y○VH(知らないのに知ってるオッサン)の意匠も十字よりはアスタリスクを基調としてるし、逆説的に神に届かなかった藍染にはその意匠自体が与えられていない。全体としてアスタリスクという意匠に対する取り扱いの重さが伺える。

 それに倣えば、すなわち潜在的に何でもできる(かもしれない)私においてもそれを取り入れるのは吝かではない……が、いやこれ自分で考えて取り入れると、それはそれでダサい(低オサレ)か? ままならぬ、どうするべきか……。

 

『いやまぁ、何でも出来るって言えば何でも出来るだろうけど、相棒別に世界支えられる程何でも出来る訳じゃねーし、やめとけば?』

「……それもそうか、実際何度も死んでるのだから。しかし、多少は元気が出たとはいえ話は振り出しに戻ったのだが…………」

『いっそ、血装術はそのまま使ってしまえば良いんじゃね?』

「外に出したら死ぬから止めろと現在言われているのだが」

『だから、出さなきゃいいんじゃない?』

 

 星月のその一言に、私の脳内のBLEAC○(オサレアーカイブ)が走り閃く。つまり…………。

 

「…………血装(ブルート)?」

『音はともかく字は一緒なんだよなぁ……』

 

 苦笑いする星月に、しかし私は天啓を得た思いだった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 格闘家を名乗る灰斗さんの指導は、僕なんかよりはるかに的確だと思った。

 実際、気の運用については僕のようにどっちつかずなことをしていないせいか、その造詣は深い。見せてもらった瞬動一つとっても、明らかに僕よりも踏み込みが深くそして鮮やかで、なにより敏捷だった。

 例えると、僕で1秒につき一回程度の踏み込みなのに対し、実演した彼の踏み込みは1秒につき十回は優に超えていた。

 

「す、すごいです……! どうしてそんなに早いんですか!?」

「九郎丸も結構テンション上がってるなー。いや実際スゲーんだけど」

「ハッハッハ! 褒めろ褒めろ子供たち! 褒めれば褒めただけ俺は喜ぶ。調子に乗ってもっとすごくなる!」

 

 びゅんびゅんと目で追うのがやっとの反復横跳びをする彼に驚く僕だったけど、気の基礎訓練に関しての話はものすごく手堅かった。両腕を組んで刀太君を見た彼は、「恐怖心だなぁ」とため息をつく。

 

「坊主はアレだな。傷つくこと、痛いことに恐怖心が強いな? それも多分、並々尋常じゃないくらい。いまいち一歩の踏み込みが足りねぇ」

「へ?」

「いや、フツーはそうじゃないっスかね。痛いのは嫌でしょう」

「ただ単に生きてるんならそれで良いんだろうが、それじゃいけねぇ。いけねぇんだよ。そんな修行してる最中じゃ、絶対に必要なものが出て来る。何かわかるか?」

 

 疑問を返す僕らに、彼は真顔で、一切恥ずかしがらずに言った。

 

「――――勇気、だ」

 

「「勇気……」」

  

「いいか? 男も女も関係なく、まずは勇気! 勇気があれば大体は何でもできる! 勇気をもって踏み込むことが大事なんだ! 男女の問題もな!」

 

 という訳でレクチャー飽きたからスパーリング行くぞ! と立たされた刀太君。僕は手を出すなと言われたので、いつかの甚兵衛さんの時のように見稽古みたいな状態だった。

 

「殺しはしねーけど、結構本気で行くからな? お前の筋肉の付き方とか身のこなしなら、ギリギリを見極める一歩が打てれば絶対に対応できる。勇気があれば、お前さんは今の何十倍も強くなれるってことだ」

「そんな精神論ばっか言われましても……」

「精神論だけじゃねぇ。どんなに鍛えて強くなったとしても、最後の最後はやっぱり前進する強い意志が必要ってことだ。よくヒーローだって言うだろ? 『わずかな勇気が本当の魔法』だって」

「…………それ、誰の言葉ッスか」

「知らねっ! ただ俺が昔、直に聞いた言葉の中じゃあ一番上等なモンだと思うがねぇ。ヒーローっていうのは逃げちゃいけねーらしいからな!」

 

 ホラ行くぞ! と。そこからの動きは熾烈極まりなかった。デスクラッドを展開しない刀太君は、重力剣をそう重くはせず、いつかのように左手を腰に入れて右手の動きだけで灰斗さんの拳や蹴りを受けようとしている。でも、やっぱり所々追い付いていない……、というより「引け腰」なせいで、丁度受けられるタイミングを逃して無駄にダメージが溜まっているように見えた。

 

「手加減してる訳じゃねーだろうけど、なんか思ったように体が動いていない感じだな坊主!」

「確かに手はあるんスけどね! でも体に無茶がデカいみたいな理由で使うんじゃないって制限されてるもので!」

「ホウ、そりゃ言ってくれたのは良い女じゃねーか! 大事にしなァ!」

「三人いるんですけど!」

「スケコマシじゃねーか!? オラ女の敵!」

「いや、そもそもそういうんじゃ――――ひでぶっ」

 

 蹴り飛ばされた刀太君は、そのまま気絶したのか白目をむいて動かなくなった――――ってやりすぎですよ!? 思わず叫んで駆け寄った僕に、灰斗さんは「やっぱ良い女じゃねえか、これが三人か……」とちょっと複雑そうな顔をしていたけど。女じゃないと彼に言い張るよりも、刀太君の方が気がかりだった。瞳孔は開きっぱなしで、呼吸は安定してるけど足がけいれんしてる。これは……、ま、まずいのでは?

 でも不死者の再生力のせいか、抱き起こしてしばらくするとけいれんは収まったし、瞬きをして僕の顔を見た。

 

「…………近くね?」

「へ? あ、いや、そ、そうかも! うん、ごめんね!」

 

 間近にある刀太君の顔を思わず凝視してしまい、身体全体が熱くなった。……こうしてみると、不思議と刀太君が僕を見る視線は「仕方ねーなー」みたいな、なんとなくこちらを受け入れてくれるようなものだった。その深さというか、安心感というか、そんな雰囲気に思わずドキリとして、何故か焦る。……い、いや、だって僕は男だし、刀太君はそう! 友達! 友達なんだから、こんなヘンな汗かいたらおかしいよ僕……!

 と、刀太君は僕の頭をぽんぽん撫でて立ち上がり、灰斗さんにまた向かって行った。灰斗さんは彼の顔を見て、少し楽しそうに笑った。

 

「お? なんか気絶して良い案でも出たか? それとも腹を括ったか」

「……まぁ案というかは出たんで、後は実践で慣れるしかないかなーっていうか。俺、なんとなく目標と言うか完成形のイメージなく延々と作業するのって、どーも嫌みたいで。そのことに気づいた感じっス」

「おー、そうか。まー確かに、どんな技になるとかどんな形になるとかイメージ全然ねーと身が入らないってのはあるよなー」

 

 じゃ、来いよ、と。カンフーみたいなポーズを決めて掌でチョイチョイと招くように、あるいは挑発するようなポーズをとる灰斗さんに。

 刀太君は右手を心臓の傷に当てて「ま、名づけるなら……」とこう続けた。

 

 

 

「――――内血装(ブルート・インテルノ)

 

 

 

 見た目は何か変わった訳ではないけれど。ドクン、という心臓の強い鼓動音を、僕は聞いた気がした。

 

 

 

 

 

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