今日も頑張った・・・
ST45.Made A Strange Connection
一空の監視からのエマージェンシーと、九郎丸の打ち上げた花火のような技(確か京都の方の神鳴流派生で宴会芸用だったか)。
それを見た私は、急遽一空新作の銃の試射会場に居たメンバーを最速でスラムに投擲した。
秒もかからず現地に着いたろう全員の動向には気を配らない。こういうのは適材適所だ。
フェイトの相手は「本気にさせなければ」甚兵衛一人で充分のはず。
だから私は街の消火に回るべきと判断したのだが…………。
「す、すごい……、生の雪姫さん……!」
「アンタ、刀太兄ちゃんの仲間なんだろ!? あっちで九郎丸の姉ちゃんなんか襲われてるから!」
夏凜から連絡のあった忍の変な反応はともかく、スラムの子供……、名前はわからないが、なんだ。アレで随分と懐かれてるじゃないか。
カアちゃんとしては少し嬉しいものがあったが、しかしいの一番、状況が悪いというのを知らせてくれた二人に感謝を言いつつ、その広場の方に向かうと。
「――――刀太君が大好きだから!」
「――――神鳴流・黒刀斬岩剣」
いや何というか、カオス極まりない展開が私を待ち受けていた。
なんだか色々開き直ったような発言をかましながら僧侶風の男を倒した九郎丸と、意外にもエプロンドレスの女相手に苦戦しているらしい源五郎。
源五郎、確かに相手も手練れではあるのだろうが、それでも復活時点から潰され続けてるのは不思議だった。もともと
「――なにより源五郎はん、やる気あるん? 私、普通に殺すつもりでかかっとるのに、捕縛とか生ぬるいこと考えてへん? 銃だって全然使わなってきたし」
「それを言われると色々弱いのだけれど、僕としても少し困っていてね。……どうにも君の容姿が、僕の死別した恋人のそれに似て思い出してしまうんだ。笑みを向けられる度に躊躇してしまう」
お前そんなにロマンチストだったか。
そんなので隙を作ってしまうくらいに……、意外とセンチメンタルな奴だな。
思わず口からこぼれたその感想が聞こえたのか、源五郎は私の方を見て困ったように微笑んだ。
「どうやら感傷に浸っている時間はオシマイらしい。――――お覚悟を、『月詠さん』」
「あら、やっとちゃんと斬り結んでくださるん? ――なら精々、滾らせてな?」
…………今、桜咲刹那のストーカーしてた奴みたいな声が聞こえた気がしたが、きっと気のせいのはずだウン。
思わず現実逃避したくなった私だったが、しかしよく見ればその剣筋は確かに見覚えのある神鳴流をいくらか崩したような形のもので。
ぼーや達と「アレ」の対処もまぁ苦労した記憶が脳裏を過るが、ちょっと手を出すのを躊躇してしまったのは別に私のせいじゃないだろう。私、悪くないもん。
「っと、そんな場合ではないか。……大丈夫か? 九郎丸」
「はぁ…………、ッ!? ゆ、雪姫さんっ」『(あ、やっぱり気づいてなかった)』
肩を叩いた私に気づいて、アーマーカードの姿の九郎丸は顔を真っ赤にした。
いつからという言葉に多少からかってやろうという嗜虐心が湧いてくる。
「んん、そうだな。お前が私に挨拶に伺わないといけないようなセリフを叫んでいたところからかな」
「いいいいいいいい!? いえ、その、それには色々とその深い理由があってですね……っ、いえ、えっと、僕が刀太君のことが嫌いってことは絶対にないんですけど、そうじゃなくって!!?」『(結局そういう機会はなかったなぁ、僕……)』
「どうどう、落ち着け落ち着け。避難状況はどうなっている?」
「へ? あ、えっと……、大部分は終わったと思いますけど、全部いけてるかどうかまでは……。忍ちゃんたちも手伝ってくれてますけど」
「まあ雑魚兵くらいなら数が揃えばウチの男衆でも問題がないだろうが、手練れになると確かに問題だな。……しかし面倒だな」
源五郎に嬉々として斬りかかっている女を見て、少し胸焼けを覚える。
そんな私に「知り合いですか?」と声をかけて来る九郎丸だが……、お前、何か内股になってないか?
いくら何でも開き直りすぎだな。戻ったらせいぜい揶揄ってやろう。
それはともかく。
「祝月詠。……かつて私の仲間だったとある神鳴流使いをいたく気に入った、女をいじめるのが大好きな奴だ」
「えっと、そういう話が聞きたいんじゃなくって…………」『(もっとパーソナルなことを知ってる関係かなって思うんだけど、違うのかな?)』
「私からすれば知り合いの知り合いって感覚だな。あと……、まぁ『トモダチ』のストーカーだった」
「えっ?」『(ちょっと僕? 僕も注意しないといけないと思うよ僕?)』
まあ九郎丸が困惑するのも仕方ないだろうが、別に私、刹那個人は気に入っていたが交友関係までとやかく口出すほどじゃなかったしー? ……我ながら言い訳がましいが、別に奴が誰と結婚するかとかも口出すのは不死者としてするべきでないと思っていたのも事実なので、まー、ぼーやと一緒にあの女に色々「苦戦させられた」のは間違いない。
宇宙船に乗って大気圏突破直前までシャトルの外に乗ろうと追いかけてきていた姿はちょっとしたホラーだったなぁ……、私が言うのもアレだが。
「半妖魔のようなことはたまに匂わせてはいたが、別に呑みに行くような仲でもなかったからなぁ……。
知ってるようで知らないというのが、私から言えることか。
その実力はともかくとして」
「…………確かに、強かったです」
アーティファクトの効果で能力にブーストがかかってる九郎丸だったが、奴を見る目は畏怖がにじみ出ている。
同門の剣士として、その蓄積された戦闘経験と裏打ちされた勝利の数に警戒心が働いているのだろう。
まあ奴に関しては、年齢的にぼーやたちよりもちょっと上だったはずだから見た目こそ今、二十代に見えるが本当は――――。
「――――あら? なんやぶしつけな視線感じたけれど、雪姫はんやん! お久しゅう」
源五郎と鍔迫り合いをしながら、こちらに視線を投げてよこす祝月詠。
もっとも目が笑っていない。奴め、年の功か「そういうのも」鋭くなったと見える。
片手の小太刀めいた方は砕かれたらしく、柄を棄てて長刀の方に専念していた。
「なるほど~。雇い主はんが目の前におったら、そらやる気にならんと問題やんね~。実際、さっきよりはだいぶマシになったから、私けっこう楽しめとるで?」
「……同時に僕も、貴女の弱点のようなものを見つけてしまった」
「ほぅ? 弱点?」
剣を振り切り弾くと同時に、源五郎はスタンガンを奴の反対の腕に押し当てた。
……当然普通のスタンガンではない。見覚えがある、確か私を拘束して組全体と停戦交渉をするために調整した逸品だったはずだ。
私でも軽く火傷を負うレベルのそれは、魔法アプリの防御陣すら焼くだろう。
ただその一撃に対して、奴は動きがいくらか遅い――――。
そしてその隙を見逃さない程度には、源五郎も強かった。
「その膨大な戦闘経験からくる予測で補っているのだろうけど、生憎こちらは『ヤクザ者』でね。『ご老体』の隙をつくのに躊躇もないし、どっちかというとケンカ殺法の方が得意だ。
――――『昆虫夜王三択モード』」
奴の右腕、剣を握っていた方を斬り飛ばすと、そのまま畳みかけるように殴る蹴るの暴力へと移行した。
神鳴流を収めている以上、祝月詠もそれなりにステゴロが出来るはずだが。しかし不思議なくらいに源五郎の動きにいいように翻弄されている。
「な、なんやんそれ……!? 我流神鳴流・暗黒紅蓮拳――――」
「『△ボタン』連打法――『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』『△ボタン』――――勝利っ」
源五郎と月詠の拳が正面からぶつかり、しかし源五郎の一撃の威力が奴の拳を凌駕した。
腕が砕け散った際に飛び散ったパーツで、ようやく奴が一空のようにサイボーグ化してることに察しがついた。
腕がなくなり流石に余裕がなくなったのか、源五郎の腕を蹴る瞬間に「瞬動」を使い距離を取る祝月詠。
肩で息をすることはないが、困ったような、引きつった笑みを浮かべていた。
「……ご老体、呼ばわりは流石に乙女心踏みにじりすぎやあらへん? これでも気にしとるんよ?」
「気に障ったなら謝りましょう。では、お詫び代わりに一つ。
貴女のその身体に対して、貴方自身の処理能力が追い付いていない――――
「おい余計な事言うの止めろ!」
思わず叫んでしまったが、こういう筋というか貸し借りみたいなのは変に律義な源五郎は説明を止める気配がない。思わずため息が出る。
そう、それが源五郎がさっき攻め続けられた一番の理由だろう。
ボタンどうのこうのは意味がわからないが、つまり現在の月詠の身体スペック――動体視力や反射神経と、奴の義骸の性能――反射に対してどれくらいの速度で動くかのラグだったり何だったりとが、一致していないということだ。
それを年の功で補っていた月詠だったが、見切られ、なおかつ差を開けられてはどうしようもないだろう。
…………ただそんな話を懇切丁寧にしてやる必要などないのだ。ホラ、よくわからないけど顔を赤らめながら「おおきに」なんて言い出して。
源五郎本人もその反応は予想外だったのか戸惑っているが、気をつけろ。絶対ロクな結論にはならない。
「うーん……、こんな殿方から律義に教えてもろたん初めてやぁ。こんな初めて、ちょっと照れてまうよ。年頃の生娘であるまいに。んん、でもせっかく教えてもろたんやし、何もせんかったら申し訳あらへんしなー……」
「? 何を言っているんだ」
「……うん、決めた! 私、『
そしたらまた遊ぼか、源五郎はん♡」
ほら見ろ! 思わず源五郎にお前のせいだぞ! と怒鳴ってしまうくらい嫌な結論が出た。
どんな手段を使ってくるか予想できないが、絶対変なパワーアップをして帰ってくるに決まってる。割とそういう経験が多いから私は詳しいのだ。
あと、そいつその気になると滅茶苦茶しつこいからできれば縁切りしたままにしたかったのだが……。
「ままならぬか……」
「あっ、それ刀太君もよく言ってるやつです」
「セリフが被ったか? いや、まぁ
それはともかく、源五郎は表面上はクールぶって眼鏡を押さえている。
視線は見えないが知ってるぞ、その仕草は困っている時の表情のようなものだ。
なんだ、そんなにお前の死んだ恋人に似てるか奴の満面の笑みは。思わず見とれてしまいそうになるくらい困惑する程か。
確かに「あいつ」も亜人の中では長命の方だったが……。
まあ世の中には似たような顔をした奴が何人かいると言うし、あまり責めるのも酷かもしれんが。
「…………その笑顔に狂気さえ浮かんでいなければ」
「無理な注文は諦めてくれへん? 私『これ』が大好きだから今の今まで意地汚く生き延びてきたところあるし。刹那はんとの『約束』もあるけど、やっぱ斬り合いが一番自分の人生を生きとるって実感わくんや」
けらけら笑っていると、どこからか連絡が入ったのか頭がバイブレーションする。
ぴ、と電子音が聞こえると、特に電話を操作する動きもしていないのに「あ、もしもし、しもしも? 私、私どす」と色々怪しいセリフ回しをしていた。
「へ? 失敗したん? なんやフェイトはんらしくない……、ネギくんのお孫さんやからって手加減でもしたん? ……びしょ濡れ? あと説得されたって?
へぇ、それはそれは…………、なんか仲良うなれそうな子やね、刀太くん言う子」
「――――っ、刀太君には手出しさせない!」
言いながら瞬動で源五郎の隣に立った九郎丸だったが、逆効果だぞソイツ。
嗚呼、嫌な感じに笑みを浮かべて……。事務連絡が終わったらしく、祝月詠は私たち全員を一瞥して「もう帰るわぁ」と楽しげに笑った。
「後のお楽しみもいっぱい出来たし、今日はけっこう良い日やし。『勇魚』たちにも良い土産話が出来たわぁ」
「逃がすと思ってるのかい? 月詠さん」
「いやん♡ もう、源五郎はぁん。
そんな熱烈な目で見んといてぇな♪」
軽く「しな」を作って返されるだけで、源五郎は眼鏡を再び押さえた。
お前……。
先輩? と九郎丸が尋ねるのに少し早口になりながら応じた。
「どど、どちらにせよだ。これだけのことを君たちがしたのだから、少なくとも何かしらのオトシマエをつけるのが『ケジメ』というものだ。古事記にもそう書かれている」
「えっ!? そうなんですか!」
「嫌やわぁ、それどの界隈の世界の古事記? 絶対アマノタカマガハラ組とか表紙に描かれてそうなやつやん。ま、どちらにせよあんま興味あらへんけど。
……あ! この坊主んことは好きに煮て焼いてくれてええから。もともとアルバイトだったみたいやし――――」
「――――
今の九郎丸と源五郎では完全に相手のペースに乗せられている。
少々イライラして、思わず手を出してしまった。
もっともその私の発動すら読んでいたのだろう、こちらに砕けた腕の残骸(左掌と手首の部分)を蹴り飛ばして、発動時のベクトルを妨害してきた。
凍らせ、振り払って砕き。しかしその頃には既に距離を空けられてしまっている。
「じゃあまたな! 九郎丸はんに源五郎はん♡
九郎丸はんは、次会う時までにもっと『引き出せる』ようになっててなー」
言いたい放題だしやりたい放題だし、本当にアイツ前から全然変わっていない……。
軽く頭痛を覚えていると、件の坊主について弁護じみたことを源五郎に話しはじめる九郎丸の声が聞こえた。
※ ※ ※
「…………で、街全体が凍るまでの話と全然繋がっていないのだが」
「それはそうだろうさ。お前、燃えるよりは良いだろう。どうせ後で溶かすから」
そんなことを語る雪姫(大人バージョン)を前に、私はわずかに頭痛がした。戦い終わった後、原作通りのノリで鎮火のために街全体を凍らせたという話だが、実際にやられると酷く肌寒くていけない。
あの後、早々に雪姫や九郎丸たちと合流したのだが。前後のあらましを軽く聞いているうちに納得と当時に腹痛を覚える。確かにフェイトが来ていた以上は現代の「白き翼」関係者が来ていてもおかしくはないのだが。いくら何でも前後に容赦がなさすぎる。
特に月詠……。何だ次会う時に生身の肉体で全盛期の剣技を振舞ってくる疑惑が出て来てる展開。は? 恐怖以外何もないのだが。(震え声) 元々元祖「ネギま!」においても正体不明の神鳴流ゴスロリ少女剣士バーサーカーで通していたが、私の認識だとそこまで出張ってくる印象はなかったのだが……、現在のお年がお年なのだからもう少し老成していれば良いだろうに。(失礼)
「ままならぬ……。でもそれはそうと、アーマーカードちゃんと使いこなしたんなら良かったじゃねーか九郎丸!」
「う、うん……」
「…………ん?」
「ど、どうしたの? 刀太君」
「いや、何というか……」
上手くは言えないのだが、なんだろう、表情の作り方がどこか柔らかくなったような……、ついでに言うと声の感じも少し優しい感じになったというか。何だろう、本当にうまく言えないのだが、色々とちょっと前とは違う印象を受ける。
ひょっとしてアレか?
「――――ッ!!!!!!! い、いえ、流石にそこまでは……」
「つまり前段階までは来たと言うことですか。それは、良いことです」
「何納得してんだ二人そろって……」
「兄サン本当に気づいてねーのか? もっとやべぇことになってるぞたぶん」
「やべぇって何だよやべぇって」
「そりゃ…………、って、私の口から言わせるなヘンタイっ!」
「いや何でだよ……」
そしてそんな私とカトラスを、雪姫が微妙な目で見ていた。
※告白剣の詳細とかまでは話で聞いてない主人公