本当なら昨日投稿予定だったのです汗
今回も割と独自解釈というか、明言されていない箇所を同一のものと扱ってる場合があるのでご注意です!
ST43.We Slashe The Remnants
つい条件反射でカトラスの目元に残ってる涙をぬぐうと、カトラスは一瞬きょとんとした顔をして、そして段々と顔を真っ赤にした。オイオイ、どこまで平和ボケしてんだお前さん、そんなんでラスボスの元に戻って先兵ちゃんと出来るのか? 出来たお兄ちゃんとしては色々と心配になってくる。(適当)
「は、はァ!? ヘンタイか馬鹿兄貴ッ」
「いやお前、妹自称するならそれくらい別に大したモンでもねーだろ」
「おっ刀太お前、何だ? まーた新しく女引っ掛――――」
「違います、妹だそうです」
食い気味に否定する夏凜はともかく……いや、ともかく出来無ぇな、ままならぬ。
でもなんとなく、本当に「そうする」のが当然という感じがしたので、まだ少し目元の赤いカトラスの頭を軽く撫でてやった。いつかの時と違い、カトラスは拒否はしなかった。ただ目を丸くしてから、照れたような顔色で視線を逸らした。
「な、なんだよ……、って、それより街の方どうなってんだ? さっき花火みたいなの上がったのは見たけど」
「おー、妹チャンだったか? 心配すんな。こっちに『投げられた』のは俺だけじゃねーから」
普段通り半眼で笑いながら、甚兵衛はポケットから煙草を取り出して咥えた。……咥えながら腰を撫でてなければ恰好が付いたのだが、しかしそのギックリ腰ガバとでも言わんばかりの現象を引き起こした私の台詞ではなかった。もっともそれで戦闘に影響が一切ないあたりは流石に場数をこなしているおかげか。
「しっかし相変わらず血臭いなお前」
「あー、まあこの通りで…………。えっと、一体いつから甚兵衛さん先輩たちは?」
おそらく一空の監視がどこかにあったろうが、こちらに来たタイミングがいまいちわからない。原作でもそうだったが本当に唐突に湧いてきた感があった。軽くその話を聞くと、甚兵衛は遠い目をした。
「いやぁ……、まあ、ウチにはそんじょそこらの専用タクシーじゃ比較にならない移動方法があるってだけは言っておくわ。夏凜は知ってるだろ?」
「ええ、まぁ………」
「えっと、なんで二人ともそんな顔が青いんスか?」
甚兵衛は真顔になって。
「……人間はマッハでぶん投げられるようには出来ちゃいねぇんだわコレ」
「あっ(察し)」
蘇る「13キロメートルや(秒速)」の空中旅行、もとい雪姫のガバ(断言)。原作描写を踏まえて考えるのなら、おそらく軌道エレベーターまでぶん投げられた「アレ」に通じるものなのだろう。確か大きな人形を召喚して、その剛腕(断言)で剛速球のごとくぶん投げられるやつ。あれも相当な速度が出てたはずだが、腕力だけで実現出来ていると考えるのは厳しいので、私にされた処置と同様のそれがされていたのだろう。
唐突に、源五郎パイセンが白目を剥いてすっ飛ばされてる絵面が思い浮かび、どこかにいるだろう彼に向かって思わず合掌。
丁度そんなタイミングで、スラム一帯の炎が氷の海に呑まれた。
※ ※ ※
刀太君いわくの男衆こと下っ端の皆と一緒に、スラムで避難の声掛けだったり瓦礫撤去だったりをしていた時。避難もまだ半ばだというのに、僕は異様な殺気を感じた。研ぎ澄まされるようなこの気配――――。
「そこッ!」
速度を優先して斬空掌……、殴った衝撃を飛ばすような技を背後、建物の隙間と隙間に放つ。と向こうからも同様のそれが返ってきて、思わず目を見開いた。
物陰から現れたのは、さっき動きを停止した人形たちと同様のローブを纏った誰か――――それをばっと振り払うと、えっと、何だろうあれ……、不思議の国のアリスを大人にしたみたいな恰好をした人が立っていた。
「皆、下がって……、明らかに只者じゃない!」
「えっ?」「でも九郎丸の姉貴っ」「そうは言っても相手は一人だし」「可憐だ……」「「「えっ」」」
「……――――ククククッ! あらあら良い感じに仕上がっとりますなぁ。刹那はんの『
何かこう、恍惚とした表情で僕を見る彼女の雰囲気は、見ていて変な汗をかく。な、なんかよく分からないけど、この人、ヘンタイさんか何かなのかな……。そんな僕の感想を察してか、くすくすと彼女は笑った。
「ごめんやし、昔から可愛い女の子には目ぇがなくて。堪忍しぃ? センパイ、刹那はん時もそんな感じやったけど」
「刹那……? って、そんなこと言われても……、大体、僕は男だっ!」
「へ? ホンマ? 勿体ないわぁそんな可愛えぇのにおち○ち○付いてるなんて……」
「おち○ち○言うな!」
思わず叫んで刀を構える僕に、彼女はくすくす笑った後。
「――――なら切り捨ててもえぇな?」
ひらり、と。彼女が刀を構えた瞬間に発した寒気で思わず僕も剣を構え周囲に注意喚起。でも間に合わない――――。
「我流神鳴流魔式――月見乃夜桜・改」
右手の太刀と左手の小太刀を動かし……、あれは、魔法アプリ? いや起動が見えなかった。瞬間的に周囲一帯に魔法で構成された桜吹雪が舞い――――覚えた猛烈な眠気に、僕はパクティオーカードと夕凪を手に、叫びながら唐竹割。
「神鳴流変則・告白剣――――刀太君は、僕が守るんだから!
僕のこの想いで無理やり発動された魔術の催眠効果を「ぶった切り」、そのまま左手に小太刀サイズの神刀・姫名杜を呼び出した。ヒナちゃん自体は不死殺しに特化してはいるけど、それ以外の魔術的効果に関しても耐性がある。だから視界を覆いつくす花吹雪から「四方八方から飛んでくる」「魔法の斬撃」に対しても、ある種の結界のような形で弾いた。
刀太君の「血風」みたいな応用は利かなくても、最低限はこうやって対応できる……、それくらいには、刀太君も練習に付き合ってくれたんだ。頑張らないと。
ばたばたと倒れる男衆の皆さん。はっとして見渡すと、避難誘導していた周囲全体が気絶している……、否、眠っている。中には僕の近くに居た何人かはヒナちゃんの結界判定の外で、つまり刀傷にうめいている。
使った技の系統、大きく崩れてはいたけど剣筋や先ほどの自称含めて、同門?
「何者だ……、一体何の目的でこんなことをする!」
「嫌やわぁ、目的なんてあらへんて。刹那はんか『
例えの意味がちょっとよく分からないけど、言いぶりからすると京都神鳴流。それもおそらく道を踏み外した類の。
「……まあ基本的に、私はアレアレ。そんなに世界の趨勢とかに興味はあれへんの。
ただ、私が求めてるんは『血』と『戦』が絶えないことだけや。どこにおればそれが出来るかって、ずっと考えてきた人生やったもん。もはや只の『生態』や。
楽しもうで? 後輩ちゃん♡」
「――――っ、神鳴流・虚空地裂四鬼払い!」
楽しもうで? 後輩ちゃん、と。一瞬、彼女の目が黒く染まったように見えた。
その怖気のする表情を直視して、反射的に僕は技を重ねる。空中を地面に見立て空間に気を送り込み、目的とする先で爆裂させる――――。夕凪とヒナちゃんの双方で行い、タイミングをずらして衝撃。
えらい物騒やわぁなどと飄々と言いながらも、彼女はその直撃を受けた。爆風、砂煙のシルエットを見る限り今の一発で倒せたように見える。少なからず軽傷ということはないはずだが――――。
「――――
「ッ!?」
油断していたわけでもないのに、いきなり背後から声と共に一撃。金属の鈍器に殴られたような衝撃が予想外で、踏ん張り損ねた。「刃返し」を透過するように内部に衝撃が伝わる一撃で、転がされる。
その相手は僧侶のようだったけど、恰幅が良くて、面構えが強面で、髭面で…………、なんか色々と印象に残る容姿をしていた。編み笠をずらして、視線だけで面倒そうに彼は言う。
「遊んでいるのも大概にせい、月詠の
『――――ほんまゴメンなぁ? でも余計な事お喋りするいらん口はないないするかぁ?』
電子音混じりの声に思わずあの女剣士の方を見やる。と、立ち上がる彼女はその左腕から喉にかけて大きく破損して、でも血は出ていなかった。よくは分からなかったけど、何かしら機械のパーツ群が寄り集まっているように見えて……。
「
『80パーセントくらいかなぁ、これでも結構残っとるで?』
よっと、と言いながらスペアボディなのか、先ほどと全く同じ体を呼び出し、そこの腕とか喉とかのパーツをはぎ取り、自分のそれと付け替えた。ふぅと一息ついて、彼女は僕に笑みを向ける。
「なんや、思ったより威力あったし。やっぱり桃源の方は表に出てる割に殺傷力が頭おかしいわぁ。それともその
んもー、やっぱ夕凪持ってるだけあって色々思い出すわぁ」
「やれやれ……。流石に拙僧の介入を許さない程、狭量なことを言われますまい?」
「言うよぉ? あの
「主目的を忘れるでない! 我らは世界を救うべく活動しておるのだから。かの『
「――――っ! なら、何故あなた達はこのような蛮行をするんだ! 救うべきは彼らの様な人々であるはずなのに!」
聞き覚えのある名前――――現代最高の「
「その話をするためには今の太陽系の状況を理解する必要がある。少し長くなるぞ?」
「ふざけて居るのか!」『(まあそうなるけどね……)』
「戯れてはおらぬ。それだけ事態は切迫していると言えよう。雇用主はまだぎりぎり余裕があると考えているが、拙僧は事実を知った時点でそう簡単に言っていられなくなったぞ。
…………お主は常に世界に『いつ起爆するかもわからない』不発弾が大量に眠っており、それが一度爆発すればすべてが消え去ってしまうような、そんな状況を想定しているか? してはいまい。拙僧が見るに、お主はいまだ恋に浮かれるような年頃。であるならば、物事の優先順位を知るためにはその基準を見る必要があろう」
いきなり何を言っているのだと追及することはできたのだけど、あまりにも予想外の方向から殴られたような言葉に僕は言葉が詰まる。なにより僧侶は酷く真剣な顔をして語っていて、その言葉に嘘偽りは感じられなかった。
「無関係な者に語るのは憚られることはいくつもある。だがこれだけは言える。いつか来る滅びに対する手段が今の時点で取れるのならば、我々はそれを手にしなくてはなら――――」
「面倒なお話は横ぉ置いといて、さっさと
そして僧侶の話の途中で、いきなり彼女は斬りかかってきた。……威力がさっきまでのとは違う! 魔法でのアシストもなく「義骸での」身体技術で瞬動を網羅してる。おまけに神鳴流の系譜を踏んでるはずなのに微妙に型が違って、受けと攻めに微妙なずれが生じる。それが僕の隙となり、そして相手はそれを見逃してくれない――――。
「
「後で三枚に下ろして池に放流するえ?
でもキミ、その妙に混じりっ気のない真っすぐなところも好みですわぉ。まるで箱入娘みたいなスレてない剣閃で♡」
「調子に、乗るな――――!」
技を繰り出そうとしても、その動きの初動を確実に潰してくるこの動き……、小さい頃に兄様にされたことがある、彼我の実力差が圧倒的な場合に発生する「遊ばれ」方だった。この
でも、今ヒナちゃんを戻すのは悪手だ。明らかに彼女の一撃に耐えられているのは、ヒナちゃんの頑強さがあってこそだ。
そんな僕に、彼女は愉し気に笑う。
「勿体ないわぁ、なんや『
「ッ! 神刀を知ってる……っ」
「同門やって言ったやろ? それ。
いや懐かしいわぁ、昔は妖刀なんて呼ばれててな? 素子はんっちゅー使い手がおってんけど、あの人が住んでた処から借りパクして、後でえらい目ぇ遭わされたわ」『(そんなことあったのヒナちゃん!?)』
変な因果やわぁ、と語る彼女にわずかに動揺する。ヒナちゃんが元々妖刀? いや、でもその出自にどこか納得している僕もいる。
ヒナちゃん、神刀・姫名杜はもともと桃源と京都と二大派を割るきっかけになった、神鳴流が壊滅に追い込まれかけた事件に由来してると聞いている。僕の実家の方ではその力を崇拝する側に回っても、京都の方では反対に恐れられたのだとしても不思議はない。
「なんならここでまーた私が持ってもええんけど……、なんやあの頃に比べて随分『乙女』みたいな感じなっとるし。無粋?」『(っ!? この人、ぼ、僕の存在に気づいて――――)』
一瞬、ヒナちゃんが震える。それが受けにラグを生じさせ、「隙あり♡」と彼女に一撃を許す――――。
「我流神鳴流――黒刀斬岩剣・弐の太刀」
瞬間、彼女の刀が両方とも真っ黒に染まり、まるでエネルギー波のように僕の全身を襲った。斬撃ではないけど、見た目だけで言えば刀太君の血風創天じみた何かだ。ただダメージは斬撃ではなく打撃になっている。……そして性格が悪いことに、骨を中途半端に複雑骨折や粉砕骨折する形での対応だ。
少なくとも数分は身動きができない。そんな状況で、彼女たちは話す。
「まだまだやねぇ。もっと精進せな」
「――――では封印しよう」
「へ? なんでそんな詰まらんこと言うん『坊主』。体力無尽蔵やろうから私の方の充電切れるまで何度でも遊んで『揉んで』あげれんのに。その首斬り飛ばして軒下に風鈴みたいに晒したろか?」
「ええぃ、少しは趣味から離れんかッ! 下手に逃げられてあちらに介入されてもみろ、絶対面倒なことになるぞッ」
「あちら……? っ! 刀太君…………!」
足止めとか、色々なことを聞いて確信した。この人たちは僕らの足止めにここに来ている。おそらく僕以外の救援の
ふがいなさと、そして夏凜先輩への嫉妬のような感情が渦巻く……。
「行かなきゃ……っ」『(待って僕、今のままだと暴走しちゃ――)』
わずかに身じろぎしながら……、アーマーカードを装着してないのに「あの時のように」不思議と力が湧いてくる。それに従って、再生しかかってる身体を起こそうとすると、眼前に錫杖が叩きつけられる。反射で動きが止まった瞬間、僕を囲むように八方に札が現れて――――。
瞬間、それらすべてが銃弾で撃ち抜かれた。
「なんと!?」
「あらまぁ」
言いながら乱入してきたのは黒いツンツン頭。長身で、そして見覚えのある服を着用したまま彼は片手にマシンガンと刀を持っていた。
突然の銃乱射に僧侶は後退、同門の女性は適当に受け流す。と、途中でいきなり距離を詰めてきた彼女に対して、鍔迫り合いからお互いに弾いて距離を空けた。
ついでとばかりに僕の襟をつかんで運び、彼は、源五郎先輩はクールに確認した。いつの間にか下っ端の皆の姿もない。誰が避難させたんだろう……?
「やれやれ。間一髪だったか。大丈夫か? 時坂九郎丸。もう再生度合い的に立てるかな?」
「先輩……、気を付けて! あの人たち――――」
「あらあら、せっかく楽しい時間を邪魔してくれて……、この『坊主』の前に
僕と先輩がその場から離れると、さっきまで居たところに斬撃が「飛んで」来た。
自然、分断される形になる僕たち。相手もそれは同様に、そしてにらみ合う。源五郎先輩は眼鏡をくいっと調整して、その視線は見えない。
「むふぅ……、悩んでおるな小娘。少女の悩みにしてはちと業が深いと見える。
『白き翼』契約社員・
「UQホルダー不死身衆ナンバー11・時坂九郎丸。……あと僕は男だ!」
「我流神鳴流・
「……そうか。やれやれだ。関係ないと分かっていても、やり辛くなるのはこっちの勝手か。
UQホルダー不死身衆ナンバー6・真壁源五郎。今日ばかりは普段の倍はクールに行かせてもらおう」
名乗り合いも早々に、僕たちは斬り結び始めた。