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ST46.Bad Family Relationship, Good Family Guilty
名前の覚えられない僧侶のことはホルダーに帰ってからどうするか相談するということになり、私たちは雪姫によって氷漬けにされた街を溶かす作業に従事……、することはなかった。原作でもそうだったがこの辺りはおいおい、ということらしい。雪姫に事前に言われていたのか、一空がスラム全体でお祭り騒ぎが出来る程度には大量の食糧やら何やらを運んできたので、それを使って打ち上げと相成った。
このあたりの流れは原作に近いが、明らかに原作と異なる光景がある。善鬼たち男衆が(一般人なら死にかねないレベルの致命傷を負いながらも)なんとか避難誘導を手助けした結果もあって、実際のところ大盛り上がりであるが、その中にカトラスが混じってたり、雪姫たちの姿が見えなかったりだ。
というかカトラスが、忍の手で子供連中の輪の中に入っているのが意外と言えば意外というか……、お前本当絆されすぎなのでは?(疑心暗鬼)
そして私は、そんな光景を一歩離れたところから見ていた。
「ん……、やっぱこういうのが良いのだろう」
人外も人間も問わず紛れ込み火を囲みシチューやらカレーやら何やらを頬張りながら、時に酔いながらわいのわいの。ちょっと煩くも感じるが、たまにはこういう息抜きも必要なのだ。そしてそういう様を傍から見守るのが、なんとなく楽しい。
私個人がそこに混じれという話でもあるのかもしれないが、ちょっと考えることが多いので少し後退しているところはあった。
「この段階でフェイトとの遭遇とか今後の展開完全に崩壊するのではないだろうか……」
何が問題かといえば、原作的に次に待ち受けているキリヱ編である。あれは南雲の手で月に転送された夏凜の迎えと同時に、フェイトが原作主人公の「頭」を文字通り奪うために現れ戦闘になったイベントである。アレには後の展開を見るに、近衛刀太という存在がどの程度「仕上がって」いるかの確認もかねての手合わせやら何やらだったという側面もあるのだろう。もともとフェイト自身が降りてきていなかったこともあり、スラム編で南雲たちに再度回収依頼を出して失敗した、そのリカバリーもかねていたのだろうが。
それ故に、そういった前提条件を取っ払った際に何が起きるか。……何も起こらないのでは? いや、つまりイベントそのものが消滅してしまったのでは?(震え声)
胃が痛い……、誰か立場を代わってくれと思わなくもないが、どこかで師匠が「自業自得だよホント」みたいな顔をしていそうな気がしたので、それは流石に言葉には出さない。いや自業自得と言われましても、私、出来る限りガバが起きないように過ごしてるはずなんですが……。(???「それも含めて自業自得だよアンタ」)
「ままならぬ……」
「……どうしたの? 刀太君」
「おっと! なんだ九郎丸か……、こっち来て良いのか? あっちで引っ張りだこだったじゃねーか」
「あはは、まー、そうだね。でもそれを言ったら刀太君だって」
「いや、実質『俺』の活躍って、目撃者が忍とルキしかいねーし。九郎丸の方が目立ってただろあっちじゃ」
「それでもその、夏凜先輩から少し何があったか聞いたから、僕は刀太君を労いたいなって思って……」
労うと言ったってお前も似たような状況だったろうに……? ん? 違和感を感じて九郎丸の恰好を見る。学ランの下のシャツはボロボロで腰やらおへそやら鼠径部やらが見えているのだが、気のせいだろうか、前よりもなんか丸みを帯びているような……。
私の視線に、さっ、と身体を隠す九郎丸。
「ど、どうしたのかな? 何か僕に変なところでも……」
「あー、なんとなく違和感が……。いや気のせいかもしれねーけど」
「それを言ったら、刀太君だってこう……、背が伸びたような?」
「カトラスとか夏凜ちゃんさんとかも言ってたなそれ…………。でも、言われてみると確かに。目の高さがお前の頭くらいには伸びた気もすっけど……」
というより何故そんな楽しそうと言うか、嬉しそうな顔をしているのか九郎丸は。気持ち頬も赤いし、一体何にテンションを高くしているのか。
ただ、それはそれで気になる点もある。私の身体が成長しないというのは、雪姫曰く私自身の不死性が働いているからということらしい。原作知識を総動員すれば、つまり彼女、エヴァンジェリンが十歳前後の身体から成長していない理由と全く同一であると言える。それを鑑みると身長が伸びているというのはむしろ何か危ないというか、危険な兆候なのではと言う疑念がでてくるのだが……?
詳細をぼかしながらもそんな話をすると、九郎丸は赤らんでいた顔を青くして慌て始めた。すぐ雪姫さんに聞かないと! と走り出そうとするが、どこからか「ぬ」っと現れた夏凜が九郎丸のサイドテールを引っ張って止めた。
いぎゅっ、みたいな変な声を上げる九郎丸。
「な、何するんですか夏凜先輩! 首から上だけ胴体から引き抜かれたかと思いましたよ!!?」
「独特な表現ですが、別に我々はその程度では死なないでしょう。それはともかく、何やら聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしましたので。どういうことですか?」
「あー、えーっとッスね……」
「――――刀太の身長がちょっと伸びたって話だ。まあ、大した話ではないぞ」
背後から聞こえる少女の様な声。聞き覚えのあるそれに振り返ると、いつかのように少女姿の雪姫が、ワイングラス片手に歩いてきていた。……ワイシャツ一丁は原作でも見た覚えのある格好だが、それはともかくその左手にある空のワイン瓶複数は何なのだろうか。
私の視線に「これか?」と雪姫は愉しげに笑う。
「いや、ちょっと予想外のことがあったのでな。源五郎から色々聞き出すために甚兵衛と共謀して『吞み潰して』色々聞き出した。
良い子が絶対やってはいけない尋問方法だな……」
「アルハラじゃねーか!?」「だ、駄目ですよ雪姫さん!!?」
「本人も嬉々としていたし良いんじゃないか?
滅多に甚兵衛と酒を呑める機会などないだろうし。
……肝心の甚兵衛は開始早々『ダルい』と言って眠っていたが」
ダメここに極まれりであった。思わず白い目を向けるが、気にした風でもなく雪姫は手を伸ばして私の胸部を撫でようと……。撫でようと……。
「いや、なんでわざわざ子供の姿になったんだよカアちゃんさ。手、届いてねーじゃねーか」
「う、うむ。以前なら軽ぅく伸ばせば楽々触れたんだが……」
「いや前だって結構ギリギ――――」
「う、煩い! それはともかく、だ!
おそらくだが、一時的に『
「バグ、とおっしゃられますと?」
不思議そうな夏凜に、雪姫は私と自分自身とを例に挙げながら説明する。説明するが…………、いや、やっぱりかみ砕く方が分かりにくくなりそうだ。そのまま彼女の言葉を使わせてもらおう。
「元々、刀太や私の吸血鬼化というのは、伝承などにあるそれよりもより『魔術的』なそれだ。ジャンルやカテゴリー上は吸血鬼と言わざるを得ない形に落ち着いてはいるが、本来は真祖、魔人やら悪魔やらに連なるそれが近い。
つまりは膨大なエネルギーを使用して、身体の状態を一定の時感覚で安定させ固定させようとしているようなイメージが近い、だろうか……? 本当は微妙に違うが、今はその理解にしておけ。
この魔術的な作用により、私たちは首を捥がれようと心臓を抉られようと、すぐさま元の状態に戻ろうとする力が作用して、結果今の状態に安定する。
だが仮にこれが妨害されるとだ。おそらく『身体的に成長の余地がある』場合だと、身体の方は無理やり成長を止められていたという事実を『覚えている』。だからこそその状態から復活すると、身体が『認識している』状態、つまりは成長した状態で再生しようとする。
つまり、本来なら時間経過と共に成長していた分の余地に対して、一気に成長が『超再生』し、ちょっと老けるということだな」
本当かよという目を向ける私に肩をすくめる雪姫。適当に言っている訳ではないが、とはいえ確証があるわけでもないらしい。まあそれを言ったら雪姫本人が今の状態であることに説明がつかない気もするのだが……。
「私の場合、ざっと1世紀程度は封印されるような事象に遭ったことがなかったからな。身体的には『成長の余地』よりも『本当なら死んでる』ことを覚えてるのだろう」
「あー、なるほど?」
「理解が適当だな。まあ大した問題ではないから、そう気にするまい。
……封印で思い出した。そういえば私と初めて会った時、夏凜お前それはもう大量の――」
「ゆ、雪姫様!? その話は今はちょっと……」
何を照れてるのか顔を真っ赤にして雪姫の口を塞ごうとする夏凜と「そういえばお前も酔い潰して色々聞いた方が良さそうだなぁ」などと口走るエヴァという絵面は中々に酷い。そして九郎丸が「とりあえずお肉焼いてきたから、食べよ! 僕が焼いたんだよ! 僕が!」と謎のプッシュをしてくるのが、ちょっと不思議なところではあった。
※ ※ ※
お祭り騒ぎが終わった夜。エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが作った巨大な氷の柱の上で、私は街全体を見下ろしていた。
「とりあえずは終わり、か…………」
長かったような、短かったような。半月も居なかったとは思うけど、意外とここでの生活は濃いものがあった。気が付くと、一人称もよく「俺」から「私」になってた気がする。
ぬるま湯……、そう、ぬるま湯だ。傷痕にしみない程度の微妙な温度で、私のことを溶かしてくるような、そんなぬるま湯。
「だから嫌だったんだよ。こんな所にいるのなんて」
そのぬるま湯が、存外悪い感じがしなくって。だからこそ、私は悪態をついた。
「…………やり辛くなるじゃん。こんな世界を変えるためになんて、さ」
ネギ様……、否、「ヨルダ様」は、おおよそ今の人間社会やら世界の在り方を、悲劇を生むものと考えて。それをどうにか変えようとされている方だ。
あの日「金星の黒」が暴走した私は、敵も味方も構わず破壊しつくし、だからこそ敵も味方も関係なく私を殺そうとして、実際死にかけた。
そんな時に手を差し伸べてくれたのが、あの方だった。私のことを「孫娘」のようなものだと笑いながら、でも目に浮かぶ色は悲しみに満ちていて。
ささくれ立っていた心に、彼/彼女の言葉はひどく魅力的で。
でも私の本心は……、私たちに、私に、私をこんな状況に追い込んだ世界への、激しい怒りだった。
野乃香さんに読んでもらった本みたいに、普通の生活なんてもう望めない……、幸せになんてなれないって、悟ってしまったから。
ここでの生活だってそう。それは決して、幸せじゃない。楽しく笑えるものじゃない。だっていうのに、どいつもこいつも今の状況で満ち足りてるみたいに笑いやがって……。
そんな輪の中に放り込まれて、いつの間にか口元が緩んでいる私も私だった。
「だから、いつまでも居られない――――」
「おう、わっすれっ物っ」
「!?」
兄サンの声が背後からして、驚いて振り返ると。私のカードを投げてよこす、あの気持ち悪い血のコートを纏った兄サンが…………、ロット番号で言うと「7番」の兄サンが居た。
思わずキャッチしそこねて、足場にカードが落ちる。いきなり、気配もなく現れるのは止めろと言うと、兄サンは苦笑いを浮かべた。
「これでもお前のアレよりはまだマシだと思うんだけどなぁ。たぶん最初に俺に斬りかかってきたときのやつって、そのカードで出て来るアーティファクトか何か使ってたんだろ?」
「それは、そーだけど…………、それ普通に受けきった兄サンの台詞じゃねぇから」
そうか? 首を傾げる兄サンに、どうしてか頬が熱くなる。
……意味わかんねーから、私、どうして照れてるんだ。ほら、ちゃんと顔見れば良いじゃねーか。視線逸らしてるんじゃねーよ。
「な、何だよ、そのまま借りパクしときゃいいのに」
「そういう訳にもいかねーだろ。これ、誰との仮契約カードなのか知らねーけど、大事なモンなんじゃねーか? 口には出さなかったけど、なんか結構気にしてたみたいだし」
よくポケットまさぐって、何もないのを見て寂しそうだったしとか。
そんな、妹のことをよく見ている本物の「お兄ちゃん」みたいな振る舞い……。
「…………大事なモノだけどさ。でも、次に会ったら敵対してるのに。どうして返すんだよ。絶対、私、兄サンの嫌がる事これ使って実行するのに」
「そうと決まった訳でもねーだろ? まあ場合によっては謝れって怒るとは思うけど。
でもそれだって、お互い『生きてる前提』の話だから」
「……?」
「お前もう、正直、俺を殺そうとか面倒くさいだろ?」
面倒くさい……、嗚呼、確かに面倒くさい。
きっと今の私じゃ、兄サンを嬉々として殺すことは出来ない。それくらい変な親しみを感じちゃったし、距離感が狂わされた。
まるで初めてネギ様に
「なら返しても大丈夫だろう。滅多なことは、最後の最後でお前の判断でしないって。それを信じられるくらいには、まあ、絆されてくれたって思ってるし」
「…………そーゆー所が嫌いだっての。だから――」
だから、ちょっとだけ意趣返しをしてやろうと思った。
「
砂時計のようなアーティファクトを呼び出し、そこに魔力を走らせる――――この間だけ、私は時間と時間の狭間を行き来できる。
そして苦笑いのまま身動きの出来ない兄サンの傍によって、ちょっと伸びたその口に……、い、いや、口が一番兄サンにダメージ大きそうだけど、その、私まだ幼いから、そういうの早いし……、月のものとかまだ来てないし(※改造されて「無い」ので来ない)、ちょっとやめよう。
妥協としてほっぺに、適当に唇を寄せて、吸う。
解除。
「――――はい?」
ひひ、やってやった。
やーいやーい、と。まるでこの世の終わりみたいな表情を浮かべる兄サンを嗤いながら、私は少しスキップみたいなステップを踏んで。
「…………
ま、男のシュミはアレだと思うけど」
更に呆然としたような表情になった兄サンを嗤いながら、私は『
※ ※ ※
「あ、フェイトくん! 遊びに来てくれたん? スマンなぁ、今日『帆乃香』たちも遊び来とるけど出かけとるし。にしてもめっちゃズブ濡れ? 水も滴るええ男とは思うけど、風邪引くからアカンよー」
「……いや、大した問題じゃない。それより」
「ん、どないしたん?」
「『実験体7号』……、いや、
「あらまぁ、凄い珍しいわ」
「何がだ?」
「フェイトくんが、ちゃんとあの子らのこと名前で呼ぶなんて。何か心境の変化でもあったん?」
「…………いや、別に?」
「んもぉ、はぐらかすなぁ。そういう所もええ男と思うけどっ」
「何と言うか君は、そういう所は君の祖母には似ていないね。男を見る目がない」
「えーっ、何でそんなこと言うん!? 大体お祖母ちゃんたちは――――」