光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ!
ここのところ更新遅れ? は活動報告の通りなのですが、なんとか今日の分は準備できました・・・! 明日は明日の体調次第です汗


ST41.原作の超電磁砲

ST41.Mach Six Origin

 

 

 

 

 

「そろそろ君は逃げた方が良いだろう。君の失踪に関してクライアントが大変興味をもっているらしくてね」

 

 灰斗を担ぎながらそんなことを語る南雲に、カトラスは表情に恐怖を浮かべた。先ほど電話があったと言いながら、しかし原作のように襲ってくることはない。確保を命じられたりしなかったのかと聞けば、給料分の仕事はしたとのことだった。

 

「私としてはこのまま戦っても良いのだが、灰斗がものの見事に敗れ去ったまま強気に出るのも色々と体裁が悪い」

「う゛っ」

「そもそも、途中から目的が足止めになっているのでね。そういう意味では既に大成功と言うことだ」

「足止め? それって一体何なんスか――――」

 

 

 

「――――こういうことだよ」

 

 

 

 涼やかで聞き覚えのある、黒幕でもよくやっていそうな爽やかボイス。思わず声の方を向けば……、灰色のスーツ姿の青年が、さも当たり前のように「空から」舞い降りた。凛々しい顔立ちに、夏凜とは違う冷たい目。羽虫でも見るように酷く興味なさそうな彼が、その視線が私とカトラスに向けられていた。何かしら地属性魔法の使用か効果かは知らないが、廃材やらが彼の足元から退き足の踏み場を作っていた。

 

 いや待てお前。単行本の刊行数的に別に間違ってはいないがいやいくら何でも少しくらい待てお前! もうちょっとしたら正規時系列で出番があるだろうが「フェイト・アーウェルンクス」! 地属性の使者さんよォ! ネギぼーずことネギ=スプリングフィールドの魔法世界以降最大の壁にして最後のライバル! 小太郎君どうなったんだろうとか色々思うところ出てくるのお前さん出ずっぱりだからだぞ今作で! 登場するの少しは加減しろ! 私は痛くない方法での主人公ロールしてるだけであって、原作RTAやりたいわけじゃないんだぞいい加減にしろ!(逆ギレ)

 

 ふう……、文句を言ってもいまいちスッキリしないが、兎にも角にもフェイト登場であるらしい。素性については前作ラスボスの四天王的な立ち位置でありながらネギぼーずに絆された(語弊)結果裏切りの使徒と化した、よくあるアレである(語弊)。もっというとネギぼーずと世界との重要度的比重が明らかに狂っていたりもするので、つまりはCPH(クレイジーサイコホモ)の類である。実態は厳格な育ちの少年が友情を拗らせてるだけなので(語弊)何とも微笑ましいものがあるが、本作における外見は年齢詐称系の魔法効果で大人ネギやら雪姫と遜色ないものである。つまりCPHの誹りは免れない。(悲惨)

 ついでにネタバレしてしまうと、私、というか近衛刀太誕生のきっかけ、カトラスが言うところの製作者そのものでもある。

 

「あ……、ああ……!?」

「久しぶりというべきか? 17号(ヽヽヽ)

 相変わらず『不出来な手足』だ。

 だから君は失敗作なんだよ」

「ッ」

「登場早々、心折りに来るのやめろ」

 

 確かにカトラスの左腕と右足は義手義足だが(本腰入れての戦闘準備でなかったせいか外見的には生身と遜色ない。日常生活用のものか?)、それとて今後の彼女次第なところが大きいだろうに。いやそれはそれで拙いフラグなのだろうが。というより一応は名前ちゃんとしたのも付けてるだろうに、わざわざ番号で呼ぶのに業の深さを感じる……。

 夏凜から身を起こすと、すぐさまカトラスを庇うように前に出るあたり何というか流石だった。一方のフェイトは私を見て一瞬大きく目を見開くと「フンッ」と鼻で笑う。

 

「彼女の右腕の火傷、きっかけは君かな? 近衛刀太君」

「だったら何ッスかね」

「無駄な足掻きをと思ってね。

 何を尽くしたところで、彼女は君の様にはなれないよ。

 それは目の毒、君の立場からそれを見せられるのはとても残酷なことでもあるだろう」

「アンタ、何でそんな何でもかんでも分かったような口ぶりなんだよ」

「わかるよ。彼女も、そして君も。

 ――――僕の元に来るんだ、近衛刀太」

 

 君のことはいろいろと調べた、と。夏凜がカトラスを背負い終わると同時に、私は「死天化壮(デスクラッド)」を発動させた。シンプルに心臓から血を噴き出すだけの形式で。そしてそのまま夏凜の腕をつかみ、一気に後退、からの内血装併用な瞬動――――足裏の血が足場の代わりをしてくれるため、結果的には虚空瞬動じみた動きとなっている。

 流石に対話途中でここまで潔く逃走の選択肢をとるとは思っていなかったのだろう、少し目を見開いてフリーズするフェイトと口があんぐりしている南雲。「逃げた!」「良い判断だ! ハハハハハ!」と灰斗の笑い声が遠のくのを聞きつつ、私は全力でこの場からの逃走を図った。

 

 当たり前である、何故この段階でそんな変な原作ブレイクをしなければいけないのか。

 

 本来ならフェイトの登場はキリヱ編後半の大目玉イベントであり、こんな形で登場を消費するともはや何がなにやらという有様にしかならない。というか夏凜も原作と違い月に送られてないし、キリヱ関係のイベントそのものが激変する可能性すら出てきている。その上カトラスまでこの場にいるのだから、もはや事態はカオスそのものだ。

 無理やりに推測するなら、カトラスがそうとは知らずフェイトに雇われているパワフル・ハンドでアルバイトじみたことをしたのが原因だろうか。フェイトからすれば大事な大事なネギぼーずクローニングの被験体であり実験例でもある。つまりはサンプルの一つであることに違いなく、またラスボスの庇護下に入り失踪していたはずの彼女の捕捉は情報戦の意味でも大きい、かもしれない。だから彼女の動向を監視するのに何かおかしなことがあるわけではなく…………、結果的に私自身への監視にもつながってしまっていたということか。

 

 実際、あの男の登場はピンチ以外の何物でもない。雪姫がネギま! 時代より弱体化していることを踏まえて、現時点における太陽系最強レベルの魔法使い。裏火星の救世主、造物主の使徒としての生物としての完成度/強靭さは健在ときている。現在かなり本気で逃げてはいるが、果たしてどこまで持つかというところだ。

 …………あと気のせいじゃなければ、カトラス泣いていないか? お前、いくら何でも二週間足らずの期間で平和ボケしすぎじゃないだろうか。別に私そんな洗脳じみた能力とか持っていないので、絶対カトラス本人のチョロさの問題だろと思いたい。(???「付ける薬はないかねぇ……」)

 

「刀太、追ってきています」

「そりゃ判ってるっスけどねぇさっきからなんかゴウゴウなってますし後ろ!」

 

 そしてフェイトの方もフェイトの方で本腰である。ちらりと見た感じ私の血蹴板じみた風にコンクリめいた足場を形成して浮遊しているので、おそらくは地属性魔法を使用した飛○脚(オサレ)的サムシングだろう。使えるはずなのに瞬動をしないところを見ると、やはり通常の瞬動では死天化壮プラス瞬動の速度には簡単に追いつけないのだろうか。

 と、嫌な話だがその上で横に並ばれた。……なんかすごい作り物みたいな満面の笑顔を向けて来てる。ファーストコンタクトをやり直すつもりだろうかこの男。ネギぼーずにも絶対馬鹿にされるぞそのガバガバ対人経験。

 

「やれやれ。君とは初対面のはずだが。

 随分と嫌われてしまっているようだね」

「少なくとも人の妹チャンを『ああいう』扱いする時点で好感情は抱かれねーってよ!」

「それは……、嗚呼そうかもしれない。

 ネギ君……、君の祖父やエヴァンジェリン、雪姫にも似たようなことは何度か言われている」

「言われてて治らねーんなら重症じゃねーか!」

「正確には治す気がないだけさ。

 あの二人は甘い所が多すぎる。誰か一人くらいは冷静な判断を下せないとね」

「というか大体、アンタ何でネギ・スプリングフィールドのことを知ってるんだって話なんだよ!」

「そうだね、これは失礼を。

 僕はフェイト・アーウェルンクス。君の祖父や雪姫の古い知り合――「おらっ!」――な、何!?」

「刀太……」「…………流石にえげつなくねーか?」

 

 言ってる最中に血風を投げて空中で距離を取る。笑顔のままながらこちらの動きを予測していたのか軽く往なすが、飛び散った破片(というか血しぶき)が彼の足場に接触すると、その魔術的な構成を「解除し」た。足場を失ったフェイトもこれには驚いた様子でバランスを崩し、しかし大きく距離を離されるよりも前に立ち直ってきた。チートか貴様!? まぁ出自どころか何から何まで見てもチート以外の何物でもないが。

 空中で静止し、相対する私たち。足元、下方では街が延々と燃え、鎮火までにまだまだ時間がかかるだろう。対面のフェイトの表情は本来の冷徹な目を開いた状態で、しかし口元は笑っていた。

 

「そういうやり方は、僕も嫌いじゃない。

 実利を優先する冷静さ、何より躊躇いなく剣を振るう姿勢はむしろ好みだ。

 ネギ君、君の祖父のそれには大きく反するだろうがね」

「とりあえず好感情が一切発生してねーからっスよ。塩対応なのは。大人しく一度帰ってから、UQホルダーにアポとりに来てくれやしませんかねぇ?」

「それは出来ない。

 色々と幸運が重なっているこのチャンスを逃す選択肢はないし、『あちら』はもう彼女の指令で完全に締め出しを喰らっている。拠点壊滅をするのは君の祖父に申し訳が立たないから強行する気もないしね」

 

 そもそもUQホルダーの本拠地は建物から島そのものまでネギぼーずが買い取ったり建築したり色々魔法を仕込んだりしているもの、つまりネギぼーず渾身の傑作なので、そりゃCPH(クレジーサイコホモ)的にはどうこうする気は起きないか。

 でも似てるところもあるのかな? と。さっきの血風に含まれている武装解除効果を褒めて来るフェイト。……いや、そんな普通に素で褒められても困る。大体アンタの評価基準はネギぼーず単体しかないので、そもそも話にならないだろうに。(偏見)

 

「精神も想像以上に安定しているし、当初こちらが想像していた以上に完成度が上がっているね。近衛刀太」

「安定?」

「過去がない。

 本当の親もいない。

 自分自身の正体にすら懸念や疑念を抱いている。

 にもかかわらずそれを『当たり前のこと』としている。

 そして何より、決して何者にもなれない自分自身であったとしてもそれを『受け入れる』素地がある。愛しき友人たちが自分を置いて行っても、いつかどこかでふと再会して話す程度でも良いと受け入れるだけの素地、つまり自分が。

 普遍的と言えば普遍的だけど、君の2年間の境遇から考えてそこまで安定しているのは、少し異常だよ」

「っ!」

 

 夏凜が私に視線を振ってくる……、ひょっとしなくても「素」の私に何かしらメッセージを投げかけたいのかもしれないが、生憎アイコンタクトで人の感情が分かるほど機微には優れていないのだ。鈍感ではないという自負はあるが、だからこそ必要なことは(痛くならない限り)言葉にしている。(???「でも大事なことは言葉にならないもんだって理解してるクチだよこの男」)

 

 まあ心配してくれてるような気はするので、苦笑いで返すが。(???「本当、そういう所だよアンタ」)

 

「…………ま、それだけ雪姫……、『カアちゃん』が愛情もって育ててくれたってことじゃねーかな? アンタだって、そういう当たり前のようなのがどれくらい強いかって言うのは、知ってるクチなんじゃねーの? ネギ・スプリングフィールドと一緒にいたのなら」

「……そう、なのだろうね。

 生憎そういった機微は完ぺきには読めない。

 だからこその失敗もそう少なくはないが…………、それでも僕の元に来るのなら、切れるカードが一つある」

「何だよ」

 

 

 

「――――君の生みの親。遺伝子的に六十パーセント程度は実母と言って差し支えのない『近衛野乃香(このえ ののか)』に会いたくはないかい?」

 

 

 

 思わず黒棒を取り落としそうになってしまった私に、夏凜が心配そうな声を上げる。一方のカトラスも私の反応が意外だったのか、目を真ん丸にしててちょっと可愛い。

 

 近衛、ののか……? それはひょっとすると、アレだろうか。原作において「この世界の」チャチャゼロの手腕により雪姫の記憶から紐解かれた、近衛刀太の出自における代理母。祖母か誰かだろう「ネギま!」でおなじみこのちゃんこと近衛木乃香そっくりな女性だったはずだ。

 その情報を前に、思った以上に私は衝撃を受けたらしい。自分でも意外なほど、呆然としてしまっていた。

 

「今の君と言う存在は、雪姫の手の内で腐らせておくにはあまりに惜しい。

 だが世界を救うために、と言う言葉でも。彼女がいかに卑しくネギ君を犠牲にしたかを説明しても。それらに聞く耳を持つ性格ではないだろう? 君は。

 だが君の情報を集め観察して、はっきり判ったことがある。――ネギ君のように、家族や仲間をひどく大事にするということだ。

 だったらば。既に気づいているだろう? 雪姫から聞いている自分の出自が嘘であることに。そんな『偽物の』母親の愛情すら信じる君の事だ。いまだ顔すら見たこともない、会ったこともない『本当の』母親のことなんて、気になって仕方ないだろう」

 

 コイツ……、本当の狙いが私もしくは私の内の「鍵」であるだろうにも関わらず、的確にこっちの痛い所ついてきやがる……! 強弁的な説得(物理)ではなく、まさかの情に訴える交渉戦だった。たしかに会いたいか会いたくないかで言えば無論あってみたいというか、顔を合わせるのが一つの「礼儀」だと思っているのだが。そういうのはチャートとは別次元の問題として捉えているのだが。

 お前どう考えてもそういった機微を読めないタイプの性格だろうに。そのあたりネギぼーずがラスボスの手に落ちた後、より独善的に、より「製造された際の使命に忠実に」振る舞い出していたのだから、どんどん縁遠くなっていったはずだろうに。どうしてそんな私のウィークポイントめいたところを特定してきやがった。誰だお前のオブザーバー!?

 

 すっと差し伸べる手に、ちらりと私の左横を一瞥するフェイト。

 

「もし何なら、そこの17号――――おっと失礼。『テナ・ヴィタ』を一緒に連れ帰っても良い。無理に後発的に『金星の黒』を発動したせいでかかった身体の負担もこちらで対応するし、なんならもっと最新型の義手義足を提供しよう」

「偉く対応が甘々すぎて逆に不気味すぎるんスけど……」

 

 こういう方が好みだろう? と語るフェイト。と、夏凜がいきなりぎゅっと横から私を抱きしめてきた。カトラスの腕のこととか全然考えていなかったのか「痛ぇ!」と背中からクレームが上がっているが、お構いなしである…………? あれ? 前ならそんな風に抱きしめられたら胸に頭が埋もれていたと思ったのだが、不思議と今回は頭の真横に夏凜の顔がある。

 

「フェイト・アーウェルンクス。『偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)』ネギ=スプリングフィールドの盟友と聞きますが。貴方の目的は一体何? 貴方が傭兵たちのクライアントと言うことは、この街でこれだけのことをしたのは貴方だということ。そんな貴方が刀太を欲する理由など、今の時点ではろくでもない事柄にしか感じられません」

「君の質問など受け付けるつもりはないよ『雪姫の腰巾着』」

「安い挑発です」

「『姉を自称する変質者』」

「貴様ッ!」

「煽り耐性ゼロっすか夏凜ちゃんさん……」

 

 どうどうと落ち着ける私の姿が不憫だったのか、フェイトはため息をついて少しだけ語る。

 

「……世界を救うため、と言っておこう。むろんこんな『無駄な』清掃作業など必要がなくなるような、万民に対する幸福と平和のため」

「その大義のためなら、この街の人々など切って捨てられると?」

「捨て『られる』ではない。捨て『なくてはいけない』んだ。でなければ人類に与えられた猶予は……、『ネギ君が作った』猶予は全て無駄になる」

 

 だから、さぁ、と。手を差し伸べるフェイトのそれに、私は一瞬動けず――――。

 

 

 

 次の瞬間には、私たち四人は「スラムの街中」に座標を『イレカエ』られていた。

 

 

 

 この鮮やかな手際というか唐突感、原作展開から考えても否応なく誰がやったかは察しが付く。かつかつと、流石に杖の取れた足音を鳴らして、こちらに寄ってくる相手は。

 

「おーおー、ウチの新人をヘッドハンティングとか止めてくれねーか? そーゆーのは責任者通してからやるモンだぜ? 特に未成年者相手にゃーな。

 ……サムライ7(雪姫の愚連隊)やってた頃以来じゃねーかフェイト」

「宍戸甚兵衛……」

 

 飄々とした態度の、当然のようにいつものフェイマ(コンビニ店員)の恰好の甚兵衛に、フェイトは眉間にしわを寄せた。

 

 

 

 

 

 

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