光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評ありがとうございますナ!
明日から深夜更新多くなるかも・・・(リハビリ中)


ST40.魔の天

ST40.DAEMON Beyond DEATH

 

 

 

 

 

 一体どうしたものかというか、どうしたら良いのかという話である。

 

「おい星月、これ絶対お前の仕込みだろこれ、どう責任とってくれるんだ、あ゛?」

『否定はしねーけど、まー暴走してるのは俺の管轄外だし…………』

 

 灰斗との戦闘、死天化壮と内血装を併用したまでは良かった。限界まで「金星の黒」を内部で振り回しても、外部に漏れたそれはすべて死天化壮の方で吸収してくれる。故に以前よりも幾分高速に黒棒を振り回すことが出来た訳だが、それが灰斗の変なスイッチを入れてしまったらしい。何度か小さく血風を放ち牽制した後で、灰斗は愉し気に大笑いしてた。

 

『なんなんだその強さ! マジモンの吸血鬼でもここまで滅茶苦茶な奴はいなかったぜ!

 やっぱ気に入ったわ。兄妹共々、こっちの仲間にならねーか? そしたらいつでも、楽しいケンカできるじゃねーか、なぁ!』

『生憎そんなバトルジャンキーじゃないもので。……逆提案ッスけど、こっちの方の仲間にならないッスか? 正直結構気が合うと思うっスよ、皆』

『そりゃ難しいわな! 俺は俺としても、恩義があってこっちに所属してっからなぁ!

 お前も女三人か四人か囲ってちゃこっち来れねーわな!』

『むしろ囲われてる感じなんスけど……』

『アンだと? …………いや、まぁそれは別にいいか』

 

 残念だ、と言いつつ。灰斗はクラウチングスタートを崩したような構えをとる。

 

『刀太。お前さっき俺の「閃炸断」――――俺流の奥義を普通に受け止めて、威力も地面に流してたな? 正直めっちゃシビれたぜ。

 お前はずるっこきしてるからみたいな感じのこと言ってるが、例えそうしたところで普通は簡単に出来ることじゃあない。何かしら才能はあると思うぜ! だからこそ勿体ない』

『そりゃどーも。…………、閃光炸裂弾?』

『ネーミングとしちゃそんなあたりが元ネタだな! でも何で閃光って付けてるかわかるか? ――――自力で音速を超えると、世界が真っ白になるんだよ。音すら置き去りにする踏み込みって言うのは、そういうモノだ。だから『白邦(はくほう)』。技名じゃなくって、あくまで趣味の名乗りだ』

 

 さて本題だ、と言いながら、次の瞬間目の前に現れた灰斗の左拳を黒棒で受け――――灰斗は勢いのまま空中に浮かんでいたのだが。

 

『お前はまだ世界の広さを知らねぇ』

 

 空中で灰斗は足と手を構え――――いや待てお前、それはまさか。

 

『――――我流・虚空気導「白邦零式(ぜろしき)」閃炸断』

 

 零式(ゼロスタイル)言っちゃったよ!? とツッコミを入れる間もなく、私は胸部に熱と、遅れて痛みを覚えた。

 

 

 

 そして気が付けばいつものスクラップの山と軌道エレベータのごとき何某かのある場所。上空を見上げれば、胸部に開いた風穴から猛烈な速度で血装術と「闇の魔法(マギア・エレベア)」を使用して何かしら変貌している私の姿……。

 しかしそのシルエットが問題だった。これ原作でいう降魔兵装じみたシルエットに見えなくもないが、顔面髑髏っぽいしデザインの質として完全に虚の仮面(オサレ)だろお前! 基本そっちの力というのが原作〇護(チャン一)すら痛みと悲しみに晒されて初めて使用できるようになって、しかも最終的に暴走して全体のバランスが崩れたのか仮面表出すらし辛くなっていったやつ!

 

 痛いのを回避するチャートとして天鎖斬○(オサレ)の超高速戦闘を志向した私としては、まさに対極を行くやつじゃないか!

 その文句を星月にぶつければ、暴走してるのは自分のせいじゃないしなどと供述してくる。……そもそもこのデザインを描いたのは私じゃなくてお前だろと問いただせば、これには良い笑顔で応えてくれた。

 

『いやだって、格好良いじゃん! いいだろ? ホルダー原作とOSRのあいの子みたいで! だからいつ必要になっても良いように色々準備してた俺は全然悪くない! 俺は悪くねぇ! 大体ダメージのキャパが限界越えたから暴走したんであって、相棒は何か逆に対策考えろォ!』

 

 とはいえ虚化(オサレ)登場はすなわち天鎖○月(オサレ)弱体化に繋がる展開なので、私としては喜ぶに喜べないのだが……。堂々と開き直り始めた星月。実際その正体については疑いの目を向けてはいるが、やってくれていることには感謝しかないので私も彼とそろって空、つまり現実世界側を見た。

 

 ちょうど仮面が形成し終わったらしい。感じとしては本当に降魔兵装「魔天大壮」と完全虚化(オサレ第二形態)じみたそれを半々にした姿である。……と思いきや血装備が顔面だけでは飽き足らず、コート側にも干渉し始めている。全体的にちょっとトゲトゲしくなっているのはアレか、完現術(オサレ)習得後のでもちょっと意識しているのだろうか。

 

「おいおい何だそりゃ――――」

「――――シャァアアアッ!

 

 仮面の口が開いて、正気を消し飛ばしながら嗤いつつ、黒棒に血風を纏わせて灰斗の腕を斬り飛ばした。…………うん、コレ、アレだ。尸魂界編(オサレ)終盤のルキア(思春期性癖破壊女)奪還時に兄様(不器用すぎシスコン野郎)と対峙した時とかの暴走っぷりだ。違いは中の人が表出して戦っている訳でもないということか…………。

 

「というよりも、視点がおかしくないだろうか。明らかに横から見てるのだが」

『だってほら、俺たち今カトラスの体内の血を間借りしてるし』

「何でもありか『金星の黒』……」

『意図せずカトラスに○ャドスタイル押し付けちまったのに、それだけお前が焦ってたってことだな。カトラス内部の「相棒の血」がまだ残ってるってことだからこれ』

「…………まあ、否定はしねーけど」

 

 この段階でカトラスが死ぬことによる原作への影響度……、いや既に絆してしまったことに対する影響度すら計り知れないが、それでもまだ死ぬよりはマシだと思っている。だから只それだけだ。たいして兄貴らしいこともしてやれない。実際、精神的には実の兄とは呼べないのだから。

 

『まー相棒がそう思いつめるのは構わねぇけど、な? …………そのうち『気付く』んだろうし』

「? 何の話だ」

『それは、今の俺が言っちゃ意味ねーから』

 

 全身のコートと仮面にうごめく「闇の魔法(マギア・エレベア)」の紋様。……それでいて胸の中央には灰斗が開けた穴が再生せず露骨に残っており、そこを起点に全身レベルで「回天」が発生している。いや本当にこれ、いくら暴走状態だからとはいえ本当に死天化壮(デスクラッド)の上位互換とかマジ止めてくださいよマジで。(動揺)

 全身に回天の影響が及んでいるせいか、黒棒をふる手とは反対の手で「適当に動かしただけで」血風創天が放たれるのも色々と嫌な気分にさせてくれる。

 

『相棒にとっても悪夢じみてるなありゃ……、さしずめ「魔天化壮(デモンクラッド)」ってところか』

「OSR高い名前つけるのやめろっ」

 

 特にクラッドを継承してるあたりOSR高いがそれはともかく。

 再生途中の灰斗の首を持ち上げ、そこに剣先から血風を放とうとする様はまさしく完全虚化(守らなきゃ)虚閃(オサレ)のごとし。もっとも確実に殺しに回られてるそれに、灰斗本人も対応できないわけではない。掴んでいる左手の骨を折り筋肉の締め上げを緩めると、そのまま黒棒を蹴り飛ばして後退した――――。

 その瞬間に動きに「併せて」血風創天を放つのは流石に鬼じみていやしないか私の闘争本能とかそういうサムシング。(震え声)

 

 はぁ? と呆ける暇もなく胸に袈裟斬りのような傷を残し、灰斗は遠くに弾き飛ばされた。刃返しをしているだろうにそれでも表面に傷を残しているのを見ると、一体どれくらい無茶苦茶な威力が出ているのやら…………、ついでに倒壊した家屋やらで私の借金が決定した。

 と、南雲たち外の連中の慌てた声やらが聞こえてくる。

 

『イカン! アレは特に術者の負の感情を吸って強大になると聞く。今潰さなければ―――――』

 

「ままならぬ…………」

『まぁ相棒ストレス結構多いし、なんなら未だに増産中だからなぁ…………』

 

『今いったところで止められねーだろ、誰も。…………兄サンですらあんなになるのかよ、これ』

 

 カトラスも諦めムードである。私のサポートが抜けたせいもあってか、既にカトラス自身も「シファー・ライト」を維持できるだけの金星の黒を捻出できずにいるらしい。とはいえ以前よりは「繋がり方」が真っ当になっているので、ここから先は妹チャン次第…………って、ちょっと待て? これはこれで私だけじゃなくカトラスもフェイト(クレイジーサイコホモキュート)に狙われる流れとかなのでは……? 否、カトラスには鍵がないし、そこまで思いつめなくても大丈夫だろうか。ま、まあ何だかんだチャ○(プロボクサー)だって死なないで生きているし、ここはOSRの神にでも祈っておこう。(嘆願)

 

 だが、だがしかし。南雲を止めながらも夏凜だけは皆と違って声に余裕があった。

 

『…………ここがあの子にとっての分水嶺となるでしょう。力に呑まれて狂気に落ちるか、それともそこから帰ってこれるか。

 いざという時は、私が禁じ手を使ってでも止めます。だから手出しさせません』

『何を悠長なことを――――わからないのか! あれがどれほど危険なものか! 私たちや貴様程度では済まない、物事には程度というものがあるのだ! だからこそバケモノと人間は相反しながらも共存の道がある。それが、あの醜い力は何だ!』

 

『酷ぇな人が夜なべして作ってるデザインを…………』

「というより、禁じ手?」

 

 夏凜の禁じ手など、それこそよりイスカリオテのユダらしき何かにちなんだ技でもあるのだろうか。意外と聖書からの引用にちなんだ魔法らしきものが彼女のレパートリーには多いようだし、そういう技もあって不思議ではないのだが。それをわざわざ禁じ手と言うからには、よっぽどのよっぽどなのだろう。

 

『いざという時は我々が責任もって軟禁してお世話します』

『しれっと何言ってるんだこの女、やっぱやべぇ…………』

 

「嗚呼……」

『またカトラスがドン引きしてる…………』

 

 同情する私たちはともかく、しかし流石にそろそろ拙いのではないだろうか。灰斗の再生力が負けている訳ではないだろうが、それでもだいぶ消耗している。少なからず全身に傷痕がいくつか残り、さらに言うと私の血が傷の再生を阻害しているようにも見える……? 単純に異物が残っているという以上に、何かもっと別な属性が血風にあったりするのか?

 

『じゃ、そろそろ戻るか相棒』

「戻るってどうやってさ」

『そりゃもちろん、ここの血ごとだな。…………、じゃ、「負けるなよ」?』

「…………オイマテ、それお前どういう意味なの――――」

 

 どういう意味なのだと問いただすよりも先に、私の意識は「殺さなければならない」という衝動の中心に鎮座していた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「刀太――――!」

 

 ユウキカリンの呼び声に反応してか、兄サンは重力剣を振り下ろすのを制止した。

 そのまま顔面に刀の柄を叩きつけ、悪魔みたいな仮面を割る…………、割った後に反対側の手で仮面を剥がそうとしているけど、いやちょっと無理あるだろそれ。仮面の隙間からも「金星の黒」が漏れ出てるし、全身のそれだってぐちゃぐちゃに歪んでもっと変貌しちまいそうだ。

 

「何をやっているのだ、アレは……」

「…………あんま応援はしねーけど、頑張れ、お兄ちゃん(ヽヽヽヽヽ)

 

 思わず口をついて出た言葉には、きっと同情がある。あのまま暴走して狼男をぶっ殺してたら、きっとそのままユウキカリンとかトキサカクローマルとかに監禁でもされて、その、えっちだったり生きるのが大変な感じの生活を強制されるんだろう。兄サンは嫌いだけど、だからってそんな目に遭えとは思わないので、私は苦笑いを浮かべていた。

 

 正直、兄サンが死んでくれるのならせいせいするんだけど。

 それと同時に、なんかもやっとするヘンな感覚があるのを、私は否定できなかった。

 

 ユウキカリンに背負われながら、私たちはそっちに向かう。その途中、ついに兄サンは仮面を剥がしきった。後全身に散っていた血装とかが、ぐるぐる渦巻いて兄サンの胸元に収まる。…………傷痕は目立たなくなったけど、やっぱりどうしてか刀傷みたいな何かはちょっと残ってた。

 

「ぜい、はぁ、はぁ、…………、もう二度とこんなことやらんぞ、何が悲しくてこんな目に遭わなければならぬのだ、大体私は…………って? あー、夏凜ちゃんさんとカトラスか」

 

 膝をついて肩で息をする兄サンに「ちゃんさんは止めなさい」となんかすごい良い感じに微笑むユウキカリン。……なんだこの、妙な笑顔の距離感。こう、なんかむっとする。

 私を下ろすと、兄サンを当然のような顔して膝枕したユウキカリン。兄サンも兄サンで照れる余裕もないのか、ぜいぜいと荒い呼吸をしていた。

 

「…………おう、坊主。どうして()らなかった?」

「はぁ……、はぁ……、いや、どうしてって、はぁ、言われても、はぁ…………」

「そこの、なんか偉く美人でスタイルとか正直めっちゃタイプなお姉ちゃんの声で我に返った訳でもねーだろ? よければお付き合いしてください」

「性癖バラすの止めろ」

「お断りします」

 

 回答速度も何か息ぴったりすぎて、いやホントこれやべぇんじゃねーのか? ……いやまあ、妹って言ったって結構血が離れてる感じの私が、どうこう言う話じゃねーんだろうけどさ。

 

「アレは、俺じゃねーからさ。だから俺は、アンタを殺したくないんだよ。

 言ったろ? 灰斗の兄ちゃんもホルダーに来ないかってさ、さっき」

「本気か? こんなクズで人殺すことにしか能がないようなのを」

 

 

 

「戦いってのは、二つあるらしい。命を守るための戦いと、誇りを守るための戦い。

 だから、さっきアンタを殺さなかったのは俺の戦いだよ。だって――――アンタ本当はさ、自分くらい強い奴と何度も戦い合ったりして、仲良くなるの好きだろ? 中々それくらいの殺し合いしてくれる奴もいないから、こんなことやってんだろうけど。

 そんな相手殺すってのは、俺の流儀に反する」

 

 

 

 兄サンのその言葉に、狼男は「けっ」と言いながら顔を逸らした。……気のせいじゃなければ照れてるようにも見える。そのまま背中を向けてふて寝するみたいな体勢になり。

 

「…………完敗だよ。嗚呼、『気』もスッカラカンだし、戦うような感じじゃなくなっちまったじゃねーか」

「へっ、なら上々じゃねーか。これを機にもっと真っ当な格闘家に宗旨替えしやがれってんだ」

 

 言いながら、二人はそろってお互い変に笑いだし…………、それにユウキカリンが何でかうんうんと謎の頷きをしていた。やっぱなんか怖いっていうか、やべぇ…………。

 

「……吾一人只大地に立つ、しかして世は只一人立つに在らず、かねぇ」

「そういやさっきも言ってたッスね、それ」

「世界の全てを置き去りにして走り去り、それでも最後は世界に返ってくる。自分にそれまで乗っていた力を、正しく世界に返す。…………世界っていうよりは、まあ個人個人以上に全体に当てはまる話だ。俺も受け売りだがな。

 今回は、お前の方がより『それっぽかった』ってだけだ。勘違いすんじゃねーぞ?」

 

「…………まあ、お前が遊びすぎたという説を私は推すがな」

 

 そりゃねーぜ、と快活に笑いながら、ようやく追いついた南雲とか言う老剣士の言葉に狼男は天を仰いだ。

 

 

 

 

 

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